6.再会
マリエの異世界冒険第二弾です。
好き勝手に書いて行きますので、宜しくお願いしますね。
本作品に登場する国・人物は架空のものであり、現実とは何の関係もありません。
似たような物を見た記憶があっても、気のせいです。念のため。
コリンさんの事務所で、パチンコの説明をして量産して貰う事になった。当然その前に森で威力の確認もした。木の幹に当たって粉々になったり、めり込んだりした木の実を見た二人は、お口あんぐりだった。そして、興奮したコリンさんは、こりゃ凄い!こりゃ凄い!と連呼しながらどこかへ走って行ってしまった。そんな後ろ姿を見ながら、あたしはオリビーさんと腹を抱えて笑ってしまった。
「あんたさぁ、どっからこんな物思いつくの?なんか、時々住む世界が違うんでないかって思うわよ。お家の方心配されているんじゃないの?いい加減、家に帰る事考えないといけないんじゃない?」
「あ、大丈夫です。あたし、どこにも行く宛が無いので全然問題ありませんのでご心配なく」
「ならいいんだけどねぇ」
「あ、あたしやりかけの事が有ったんだった。先に戻りますね。ジョンのお尻、突っついてみると面白いかも(笑)」
あたしは、笑いながら走り出した。セメントの玉がどうなったのか気になってしょうがないのだった。
実験場に戻ってセメント(自称)の玉を持ち上げてみた。すると、さっきは気が付かなかったのだが、ずっしりと重いのだった。そして、表面はカチカチに固まっていた。ザラザラで見た目はわるいが、しっかり固まっていた。
「ヒャッフー!!」
あたしは、嬉しくて思わず叫んでしまった。その際、あたしの小さな手からセメントボールが地面に落下してしまった。そして・・・
落下した玉は、ドスンと重厚な音と共にぱかっとふたつに割れてしまった。
あたしは、しばらく二つに割れた元セメントボールを見下ろしたまま固まってしまった。
ま、素人がいきなり成功する訳ないよね、ドラマじゃあるまいしねぇ。ま、想定内って事で次はどうしようかね。一応硬化したんだから石灰岩でいいんだと思う。後は、何を混ぜるかだけど。あたしの知識量じゃ限界があるかあ。確かネットで見た時に何かの灰って書いてあったとおもうんだけどなあ。
木の灰でないんなら何だろう?火山灰?そんなの有るのかな?火山かぁ、誰かに聞いて来ようかな。ついでに船の進行状況でも見てこよっと。
誰が知ってるかなぁ、やはり、年の功?マックスさんかな?でも、忙しそうだしなあ。その時、ふと中年の男性と目が合った。ロマンスグレーの髪をオールバックにして、いつも微笑みを忘れないダンディなおじ様。ピシッとしたシャツを着てジョンの後ろで黙って立って居るイメージが強いおじ様。確か、セバスさんだっけか。ニコニコ微笑みながらこちらにやって来る。あたしの前にくると、右手を胸の所に当てて、やや前かがみになって
「これは、これは、マリエお嬢様。何かをお探しの様にお見受け致しましたが、いかがなされましたでしょうか?」
「こんにちは、セバスさん。どなたか地質に詳しい人が居ないか探しているの」
「地質でございますか?わたくしでよろしければ、お伺いいたしますが?」
「いいんですか?この近辺で、火山灰の採れる所が無いか知りたいの。火山の有る所でもいいのだけど」
「火山灰がご所望でございますか。それでしたら、言い伝えがございますよ。この辺りの島は大昔一つの大きな山だったそうでございます。それが、火山の噴火と地殻の変動で海に沈み、一部分が島として残ったと言われています。すなわち、この辺の島は皆火山の一部ではないかと。探せば、この島でも火山灰の地層が見つかる可能性はあるのではないでしょうか?」
「そっかあ、ありがとう、セバスさん。探してみるわ」
あたしは、お礼もそこそこに駆け出した。
玄ちゃん連れて再び森の中に分け入った。居住区の周りの地面は普通に土だった。森の奥に入るにつれて土は腐葉土へと変わって行った。玄ちゃんに掘ってもらったが火山灰は出て来なかったので島の反対側の海岸まで出たけど火山灰は見つからなかった。この島にはないのか深く掘らないと出て来ないのかも知れない。ま、みんな忙しいし船の建造の方が最優先事項だから火山灰探しは一時封印して本格的な火山灰の捜索は落ち着いてからかな。あたし達はふらふらと港に戻った。
港ではボイラーの積み込みが終わった様で先ほどまでの賑わいは無かった。船台上の1号船の中を除くと中からは、威勢のいい声が響いてきた。みんな頑張って居るみたいなので、あたしは邪魔をしない様にそっと離れた。
さて、どうしようか。とりあえずジョンの所にでも行ってみようかな。港から離れて居住区に向かって歩いていると後ろの方、そう港の方がやけに騒がしくなった。振り返ってしばらく見ていると、疲れ果てた少々年配の一団がこちらに向けて歩いて来るのが見えて来た。あれは、先頭を歩いて来るのは確か帝国の侵攻を知らせに行った使節団のリーダーのグレンさん?そっか、帰って来たんだ。
グレンさんは、あたしに気が付いたみたいで、手を振ってくれている。あたしの前で立ち止まったグレンさんは、興奮している様で顔が上気しているようだった。
「おかえりなさい、グレンさん」
「おうっ、今帰った!これから御屋形様の所へ報告に行く。嬢ちゃんも来てくれ」
「ちょっ、ひゃあぁ、あぶないじゃないっ」
言うと同時に抱え上げられ肩に乗せられてしまった。
「四の五の言ってないで大人しく来ればいいんだ」
まるで、人さらいだなあ、もう。グレンさんは、体格もいいから歩く速度も本来のあたしの駆け足位に早いので、あっと言う間にジョンの館に到着した。
乱暴にドアを開け、大きな声で到着の報告を・・・・しなかった。
入るや、ソファーにどっかりと腰を下ろした。あまりの勢いで座ったので、あたしは墜落する様な錯覚に陥って、グレンさんの頭にしがみついてしまった。
「ジョン坊、やったぞ!話し合いに応じてくれそうだし、援軍も出して貰えそうだ!」
「グレン叔父さん、その呼び方は卒業して貰えませんですかねえ、もう子供じゃないんですからいい加減恥ずかしいですよ」
叔父さん?
「はっはっはっ、いくつになってジョン坊はジョン坊だ。そんな事より、向こうは詳しい話が聞きたいと言って来た。それでだ、エルトリア共和国との中間地点の島で会合を持つ事にした。向こうは防衛軍の司令官が御出馬してくれるそうだ。なもんで、すぐに支度をしてくれ」
「ち ちょっと待ってください叔父さん。いきなりですねえ、大丈夫なんですか?相手の事を良く調べもしないでいきなり会合なんて」
「心配したってしょうがあるまいて。護衛も付けるから大丈夫だろう。それに、協力が得られなければどのみち俺らは壊滅するしかないしなあ、一か八か可能性に掛けてみるのもええだろうて」
ジョンは、両手で頭を抱えて溜息をついている。ま、当然でしょうねえ。うん。あたしは肩から降ろしてもらい、ジョンの机の傍らに歩いて行った。
「ジョン、どうするの?行くならあたしも護衛に行ってあげるよ?」
「ほれっ、嬢ちゃんがここまで言ってくれてるんだぞ、即決せんかいっ!」
「分かってますよ。すぐ支度しましょう。バーレット、ホーリーウッドを出すぞ、大至急支度を」
「はい、直ちに出航出来る様に支度をします」
そう言うと従者のバーレットさんが駆け出して行った。ちなみにホーリーウッドは石炭採掘にも使って居る、ここで一番大きな手漕ぎの木造船だ。
「で、向こうの反応はどんな感じでした?」
「うむ、かなり驚いていたが、困っている国があれば全力で助けるのが、かの国のモットーらしくてな、今回の話もかなり好意的だったぞ」
「そうでしたか。話の分かる国でよかったです」
「なんでも、かの国も五年前の内戦時に助けられたそうでな。どうもいまいち話の内容が理解できなかったんだが、人外の力を持った少女に助けられて国の統一がなったそうだ」
「なんですか?それは」
ーーーーーーーど どこかで聞いた様な話しなんだけど、そういう事ってよくあるのかなあ?五年前って?
「俺にも良くわからんから、ジョン坊が直接聞いてくれや」
「そうですか、わかりました。ん?マリエ殿?どうしました?顔色が悪いようですが・・・」
「えっ?だ 大丈夫!何でもないわ。うん、元気よ。あたしもその話し聞きたいわあ」
焦ったぁ、あたし、そんなに変な顔していたかなぁ。
ホーリーウッド船長のコリンさんの号令の元、船は外洋に漕ぎだした。使節団はジョン、グレン、オリビー、前回の使節団の四名、あたし、玄ちゃん、漕ぎ手はそのまま護衛になるそうだ。
会合を行う島は海賊島から船で六日掛かるらしい。なんか、心臓のドキドキが止まらないんだけど。人外の力を持った少女って何?それって、、、いやいや、まさかぁねぇ。まさかとはおもうのだけど、心臓のドキドキが止まらないのはなぜ?どこか予感があるんだろうか?
あたしは、夜も眠れない状況だったが、そんな事とは無関係に時だけは過ぎて行った。もう考えてもしょうがないね、なるようになるさ、そんな事で悩んだりしない、それがあたしだもんね。そもそも何を悩んでたんだろ?怖い?そんな事ないよねえ、何だろう?何を悩んでいたのか分らなくなっちゃった。分らなくなったから、もう考えない。ノーテンキに生きるのだよ。うん。
甲板に出てみると、玄ちゃんが魚釣りをしていた。正確には船員さんが釣りをしていて、大物が掛かった際糸を引き上げる役目をしているのだった。元々怪力だったんだけど、いつのまにか物凄い怪力になっていた。飛来したロック鳥も張り手一発で吹き飛ばしていたしね。そう言えば、瞬発力と言うか反射力がべらぼうに向上している。あたしの能力がそのまま移ったみたいに。あたしは、普通の八歳児の能力に戻っているから、やはりあたしの力が移ったんだろうねぇ。何故?不思議な事もあるもんだよね、ま、いいけどねぇ。
そんな事を考えていたら、早速大物が掛かったみたいで船員さんが玄ちゃんに糸を渡している。糸を貰った玄ちゃんは力任せに糸を前足に絡めたまま船首の方に向かって歩いて行く。糸は船尾から水中に伸びているので、玄ちゃんが歩く度に魚は引き寄せられて行き、船縁まで寄った所で船上から無数の槍を撃ち込まれて白い腹を、、、でなく赤い腹を水面に晒して息絶えていた。エラの所にロープを掛けて船員みんなで甲板に引き上げる。この時ばかりは船も足を止めて全員の力を合わせて魚の確保に邁進する。急がないと、他の水中生物にかじられるのだそうだ。サメみたいなんだろうか?
仕留めた魚は全長五メートルはあるマグロみたいな魚で体の上部は金属光沢のある青緑色、体の下部は真っ赤。ヒレは真っ黄色で体中に白と赤紫の斑点があり、上半身は鎧みたいな骨で覆われている。極めつけは、目が四個も有る。食えるんか?この魚っ!今夜食べる分を残して身は塩漬けにするらしい。頭の骨と背骨や肋骨は武具にするそうだ。
調理担当の人達が捌くと言うので遠くから見ていた。長いのこぎりみたいな包丁?を持ち出して来て二人掛りで硬い頭部を切り落として頭の鎧の中にある身を掻きだしたら、胴体の解体に取り掛かった。お腹に剣みたいな包丁を突き刺し、尻尾に向かって切り裂いていく。すると勢いよく内臓が飛び出して・・・?飛び出して包丁を持った船員さんに襲い掛かってき た?襲い掛かって?腸が?なんで?死んでるのになんで?
飛び出して来た腸だと思ったものはピンク色をした巨大な、まるでアナコンダみたいなミミズ?だった。 そいつが、襲い掛かって来た が、船員さんまるで予期していたかの様に包丁で一刀両断に返り討ちにした。
な 何が起こったの?あたしは思わず立ち上がって口を両手で押さえたまま固まってしまった。
「ははは、お嬢ちゃんには刺激が強過ぎたかな?こいつを捌くと大概出て来るんだよ、この寄生虫。炙ると酒のあてに最高なんだよ。うまいぞー」
「・・・・・・・」
あたしは絶句してしまった。どうやらあまりの衝撃映像の為、意識が飛んでしまったみたいで、気が付いたら解体は終わっていて船員さん達が甲板を海水で洗い流していた。
現実世界に戻って来たあたしは、よろよろと船室に戻って、そのまま夜ご飯も食べずに寝てしまった。もちろん、夜中に何回も悪夢を思い出して目が醒めたのは言うまでもなかった。吐かなかっただけでもあたし凄いと思った。図太いんだろうか?
それから数日の後、目的の島に到着した。そのころには、あたしも体調が戻って来て食事も普通に出来る様になっていた。
島に到着すると、すでにエルトリア使節団は到着している様で、何隻もの船が停泊していた。こちらの船と比べると小ぶりな船ばかりで、動力は手漕ぎと風利用のハイブリットの様だった。
浜から少し奥に入った所に大きな幕舎が張られていて会合の準備がなされているのが分かる。幕舎の屋根に描かれている紋章には見覚えが無かった。なんか、ホッとしちゃった。そうだよね、エルトリアなんて名前知らないし、あの紋章も見覚えが無い、あたしの考え過ぎだったね。あたしが胸を撫でおろしている間にも船はどんどん岸に近づきやがて錨を降ろして上陸の準備が始まった。
あたし達は小舟に分乗して浜に向かった。浜ではエルトリア使節団の世話役の様な方が出迎えに出ている。浜で簡単な挨拶を済ませ、幕舎に向かった。全権大使が中で待っているそうだ。あたし達は、緊張の面持ちで幕舎に向かった。幕舎の入り口の両脇には武装兵でなく、宮中の従者の様ないでたちの人が立っていた。あたし達が到着すると、あたし達に向かって深くお辞儀をすると幕舎内の入り口の幕を大きく開放すると
「ハワード伯爵様ご一行様、到着に御座います」
あ、そっか、ジョンってハワード伯爵様の三男って言ってたっけ。すっかり忘れていたわ。
「どうぞ、お入り下さい」
中から落ち着いたちょっと年配の男の人の声がした」
「!」
この声?聞いた事があるっ、おっちゃん?チールのおっちゃん?え?ここって、まさか・・・・
気が付くと、後先考えずに周りの静止を振り切って幕舎の中に駆け込んでしまった。幕舎の中に入ると中央に長いテーブルが設置されていて、その向こうにかなり老け込んでいるが懐かしい顔があった。やっぱりチールネルゼン伯爵だ。チールのおっちゃんだ。あたしの事を見て驚いた顔をしている。向かって右隣には副司令だったアンドリュー・エドワード。左隣には軍団長のレイモンド・ライル。特殊部隊を率いていたウイリー・ウッドコックも居る。やっぱりここは、アザン帝国だあ。あたし、戻ってきたんだあ。
「お?これはどうした事かな。お嬢さん、ここは大人の話し合いの場所じゃ。お子様は外で遊んでいなさい、おい、誰か連れて行きなさい」
え?おっちゃん、あたしが分らないの?あたしだよ、マリエだよ!
あ、そっか、あたし子供になってるからわからないんだ。入り口に居た衛兵に抱きかかえられて外に連れ出されそうになった。
「おっちゃん~、あたしだよっ、あたしっ!わからない?」
思わずあたしは叫んでいた。おっちゃんは、一瞬不思議な顔をした。
「わしをおっちゃんと呼ぶのは、後にも先にもあいつしかおらんと思ったんだが・・・」
「だからあたしだって、マリエだよっ!」
「なんと、マリエだと言うのか?マリエはもっと老けていたと思ったんじゃが・・・」
むきぃぃぃぃぃっ!言うに事欠いて老けていたですと!
「飛竜に乗って、おしっこちびりそうになっていたくせによく言うわ」
「なっ!!!なぜその事を知っておる。あれは誰も知らないはずだぞ、マリエ以外は」
「だから、あたしがマリエだって言ってるでしょうに。アンディ、ウエルキン伯爵軍の攻撃は防げたの?あたしが指示して作らせた塀は役に立ったのかな?」
アンディとレイモンドは思わず立ち上がって驚愕の表情をしている。ウイリーは、椅子ごと後ろにひっくり返って顔だけこちらに向けている。そして、あたしの後ろでは事態が把握できずに立ち尽くしているジョン達が居る。
「理解できたかしら、あたしは戻って来たの。この世界にね。ただし、魔力は置いて来ちゃったから、今は普通の女の子だけどね」
アンディ達三人は、はじける様に走ってテーブルを回って来てあたしの前で土下座をしている。
「お帰りなさいませ、マリエ様。突然お帰りになってしまって、みんな悲しみに暮れておりました。あの戦いは、マリエ様のお陰をもちまして我々の圧勝でした」
「そう、よかったわ。あたしもあの戦いの結果が気になっていたのよ。みんな頑張ったね。素晴らしいわ。だからみんな立ってちょうだい。これから話し合いするんでしょ?」
みんな席に戻ったので、幕舎の入り口で恐る恐る成り行きを見守っていたジョン達を招き入れた。
「みんなに紹介するわね、今回ガリア帝国の侵攻をくい止める為に立ち上がったハワード伯爵家のジョン、ハワードにその片腕のグレンとオリビーね」
「遠いところようこそおいで下さりました、ま、お座りください。ああ、最近足腰がとみに弱ってしまってな、座ったままで失礼しますよ」
そう言うと、チールのおっちゃんは頭を下げた。他の三人も頭を下げている。そうかあ、おっちゃんもそんな歳なんだねぇ。呼び方も、おっちゃんじゃ失礼だから爺ちゃんって呼ぼうかな。
「それでは、失礼致します」
そう言うとジョン達も席に着いた。
「おそくなりましたが、わしはエルトリア共和国で政務顧問をしておりますチールネルゼン伯爵と申します。今回の会合では全権大使として参っております。そして、わしの隣におるのが、軍を統括する国軍最高司令官のアンドリュー・エドワード将軍。その隣は参謀総長のレイモンド・ライル中将でその隣は政府直轄の特別展開部隊の司令官ウイリー・ウッドコック准将です、宜しくお願い致します」
みんな、ちょっと緊張ぎみね。あたしはかえってリラックスしちゃった。
「こちらこそ、わざわざおいで頂きまして恐縮であります。で、時間がないので話を進めたいのですが、宜しいでしょうか?」
「もちろんです。マリエが出張って来ている位ですからな、ただならない事態だとは理解しております」
「あのお、ひとつおききしたいのですが、マリエ殿とはどのような?」
「マリエは五年前に我が国に現れましてな、戦いの神の化身と言いますか、行く先々で問題を巻き起こす疫病神といいますか、ま国難を救ってくれた恩人ですな。国家最高顧問をして貰っていました」
「褒めたりけなしたりひどい言い方。ぶー」
「間違ってはおらんじゃろ?はっはっはっ」
「我々も、とても助けて貰っていますが、なるほどねえ、次々に色々な物を発明してくれるので只者ではないと思ってはいたのですが、既に国家最高顧問だったとは・・・」
「で、ガリア帝国は本当に侵攻して来るのですかな?」
「はい、もう時間の問題だと思います。ただ、ガリアは陸軍国なので今回の様な海を渡るのは初めてでして、兵を運ぶ船など持ち合わせていませんので国を挙げて造船に取り組んでおりましたが、だいぶ数が揃ってきたので、そろそろ動き出すかと」
「なるほど。で、兵力はどの位なので?」
軍の最高司令官ともなれば敵の兵力は気になる所よね。
「我々が掴んでいる所では、百万~二百万、時間が経てば更に増えてくるでしょう」
「かなりの数ですな。そんな数の兵員と糧食を運ぶだけの船が出来たのですか?」
「いや、全ては無理でしょう。おそらく、先遣隊を送って橋頭保を作って後はピストン輸送でもするのではないかと思っております」
「ウイリー、山越えは無理か?」
さすがアンディ、国軍最高司令官。色々な可能性を考えているのね。
「無理ですな、兵を出すなら九割を失う覚悟が必要でしょう。わたしでしたら御免ですよ」
「うん、そうだよなあ。そうしたらやはり無理でも海から来るしかないか」
「無理ならこなきゃいいのに・・・」
思わずグレンさんが呟いた。
「・・・・・・・」
一瞬の沈黙の後、、、、、、大爆笑となった。グレンさんはばつが悪そうな顔をしている。
「そうですなぁ、そもそも何でそんな苦労をしてまで侵略に来るのか。田舎物のわたしらには理解できませんなぁ」
レイモンドさんがしみじみとつぶやいた。
「で?マリエはどう思っているんだ?」
突然チールのおっちゃんが振って来た。
「そうねぇ、先遣隊に上陸してもらって、橋頭保を作って貰ったら?補給のあては無いんだから補給線を絶ってしまえば直ぐに飢えて自滅するでしょ?自滅してくれたら又新しいお客さんに来て貰って餓死して貰う。これを繰り返せば相手だけ損害が大きくなって、その内諦めるんでない?その為にも、海岸線から少し入った所に要塞を作って待ち構えないといけないけどね」
「相変わらずおまえさんはえげつない事考えるのう」
「じゃあ、おっちゃんはどうするのよ」
「わしは、、、、、、お前に任せる。お前の判断は正しいからな」
「きったねぇーっ!じじい、きたねえぇぞおぉっ!!」
「何を言うか。わしは若い者に判断をする機会をだな、与えて勉強させてやろうと、敢えて一歩引いているだけじゃ。親心だと思って感謝せい」
「ほんっと、人間歳を取ると言いたい放題。ああ言えばこう言う。耄碌したくないねぇ」
周りのみんなは、どうなる事かとハラハラしながら二人の会話を聞いていたが、当の本人達はレクリエーションの様な感覚でやっているので、いい迷惑である。
「では、お互いに協力して対応すると言う事でいいですな。お互いの担当を決めないといけませんな」
ジョン達もアンディー達も、突然話の内容が戦いの事になったので対応できずに只頷くだけであった。
「ワシらは、海沿いに要塞を構築して奴らをくい止めれば良いですな?」
「うん、くい止めて居る間にあたし達が帰りの船を沈めて、更に増援に対応すればいいわね」
「マリエ?そっちは、人員は足りておるのか?」
「うーん、足りてはいないわよね?ジョン」
「あ、ああそうだな。強弩の射手が足りない よな?」
ジョンがグレンに確認をとった。
「足りないもなにも、強弩自体が全然出来ておらんわ。射手が足りないのははなからだから今更どうこう言ってもなあ」
身をのりだしたチールのおっちゃん、ジョンに話し掛けた。
「強弩とは?」
「マリエ殿発案の強力な弓らしいです、我々も実物はまだ見ていないのです」
「ああ、強弩は中止。作っている余裕ないし、火炎瓶が搭載出来そうだから要らないかなと。逆に海岸の要塞に配備した方が有効に使えるかなっておもうんだ。バンク・ミケルセンの鍛冶職人達なら早急に量産が出来るかなと」
「なるほど・・・では、職人達に作り方を教えて貰えるかの?」
「もちろんよ、図面描くから届けて頂戴。代わりにボウガンを射手ごと貸してもらえます?」
「ボウガンを射手ごと?それはかまわないが、どうするんじゃ?」
「新造している戦艦に射手として乗せたいの。百人位お願い」
「承知した、アンディ、手配はいいな?」
「はい、承知しました。マリエ様、射手達はどこに届ければよいのでしょうか?」
「うん、もう直ぐ戦艦の一号艦が完成するから、そうしたら試験航海兼ねて要塞のある海岸まで行くわ。そこで受け渡しでいい?」
「かなり遠いのだろう?間に合うのか?」
「大丈夫、あたしの関わった船よ。片道三日位で来れるわよ」
「!!!!!!!」
その場に居合わせた全員が絶句していた。未だかつて、そんな速さで航行出来る船など存在しなかったので当然と言えば当然の反応であった。
両者の話し合いは、この様な感じで和やかに?進んでいった。
その頃、ガリア帝国の首都ダフニスにある王宮では、エルトリア共和国を制圧する為の軍勢。西方遠征軍の発足式が執り行われていた。
皇帝により遠征軍の指揮官にデミティアヌス大将軍が任命され、その配下には国内から集められた百万を超える軍勢があった。
エルトリア共和国を攻めるには陸路と海路があったが、陸路は四千メートルを超える高い山脈を五百キロ以上走破しなくてはならず現実的ではなかった。選択肢は海路しかなかったのだが、ガリア帝国は陸軍国家であった為、海軍と言う物が無かった。船と言っても手漕ぎの小さな漁船が漁村に少数あるだけで、百万もの軍勢を運ぶ事は出来なかった。そこで、漁船を大型化した物を急遽建造していたが、やっと百隻を数えるに至って遠征軍の正式な発足となったのであった。
それでも、一度に運べる人数はせいぜい五千人程度でしかなかったのでデミティアヌスとその幕僚はまず先遣隊を送って橋頭保を築き、その後本隊をピストン輸送で送る方法を採用した。片道半月以上もかかる海路は片道特攻に近いのだが、大将軍の決定に意見など言える訳も無く粛々と準備が進んでいた。
片道半月もの海路は誰も経験した事が無い未知の行軍であり、まさにぶっつけ本番だった。普通であればこれをずさんな計画と言うのだろうがガリア帝国において、そんな事を言おうものなら即打ち首であった為、この様な無謀な事が堂々と国の作戦としてまかり通ったのであった。これは、エルトリア側から見れば幸運な事であった。
船は出来上がったものの、操船出来る者がいないので、漁師の手ほどきで操船訓練が始まった事が物見からの連絡でこちらの知る所となった。
『異世界転移は義務教育 ふたたび』
始まりました。
今回は、海戦物となるみたいです。
みたいと言うのは、マリエが勝手に動き回るのを、書き留めていくだけの作者なので
話しがどこへいくのかは、作者も知らないのです。
頑張ってマリエの活躍を書き留めていきますので
応援宜しくお願いします。
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P.S.
『異世界転移は義務教育 ふたたび』は、毎週金曜日か土曜日にUPする予定です。
余裕があれば、週の半ばにもUPしたいです。
勉強しながら書き進めて参ります。