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Wine・Red  作者: 雪白鴉
二章
15/70

13、世間知らずと優秀者

 ライバルホテルに借り出されることになった水瀬は今、バスの乗り方がさっぱりわからなかった。

時間に有余はあるものの、降りる場所をあらかじめ運転手に言うのか、それとも降りる直前で言うのか迷い、更に、


(代金って・・・どうするんだろう・・・。)


まず料金をどうやって払うのかさえもわからないし、値段もわからないため、財布の中には小銭が大量に入っていた。


「白井さんに聞いておけばよかったなぁ・・・。」


ぼそっと水瀬が呟くと、バスが一台やって来た。


(まだ時間じゃないし、方面も違う。違うバスか・・・。)


水瀬の前にバスが停まった。

ふとバスを見上げると、バスの中にいるある人に目がいった。


「あ・・・。」


運転手に礼を言って出てきたのは白井だった。


「あれ、水瀬さん?」

「おはようございます、白井さん。」


通常勤務の場合、白井はいつもこの時間帯にバスでやって来る。


「どうしたんですか?水瀬さんの乗るバス、後十五分後ですよ?」

「えぇ、そんなんですが・・・。」


水瀬は世間知らずのため、バスの乗り方がさっぱりわからないことを白井に告げた。


「バス、乗ったこと無いんですか!?」

「はい・・・お恥ずかしながら・・・。」

「はえぇ〜・・・。なんか意外・・・。」


水瀬は今まで電車やバスに乗ったことが無かった。目のせいもあり、子供の頃から学校以外外に出ることはなかった。買い物などはほとんど宮河がやってくれている。


「このバスの代金は三百円です。」

「・・・安いですね・・・。」


思ったより代金が安くて水瀬は驚いた。


「座席の近くに押しボタンがあるので、次の駅で降りる時に押せばその駅で停まってくれますよ。」

「ありがとうございます、白井さん。」

「いえいえ。」


白井は水瀬が乗るバスが来るまで待ってくれた。


「では、水瀬さん、お仕事頑張ってください!!」


白井はバスに乗った水瀬にエールを送った。

白井の両手ガッツポーズを見た水瀬はほんの少しだけ微笑んだ。


「っ・・!?」


その後すぐ、バスは出発した。



「さっき・・・笑った・・・?」






 その頃、ライバルホテルの従業員は全員が疲れ果てていた。


「疲れたぁ・・・。」

「俺、昨日寝れてないっすよ・・・。」


昨日は東こよりがホテル内で大騒ぎしたため、ホテリエたちはすっかりくたばっていた。


「昨日新人たちがグランド・リリスの水瀬っていうホテリエにお願いしに言ってたけど、流石に無理だったんじゃないすか?」

「だなぁ・・・。まぁ、予想してたことだし・・・。」


ホテリエ達が一斉にため息を付いた。


「あのお嬢様、今は大人しく寝てるけどどうせ起きたら昨日と同じっすよ。あれが今日また一日あると思ったら気が重くなりますって・・・。」

「だよなぁ〜・・・。」


気の重くなった部屋に手袋をしめながら入ってきたのはライバルホテル、グランド・リリスのホテリエ、水瀬暁であった。


「おはようございます。本日東こより様の担当を命じられましたホテル・グランド・リリス専属ホテリエ、水瀬暁と申します。」


その場のホテリエ達が言葉を失った。

それもそうだ。普通あり得ないことが起きているのだから。


「本日一日限り、宜しくお願い致します。」

「・・・・・・えぇ・・あ、はいぃ・・・。」


後でやって来た昨日の新人ホテリエはドヤ顔である。


「では、ここのホテルの制服を貸していただけませんか?」

「えっ!あ、はいっ!!」


返事をしたホテリエは立ち上がり、水瀬の制服を取りに行った。水瀬もその人について行った。


「まじで・・・、水瀬・・・?」

「やばい、ちょーかっけー・・・。」


水瀬は女性だけでなく男性も虜にした。



「あ、あの、本当に水瀬さんですか・・・?」

「?はい。そうですが・・・。」


水瀬のために制服を取りに行ってくれた人が水瀬に話しかけた。この人も水瀬かどうか疑っている。


「まさか、本当に来ていただけるとは・・・。私、今、こより様の担当をさせていただいているんですが水瀬さんが良いとずっと言っておられて・・・。」

「それは大変ですね。」


見るからに疲れ果てた体をしていた。

水瀬も今まで随分とこよりに振り回されていたので良く気持ちがわかる。


「あ、制服はこちらです。」

「ありがとうございます。」


制服を受け取り、水瀬はすぐに制服になった。


カッターシャツに黒のベスト、黒の小さなひもリボン。ここのホテリエの制服は男女共に同じ制服のデザインである。


「男女一緒に制服はいいですね。男女差別がなくてとても良いです。」

「そ、そうなんです!!」


ライバルホテルの優秀なホテリエから高評価をもらって大層彼女は喜んだ。

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