表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/194

第百十八話 趙の名士

 和氏の璧と城の交換の為、趙王は、秦へ璧を持っていく使者を選定する。璧を奪われ殺される恐れから誰が適任か決めかねていると、藺相如が名乗りが上げる。

 紀元前280年(昭襄王27年) 邯鄲


 趙王は三晋同盟の盟主である魏の孟嘗君と協議し、和氏の璧と秦の城の交換に応じることで、軍を退かせることにした。

 そこで趙王は朝議を開き、誰を使者に向かわせるかについて、意見を募った。

「交換に応じて使者を向かわせるなら、互いに兵を引くことはできるだろう。しかし、問題は秦が、誠実に璧と城の交換を行うのかということだ。璧を持って秦へ向かえば、使者が殺され、璧を奪われるのではないか。楽乗将軍は、誰が適任と思うか」

「恐れながら、私は武人ゆえ、外交は苦手です。妙案等、浮かびませぬ」

「左様か、では廉頗将軍はどうだ」

「策など無用です。交換に応じず、戦を続けましょう! 敵の兵糧が尽き次第、攻めれば良いのです!」

「確かにそれも一理あるが……文官の者、妙案はないか。どうだ?」

「恐れながら……」

 そういって奥の方で、名乗りを上げる者が居た。空耳かと思ったが、再び奥の方から、「恐れながら……申し上げます」と声が聞こえた。

「近う寄って申せ、名をなんと申すのだ」

「私は、藺相如と申す者です。恐れながら、申し上げたきことがございます」

「ほう、聞かぬ名だが、心当たりがあるのなら、申してみよ」

 藺相如と名乗る男は、妙に目が座っている男だった。

「私自らが、璧を持って使者として秦に入ります。秦王が交換に応じるようであれば璧を渡します。交換に応じず璧を奪おうとするのであれば、私は、璧を守り抜きここへ戻って参ります」

 藺相如はそういってのけた。簡単にいい切ったこの藺相如という男を、廉頗は睨みつけた。「世間知らずの大口叩きめが」と、心の中で罵った。

 趙王も、訝しむ顔をしていた。だが、その顔は次の瞬間には、霧が晴れたように明るくなった。

「藺相如か、そなたの名を以前も聞いた気がしたが思い出した。かつて臣下が、そなたの知勇を讃えていた。余もそなたの言葉を聞き、その大胆さや度胸に心を惹かれた。そなたにこの件を、任せたいと思う」

「御意、璧をまっとうして参ります」

 趙王は、藺相如を咸陽へ連れていく為、秦軍に兵を引くように求めた。

 秦はそれに応じ、軍を引いた。

 趙もそれに合わせて軍を引き、藺相如を咸陽へ向かわせた。 


 廉頗は苛立っていた。藺相如という、戦をしたこともない男が、秦を舐め腐っている。秦の強大さや、残忍さを知らない人間が、璧を完うするなどと大口を叩いたことが、癪に触ったのだった。

「舌先三寸で趙王を説得し、秦王も口八丁で黙らせるつもりのようだが……あぁ腹立たしい。大言壮語する輩など……秦で殺されてしまうぞ……!」

 廉頗は苛立ち、物に当たり散らした。

藺相如(生没年不詳)……戦国時代、趙の政治家。完璧や刎頸の交わり等の故事で有名。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 藺相如の登壇。 [一言] 藺相如と廉頗の逸話も大好きですし。長平の戦いでも、廉頗が持久戦を維持していたら、趙の衰亡も遅れていたのではと思う。 白起は、現代に生まれてきても軍人として大成し…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ