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Wine・Red  作者: 雪白鴉
二章
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9、連絡先

「教育係の水瀬です。」

「同じく教育係の白井です。」

「前期就職した西野です。」


七人の新人の前に並ぶ三人。新人の三人への第印象は意外にも良かった。ただ一人を除いて。


(前期ってことは一つ上の先輩か〜。優しそうな人で良かった〜。)

(女性の方、ものすごく美人だし笑顔が柔らかくて気軽に話せそう!女子仲間として沢山お話したい!!)


男性にも女性にも評判が良い。

しかし、


(なんだろう・・・。中央に立っている人、面接官におられたよなぁ・・・なんか怖い。)

(身長が高いからかなぁ・・・。めっちゃイケメンなんだけど圧が・・・。)


全ての新人に「怖い」という印象を与えたのは紛れもなく水瀬であった。極力水瀬と目を合わせようとしない新人たちにみなせは気づいていた。


(仕方が無いけど態度があからさま過ぎてこっちが傷つく・・・。)


水瀬でも傷つくことはある。


「それではホテルを案内いたしましょう。ついてきてください。」


まずはホテル内を知って貰う必要がある。

新人に説明をしながら進んでいく。


「ここがフロントです。フロントの仕事はフロントと呼ばれる役職があるため、その人たちが行っています。」


丁寧に教えているのは白井と西野。水瀬は怖がられているため、支配人から極力喋るなと言われている。


ホテルの造りをほとんど教えてやってきたのはワインセラー。


「ここがワインセラーです。」

「凄い・・・!」


このホテルにはワインのソムリエが居ない。ただ、このワインセラーは水瀬が主に管理している。


「そういえば水瀬さんってワインにお詳しいんでしたよね?どうしてソムリエじゃないんですか?」


白井が水瀬に聞いてきた。


「ソムリエってそんなに簡単になれるものではないですよ。合格率なんて30%前後ですから。」

「す、凄く低いですね・・・。」


フランスのソムリエは国家試験だが日本は民間試験。満二十歳であれば取得可能であるが合格率が低い。良い年で40%なのである。


ソムリエはブドウがデザインされた金色のバッジを持っている。それでワインの知識があるかどうかがわかる。


「このワインセラーは私が管理しています。皆さんの中にワインに詳しい方がおられたら是非、管理人になってください。」


ワインセラーを最後にホテルの案内は終了した。




「支配人、新人の目が私を見てません。」

「当然だ。」

「失礼ですよ。」


今日の仕事も終わり、帰り際、水瀬は支配人の下へ行った。そこで新人の目が水瀬を見てくれないという話をすると、支配人は当然だとさらっと返した。


「この調子だとお前の次にワインセラーの管理をする人が出てこないぞ。それ以前に、お前に対する態度がひどくなるかもしれん。」

「それは嫌です。」

「そりゃそうだ。」


長く話の続かない二人の間に、白井が飛び込んできた。


「水瀬さん、支配人、まだ帰らないんですか?もう真夜中ですよ?」

「今帰ります。では支配人、お先に失礼します。」

「あぁ。」


水瀬は支配人部屋から出て、白井と職員玄関から外に出た。


「今日は月が綺麗ですね。」

「そうですね。」


たわいもない話をしながら近くのバス停に着いた。


「白井さん、バス通勤ですか?」

「はい。」


白井はいつもバスで通勤をしている。車の運転が苦手すぎて未だに免許を取得できていない。


「結婚する予定ないのでバスで充分です。安上がりですし。」

「そうですね。」


近くの川が蛍の光に照らされる。


「私はすぐそこの家なので徒歩通勤です。」

「そうなんですか。初めて知りました。」


夜なのに明るい街。静かに通り過ぎていく車。うるさく鳴くセミの声。それ全てが夏だと知らされてくれる。


「暑いですね。」

「バス、まだ来ないんですか?」

「あと五分くらいです。」


白井がカバンの中からスマホを取り出して時間を確認した。


「そういえば、連絡先、交換してなかったですよね。最近良く話すようになりましたし。もし良ければ交換しません?」


白井に笑顔を見せられて断らない男などいない。


「いいですよ。」


水瀬もカバンの中からスマホを取り出した。


「わぁ、少ない・・・!」

「白井さん・・・。」

「あっ!ごめんなさい・・・!!」

「いえ・・・事実ですし。少し傷ついただけですので・・・。」

「ああぁー!!ごめんなさい!!」


水瀬のスマホに登録されている相手の連絡先が少なすぎて白井は本当のことを言ってしまった。


「はい。これで一人増えましたね!」

「・・・そうですね。女性の連絡先は初めてです。」


水瀬は少し嬉しそうにスマホの画面を眺めた。

連絡先の一番上には「白井夏希」と書かれてあった。


「西野さんとはもう交換してるんですね。」

「はい。去年、西野さんの教育係が私でしたので。」

「なるほどなるほど。」


少し経つとバス停の前に一台のバスが停まった。


「バスが来たので私は行きますね。また明日。」

「はい。」


白井は定期券を機械にかざし、バスの中に入っていった。

白井は席に着くと水瀬に笑顔で手を振った。それに気づいた水瀬は軽く手を振ってバスを見送った。


三日月の光が差す寝室。ベッドへダイブした水瀬はスマホを開いた。

スマホが鳴る。

白井が水瀬にスタンプを送ってきたのだ。


「何このスタンプ・・・。」


お疲れ様という意味を持つスタンプだということは分かるがその横にいる絵が茶碗に盛られた白飯であるため水瀬は少しだけ口角を上げた。


「私も面白いスタンプ、持ってないかな・・・。」


白井に対抗してお疲れ様という面白いスタンプを探したが見当たらず、普通に「お疲れ様です」と、文字を打った。


(これで五人目。)


水瀬は連絡先帳を見てみた。

宇山龍、宮河恭介、西野壱丸、鈴木幸助、白井夏希。

相変わらず少ないなぁと水瀬自身も思う。


(嬉しいのはなぜだろう・・・。)


たった一人、連絡先が増えただけなのに水瀬は嬉しく感じた。











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