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#7 天尾のターン

「ほう……? 天尾執事、君が?」


 突如そんなことを言い出した天尾に、警察も動揺しているわ。


「はっ! 我が主人に疚しいことは何ひとつありませんが……主人が何かするとすれば、その手足となるは我ら執事! それなら、私たちを調べれば事足りると思いますが?」


 あ、あら天尾。

 なるほど、そういう理屈を言ってみるのね。


 まあ実際、私の手足として下剤を盛ろうとした執事が今トイレにいるわけだけど。


 はあ、それにしても本当についてないわ……

 まさか笹生が下剤を盛ろうとしたタイミングで、こんな事件が起こるなんて!


「そもそも……何故まだ我々を疑うのですか? 先ほど我々は身体検査を受け、不審物は何も持っていないと分かっていただけたはずです。」

「! う、うむ……」


 私が悩む間にも、あら天尾ったら。

 次々と、警察に捲し立てているわ!


「……更に質問させていただいてもよろしいでしょうか? 佐波木のお嬢様は、どのようなもので傷つけられたのですか? それは、私たちの身辺から出てきたのですか?」

「はあ……もう、そろそろいいんじゃないかね早乙女君?」

「ええ、そうですね……」

「……え?」


 ……え!?

 な、何よこれは。


 ち、ちょっと何が起きていると言うの!?


 私や天尾が混乱するさなか、何と。

 砂葉の執事である、早乙女が入って来たわ!


 ◆◇


「ええと、早乙女、さん……? これはどういうことですか?」


 私は混乱が渦巻く心のままに、早乙女にそう尋ねていた。


「……この度は、誠に申し訳ございません! しかし。お嬢様を守るためには、こうするより他なく……」

「……え?」


 私や天尾は、ますます混乱するばかりだわ。


 何、佐波木砂葉のため?


「はい、実は……お嬢様に対して、殺人予告がありまして。その犯人を炙り出すため、砂葉お嬢様がわざと毒を盛られたふりをしたのです!」


 ……何それ!?

 は、犯人を炙り出すため?


 はあ、よくもまあそんな大胆な作戦思いつけたものね……


「……しかし、そんな手を使おうとも。幸か不幸か、殺人を予告した者ないしは実行しようとした者は特定できずじまいでした。皆様を疑ってしまい、申し訳ございません。また後ほど、この学園全員の方々に説明する機会を設けさせていただきます故。」


 なるほど、結局徒労に終わったの。

 まあ、よかったわね!


 ◆◇


「申し訳ございません、お嬢様!」

「いいえ、いいのよ笹生! それよりも、私をあんなやり方で救ってくれてありがとう。」

「……はっ、身に余るお言葉。」


 そうして取り調べから解放されて、吹子生の屋敷に戻って来るや。


 これまた下剤の苦しみから解放された笹生も、無事帰って来たわ。


 まあとはいえ、自分の提案で危うく私があらぬ疑いをかけられそうになったことは事実ということで。


 今こうして、平謝りされていたというわけ。


「お嬢様! 少し笹生にお優しすぎますが……私に対してもお優しすぎます! 結局お嬢様に何も出来ませんでした私にも、何か罰を!」


 あら、こちらにも。

 平謝りする、天尾がいたわ!


「ふっ、天尾。お前もそうだな……私も私だが、結局はお前も大したことは」

「およしなさい、笹生! 許したとはいえ、あなたに天尾を責める資格はないわ。」

「はっ……お嬢様!」


 おっと、まあちょっと悪役令嬢っぽく言い過ぎちゃったかしら?


 ま、まあでも。


「それに……天尾。あなたが警察――正確には警察役の人たちにああ言ってくれたおかげで早乙女たちは種明かしをしてくれたのよ。もっと自信を持ちなさい。」

「な……は、ははあお嬢様! ありがたきお言葉……」


 そうよ天尾、それも事実。

 そういえば今回は。


 笹生の言う通り、私が他の令嬢を破滅させるか。

 それとも天尾が、それを阻止するか。


 っていう勝負だったわよね?


「今回のあなたたちの勝負は……まあ納得してくれると思うけれど引き分けとします! よろしいわね?」

「……はっ、お嬢様!! 本来ならば我々どちらも処分されても仕方ありませんでした所、救っていただきました! この御恩に報いるべく、尚精進させていただきます!」


 あら、私の言葉に天尾と笹生ったら。

 随分としおらしいこと言ってくれるじゃないの。


「(今回はともかく……本来ならば私が勝っていたところだ天尾。それをお前は、棚ぼたで乗り切っただけだと思え。)」

「(笹生……ああ、お前こそ! 今回は幸運だっただけだと思え。次こそ、私が!)」


 ……うん、だからあなたたち超能力者か何か?


 今もあのパーティーの時のように、こうして視線のやり取りだけで情報をやり取りしているなんて。


 まあ、いいわ。

 私も悪役令嬢になるにしてもならないにしても、あなたたちのことこれからも利用させてもらうから!


 ◆◇


「ここが吹子生家……ふう、やっと着いた。」


 それから数日後のことだったわ。


「吹子生家のご令嬢、香大里様。このひ……いいえ。浅曽天(あさそそら)、メイドとして吹子生家を見極めさせていただきますわ……!」


 メイド服、だけど化粧っけなしのメガネにスーツケースを携えた出立ちで。


 その新たなメイド――浅曽天(あさそそら)は吹子生家にやって来たわ。

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