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自覚してしまえば止まらない

 翌日、ジョシュアは無事に全快した。

 起きるといつものようにパンとふわふわで完璧な形のオムレツ、サラダが食卓に2人分乗っており、後は一緒に食べるだけの状態になっていた。 


「おはよう」


 エプロンを外して、ジョシュアが食卓に座った。

 目が合うと、昨日のことが思い出されて私は恥ずかしくなり、さっと目を逸らした。


「どうかした?食欲ない?」

「う、ううん。大丈夫。お腹、すいてます」


 ギクシャクする私に対して、ジョシュアはいつもの涼しい顔だ。

 いや、いつもあんな風に迫られてしまえば、私は間違いなくオーバーヒートして倒れる自信がある。

 あるけど、まるでそんなことなかった風なのはどうしてなの?私は昨日眠れないくらいにずっと考えっぱなしだったのに。


 サラダを咀嚼しながらちらちらと見てくる私に気づいて、ジョシュアがくすりと笑った。


「なぁに?」


 落ち着いた低い声が、いつもと違い色気を含んだものに聞こえて、私は慌てて首を振った。


「なっ、なんでもない!」

「そう?変なベティ」


 向かい側に座っていたジョシュアは食事を終えて席をたつと、私のところへ来て屈み、額と額をくっつけた。


「熱はないみたいだね。うつったかと思った」

「……!!」


 キスされるかと思った。声にならない叫びを呑み込んで、ジョシュアを思わず睨む。

 睨まれた本人は、目を細めて笑い、私の頭を撫でて食器を洗いに行ってしまった。


 私も自分の食べた後を片付けに流し場に持っていくと、皿を手渡す手がジョシュアに触れて思わず引っ込めてしまう。


「あっ……」


 皿は落ちる前にジョシュアが魔法で止めた。


「ご、ごめんなさい」

「……ベティ。もしかしてだけど、僕の事意識してるの?」

「う」


 核心を突かれて気まずくなる。

 ジョシュアは皿を回収し、流し場において、濡れた手をタオルで拭いてこちらへ向き直った。


「ベティ、昨日は虐めてごめんね」

「えっ……?」

「僕が急にベティに迫ったから、吃驚したんでしょう。安心して、ベティが嫌がるなら絶対にしないから」


 近頃はくるくると表情を変えていたのに、久しぶりの真顔だった。

 これはジョシュアが、顔に出ない様に隠している時の顔だと気づいて悲しくなり、私は決心した。

 うまく伝えられるかわからないけど、やってみよう。


「あのね……あの、私考えたの」

「なぁに?」

「ジョシュアにキスされるの、たぶん、嫌じゃないわ……」


 真顔が驚いた顔になって、それから破顔した。


「ベティ、それって……」

「だけど心臓が壊れそうだからしたくない!!」


 ジョシュアがずっこけた。


「あのね、そう言われたらキスするに決まってるでしょ」


 近づいてくるその手を、私の結界が阻んだ。


「やだっていってるでしょ!」


 いくらジョシュアでも、私の結界に向かって攻撃したりはできないし、魔力量だけは私の方が上なのだから、解除もできまい。

 唖然とする顔をみて、私はふふんと笑った。


「そう、そっちがその気ならわかったよ。ベティがお願いキスしてくださいってなるようにすればいいんでしょう」

「えっ」

「覚悟しとけよ」


 皿洗いに戻っていったジョシュアの背中を見て、身体がかあっと熱くなった。

 もしかして私、変なスイッチを押してしまったのでは。



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