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Wine・Red  作者: 雪白鴉
二章
19/70

17、応急処置と要休暇

「熱中症です!」


 水瀬は石川を連れ、すぐに一階へ駆け下りた。


「水瀬さん!!」


周りの人は突然のことでどうすれば良いのかが判断できず、動けずに固まっていた。


「マネージャーさん!」

「あ、はいっ!!」


水瀬はマネージャーと思われる人に声をかけた。


「八城様は、めまいや吐き気、頭痛、筋肉痛など、いつもと違った体調を訴えておられたか、気がついたことはありませんか!?」

「あっ、はいっ!・・・えっと、頭痛がするとは言っておられましたし、ちょっと顔色が悪かったかなと・・・。」


マネージャーの話と、気温、八城の大量の汗からやはり熱中症の可能性が高い。


スマホで気温と湿度を調べたところ、今は夕方にも関わらず、気温二十九度、湿度五十七%。それがお昼時であったと考えると顔が青ざめる。


「八城珠江様、聞こえますか?八城様?」


反応はない。


「倉橋さん、先程救急車を呼ばれました?」

「はい!」

「良い判断です。救急車が来るまで応急処置をします。玄関付近は気温が高いので空いている涼しい部屋に運びましょう。」


反応が無いということは意識が朦朧としているか、意識不明か。その場合、病院に搬送しなければならないが、それまでに時間がある。その間、応急処置を施すしか無い。


 八城を部屋に運んだ頃、西野と山田、支配人がやって来た。


「白井さん、さすがに私は女性と体に触れられませんので、肌と服の間が空くように八城様の服を緩めてください。」

「はい!」


 八城の服のボタンを上と下を少し外し、袖を捲った。


「水瀬先輩。冷やせるものをできるだけ持ってきました。」

「ありがとうございます。」


西野と山田が持ってきたのは、保冷剤、氷枕、水、氷、タオル等だった。

そこで水瀬は水の入った霧吹きを見つけた。


「この霧吹きは・・・。」

「それは山田さんが見つけて使えるかもと思ったので持ってきました。」


霧吹きといえば体を冷やすのには最適なものだ。


「ナイスです。山田さん、西野さん。」


ついでにうちわも見つけたので、八城の腕や足に霧吹きで水をかけ、そこをうちわで仰いだ。


「あとは保冷剤や氷枕で体を冷やしましょう。首筋や両脇、足の付根に当ててください。」

「はい。」


 水瀬たちの応急処置のおかげで、救急車が来るまで八城の症状が悪化することはなく、だんだん落ち着いていった。

意識も多少戻ったようで水分補給ができるようになった。


 その後、八城は病院に搬送され、事なきを得た。


「水瀬暁さん、本当にありがとうございました。」


マネージャー達が水瀬に頭を下げた。


「いえ、大したことはしていません。医者でもありませんし、ただ、自分の知識で判断したまでですので。あれが正しかったかどうかも分かりませんし。」


マネージャーの隣で空を眺めながら言った。


「でも、あの場で冷静に動いておられたのは水瀬さんだけです!あなたは確かに立派な方です!!」

「・・・。」


水瀬は後ろを振り返って言った。


「私なんか立派な人ではありません。立派な人の理想を写したような者でもない。ただ、自分にできると判断できたので動いただけです。」

「・・・でも」

「マネージャーさん。」


水瀬がマネージャーの言葉を遮った。


「一つ、言っておきますが、八城様が熱中症になったのは紛れもなく撮影関係者の貴方方の責任です。」


マネージャー達が固まった。


「八城様はスポーツドリンクのCMの撮影をされていたと聞いております。そのスポーツドリンクがなんのためにあるかご存知のはずですが?」

「!!」

「以上です。失礼いたします。」


固まるマネージャー達を置いて、水瀬は仕事に戻った。


「水瀬、お疲れだったな。」

「・・・支配人。」


水瀬の前に支配人が立っていた。


「支配人、応急処置のお手伝い、ありがとうございました。」

「いやいや、あれくらいやるだろ。支配人なんだし。」

「それもそうですね。」


水瀬は何の用かも知らずに支配人部屋へ連れて行かれた。


「あれ、水瀬さん。」

「・・・。」


支配人部屋に入ると、そこにはもう先客が立っていた。


「・・白井さん。」


支配人は椅子に座ると勤務表を二人に見せた。


「・・・勤務表ですね。」

「あぁ。」


すると、支配人が水瀬と白井の明日の場所を指差した。


「明日、お前ら普通に仕事だろ?」

「・・・はい。」

「そうですね。」

「明日、お前ら休め。」


『・・・はい?』


支配人の言葉に二人が首を傾げた。

突然、休めなんて言われてびっくりしない奴はよっぽど仕事が嫌いな奴である。


「二人には少々負担をかけすぎた。特に水瀬は。」

「・・・まぁ・・・。」

「さすがに俺も気にしていた。新人も入ってきたことだし、今のところ明日は客が少ない。だからたまには休暇をとれ。」


支配人、鈴木幸助なりの優しさだろう。ふつうの人ならば飛びつくだろう。しかし、


「いえ、私は大丈夫です。」

「・・・は?」

「休んでもすること無いので逆に仕事をさせていただいたほうが・・・。」

「・・・お前なぁ・・・。」


休暇を断るなんて聞いたことがない。

 困ったものである。水瀬には休みにやりたいことが一つもない。それに、明日は宮河は仕事。なぜかいつも持ってくる奥さん手作りの麻婆豆腐も無い。そんな中、何をすれば良いというのか。


 支配人は困り、頭を抱える。

そこに、救世主、白井夏希が現る。


「なら、水瀬さん、一緒に何処かへ出かけませんか?」

「・・・お出かけ、ですか?」

「はいっ!!ちょうど二人ともお休みですし、水瀬さんも外のこと、いろいろ勉強になると思いますし!!」

「・・・しかし、外出用の服などありませんし・・・。」

「それです!!」

「!」


突然、白井が声を張り上げた。


「明日、水瀬さんの外出用の服を買いに行きましょう!!」

「・・・え・・・。」



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