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第百十四話 同盟破棄

 秦王は朝議にて趙攻めを決定する。白起は軍を率いて趙に侵攻するも、孟嘗君率いる軍勢が立ち塞がる。

 魏冄は朝議の後、弟の羋戎と会い、朝議を振り返っていた。

「兄上、私は驚きました。しばらく病に伏して朝議に参内できなかった内に、秦王様が兄上に、まっ向から意見をするようになっているとは」

「この頃はよくあることだ。しかし今朝の朝議は、良くない事態が起きていた。それは秦王様のことではない。白起だ」

「私も気づきました。白起が完全に軍を掌握しており、参内した全ての将軍が、白起の意見に異を唱えませんでした。最早、将軍らは、私や兄上よりも白起の命令に従う存在になったのではないでしょうか」

「はぁ……秦王様は間違いなく、趙攻めを命じる。白起が趙を攻め、成果を出したのなら、朝議での私の影響力は著しく低下するであろうな」

「それは、なんとしてでも避けねばなりませんな」

「羋戎よ、そなたは私の味方でいてくれるな?」

「勿論です。我らなくして、秦国は今日の繁栄を築けませんでした。我らは功臣であり、更に爵位を上げて、栄達して然るべきなのです」


 同年、秦王は白起を総帥とし、趙への侵攻を命じた。長年続いた同盟を破棄し、遂に趙へも牙を剥いたのである。

 白起は数日で国境の二城を難なく陥し、奥へと進んだ。

 しかしそこに、孟嘗君が立ち塞がった。

 孟嘗君は斉を追放された後、魏に身を寄せていた。孟嘗君は白起の侵攻を予測し、趙、魏、韓による三晋同盟を結び、迎撃の備えをしていたのだった。

 白起は三晋同盟の大軍を目の当たりにし、副将の胡傷に愚痴をこぼした。

「孟嘗君は、かつて合従軍を組織し我が秦国へ侵攻したが、敗れて逃げ去った。自分の土地ならば勝てるとでも思っているのだろうか」

「手を結んだところで、我らの敵に非ず。しかし国尉殿。私には懸念があります。孟嘗君は多数いる食客を、間者として各地に放っています。我らの背後を、襲われはしませんでしょうか」

「背後というのはつまり……咸陽か。間者が仕掛けてくるとすれば、離間の計か……あるいは、停戦させるような外交をしかけて来るやもしれぬな」

 白起は、孟嘗君が政の面で秦王を攻めれば、戦場いくさばでどれだけの敵を斬ろうとも、勝てないと感じた。孟嘗君は天下の名士であり、機会さえあれば秦王に浸け入り、咸陽へ手先を送ることもあるはずである。

「胡傷、此度の戦地は、趙の地ではなくなるやもしれんぞ」

「どういうことでしょうか?」

「斥候を放つのだ。三晋の南北の端にて、敵軍兵力が薄い箇所を速やかに報告させろ。重装騎兵の精鋭のみを率いて、その地を攻め陥す。今は少しでも多くの土地を奪うことにのみ専念するのだ」

「御意!」

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