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第四八話 伊闕の戦い 二

 東周軍は魏と韓の援軍を洛陽に迎え入れ、秦と対抗する。

 洛陽 東周陣営


 周王は、伊闕での惨敗と洛陽南側の被害を目の当たりにし、戦意損失していた。 

 しかし東周軍を率いる太子、姫傑きけつは、焦らずに余裕の顔をしていた。

「父王、怯えることはありません。韓と魏は数日前に連盟し、両軍の兵は続々と、魏の陽城に集まっていると聞いています」

「いつだ、いつここへ来るのだ」

「陽城は目と鼻の先です。韓と魏は負け戦が続いており、我らの同盟は数ヶ月前より議論されていました。此度の新城からの襲撃に際し、彼らは急行してくれましたが、疲労困憊なのです。今しばらくまてば、兵力を合わせ、秦に抗えます。初手こそ敗れはしたが、まだまだ挽回はできるのです」

「それはまことか……では必ず、韓と魏は秦との戦いに参加してくれるのだな!」

「左様にございます。魏将公孫犀武、韓将暴鳶は、それぞれ五万の兵を動員し、必ず洛陽に入ります」


 姫傑のいう通り、数日の内に両国の将軍は洛陽に入った。しかし姫傑の想像と違い、両国の将軍の戦意は、あまりに低かった。

「暴鳶殿、そなたは函谷関を攻めた折り、武関でむざむざと敗戦し戦線を離脱したな」

「そうでしたかな、公孫犀武殿。一つの戦の一時いっときの撤退に過ぎぬのに、いつまでも覚えておられるとは……そなたらは余程の打撃を受けたとお見受けした」

「貴様……我ら魏は、函谷関を破り関中へ入り城を奪った。そなたらと違い、勇敢に結果を残したのだぞ! 一時の撤退などと……舐め腐りよって!」

「声高に叫んでおられるが、そなたの王も我が王と同じく、秦より土地を割譲してもらうことで、和平を飲んだ。つまるところ、そなたが怒りを向けるべきは我らではなく、判断を誤ったそなたらの無能な王へだ!」

「貴様! ふざけよって!」

 手を取り合って秦に対抗するという理想は、因縁により、難しいものとなっていた。そのことに気づいた姫傑は、南側の城壁を見つめ、ため息をこぼした。



 新城 秦陣営


 将軍白起は数日に渡り洛陽を目掛け矢を射掛けつづけていた。国中から集めたありったけの矢を、この場で使い切ってもいいと考えていた。彼には、戦の流れが全て見えていた。それはまさに神算といえるほどのものであった。

「数ヶ月前、韓を攻める前に放った間者かんじゃより、知らせが届きました。洛陽では、魏と韓が揉めているようです。馬鹿なものです」

 白起はいい切る前に、呆れ笑いをした。副将の任鄙も釣られて、「やれやれだ」といって、呆れ笑いした。

「任鄙将軍。きっと、この内輪揉めが殺し合いに発展することはないでしょう。敵は崖っぷちであり、そんな余裕はないはずです。ですから彼らは、最も被害が出る先鋒を、互いに譲り合うことで好機を逃すことになるでしょう」

「その好機というのは……なんのことだ?」

「我が軍の半分を関中に戻します。韓の守備軍は、手薄になった新城を攻める機会を失う……ということです」

赧王(生没年不詳)……周朝の第37代の王で、周朝最後の王。竹書紀年では、隠王と諡されている。姓は姫、諱は延。


昭文君(生没年不詳)……赧王の子。姓は姫、諱は傑。一説には周王として即位し、七年の治世を経て東周は滅亡したとも伝わっている。


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