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Wine・Red  作者: 雪白鴉
二章
14/70

12、借り出し

すみません、遅くなりました!!

「明日、一日・・・?」


白井からの電話は、思ってもいなかった内容だった。


ライバルホテルがライバルであるホテルの従業員を貸してほしいとはまずありえないことであった。しかも、水瀬を指名したという。


「支配人はなんと?」

『本人の意志を聞いていないから待ってほしい、と。』


支配人らしい返答である。

ひとまず、ライバルホテルの従業員の話を直接聞かなくてはならない。突然従業員を貸してくれなんて言いに来るホテルは全くをもって失礼ではあるが何か問題があるのかもしれない。


「宮河、ちょっと行ってくる。」

「わかった。」


水瀬は電話を切り、身なりを整えると早速ホテルへ向かった。


燦々と照りつける太陽を無視し、水瀬は走った。


「白井さん。」

「水瀬さん!!」


外で白井が水瀬を待っていた。暑いというのに。


「本当にお休み中すみません・・・。」

「いえ。仕方のないことです。」


申し訳無さそうに白井が頭を下げる。


水瀬は白井と一緒に支配人部屋へ向かった。


支配人部屋のドアを開けると、そこには困り果てた支配人と動揺しまくったライバルホテルのホテリエ数名が座っていた。


「遅くなりました、支配人。」

「おぉ!!水瀬!!」


ライバルホテルのホテリエが即座に立ち上がった。


(・・・新人か。)


水瀬は動揺の仕方、立ち居振る舞いからこのホテリエ達が新人であることに気づいた。先輩たちは手が離せず、新人たちが放り込まれてきたのだろう。


「ホテル・グランド・リリスのホテリエ、水瀬と申します。」


水瀬は綺麗なお辞儀をした。いくらライバルホテルの新人であっても礼儀は必要である。


(あちらは無いようだが・・・。)


新人だから仕方がないと指摘するのをやめた。



「ところで私になんの御用ですか?」


水瀬から質問をした。

新人のオドオドさは変わらずだが言いづらいと言わんばかりの顔をしている。


(言いにくいことなのか・・・?)


誰に対しても恐れずに正直に話す水瀬にとって言わなければならなくても言えない様な人は時間を無駄にする嘘つき鏡のようなものだ。


しばらくして決心がついたのか、ライバルホテルのホテリエが口を開いた。


「大変恐縮ながらあるお客様のお相手をしていただきたいのです!!」

「・・・お客様の、お相手・・・!?」


実に馬鹿な話である。普通他のホテルのホテリエを自分のホテルで働かせることなんて無いに等しい。これは派遣ということかもしれないがそれにしてはオドオドし過ぎである。


「ど、どういった内容で?」


水瀬の渾身の笑顔を乱すほどの威力である。大層な内容であるに違いない。


「じ、実は・・・あるお客様が水瀬さんを希望しておられまして・・・。」

「・・・はい?」


ホテルでホテリエの希望はあるものの、他のホテルで希望されるなんてあるわけがない。それほどわがままな客だということだ。


「お名前が東こより様で・・・。」

「東・・・!?」


水瀬と白井が反応した。

水瀬が頭を抱える。

東こより、日本の三大財閥の一つ、東財閥の愛娘である。

グランド・リリスが唯一警戒する客で水瀬が大好きな大変わがままな娘だ。一度水瀬に会い、担当をしてもらってからはこの辺りに来た時は必ず水瀬がこよりの担当をしている。こよりの指名である。


このことは案外有名で、東家から宿泊の連絡が来た時点から水瀬は一切仕事をしないようにし、東家が来るまで体力温存をさせられるほどだ。


「この時期になったら大抵来るので覚悟はしていましたがまさか違うホテルに行かれるとは・・・。」


ライバルホテルのホテリエの話によると、東家がグランド・リリスに連絡をしたのは昨日のことで、八城珠恵の後だった。


今日グランド・リリスは満員である。どこの部屋も空いていない。

東家が八城珠恵の先に連絡をしていたら東家はこのホテルに宿泊に来ていたであろう。


「八城珠恵様で満室になってしまいましたからね・・・。」


そういうことであればあの東こよりという娘はこんなぶっ飛んだことをするかもしれない。それほど水瀬は運悪く気に入られてしまったのである。


「水瀬さん・・・大変ですね・・・。」

「・・はい。」


支配人の許しも貰え、水瀬は明日一日、ライバルホテルに借り出されることになった。


火曜日更新出来ず申し訳ありません!!

多忙故、なかなか更新できません!!

一次休載するかもしれませんので、ご了承ください。

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