7.一番艦進水
マリエの異世界冒険第二弾です。
好き勝手に書いて行きますので、宜しくお願いしますね。
本作品に登場する国・人物は架空のものであり、現実とは何の関係もありません。
似たような物を見た記憶があっても、気のせいです。念のため。
一通りの話し合いが終了した後、和やかなティータイムとなった。
当然、マリエの事が話題に登ったのは言うまでもない。
「マリエは、五年もの間どこに行っていたんじゃ?五年前は女神様の使徒として来ていたのに、今回は普通の少女ときた、訳が分らんぞ」
チールのおっちゃんが疑問に思うのも無理はない、五年も行方不明になっていたかと思えば今度は子供になって戻って来たのだから。しかし、説明のしようがないのも事実だった。正直に言っても信じて貰えないだろうし、理解も出来ないだろう。どこまで話したらいいのか。まだ、魔法とか使えれば女神の使徒で誤魔化せるのだが。マリエは本当に悩んでしまった。
「女神様の使徒ですって!?」
ジョン達のグループは驚愕の面持ちだ。もはや、疑問を差し挟む余地すら無くなった感じで、ひたすら聞き役に回っていたが、流石に女神の名前が出ては黙っていられなかったようだ。女神と言えば、人民の信仰の最たるものなのだから、そんな人を粗雑に扱っていた自分達に罰が当たらないか心配になってきたジョン達だった。
「そうじゃ、途方もない魔法をバンバン撃ちまくるわ、ドラゴンを手足の様に使役するわ、空を飛んだりとやりたい放題じゃったぞ」
アンディー達はこくこくと頷いている。
「マリエ様は、最後はまるで消え入る様に天に昇って行かれました。あれは、人に出来る事ではありません、神の御業でありました。再びお逢い出来るなんて、感無量であります」
レイモンドはむせび泣いている。
「マリエ様の求心力は凄まじく、マリエ様の為になら命を投げ出してもいい者が集まって来てマリエ軍団を組織した位なんですよ。それも、百万を遥かに上回る勢いで、国軍よりも強大な組織にまで膨らんだんですよ。おまけに、マリエ様は見た事も無い強力な武器を次々と開発され、相手どころか味方の意表まで突く戦法で向かうところ敵なしだったんです。戦って居て負ける気なんかした事無かったです」
アンディーは腕組みをして目をつぶったまま、しみじみと五年前を思い出す様に語り出した。
「そうじゃの、あの頃は小さな国の集まりだった我が国がひとつの大きな国家になれたのは、ひとえにマリエのお陰じゃったな。マリエが指揮した戦いは全て圧勝。たとえ相手がこちらの何倍も強大であっても決して負けなかった。まさに鬼神の様であったのう。今回の戦いもマリエが指揮を執れば勝利間違いないのではないか?」
「そうですね、私からもお願いします。是非、軍の総指揮をお願い致したい」
アンディーが頭を下げて、それに倣ってみんなも頭を下げている。なんと、勢いにつられたのかジョン達も頭をさげている。えっ?えっ?おかしいでしょう、こんな小娘に大の大人が、それも軍の中心にいる人が頭を下げるなんて。
「ちょっ、ちょっ、ちゃんと前もって準備さえすれば、戦いなんて負けないんだし、あたしなんか居ても居なくても変わらないって」
「いいえっ!マリエ様が居るのと居ないのとでは、兵達の士気は雲泥の差です。さあ、なんなりとご命令を」
「「「ご命令をっ!」」」
はあぁぁぁぁぁっ、又こんな展開かい。
「おっちゃん、動員出来る兵員は?」
「おお、いくらでもいいぞ。二百万でも三百万でも動員出来るからな」
「なら、海岸にガリアを迎え撃つ為の防御用要塞の建設とその維持管理に五十万。バンク・ミケルセンの工房を総動員して要塞用に強弩の量産。あ、要塞は真っ直ぐに突撃して来れない様に例の塀を、今度は二重三重に設置してね。あくまでも防御に徹するから。後、戦艦の攻撃用の武器としてボウガンの矢を大量に用意して貰える?」
「そうそう、投石器も忘れずにね。これだけ用意すれば大丈夫、後は相手が自滅するのを待つだけだから、楽な戦いになるはずよ」
「一番の問題は、五十万の兵士ですね」
レイモンド参謀長は呟いた。
「直ぐに集めるのは難しい?」
「いえ、マリエ様が再び降臨されたと知れれば、簡単に三百万以上集まります。問題はその中からどうやって五十万に減らすかです。みんなマリエ様の元で戦いたいでしょうから、下手すると暴動になる可能性があるので、説得するのが大変かと」
「はぁぁ、そっちね。そこんところは任せるわ。あたしは海賊島に戻って大急ぎで戦艦を完成させるわ」
「ところで、あたしがここを離れてから五年も経ったの?エルトリアって?」
「うむ、おまえが最後に指揮したバンク・ミケルセンの戦いは圧倒的な勝利で終わっての、敵対勢力が無くなったので、あの後国を一つに纏める事になって、話し合いの結果エルトリア共和国として再出発したのじゃよ。で、初代国王にはエステル様が就任なされた」
「おおーっ!エステルが初代国王?それは良かった。うん、万々歳だね。で、エステルは元気にやってる?」
「うむ、毎日忙しい執務に追われているが頑張っておるぞ。おまえがもたらしてくれたこの平和な国を何が何でも守るんだと言って、頑張っておる。おまえが降臨したのを知ったらきっと喜んで飛んで来る事じゃろう」
「あ、だめ、あたしの事は内密にね。エステルには知らせないで」
「なんでじゃ?あんなに慕っておったのに」
「今は大事な時でしょ?あたしなんかに気を取られていたら駄目、国の運営に邁進しなくちゃ。ガリア帝国の侵略で少なからず国費に負担を掛けるんだから、その対応とかやる事は一杯でしょ?だから、ね?」
「おまえがそう言うなら、わしは黙っておってもいいが、いずればれるぞ?」
「その時はその時よ、さっ、あたしたちは帰るね、新しい船を持って又来るから、要塞の方は宜しくね」
あたし達は、みんなに見送られて島を出発した。あたしの正体についての質問は上手く誤魔化せて良かった。
海賊島に戻ると、ダニエルさんやマックスさん達が岸壁に迎えに出ていた。船が接舷するとダニエルさんが乗り込んで来た。
「おかえりなさい。成果はありましたか?」
「うむ、迎え撃つ手はずも整ったぞ。戦艦に乗せるボウガン兵も百人程借りられる事になった」
「おお、それは上々ですな。こちらも良い報告が御座います。一号艦が進水の運びとなりました。試験航海を行って、不具合を直したら二号艦の建造に取り掛かります。一度造っているので、二号艦は半分の工で出来るかと」
「それは本当に良い知らせだ。で、いつ進水するのだ?」
「御屋形様のお帰りを待っておりましたので、この後直ぐにでも行えますが、お疲れでしょうから今日の所はお休みになって明日にでも?」
「マリエ様、どういたしましょう?」
「マリエ様?」
ダニエルさんは不思議そうな顔をしている。そう、帰りの航海からみんなからの呼び名が《お嬢》から《マリエ様》に変わってしまったのだ。今まで通りでいいって言ったんだけど、頑として聞き入れて貰えなかったのだ。
「今は時間が惜しいわ。上手く進水出来るかも分からないんだし、直ぐ取り掛かりましょう」
「と言う事だ、直ぐに進水作業に取り掛かってくれ」
みんな、不思議そうに首を傾げながらも、造船所に向かって走り出した。あたし達も後を追って造船所に向かった。
進水って言っても、シャンパン割ったりくす玉割ったりの派手なセレモニーは無く、斜めのスロープを完成した船が滑り降りて海に出て行くだけだった。あたしは、凄くハラハラしていた。だって、細かな計算もなにもせず、ただ行き当たりばったりで作り出しちゃったから、浮かぶかどうかも怪しかったんだもん。ま、水漏れが無ければ浮くかな?程度だったから、浮いたら全てマックスさんの手柄だわ。
マックスさんが、船を固定していたクサビを外すと巨大な船体はゆっくりとゆるい斜面を滑って行った。そして、盛大な水しぶきを上げてこの国初の鉄製の船が海に出ていった。
一時、巨大なはずの船体は水しぶきに隠れて見えなくなったが、しだいに視界が開けてくると、そこには鏡の様な水面に静かに佇む巨体があった。良かった、とりあえず、無事浮かんでくれた様だ。正直、横倒しになってたらどうしようかとハラハラしてたんだ。
「いやぁ、本当に鉄の船が浮かぶとはなぁ。感無量だわい」
マックスさんは、髭を撫でながらしみじみとつぶやいていた。他のみんなも、呆然とその雄姿に目を奪われていた。
見た感じやや左に傾いているけど転覆する程ではないので、後で、右舷に重りでも乗せればいいかな?
「まずは、乗り込んで浸水の有無を調べて、それから細かい艤装の設置ね」
「そうじゃな、浸水の有無を確認するぞーっ!小舟を出せーっ!」
この港も再び活気に満ちて来た。浸水確認班は舷側から降ろしておいた縄梯子をよじ登り艦内に入って行った。そうそう、戦う船なので船という呼称から艦へと切り替えたのは、どうでもいい事ではあったが、ここに記載しておこう。
艦体が大きく重いので岸に寄せられないから岸壁から百メートルの所で錨を降ろし固定して、物資は小舟で搬入する事にしてある。甲板上には物資搬入用に滑車を使った簡易クレーンを二基既に設置済みなので、搬入は多少楽だろう。
「どうしたの?ジョン。ぼーっとしちゃって」
ジョンだけでなく、オリビーさんも巨大な艦体に呆然と見とれていた。
「あ、いや、とんでもない物が出来たもんだなと。これがあれば対等とは言えなくてもかなりいい戦いが出来るかなと。これも全てマリエ様のお陰で御座います。有難うございます」
二人して地面に片膝をついて頭を下げている。これって、王族にする挨拶?
「や やめてよお、あたしは、アイデアを出しただけ。形にしたのはマックスさん達の努力なんだから、お礼ならマックスさん達に言ってよね。それと、その堅苦しいの・・・やめにしてよね。あたしには似合わないよ」
「いや、しかし・・・」
「おーいっ!おーいっ!」
甲板の上からマックスさんが呼んでいる。
「どうだったぁ?」
「艦体は念入りに造ったからのお、水漏れは無かったぞい。直ぐに艤装を始めるから、ちょっと見に来てくれんか?」
「はーいっ!直ぐ行くねぇ。じゃ、後でねぇ」
ジョン達に挨拶してあたしは艤装用の器材を積んだ小舟に便乗した。あっ、そうだ」
「じょーーんっ!この船の名前、決めておいてねーっ!」
いつまでも名前が無いのも様にならないものねぇ。
それからまるまる二日。必要な艤装は全て完了し、石炭の搭載も終わった。そう、次に行うのは試験航海だけど、まずは港の中でちゃんと進めるかテストしなくてはならない。
ジョンの指揮の元粛々と準備が進み、いよいよボイラーに火を入れる時が来た。ジョンはみんなを集めて檄を飛ばして居る。
「みんな、ご苦労だった。初めての鉄製の船の建造にあたり、分からない事だらけでさぞや苦労した事だろう。しかし、みんなの努力によってこうして形にする事が出来た。本当に有難う。これで、帝国に対してまともに戦う事が出来る。この場を借りて、責任者としてみんなにお礼が言いたい、ありがとう!ちなみにこの船はアルビオンと命名する。戦艦アルビオンだ」
ジョンは、台の上で深々と頭を下げた。
「これから、試験航海に出るのだが、その前に最大の功労者であるマリエ様に一言頂きたい。ちなみにだな、マリエ様はみんなが知っての通り見た目は子供なんだが、実はエルトリア共和国において、国家最高顧問をされていた経歴がおありで、更にこの姿は仮の姿で、本当は女神様の使徒、もしくは女神様そのものとも言われている高貴なお方である。みんなも心して接する様に」
をいをい、何をいいだすんだよお、だめじゃん、そんな事言っちゃ、正体は女神様なんかじゃなくて、日本の女学生なんだぞぉ、どうすんだよぉ。
「では、マリエ様 一言お願い致します」
やれやれ、困ったもんだよ。あたしは、渋々壇上に上がった。
「えーと、あたしの事なんかどうでもいい。これは夜も寝ずに頑張ったみんなの手柄なんだから間違えない様に。それと、まだ完成した訳じゃあないからね。これからが大事なのよ。ちゃんと動かなきゃ只の鉄くずなんだから。これからの試験航海こそみんなの腕が問われる事を忘れないでね。出航したら必ず不具合が発生すると思ってね、それをみんなの応用と機転で乗り切らないと先には進めないんだから頑張って下さいね。それから、やり難い所、もっとやり易いアイデアがあったらその場で言ってね、その場で改善していきましょう。さ、ジョンみんなに号令を掛けて」
そう言うとあたしは壇から飛び降りた。
「ようし、これより出航に向けてボイラーに火を入れるぞ、みんな持ち場につけっ!」
みんな、それぞれの持ち場に散って行った。あたしはボイラーの様子を見に石炭投入室に向かった。そこでは、たき口を開いてボイラーの中で火を点ける準備をしていた。早い話、巨大な焚火をする訳なので火を点ける為の木を組んでそこにガス・オーリンの湖で採取してきた燃える水をダバダバと掛けていよいよ点火だ。火は一気に燃え上りボイラーの中を赤々と照らしている。ボイラー担当はすかさずスコップで石炭をボイラーの中に投入し始めた。炎はどんどん燃え盛りその熱気がボイラーの外にまで届いている。一応熱が艦体に伝わらない様に断熱材として細かく砕いた溶岩をボイラーの周りを取り囲む壁の中に詰め込んである。
各部署間の連絡用に伝声管を張り巡らしておいたので、それを使って制御室を呼び出した。
「どう?圧は来てる?」
「はい、まだ弱いですけど排出弁を開くと蒸気が来ています」
「了解。まだ時間が掛かりそうね」
その後も黙々と罐たきが続けられた。黙々と続けたので、煙ももくもくと出始めた。三十分程石炭をくべた所で要らない圧を逃がす排出弁を閉じてみた。今まで外に逃がしていた圧がタービンの方へ流れて言った。艦はゆっくりと、ほんとうにゆっくりと進み出した。甲板上からは歓声が聞こえて来ている。舷側の窓を開けて外を覗いてみると、巨大な外輪が本当にゆっくりと回っていた。やっとここまで来たわね、でもこんな速度じゃだめね。もっと燃やさないと速度が出ないのかな?まさか、これで最大速度?なんか心配になって来た。
アルビオンは、大勢の観客が見守るなか、ゆっくりと湾内を進み始めた。蒸気を沢山集められる様に蒸気の配管は出来るだけ多く設置したんだけどこんなものなのかなあ?
そのまま湾内をゆっくりと周回したが、一時間を過ぎたあたりからぐぐっと加速する様な間隔が強くなってきた。おお?やっと目が醒めたか?その後、どんどん速度が上がって来て手漕ぎ船の速度を上回る様になって来たので舵を切り湾外に出て見る事にした。
「嬢ちゃ・・・でなくってマリエ様か ここまでは予定どおりじゃな」
「やめてくださいよぉ、マックスさん。今まで通りでいいですって」
「そうはいかんじゃろ、大人なんだからそこんところはきちんとせんとな」
「もう、変な所律儀なんだから。お じ い ち ゃ ん は」
「誰がお爺ちゃんじゃいっ!わしはまだ若いわいっ!」
「もっと、スピード出ると思ったんだけどなぁ、何がいけないんだろ?」
「こりゃ、しらっとスルーするなっ! 近頃の若いもんは、年寄りを敬う気持ちが希薄でいかん!」
「あ、年寄りって認めた(笑)」
マックスさん、なにやら叫んでいたけど、あたしは舳先の方に逃げて行った。頬にあたる風が心持ち強くなった気がした。上を見上げると煙突から上がる煙の色が段々と濃くなって来ている。あれ?速度の割に強い風が前方から吹いている?これってもしかして?強い向かい風の中進んでいたりする?
だとすると、それなりの速度が出ているのかも?速度計が無いから感覚でしか速度が感じられないのが歯痒いけど。伴走していたホーリーウッドが後方に置いて行かれて居る所をみると、速度的には成功なのかな?
後は、何回か練習航海を繰り返して操船に慣れるだけね。一緒に燃費も調べないと航続距離が分からないから今後の運用面で色々支障が出てくるよね。石炭満載でどの位航行出来るのか調べないと。洋上での石炭補給訓練も必要だわね。煙突に雨避けも付けなきゃ。
ん?艦が蛇行し始めた。おっとっと、よろける~。舵の利きを確認しているのね、みんな順調に課題をこなしているみたい。あたしは各所を回って、不具合の吸い上げでもしますかね。
艦尾に回ると燃え尽きた石炭の灰がベルトコンベアもどきで順次艦尾から海中に投棄されているんだが、ちょっとまずい かな?これは想定していなかったんだけど、航行した跡が白く帯になっている。これって後を付けられてしまう危険があるってことだよね、海中投棄の方法を考えないとだわ。ま、基本行動するのは夜だからいいのかも知れないんだけど、何とかなるのなら何とかしたいわよねぇ。
結局、初日は夕日が水平線に沈みかかる頃港に戻って来た。何だかんだで二十か所以上改善箇所が見つかったので、明日改修する事になった。大きな致命的なトラブルは無かったのでホッとしたのではあるが、もうちょっとなんとかしたいなぁとみんなあちこちで議論を交わしていた。
手漕ぎ船がまったく追い付いて来れなかったのには、みんな大喜びだった。興奮ぎみに、あちこちで凄い!凄い!と歓声が上がっていた。
「マリエ様、素晴らしい!本当に素晴らしい艦です。最初鉄で船なんてと思いましたが、頑張って良かったです。本当に有難う御座います」
両手を握られてぶんぶんと上下に振られてあたしは目が回りそうだった。
「ジョン、駄目ですよそんなに乱暴にしたらマリエ様の手が抜けてしまいますっ!」
オリビーさんが慌てて止めに入ってくれて事なきを得たが、いやビックリした(笑)
「あ!申し訳ありません。つい興奮してしまいまして、、、いやぁ、面目も無い事です」
ペコペコと頭を下げて謝ってくれる姿、なんか微笑ましくもある。
「取り敢えず、目鼻は立ったので、直ぐに二番艦の建造に入りましょう。石炭の備蓄量も増やさないとあっという間に無くなってしまいますよ。ボウガン要員を迎えに行ったら、彼らにも採掘を手伝ってもらいましょう。人手は大切ですから」
「ええ、そうですね。明日からの改修が終わったら、早速迎えに参りましょう」
「で、ガリア帝国の方はどんな感じなんですか?もう、来ちゃいそうなんですか?」
一番の不安材料について聞いてみた。
「物見の報告では、港に兵が集まりつつある様ですが、まだ出航するまでには至っていないとの事です。やはり、船の調達に手間取っているみたいですね。木造の手漕ぎ船だから造るのは簡単でしょうが、兵を大勢乗せる大きな船は初めてなので、手こずっているようです。それに操船経験者がいないので急遽操船技術者を養成しているそうです。付け焼刃でどうにかなるものではないと思うのですが、大将軍がやると決めてしまったのでやるしか無いのが現状でしょう。命がおしいですからね」
「なるほどねぇ、後心配なのは要塞の建築なんだけど、今から取り掛かって間に合うのかな?ま、大勢動員して人海戦術でやれば、さほど心配する事もないのかな?みんな、実戦経験もあるし、防御陣地の作り方も教えてあるし、アンディ達に頑張って貰うしかないね」
「物見には連絡を密にする様に指示しております。それ以外にも、造船の現場にも手の者を忍ばせており、不慮の事故や出火などで作業が滞る様にしておりますれば、多少は時間が稼げるかと」
「やるわね(笑)意外とジョンも悪だったのね」
「悪だなんて、これは指揮官として当然の差配であります」
あたし達はこの様なのんびりとした状況だったが、他の仲間達はそれどころではなかった。マックスさんを初めとする現場メンバーはアルビオンの改修工事を早く終わらせ二号艦の建造を開始しなければならないし、ダニエルさんは二号艦の建造を直ぐに始める為の準備に大忙し。コリンさんは、二号艦の建造に必要な資材の調達に石炭の備蓄の指揮とてんてこ舞いだった。
建造に携わらない者は次の試験航海に向けて試験項目の洗い出しに余念が無かった。暇なのは、、、あたしとジョンと玄ちゃん位?ま、こればかりはしょうがないわね。新たな新兵器のアイデアを求めて島内散策にでも行きますかね。
アルビオンの方からは、鉄を打つ金属音と飛び交う怒声、何やら資材を担いで走り回る人、まるで戦場の様だった。でも、気のせいか人々の表情は明るい。やはり実物が目の前に有るのと無いのとでは気持ちの持ちようが違うのだろうか。そりゃあそうよね、頑張った結果が目の前にあれば、やりがいだって出て来るわよね、あたしも頑張らなくっちゃね。
『異世界転移は義務教育 ふたたび』
始まりました。
今回は、海戦物となるみたいです。
みたいと言うのは、マリエが勝手に動き回るのを、書き留めていくだけの作者なので
話しがどこへいくのかは、作者も知らないのです。
頑張ってマリエの活躍を書き留めていきますので
応援宜しくお願いします。
宜しければ、ブックマークお願いします。
P.S.
『異世界転移は義務教育 ふたたび』は、毎週金曜日か土曜日にUPする予定です。
余裕があれば、週の半ばにもUPしたいです。
勉強しながら書き進めて参ります。