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#17 天尾のプロデュース

「な、何ということか……秀光、秀光はいるか!?」

「はっ、父さん!」


 八象家の屋敷にて。


 八象の旦那様――秀光さんと香奈さんのお父様は、お冠のご様子ね。


「父さん……まさか……」

「ほほう! 自覚があるならばまだマシか……それとも、よりタチが悪いと言うべきか! 我が娘がこんな不良娘がいるというのに、黙認するとはな!」

「な……それは!」


 そう言って旦那様が秀光さんに突きつけたのは、あの香奈のライブ写真で――


 ◆◇


「どういうことだ、笹生!? お嬢様のご意向に逆らったのか!」

「何だ? 何の」

「とぼけるな! 先ほど秀光執事から苦言の電話があった、私たちが香奈さんの情報を八象の旦那様・奥様に漏らしたのではないかってな!」

「……ほう?」


 天尾はそう言って、笹生に掴みかかった。


 その頃、吹子生家の屋敷でも大変なことになっていたわ。


「お止めなさい、天尾! 執事同士で!」

「! お、お嬢様……し、しかし」


 私はそんな天尾を諌めた。


 ええ、確かに。

 香奈さんの件は一見すると、笹生が漏らしたようにも見えなくはないわ。


 ……だけどね、天尾。


「笹生の今の様子を見れば分かるわ、彼は嘘を吐いていない。だとしたら」

「ええ、お嬢様……知らぬは天尾ばかりなり、ですね!」

「な……!?」


 そうよ、申し訳ないけれど天尾。


 ここはあなたが察しの悪さを露呈しているわ、さあ考えてご覧なさい。


 香奈さんのバンドの件を漏らしたのは、誰か。

 私がそう天尾に言うと。


「は、はい……ま、まさか!? ふ、冨士谷の!?」


 ええ、ようやくね天尾。

 そうよ、つまり。


「まったく……ならばむしろ、責められるべきはお前ではないか天尾? お前がモタついていたせいで、まんまと抜け駆けをされる事態になったのだからな!」

「うっ……そ、それは」

「いいえ、待ちなさい笹生!」

「! お嬢様?」


 笹生の言ったことは、抜け駆けをされたっていう事実の部分に関しては正しいわ。


 でもね。


「天尾は私の設定した期限でやっているのよ、なら私の責任と言いたいのかしら?」

「これはこれは……申し訳ございませんお嬢様、私としましたことが。」


 私は笹生を、そう窘めたわ。


「そ、そうだぞ笹生! ……しかし、お嬢様いかがしたものでしょう。今秀光執事は、我々に対して態度を硬化させています。このままでは」

「ええ、そうね……」


 天尾はそう言ったわ。

 ええ、確かに。


 第一条件として、八象家に協力が受け入れてもらえないことにはどうにもならないわね。


「ふう、まったく天尾……それはお嬢様に聞くべきことなのか? むしろそこはお嬢様に、自ら解決策を提案するべきことではないのか?」

「な……そ、それは……しかし! ならばどうすべきだと言うのだ、笹生お前は!」


 笹生はもう、鬼の首を取ったようだわ。


「相変わらずだな天尾……また私に聞くのか! ……しかしお生憎様だが、私は知らん! 私はむしろ、このまま八象のご令嬢は破滅させるべきと考えているのだからな!」

「く……そうか。そうだな、私が馬鹿だったよ!」


 笹生の更なる言葉に天尾は、口を噤むわ。


「お嬢様、恐れながら……既に天尾に託しました八象のご令嬢を救われる件、失敗していると見なしてよろしいかと存じます! 天尾めの失態でございます。」

「む……ぐっ!」


 あらあら。

 本当にあなた、鬼の首を取ったようね笹生。


 ……でも天尾、何はともあれ。

 今のままでは八象香奈を救うというあなたの目標、果たせないかもしれないんでしょう?


 私は天尾に、そう言ったわ。


「はっ、お嬢様! しかし……仕方がありません! かくなる上は、無理矢理にでも力を貸させていただくまでです!」

「……何?」

「何ですって?」


 それに対して天尾ったら、そんな風に返して来たわ!

 え?

 む、無理矢理にでも?


 ◆◇


「皆、ありがとう!」

「ウォオオ!」


 その頃。

 ライブをしていた香奈率いるバンド、Shock Tackは歓声に包まれているわ。


「兄様!」

「……お嬢、大丈夫か?」

「え、何が?」


 ライブが終わり、裏に降りて来た香奈に。

 秀光さんは、そう声をかけて彼女に訝しがられていたわ。


「(香奈……すまん。私は結局、お前を……)」


 秀光さんは内心、そう思っていた。


 ――父さん、黙っておりましたこと申し訳ございません! ですが……私は、香奈の好きなようにさせてやりたいのです!


 ――秀光……小童が! 家長の私に逆らうつもりか、いいか! お前は八象の跡取りにして、香奈の執事だ! そのお前がこの体たらくでは……もうよい! 一刻も早く、香奈にこんなものは辞めさせるのだ分かったな!


 ――と、父さん! ……はい。


 ……まあ、やっぱりというべきかしら。

 秀光さんはこんな風に、八象の旦那様に絞られていたのでした。


「兄様、本当にどうなさったの?」

「……香奈、実は」

「뭣!? な、何これは!」

「……え?」


 秀光さんが香奈に話を切り出そうとした、その時だったわ。

 先に控え室に戻っていた他のメンバーの声が聞こえて。


 香奈も秀光さんも、そちらに行くわ。


「昭室、どうしたの?」

「な……こ、これはバイオリンにヴィオラに……な、何故クラシック楽器がこんなに!?」


 そうしたら、お部屋はそんな有り様。

 まあ犯人は……恐らく皆様お察しの通りよ?


「お待ちしておりましたよ……」

「!? あんた……何しに来たんだ!」


 部屋の奥から現れたのは、カツラや安服で変装した天尾だったわ――

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