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第四七話 伊闕の戦い 一

 総帥白起の号令で、秦軍は遂に攻撃を開始する。無謀な突撃に防戦一方になるが、奇策の実行を任された副官任鄙は、伊闕の崖を登る。

 秦王より与えられた兵は、九万にも上った。そのすべてが城に入ってから数日後、白起は遂に号令を下した。

「突撃だ。我らの強さを天下に見せつけるのだ!」


 白起の命令で、先鋒は伊闕に向け、激しく進んでいった。渡河するあいだ、崖の上から多くの矢が射掛けられ、水に足を引かれて上手く進めぬ内に兵が次々と討ち取られた。

 竜門とも呼ばれる険しい道は、人が攻略するにはあまりに難しいものであった。この道を攻め進められるのは、それは竜をも越える、神ともいえる存在のみであった。


 先鋒の半分が渡河をして陸地に上がっても、崖上からの矢は射掛けられつづけた。やがて先鋒の半分は進軍を諦め、徐々に新城の方へ、ゆっくり、ゆっくりと退いていった。

「敵が退いていくぞ! 秦の猿どもを射殺せ! !」

「奢り昂った野蛮な猿どもを殺せ! !」

 崖上の東周兵は、口々に叫び、崖下の秦兵へ猛攻を加えた。崖上の周兵の注意は、完全に崖下に向けられた。

 次の瞬間、足場が崩れて、東周兵は奈落の底へと転落して行った。

 動揺が広がる東周兵が背後を見ると、背後には、少し離れた箇所から発石車を用いて投石をする秦兵がいた。

「周兵どもを殺せ!」

 奇襲部隊を率いる将軍任鄙は、その攻撃で周兵の足場を崩し、精鋭の弓兵を皆殺しにした。


 予め崖下から離れて新城へ戻っていた秦兵は、崖下に落ちた東周兵が水面に叩きつけられ、また頭上から落ちてくる崖に潰され死んでいくのを、ただ見ていた。

「摎よ……お前の策が当たったな。我らは矢を防いでいただけなのに……難所を突破したぞ」

「ですがこれでは、もう大軍が新城から洛陽へと真っ直ぐと向うことはできませんぞ、驁殿。道は岩石で防がれてしまったのです……。白起将軍は……なにをお考えなのか……!」

 絶句する摎は、命令通りに新城の陸地へと戻っていった。


 崖上の任鄙軍は発石車を分解し、崖上へと少しづつ部品を運んだ。武具を持たず部品を担ぐ兵はまるで蟻のように、列を成して頂上へ運べば、また列を成して降りていった。

「周兵の注意を引きつけている内に、丸腰の我らはこうしてせっせと部品を運び、組み立てる。そして発石車を使って、見事に難所の敵を挫いた」

 任鄙は、白起の奇策と無謀さに、笑いが出た。それが呆れからなのか感心からなのか、自分にも分からなかった。

「とにもかくにも、ここでおおゆみを使えば……洛陽の城壁など、なくなったも同然だ。総帥の命令だ! 弩を組み立て、洛陽城の南門を矢で破るのだ!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 伊闕の戦い!? いよいよ伝説の幕があがりますね 先が楽しみです [一言] 公孫起こうそんき VS 公孫喜こうそんき うーんW
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