#12 王の秘密
「ねえ、本当なんでしょうね? 本当に、こんな所に王さんが?」
「ええ、間違いなく。」
私や笹生、天尾と。
吹子生家使用人は、王さん行きつけのバーで変装して張っていたわ。
私は盛り髪にして、サングラスをかけている。
逆に目立つ気もするけど、まあしょうがないわ。
「今日こそは聞かせてもらうわよ、王さん……!」
私は、拳を握りしめて今一度意を決したわ。
――だけどすまない香大里さん……僕、やはりこのお見合いはお受けできない!
あなたのあの言葉は。
――う、嘘でしょキング王子! 私とあなたが結ばれることは決まっていたのよ!
――ニッカ王女。……申し訳ありませんが、私はあなたの心を好きになれない。私は……もっと心の美しい方に心惹かれたのです!
よりにもよって、私のトラウマスイッチを押しちゃってくれたのですから!
「お嬢様……来ました。」
「!? そう……さあ、早く。」
「……SPたち。お嬢様より早くとのご命令だ。」
と、そこへ。
バーの中に王さんらしい、人影が現れたわ!
私は笹生を通じて、SPを動かし始める。
そして。
「……王坊っちゃま、さあ!」
「むぐっ!? な、何だ!?」
「ご一緒に、来ていただきます!」
王さんがカウンターについた瞬間、SPたちは確保へと動いた!
さあ、これで話を――
「か、彼は……お、王坊っちゃまではありません!」
「何ですって!?」
……聞けない、みたいね!
どうやら私たち、影武者を掴まされたみたいよ!
「くっ、私としたことが……近くにいるかもしれない、探せ!」
「はっ!」
まったく、読まれていたなんて!
笹生は普段の冷静さが少し薄まって、やや気が動転した様子でまた指示を出したわ!
◆◇
「お嬢様……来たようですぞ!」
「あら……そのようね!」
一方、バーの外では。
何と私たちと同じことを考えていたのか、獣王と綺沙が不良の装いをして見張っていたわ!
そうして二人は、バーから出て来た王さんらしき人影を補捉したの!
「さあ行くわよ、獣王!」
「ええ、お嬢様! お嬢様を振るなどと不届き千万! 許し難く存じます!」
これまた、私たちと同じく。
王さんの身柄を押さえようとしていたわ。
「はあっ!」
「大人しくしていただけますかな、王坊っちゃま!」
そうして獣王も綺沙も、王さんと思われる人を捕らえるけど。
「!? な、し、獣王!」
「な、何と……王坊っちゃまではない!? く……我がお嬢様を振った挙句、次には騙し討ちとは不届き百億万!」
そう、あくまでその人は替え玉だったのでした。
「……冨士谷家SP、聞こえるか!? 何としても王坊っちゃまを探し出せえ!」
獣王は、怒り狂ってSPに無線で指示を出したわ。
◆◇
「お嬢様、ここに来られて大丈夫ですか?」
「ええ、早乙女さん。……やはり吹子生さんも冨士谷さんも、王さん確保に動かれているようですわね。」
一方、私や綺沙と同じく断られた砂葉はというと。
文字通り高みの見物のつもりかしら、私たちのいるバー周辺がよく見えるビル屋上に陣取って見下す……もとい見下ろしているわ!
「ううむ……何とも。どうやら、どちらも王様の確保はできていらっしゃらないご様子。」
「ええ。……悪いお方だわ、王さんも。これほどご自身を想ってくださる二人の女性を煙に巻こうなど。」
「お嬢様……」
「いいえ、三人ね。……三人の女性を煙に巻いて、他の女性と逢瀬を楽しもうだなんて。」
と、砂葉が目を移した先には――
◆◇
「ごめんイチさん、待ったかな?」
「いいえ、わたくしも今来たところですわ。」
「そ、そうか……だったらいいんだけど。」
そこは、とある公園で。
王さんたら、何と。
鼻の穴……いいえ、はしたない間違いをしましたわ。
鼻の下伸ばしちゃって、あのバーで出会ったイチとかいう女と合挽肉しちゃっているじゃないの!
……おっと、また間違えましたわ。
二人とも合挽肉にしてやろうか!? という本音が出てしまったけど、正しくは逢引しちゃってたのよ。
「でも、本当にいいんですの? 王家の御曹司が」
「構いません! ……僕はもう、伴侶まで親に決められた中から選ぶのは嫌なんだ。あなたと出会えた運命を、僕は大切にしたい!」
「皇古人さん……」
……あらあら。
意外にも純情なのね、王坊っちゃま!
まあでも。
「ほほう、それはそれは! 感動的な場面でいらっしゃる……下手な恋愛映画よりもよほど鑑賞に堪えますね!」
「!? あ、あなたたちは!」
そうは、問屋が卸さないって奴よ。
笹生のそんな拍手しながらの煽りを合図に。
私・笹生・天尾と綺沙・獣王、更に砂葉と早乙女さんが公園に現れたわ!
「やっと会えましたね……ヒトマエイチお嬢様?」
「!? え? い、イチさん?」
「……ふん。」
笹生がそう呼びかけると、イチさんはそっぽを向き王さんは困惑しているわ。
でも、イチさん。
王さんより、まずはあなたにお話を聞かせてもらいますわ――




