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第百三四話 地上の天帝

 白起は南郡にて楚人に秦人との子供を産ませる為、秦が夏の系譜であること利用する。秦王は白起を讃えながら、自身を夏の伝説上の王に準える。


 咸陽 秦王


 秦王は、南郡統治の経過の報告を受け取り、目を通していた。

「武安君は戦において傑物であることは、誰もが知るところだ。だが統治においても、これ程までの功績を上げるとはな。唐姫よ、余は白起の存在が好ましくて堪らん」

「武安君はどのような功績を上げたのですか?」

「秦の存在を南郡の人間に受け入れさせ、治安を安定させているという。他にも、期間を設けて税を免除し、農業や商業を活性化させようとしている。これなら、戦で荒廃した土地を開墾させ、近い内に高い税収を確保することができるであろう。それに、罪人を現地の人間と結ばせ、子供を作らせることができたというのだ」

「子供を……ですか? 楚人は秦人を嫌っているのではないのですか?」

「武安君は嘗て、伊闕にて周を破り洛陽の九鼎を得た。夏の正当後継国となった我が秦は、遠い先祖が繋がっていると、納得させたのだ。それに、楚人から夏人に成れるというのは、名誉だ。武安君は……つくづく頭のいい男だと思わされる。巴蜀の次の郡守には、司馬錯の副官であった張若を推挙している。巴蜀は流刑地であり罪人が多い故、その主は軍の人間が適任であるといっている。百官も朝議にてそう申しておった。余は、これを受け入れようと思う」

 唐姫は、秦王が今まで以上に武安君白起を信頼し、心を通わせていると感じた。


 秦王は気分が良いからと、寝台から出た。庭のコオロギの鳴き声を聞きながら、心地良い夜風に打たれた。

「余は夏の王であり、始祖の王なのだ」

 恍惚とした秦王は、そういって笑った。

「武安君は水害を起こし、鄢を水没させ、見事にその水を流して跡地に人を住まわせた。洪水を治め天下を人の住める土地にした夏の始祖王、と同じだ。つまりその主である余は、神と同義である」

 秦王は夜空を見上げ、満点の星空を眺めた。

「あの星々と、秦の地図は同じだ。あの営室(ペガサス座)は咸陽宮であり、渭水橋は閣道(カシオペア座)だ。余が天下を統一した暁には、あの極廟(北極星)の場所に余の陵墓を築いてやろう。そして余は……地上の天帝として、最も神聖で偉大なる存在として、君臨して見せよう」


 秦王は朝議にて、張若を巴蜀郡守にする旨の勅を出した。

 南郡の統治は、当分のあいだ、武安君が担うことになった。そして張若は巴蜀郡に向かい、李冰と共に、巴蜀の統治を開始した。

3月14日のメンテナンスによって、投稿が一日遅れております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 白起の軍政が巧みであること。 [一言] 夏王朝の子孫であることを強調して、楚の民を同化させると。情報は、力なり。 燕が西周王朝の末裔を主張することで、自分は聖王の末裔だぞとアイデンティテ…
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