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#21 脅迫者の企み

「まさか私の見ている横で銃撃事件とはね……」

「ええ、まったく! 不粋な犯人です」

「……お嬢様。その件ですが、現場の調査の結果あの火花の原因は実弾ではないであろうことが判明いたしました!」


 え、何ですって笹生!?

 あれが実弾ではない?


 私たちは、中継車の中で、まだそんな話をしているわ。


 鋼羽家を監視し始めて、数日間。

 早くも襲撃事件が起こって混乱する私たちだけれど。


「ええ、あれは爆竹やその他火薬を使った玩具の類と判明いたしました!」

「な……つまり、あれはただの脅しだったと?」


 脅し……愛美に近づかせないようにするための、という訳ね。

 ということは今回の脅迫者の目的は、やはり愛美と許嫁の仲を引き裂くこと。


「この場合どうすれば……」

「ああ、そうだな天尾! 今回は脅迫者を引き込んで、また違った脅しを考えるか。それとも暴いた脅迫者の情報を元に鋼羽家に取引を持ちかけるか」

「な……笹生!」


 あらあら、笹生。

 あなた相変わらず、よくそうも悪知恵が出て来るものね……。


「そうではないだろう! いくらなんでも脅迫者はやりすぎている、暴いたらこんな馬鹿なことは止めさせなければ!」

「相変わらず甘いな、お前は! 我々がやろうとするべきは人助けではない、もう少しお前も強かにならないか!」


 あらあら、笹生も天尾もまた……

 一旦鎮まりなさい、二人とも!


 見苦しいわよ、いつもいつも!


「はっ、も、申し訳ございません!」

「お嬢様、失礼いたしました。」


 ええ、いいわ二人とも素直で。

 まあここは、二人の意見の妥協点ないしは共通点を見つけましょう。


 この場合は……そうね。


 鋼羽家を脅迫している者が誰なのか分からない以上、抱き込むにしても止めるにしても彼或いは彼女を暴くことが第一なんじゃないかしら?


「はっ、お嬢様!」

「ええ、さすがはご聡明なお嬢様……私もそう思います!」


 よし……決まりね。

 さあ、行きましょう!


 ◆◇


「これは……またこんな脅迫が!?」


 それから数日後、鋼羽家では。

 また脅迫状が届き、愛美はすっかり気の狂いそうな思いだわ。


 ――まだ貴島高嶺(きじまたかね)と別れていないのか? 彼は貴女にふさわしい男ではない、早く離れろ。


「お嬢様、誰かは分かりませんが。やはりこんな脅迫状が出ている以上、別れろとは言いませんが高嶺様と会われることは控えた方が……」

「いいえ、水々華! 私は彼と会うわ、ここで悪に屈してはならないの!」

「お嬢様……」


 でも愛美、中々気丈ね。

 屈する気はないんですって。


 ◆◇


「なるほど、そんなことがあったか……大丈夫かい、愛美さん?」

「いいのよ、高嶺さん! 私はあなたと会うわ、絶対に諦めない!」


 そうして、また合挽肉……じゃなくて逢引を重ねる二人よ。

 ええ、まさにラブラブね。


 ……いや、べ、別に羨ましくなんかないわよ!

 ま、まあさておき。


「……きゃあ!」

「くっ! 愛美さん!」


 あら、また。

 恐らくは脅迫者が、また爆竹か何かだと思うけど。


 爆発物を打ち込んで来たわ!


 ◆◇


「……よし。さあいい加減、離れなさい二人とも!」


 その爆発物を打ち込んだ狙撃者――もとい、脅迫者は。

 物陰から改造モデルガンを持ち、黒い服で変装しているわ。


 そのまま、立ち去ろうとするけど。


「……動いてくれましね、脅迫者。」

「!? あ、あなたは」


 その前に、天尾が立ちはだかるわ。


「調べはついていますよ、鋼羽家の脅迫者さん! さあ……素顔を」

「ふん! 誰が」


 だけど脅迫者は、そのまま逆方向に逃げようとするわ!


「逃がしはしませんよ、ようやく会えた脅迫者さん!」

「な……ここにも!」


 が、そこにも笹生が立ちはだかったわ!


「やはり、あなたでしたか……祢冝田執事!」

「くっ……」


 しかも、天尾が今言った通り。

 その脅迫者が水々華だということも、もう調べはついているのよ!


「やはり私の策は完璧でしたね……我々が出した偽脅迫でも、プライドの高いであろう真の脅迫者は動かざるを得ない! しかも、恐らく共犯者と連絡を取る時間もなかったでしょうから直々に動かざるを得ません!」

「くっ……」


 笹生が得意げに言っているわ。


 ――まだ貴島高嶺(きじまたかね)と別れていないのか? 彼は貴女にふさわしい男ではない、早く離れろ。


 そう、あの脅迫は私たちの書いた出鱈目。

 今笹生が言った通り、水々華。


 あなたを動かすための、ね。


「まったく、執事がお嬢様に嫉妬するなど!」

「……え?」


 だけど、今度は天尾が放った言葉に。

 水々華は、何故か首を傾げるわ。


「何だ、この期に及んでまだとぼけるのか!? あなたは自分のお嬢様である鋼羽愛美様の許嫁に惚れ! それで愛美様に嫉妬してこんなことを」

「違う!」


 あら、水々華は。

 何故か、否定の言葉を返すわ。


「やはりこの期に及んでとぼける気か……既に証拠は上がっているんだ! お前が愛美様を脅迫していたと」

「ええ、そうよ! そのことは認めるわ!」

「……は?」


 え、何ですって?

 ということは、あなたが否定したいことは何かしら?


「まさか……祢冝田執事。あなたが恋焦がれているのは、愛美様の方とでも言うのですか?」

「な!?」

「ええ……そうよ! 悪いかしら、女が執事をやっていることも女を好きなことも!」


 あら……なるほど。

 いえ、別にどちらもいいことよ!


「なるほど……ちょっとそれは、詳しくお聞かせ願えないかしら?」

「お、お嬢様!」

「あなたは……吹子生香大里様!?」


 ええ、私よ。

 私は、水々華から話をより詳しく聞くために。


 直々に、彼女の前に姿を現したわ!

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