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第百三六話 魏冄の思惑

 鄢を水没させたことで、白起から人心が離れたことに付け入り、魏冄は自身の影響力を強めるべく行動する。

 同年 咸陽


 秦王は南郡の統治の進捗を白起から聞き、概ね満足していた。しかし鄢の跡地だけは、全てが破壊された瓦礫の山となっており、復興が進まなかった。秦王は、鄢の復興を諦めるべきだと思い、同地の移住者を、上庸へ移した。


 魏冄は、秦王が鄢の地の復興を諦めたということを知り、企みを企てた。

 この頃の魏冄は、失った自分の勢力を取り戻そうと躍起であった。老いて益々盛んといえる程、その行動には余念がなかった。

「戎よ、この頃の秦王は、巴蜀の統治を上手く進めているようだ。しかしそれはあくまで、亡き司馬錯が遺した道筋を辿っているだけのこと。南郡では、鄢という旧都があった広大な土地を、活かせず諦めた。これもは白起を徴用し、鄢の水没などという悪手を打たせたからだ」

「兄上、私はこう思います。白起は兄上が取り立て、その多大なる功績で兄上の権勢を高めました。しかし余りに功績が積み重なり、兄上の下を離れていました。事実として王にも心から信頼され、軍を完全に掌握しています。しかし将兵の信頼も、鄢での虐殺で、揺らいでいます」

「その通りだ。今なら、白起に奪われた私の手の者達を、取り返せる。有能な将兵と共に宴を催し、白起への忠誠を、私への忠誠にすげ替えるのだ」


 前276年(昭襄王31年)


 秦王は朝議にて、次なる攻撃先について、意見を求めた。意見はバラバラであった。

「傷が癒えぬ楚を追撃だ!」

「いいや楚はいつでも攻められる。今こそ趙を叩きましょう!」

「燕や斉が盛り返す前に倒すべきだ!」

「それでは統治ができぬ。武官はもっと頭を使いたまえ!」

「なんだと、口が上手いだけの百官が! 文字だけで人を統べられると思うなよ!」

 秦王は「そこまでにしろ」といって、口論を静止した。秦王は思案し、魏を攻めることとした。理由は、魏では孟嘗君が病に倒れ、混乱が起きているからであった。

「我が軍は幾度となく魏を攻め、その地を切り取ってきた。なれど決定打はまだ打ち込めていない。余と因縁深き孟嘗君が病に伏した今が、魏を攻めるまたとない好機である。誰を総帥に立てるべきか、皆の意見を求める」

 秦王は白起を総帥に登用するつもりであった。しかし軍中や百官達からは、白起ではなく魏冄を立てるべきという意見が、多かった。

 魏冄は、したり顔であった。秦王は魏冄に一泡浴びせられたような気分であった。

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