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第百三八話 中大夫と食客

 大梁を包囲した魏冄は、魏王に降伏か総攻撃かを迫る。和平を望む魏国丞相の魏斉は、中大夫の須賈を魏冄との会合の席に着かせる。

 同年


 魏を包囲した魏冄は、魏王に、和平の為の会合に出席するよう求めた。しかし魏王は病を得たからと出席を拒んだ。それが時間稼ぎであると悟った魏冄は、投降か滅亡かを迫った。

 数日後、伝令が大梁の門より出でて、魏冄の陣営に入ってきた。

「魏国丞相魏斉に代わり、穣候にご挨拶申し上げます。此度は、我が魏王様が薨去なさいましたことをお伝えすべく、参りました……!」

「なに、薨去しただと?」

「左様にございます。つきましては国を上げて喪に伏くします故、しばし休戦を求めたく……」

「ふざけるな! 詭弁を弄して助かろうなどと!」

 魏冄は激昂して使者を蹴飛ばした。


 翌日、魏冄は総攻撃を加える為に兵を整えた。今にも攻撃命令を下そうとした時、再び、使者が陣営を訪れた。

 使者は、魏の中大夫である須賈しゅかが、太子に変わって魏冄との会合に臨む旨を、伝えた。

 魏冄はそれを受け入れ、副将の王稽を引き連れ、大梁の門まで訪れた。

 するとそこには、須賈を名乗る男がおり、魏冄に対して拱手をして、礼を示した。

「須賈殿、そなたの誠意は十分に伝わった。しかしなに故、魏斉殿は会合に参加なされないのだ」

「新王の践祚に関する取り決めに忙しい故、腹心である私を派遣することで、礼を示したのです。さて、立ち話もここまでにしましょう。どうぞ城内へお越し下さいませ」


 魏冄は城に入り、この大梁という街のその巨大さに驚嘆した。

「中原の城はいずれも大きいが、首都ともなれば、かように巨大なものなのか。内側から観れば、尚のことそう感じる。これでは確かに、城の一つ一つの力が強くなり、王も影響力を保つのに苦心する訳です」

「左様。中原を支配するというのは、容易ではないのです」

 好奇心を満たすこの大梁を見て、魏冄は、中原にも封地が欲しいと思うようになった。

 その為にも、魏は必ず手に入れなければならないと、そう思った。

 宮殿に入り、魏冄は、須賈らと会合を始めた。

 すると、須賈の食客の男が、酒と肴を運んできた。しかし男は足をくじき、酒の瓶を割ってしまった。そればかりかその酒は須賈にかかり、須賈の面目を潰すことになった。

 食客を叱りながら手を上げる須賈を、魏冄は静止した。そして、須賈は冷静さを取り戻し、食客を部屋から追い出した。

「これは、粗相をしてしまいました。なんとお恥ずかしい……」

「お陰様で、緊張が和らぎましたぞ」

 そういって二人は会合を続けた。そのあいだ魏冄は、先程の食客のことが、妙に頭から、離れなかった。

須賈(生没年不詳)……魏の人。魏の昭王に仕えた。

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