表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/194

第百三話 斉西の戦い 四

 済水の決戦で討伐軍が瓦解し、討伐軍副将の田達は臨淄での籠城を決意する。伝令より田達の意向を確認した斉王は蘇秦の考えを聞こうとするも、潜伏していた孟嘗君の食客が斉王に、蘇秦の裏切りの可能性を伝える。

 大将の逃亡により混乱を極める斉軍を、副将の田達はまとめあげた。

「伝令よ、副将達へ伝えろ! 逃げても合従軍に殺されるだけである故、集結し臨淄へ戻るのだと!」

「御意!」

「一刻も早く行くのだ! 兵一人の逃亡はそなたの身内の首で穴埋めしてもらうからな! 早う行けい!」

 田氏の兵は、比較的素直でよく命令に従うというのが、田達の認識であった。しかし大多数の田氏も、他の将兵と同様に逃げ出していた。

 田達は他の伝令を呼んだ。

「そなたは臨淄へ早馬として向かえ! そして斉王様と蘇秦丞相へ伝えるのだ! 我が軍はもはや軍の体裁を成しておらぬ故、臨淄で篭城し、離間の策で合従軍を退ける他ないと!」



 臨淄


 数日後の夜に、斉王は早馬からの急報を受け取った。

 合従軍の侵攻をどこか楽観視していた斉王は、安眠を邪魔する伝令に、苛立っていた。

「早う内容を伝えろ。余は眠たいのだ」

「申しあげます! 斉軍精鋭を連れた将軍田觸、済水にて燕将楽毅に討たれました。また副将田達より、軍は瓦解した為、臨淄に篭城すべしとのことです」

 報告を聞き、斉王の眠気は覚めた。

「余は合従軍を烏合の衆であると侮っていたようだ。燕を除いて他の国は、まだ国境近くの城を数個陥落させているだけに過ぎん。本軍が到着すれば……撃退できるなどと高を括っておった……!」

 斉王は、翌朝の朝議を待たずに、文武百官を招集し、対策を寝る必要があると考えた。

「近衛兵、まず丞相を呼べ。寝ていても叩き起すのだ!」

「御意!」

 王宮の近衛兵が丞相府へ到着し、門を叩いた。すると、事態は急を要するということを理解していない門番が、呑気な態度で現れた。

「王命により丞相様に会う。通せ」

「な、なにがあったのですか」

「一大事なのだ、さぁ早く」

 門番はなにやら緊張した面持ちで、声を殺して、近衛兵へ耳打ちした。

「蘇秦丞相に前線の状況をお伝えしては行けません。王宮へお戻りください」

「なにを申すのだ。私は王命を受けているのだぞ」

「私は孟嘗君薛公様の食客で、今は門番をして蘇秦丞相を監視している者です。蘇秦丞相はこの頃、妙に親しいお気に入りの女給とわざとらしく喧嘩をし、暇を出されました。その事について薛公様は、合従軍は蘇秦の企てである故、被害を被らぬように逃がしたのだとお考えなのです」

「なに……薛公様がそのようなことをいっていたのか……? これは一大事だ」

 近衛兵はそのまま王宮へ戻り、門番の話をそのまま斉王へ伝えた。

「事実であれば一大事であります故、一度帰還した次第であります」

「孟嘗君……田文よ。国を追われてもまだ、余の国を想ってくれていたのか……。蘇秦を頼れぬなら、余は誰を頼ればいいというのだ……」

 斉王は迷い、朝議が行われるまで、なにができるのかを思案した。

※投稿が遅くなり申し訳ありません

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ