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第三六話 函谷関の戦い 七

 夜通し匡章軍を攻めつづける任鄙軍は優勢だったが、

孟嘗君の策略により、形成は逆転してしまう。

 武関 合従軍陣営 匡章軍


 孤立した匡章軍は生き残った二万の兵を武関前の平野に集め、円形の陣を敷いた。

 迎撃の構えをとり、不退転の意志を示したのである。

 この二年間で、両軍合わせて三十万の将兵が戦死していた。戦は通常、夜になれば一時中断となる。

 しかし合従軍の総帥たる斉の匡章の側に有力な軍勢がなくなった上に、その匡章もまた逃げずに戦うとなると、これがこの戦の集大成であることは、誰の目にも明らかであった。

 しかしそんな状況でも、匡章は余裕の笑みを浮かべていた。

「任鄙よ、そなたの軍は有能な将が多く、そなたの采配も見事であった。兵も秦兵らしく勇猛だ。だが……やはり我が宿敵には叶わぬな……。長かった。だがここまで私が秦の兵を多く殺したことで、この大計も遂に成し遂げられる。甘美な戦をしてくれたこと、感謝する。だが……ここがそなたの墓場となる!」

 逃げることを禁じられた匡章軍は、盾を地面に突き刺し、馳車を横たわらせ、矢を放っていた。

 近づけない任鄙軍は、昼間に使い過ぎた矢を使い切る程、矢を放って応戦した。

 夜が明ける頃、遠目に羋戎軍の騎馬兵が西北へ進むのが見えた。それからしばらくして、任鄙軍の攻撃の手も緩んできた。

「そなたの『力』より、私の『智識』の勝ちだ。つまりそなたと並び評された樗里疾に、私は勝ったのだ……! 孟嘗君は奴らを仲間に引き入れた!」


 任鄙は羋戎軍の伝令から、西北の隴関を板楯族が攻めたことを知らされた。その数は三万。羋戎率いる主力は任鄙軍の半分を連れて隴関へ向かった。

 隴関は、数こそ多いが弱兵ばかりで、とても板楯族の攻撃には耐えられそうもなかった。

 板楯族は騎馬民族のため、壁を攻めることは不得手であった。だが、羋戎には懸念があった。

「義渠県が関わっているのなら、攻城兵器も用意している可能性がある。隴関が危うくなれば、趙が函谷関攻めに加勢してくる可能性もある。秦は……袋のネズミではないか!」

「羋戎将軍! ご命令通り、我が隊の騎兵や馳車は大半を集めております! 隴関をなんとしても守り抜きましょう!」

「任鄙よ……そなたの少ない歩兵で、武関を守らせることになってすまない。韓将暴鳶には逃げられたが、もはや戦線復帰できぬほど、兵を殺してやった。だが合従軍総帥の匡章がいるのだ……!」

「匡章軍も満身創痍です。あとは……我が隊配下の公孫奭将軍を信じるしかありません!」



 武関 合従軍陣営 匡章軍


 武関を攻めるため、防御の布陣を敷いていた匡章は、将旗を振った。それを合図に、兵士らは陣を解き、足早に動きだした。

 威勢のいい掛け声を出しながら、盾を剣で叩き、公孫奭を威嚇する。そして終始公孫奭軍を圧倒しながら、威風堂々とした攻撃の布陣に変わった。

「再起不能になるまで……骨の髄まで砕いてやるぞ任鄙よ。将としてのそなたは、今日ここで死ぬのだ……。突撃だ!」

 

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