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第百一話 斉西の戦い 二

 秦軍を率いる白起は、斉との国境を越えた。また同時期、燕軍を率いる楽毅は、済水にて斉軍と会敵する。

 斉国 白起


 秦軍を率いる白起は、斉との国境を侵した。燕軍と連絡を取り合っていた偵察兵が野営地へ戻り、楽毅が鬼神の如き勢いで城を陥していっていることを知った。

「垣邑で蘇秦殿の隣にいたあの将軍か。あの威風堂々たる立ち振る舞いには、非凡な才を感じざるを得なかった。その戦いぶりを、間近で見てみたいものだ」

「旦那様がそこまで尊敬されるお方の戦、齕めも見てみとうございます」

「先を急ごう。このままでは、我が軍が合流する前に、臨淄が陥落するやも知れぬぞ」

 そういうと白起は笑った。しかし次に届いた報で、彼の顔から笑みは消え去った。

「報告! 燕軍が占領した城で虐殺を始めているとのことです!」

「なんだと……それは実か?」

「偵察兵が城の付近にある山の上から、放火されていることも確認しております!」

「そうか……相分かった……」

 白起は頭を抱えた。

「これでは斉の地を統治するのは難しかろう……」

「なに故ですか……?」

「合従軍は斉人にとって、不倶戴天の敵となった。降伏しても死ぬと分かっていれば、斉軍は死に物狂いで戦う死に体となる……斉国中が死屍累々となってしまうぞ……!」

「旦那様が尊敬する楽毅将軍ならばきっと、後の統治のことも考え、略奪行為は厳罰に処すでしょう。しかしその罰をも越える憎悪が、燕人にはあったということなのでしょうね……」

「我が方は捕虜を大切に扱い、燕軍とは異なると知らしめねばならん」



 斉水 楽毅


 城を陥しながら、破竹の勢いで進軍を続ける燕軍の本軍を率いる楽毅は、済水と呼ばれる川の近くに野営地を築いた。

 そこは斉の中心にあり、また川の近くに開けた大地が広がっている為、敵軍が待ち構えている可能性がある地域でもあった。

「この辺りが、臨淄からの道のりで考えれば、最も軍を展開し易い位置か。地図があるとやり易い。感謝しますぞ……蘇秦殿」

「報告!」

 突然、幕舎の中に伝令が入ってきた。楽毅は足を洗おうと、桶にお湯を入れていた。従者が伝令の無礼を責めるも、楽毅はそれを諌めた。

「急報なら仕方ないだろう。敵は待ってはくれぬ。報告を続けよ」

「はっ! 報告です。済水西側にて、斉軍を確認しました。率いているのは田觸でんしょくで、副将は田達。いずれも、斉王や孟嘗君と同族の将軍です」

「さすがは、斉の王室を乗っ取った田氏だ。軍も政も全て掌握しているのだな。当に田斉と呼ぶに相応しい国だ」

 楽毅は桶で足を洗うことはなく、軍に命令を発する為、副将らを招集した。

 副将らが幕舎に集まった後、楽毅は軍令を下した。

「済水を渡河し、斉軍を攻撃する。敵は大軍だが、こちらとて精鋭だ。一切の容赦は要らぬ。散々に打ち破ってくれようぞ!」

済水の戦い……前284年に燕軍と斉軍によってら斉の済水西側で行われた戦い。

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