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Wine・Red  作者: 雪白鴉
二章
13/70

11、辛口の日

 お昼が過ぎ、水瀬はいろんなことを白井に任せ、半日の休暇に入った。


「では、あとはよろしくお願いします。」

「はい!」


水瀬は帰路についた。


すぐ近くのマンションの鍵を開ける。

小さなあくびをしながら部屋に入り、冷房を付けた。

梅雨明けだというのにこの暑さ。地球温暖化も進んだものだ。


洗面台へ向かい、黒のカラーコンタクトを外した。

鏡に映るのは虹彩も瞳孔も真っ赤な自分の眼。深くため息をつく。蛇口をひねり、水で手を洗い、うがいをした。


「・・・あつ。」


カーテンを開けると部屋が暑くなったのですぐに閉めた。


「真っ昼間から何をすればいいのやら・・・。」


何もやることがなく、ぼーっとしているとインターホンが鳴った。


「おーい、(あき)〜。居るかー?」

「・・・ん。何、宮河・・・。」


ドアを開けるとそこには宮河が立っていた。手にはタッパーの入ったレジ袋をぶら下げている。

水瀬は宮河を中へ入れた。


「水でいい?」

「できれば味がほしい。」


水瀬は冷蔵庫に入っていた麦茶を取り出し、ガラスコップに注いだ。


「で、なんの用?」

「なんの用って、お前、俺が邪魔みたいに言うなよ。」

「そんなこと思ってない。」

「はいはい、そうですか。」


宮河は麦茶を飲みほした。


「で、お前にプレゼント。」

「何を?」

「嫁の作った麻婆豆腐。」

「・・・。」


持ってきたタッパーは麻婆豆腐だった。しかも宮河の奥さんが作ったものだそうだ。


「いやさぁ、嫁がさ、辛いもの好きで麻婆豆腐辛くするんだよ。俺は中辛がギリギリ。」

「・・・で?」

「で、辛いの多く作りすぎたらしいからお前にあげに来た。」

「私は処理係か・・・?」


しかし、まだ昼食も食べていなかった。ちょうど昼食にするのもいいかもしれない。


水瀬は麻婆豆腐を電子レンジで温めた。


「宮河、今日休み?」

「おう。代休。」

「良かったね。」


温まった麻婆豆腐を取り出し、箸を用意した。


「なぁ、俺も辛いやつ食べてみたい。」

「無理じゃなかったっけ?」

「興味くらいはある。」


水瀬は小さなお皿と箸をもう一組用意した。

見るからに辛そうで、匂いからもう辛い。


「いただきます。」


水瀬は一応、宮河のために水を用意した。


「からっ!!」


あまりの辛さに宮河は絶叫した。

近くに置いてあった水を飲みほし、足らなかったのかまた水をつぎに行った。(水道水)


「・・・だからやめたほうが良かったのに。」


水瀬は坦々と麻婆豆腐を口に運んだ。

さすがの辛さではあったものの、水瀬にはちょうどよいくらいだった。


「宮河、美味しいよ。」

「・・・まじかよ・・・。」


水無しで水瀬は麻婆豆腐を食べた。

途中から白飯も加わり、見事タッパーの麻婆豆腐は完食された。


「ご馳走様でした。」

「お粗末様でした。」


水瀬は流しに食器たちを運び、すぐに洗い物に取りかかった。


その時、水瀬のスマホが鳴った。

宮河が確認すると、白井からの電話だった。


「お前、ついに女の子の連絡先ゲットしたのか?」

「そんなこと今は関係ない。」


水瀬は洗い物を止め、宮河からスマホを取った。


「もしもし。」

『あ、水瀬さん?すみません、お休み中・・・。』

「いえ。なにかありましたか?」

『それがちょっと面倒事がありまして。』

「面倒事?」


嫌な予感がしたが、水瀬は白井の話を聞いた。


『先ほど、ライバルホテルの従業員がやって来たんです。』

「・・・それで?」

『水瀬さんを明日一日、借りたいと。』

「・・・え?」







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