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第二五話 成都包囲

 綿竹県を攻撃した公孫起ら奇襲部隊。同地を攻略した将軍任鄙の軍勢は半壊状態だが、成都平原までたどり着く。

 下山した公孫起らは、綿竹県の真横の森林に出た。関所の外で交戦する音が響いている。中では、敵兵士が慌ただしく走り回っていた。

「よいな馮勝。ここにいる全軍で、綿竹県を制圧する」

「しかし懸念があります」

 そういったのは、ごうであった。

「下山するまではみなあなた様に従いました。しかし今となっては、兵士は、死を恐れ逃げだす機会を伺っております」

「それは私も危惧していた。だが安心しろ。……兵に伝えよ、綿竹県の食べ物、女、財物は、すべてお前たちのものだ。綿竹県を陥し、手柄と褒美を手にするのだ……と!」

「そんな勝手なことをして、大丈夫なのですか……?」

「負けるよりよい。元より秦は虎狼の国。敵対したのなら、蹂躙しても、かまうまい。秦の国だが、ここは流刑地であり野蛮人が多い。法に従わぬ外道どもは殺し、彼らの財は奪っても構わん!」

 公孫起の命令により、綿竹県は関所の内外から攻撃を受けた。褒美欲しさに戦う兵士の士気は高く、綿竹県は間もなく陥落した。



 成都 蜀煇


 蜀煇は、報告を受け激怒していた。

「左吉! そなたの策により前線の任鄙将軍を足止めするはずが、兵こそ挫こうとも、その攻撃の手は緩まぬではないか! 楊奐は敵軍を何度も防ぎきり、返り討ちにしておるぞ!」

「司馬錯の軍は、やはり手強い名将を従わせておりますな……山林にて虎を意のままに操りましたが、それでも防ぎきれませんでした。司馬錯の本軍も、東よりこの地へ攻め入っております。もはや……もはや……」

 左吉の妖術などというまやかしを頼った自分が、間違っていた。そう後悔した蜀煇だったが、担がれて戦を起こしたからには、戦い抜くしかないのである。 

「この成都も戦になるのか。任鄙将軍の軍勢は少なくなったが、ついさっき綿竹県さえもおとしたようだ。各地で、私の命に従わぬ者や、山へ逃げ山賊となる民も出ていると聞く。もはや……戦すらできぬやもな」

「蜀候様……」


 司馬錯の本軍は、順調に成都まで進んでいた。遠回りであったが、将軍任鄙とほぼ同時に、成都平原まで到達していた。

「軍は四つに別れ進軍していたが、ここまでたどり着いたのは……私のみか」

「将軍、任鄙将軍が半壊ながら到達しております」

「ほう……やりよるな。しかし半壊とは」

「致し方ありませぬ。将軍は仁をもってこの地を治めたゆえ、民に信頼され、無血開城や早期降伏もございました」

「この要害の地で全ての敵と戦って来たということは、任鄙将軍は豪傑だな」

 将軍任鄙、大将軍司馬錯の軍勢は、成都を包囲した。

 秦王軍側は周囲の警戒も十分で、武器兵糧も豊富であった。大将軍司馬錯は城へ降伏勧告を出しながら、兵らに昼夜を問わず大声を出させ、圧力をかけつづけた。

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