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第三九話 函谷関の戦い 十

 隴関、函谷関では死闘が続く。総帥羋戎は隴関にて奇策を用いて徹底抗戦をするも、函谷関の司馬昌は魏将に遅れをとっていた。

 投石器は通常、城壁や関の壁、やぐらを破壊するための攻城兵器であり、それを人に使うことはなかった。しかし、入れ知恵をされた凶暴な蛮族相手に、人道など無意味だと、総帥羋戎は考えた。

「秦は虎狼の国……追い求めるのは、勝利のみである! 副官……!」

「ここに!」

「敵を蹴散らし、人員の確保ができれば、あれを使え。ここにあるすべてのあれを……兵器ではなく蛮族めがけて使え」

「……御意!」


 将軍任鄙が敵本陣を攻めあぐねる中、総帥羋戎は、板楯族の攻城兵器を破壊し終えたのち、床弩と呼ばれる兵器を用意した。これは巨大な弓を台に固定し、数名の兵士が弦を引き、巨大な矢を数本同時に放つという兵器であった。

 こちらも通常は攻城兵器として用いるものである。総帥羋戎はこれに火を着け、数台同時に弦を引き、構えた。

「蛮族の強みは馬に乗り、死を恐れず突撃する蛮勇にある。城攻めは兵をよく調練し、同じ目的のために互いを信じ合い、役割を分担し初めて成し遂げられる攻撃なのだ。それは蛮族にはできぬ。蛮勇と馬の速さは城攻めには役に立たぬ。義渠県令よ……尻尾を捕まれまいとして、己の兵士を参加させなかったことが……そなたの敗因だ。……やれ!」

 床弩から放たれた巨大な火矢は、板楯族の体を貫き、串刺しにした。肉が焼ける臭いが周囲に立ち込め、赤黒い流血の海には、破損した体が浮かんでいた。


 将軍任鄙は弱体化した板楯族を徹底的に攻めた。

 玉が輝く剣を振り、手負いの板楯族を斬り、叫んだ。

「これは白家村への復讐!」

 背を向け逃げる板楯族を斬り、叫んだ。

「これは李雲らを追い詰めたあのときの復讐!」

 武器を振りかぶる板楯族を突き刺し、首を跳ねて叫んだ。

「これは秦を攻めるすべての敵への報復だ!」


 トサカのような被り物を付けた板楯族の指揮官は、馬を射殺され、落馬した。任鄙の命令で、逃走を諦めたトサカの男を捕縛しようとする秦兵だったが、トサカの男は自らの首を鎌で切り裂き、自刃した。

「トサカのようなものを身につけた複数の男は、いずれも指揮官のような立ち回りをしていた。今自刃した男が、この軍の総大将であったか……!」

「任鄙様! 蛮族が退いていきます!」

「総帥の命令だ。追撃し、再起を測れぬ程の打撃を与えるぞ!」

 こうして隴関戦線は秦軍の勝利に終わるも、一夜にして両軍ともに犠牲が激しく、勝利の為に負った傷はあまりにも深かった。また隴関は一部が破損し、その一帯も荒廃した。そのため、しばらくは復興のため、封鎖されることとなった。



 函谷関 合従軍


 他戦線と異なり、函谷関は陥落していた。司馬昌と異なり、魏将の芒卯、公孫犀武は将としての経験値が高く、数日の決戦を経て司馬昌の首を跳ねていた。

「父親の面汚しめが! 司馬錯大将軍であれば、かような醜態を晒すことはなかったのだぞ、このボンボンめ!」

 芒卯は司馬昌の首を前にし、嘲笑った。

 公孫犀武は、秦兵を掃討したのち、補給のため函谷関内部の城である塩氏城を陥した。そして、略奪の限りを尽くした。

「犀武よ、あとは本国からの援軍を待つ。あるいは秦との交渉を有利に進めるあいだ、ここに留まるのみだな」

「左様にございますな。函谷関という要害を失ったのであれば、虎狼の国も、牙や爪を失った……猫に過ぎませぬ!」

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