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#8 新メイド現る

「お、お父様……新たなメイド、ですか?」

「おお、その通りだ我が愛しき娘よ!」


 私はお父様からの突然の言葉に。

 ただただ、目を丸くしているわ。


「改めまして……初めまして。この屋敷に新たなメイドとしてお世話になります、浅曽天(あさそそら)と申します。」


 そのメイド――天は恭しく頭を下げる。

 うん、まあ地味な女の子といった感じの印象だけど。


「しかしお父様……何故、メイドを? 私には獣王の後任となる執事をつけてくださるのでは?」


 私はお父様にそう聞いたわ。

 そう、執事とは聞いていたけれど。


 メイドなんて、毛ほども聞いていませんもの。


「ははは、さすがは我が賢き娘香大里よ! そう、私も当初は笹生君と天尾君だけでよいと思ったのだが。どうなのだ二人は? 二人のおかげで悪役令嬢ルートとやらは回避できそうなのか?」

「あ……お、お父様それは!」


 思いがけないお言葉ですわ、お父様。


「……確かに、まだあの二人は成果を上げられていないかもしれません。しかし、お父様。それは私のせいという部分も少なからずあってのことでございましてですわ。」

「おや……これはこれは、驚いたな香大里! 私もお前に、偏った教育を受けさせてしまったのではないかと心配でたまらなかったのだが。そんな言葉がお前から出て来るとは、変わったか香大里!」


 ……あら、お父様ありがとうございます!


 ええ、確かに。


 私、まだ理想系になれ切ったとは思いませんし悪役令嬢ルートも回避できたとは思いませんが。


 それでも香大里は、変わりましたわ!


「ええ、私は変わりましたわ! ですからお父様」

「しかし! ……そうであるな。やはり女の子を育てるのであれば、女性に育てさせた方がよいという考えもある。そうだ、淑女の所作は淑女から学ぶべきである!」


 ……え、淑女を所作ですの?

 あの、化粧っけもない地味なメイドから?


 私はさすがに、そこまでは口にしなかったけれど。


「あの浅曽君は、少なくともマナーや嗜みに関しては完璧であると私は思う! だからこそ香大里、お前に改めて所作を学ばせるには一番早い手として彼女から習えというのだ。直近で実演せねばならぬ機会が迫っていることもあってな。」


 な、なるほど……あの天からですか。

 ……って、お父様?


 直近で実演する機会とは、何のことですの?


 ◆◇


「え、何ですって? お、お見合い!?」


 お父様との話し合いの後、私は天尾・笹生から話を聞いてびっくりしたわ。


 まさか、そんなお見合い話があったなんて。


「ええ、王皇古人(おうみこと)様――大企業御曹司たる、王家の一人息子の方です!」


 王――キング。


 ――う、嘘でしょキング王子! 私とあなたが結ばれることは決まっていたのよ!


 え……な、何ですって!?


 偶然にしちゃ出来過ぎてるけど、まさか。

 リアルにキング王子が!?


「? どうかなさいましたかお嬢様?」

「……え? あ、ああ。い、いいえ何でも!」


 と、天尾に言われて私はっとしたわ。

 私ったら、動揺が顔に出ていたなんていけないいけない。


「お嬢様、お話には続きがございます。そのお見合いは……あの冨士谷や佐波木のお嬢様方も臨まれるということです。」

「……な!?」


 な、何ですって!?


 ――う、嘘でしょキング王子! 私とあなたが結ばれることは決まっていたのよ!


 ――ニッカ王女。……申し訳ありませんが、私はあなたの心を好きになれない。私は……もっと心の美しい方に心惹かれたのです!


 ああ、ああ……

 ああああああ!


 あの悪夢が、現実になろうとしているのかしら!?

 こ、これは一体どういう因果かしら……


「!? お、お嬢様!」

「いかがされましたか、お嬢様!」


 ……え?

 私気づいたら、笹生と天尾に支えられている?


 そう、ごめんなさい私。

 うっかり、頭が大混乱して立ち眩みを起こしたみたいね。


「笹生、天尾……これは。いきなりピンチよ! いきなり悪役令嬢か主役令嬢の分岐点よ!」

「は、お嬢様?」

「分岐点、ですか?」


 私の言葉に、笹生と天尾は首を傾げているけれど。

 (既に話したことがあるけれど)キング王子がどうのとか、ニッカ王女がどうとか言ったところで。


「何ですかそれ? キングなのか王子なのかハッキリすべきでは?」というツッコミ……ではなく。


 違うわ、ツッコミすべきはそこじゃない。


「お嬢様、それはあくまで創作のお話ですよね?」というツッコミをもらうのがオチ。


 そう、やっぱり男の執事じゃ事実を理解はできても気持ちまで分かり合えるわけじゃない。


 だから、言えないわ。


「ええ、香大里お嬢様。まさに、その通りです! 御曹司の婚約者に選ばれるか否かは、まさに乙女ゲームにおける悪役令嬢ルートの分かれ目の一つです。」

「……え?」

「な!? お前は……」


 と、思っていたところに。

 何と私と笹生と天尾も驚いたことに、新メイドの天が突如として入って来たわ!


「……ご安心ください、お嬢様。私が来たからには、お嬢様に悪役令嬢ルートなど歩ませずにご覧に入れます!」


 あら、天ってば見かけによらず。

 高らかに、そう宣言して来たわ!

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