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第九十話 宋王、憤怒する

 合従軍を迎撃する宋軍であったが、多勢に無勢であり、撃退されてしまう。その報告を受けた宋王は激怒し、臣下に当たり散らす。

 伝令は本軍に戻ると、自身の上官に当たる近衛隊長へ、戻った旨を伝えた。

 近衛隊長の晋鄙は、「伏兵に警戒しろ。この先の地形は伏兵が潜める」と警戒命令を出していた。

 その声が耳に入った信陵君は感心しながら、安心し、仮眠を取ろうとした。

 その時であった。


「敵襲だ! !」

 後方から突然の叫び声が聞こえた。

 盾兵が本軍の馬車を囲い、進軍が停止する。そして周囲の林や廃村の民家の物陰から矢を放ってくる宋兵と、矢を射掛けあった。

 韓軍は判断を誤り、戦線を離脱しようと、軍を素早く前方へ進ませた。

「敵軍は少ない! ここにいる兵はもっと少ないはずだ! とにかく逃げて、敵の背を襲うのだ!」

 すると次の瞬間、前方を走る騎馬が、突然姿を消した。まるで崖下へ落ちるかのように、一瞬にして、なん人もなん人も、姿が消えていく。暴鳶が事態を把握できずにいると、地面に穴が開き、馬車は穴へ叩き落とされた。崩れ去った地面には、数名の騎馬が倒れていた。穴はいくつか分散されているらしく、数名しかいなかった。

「落とし穴とは子供騙しな……! 敵が上から射掛けてくる前に、地上へ上がるのだ! 登れ! 登れ!」


 暴鳶軍が前線から突如姿を消した後も、魏軍の信陵君は賢明に守りを固めながら、敵を射殺していった。

「数の有利がある内は、危険を犯す必要はない! 奇襲で我らを散り散りにできなかった今、追い詰められているのは宋兵の方だ!」

「信陵君殿! 敵が退いていきます! 追撃しましょう!」

「盾に隙間を作るな! 馬車から射掛けるだけでよいぞ芒卯将軍!」

「……御意!」


 暴鳶が穴の上に登った時には、全てが終わっていた。 

 付近へ斥候を放つと、油が染み込んだ丸太や岩が用意されており、どこへ散っても攻められる状況だったことが分かった。

 信陵君は敵が一掃されたことを確認し、行軍を再開した。



 宋 商丘


 宋の首都、(しょう)(きゅう)では、宋王が前線の状況の報告を受け、憤慨していた。竹簡を臣下へ投げつけ、叫んだ。

「余を守ろうという士はおらぬのか!」

 ヨダレを撒き散らしながら、血走った目を剥き出しにして叫ぶ姿は、狂気に満ちていた。

 高音の奇声を上げながら暴れ回る王に、将軍の向高は報告した。

「華崇将軍の命令で、王へ忠誠を誓う忠義者の兵を各地に派遣し、敵と交戦させました。しかし……やはり多勢に無勢。いずれも返り討ちにされています。中でも、燕軍を襲った兵は一人残らず討たれてしまいました」

「この無能めが! 先祖が有能なだけで、全く役に立たぬ! 死んで詫びろこの愚か者!」

 宋王の罵倒に、動揺するような臣下は、一人もいなかった。これがいつもの光景なのである。ここにいる臣下らも、今更この王に諫言をしようなどと考えてはいない。ただ先祖の霊が眠る地で、可能な限り抗って、最期を迎えようと考えるのみであった。

晋鄙(生年不詳〜没:前257年)……戦国時代の魏の将軍。

信陵君の食客に撲殺される。

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