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廊下

作者: たけ

私はあの廊下が今でも怖い。


私の家は古い。勝手場と応接間を

除けばほとんどが畳がある部屋で、雉の標本やよく分からない坪に気味悪い日本人形まであった。

現代風の綺麗な家に住んでいる友達のところへ遊びに行くたびに私は自分の家がますます嫌いになった。


そんな私の家には一つ特徴がある。ほとんど使わない部屋がいくつかあり、家の半分近くは夜に真っ暗になるのだ。その部屋の真横を通る廊下が、どうも気味が悪いのだ。玄関から入りすぐ右に曲がると廊下が続き、途中で左に折れ曲がりトイレに続く。要は逆Lの字になっているのである。そのため、トイレからは廊下の突き当たりまでが見えるのだ。

しかしそれは昼間の話で、夜になると話が変わる。暗くて突き当たりまでが見えないのである。

「暗闇の中に何かいるのではない

か」

そんな恐怖を抱えながら過ごしていた幼少期。小学生になっても1人でトイレに行けなかったのである。

しかし、人とは成長するもの。中学生になってからは次第に廊下のことは気にしなくなっていった。


中学2年生の時だった。蝉が五月蝿さい8月、部活と塾で忙しかった私は、家に帰るのが夜の9時を過ぎる日もあり、晩飯と風呂を済まるとすぐに布団についていた。

そんな日々を過ごしていたある日の夜、深夜二時半頃である。珍しく夜中に目が覚めた。トイレに行きたくなったのである。寝る前に済ましたはずなのだが、どうも我慢出来そうになく、渋々トイレに向かうことにした。前日降った雨の湿気で廊下はひんやりと湿っており、裸足で歩いていた私の足裏にほこりがついているなと思いながらもトイレにたどり着いた。

便器に腰掛け、用を足しているとき、ふと顔を上げた。闇。幼少期の私を怖がらせたあの闇が広がっていたのである。そう、ドアを閉め忘れていたのだ。中学生になってからは廊下の照明をつけてから夜のトイレに行くようにしていたので、真っ暗な廊下は久しぶりに見たのだ。なんだか気味悪くなり、はやく寝室に戻ろうと立ち上がったとき、ふと私の視界が蠢く影を捉えた。廊下の突き当たり。


「何かいる」


闇に包まれた廊下の中で影など分かるのかと思うかも知れないが、確実に"そこ" だけ一層暗くなっているのだ。

私は開いているトイレのドアノブに手をかけたまま立ち尽くしていた。手汗でドアノブが湿る。背中に汗がすっと垂れていくのが分かった。

トイレを出てすぐ右に曲がると寝 室へ続いている。私はそっと前に足を踏み出し、寝室に繋がる右へ曲がろうとした。ピタリと。その時、今まで蠢いていた"それ"は動きを止めた。まるで、こちらの存在に気づいたかのように。

「ヤバい」

反射的に走り出していた。何かが

追いかけて来ているような気がする。雉の標本、よく分からない坪、不気味な日本人形の横を無我夢中で走り抜ける。もの凄い勢いで寝室の障子を開けてピシャッと閉めたと同時に布団へ逃げるように飛び込み、顔をうずくめた。何かに障子の外から見られているような気がして堪らなかった。結局、その晩は一睡もすることが出来ずに、朝を迎えたのであった。


あの暑い夏の夜、私が廊下で見たものは一体何だったのか。今でもそれは分からない。

今は、大学生になり、アパートで独り暮らしをしているので、しばらくあの廊下を見ていないが、暗闇を見るたびに、私はあの夏を思い出すのである。

自分で書いてて怖くなってトイレ行けなくなりました笑

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