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5.今日も大忙し

マリエの異世界冒険第二弾です。

好き勝手に書いて行きますので、宜しくお願いしますね。



本作品に登場する国・人物は架空のものであり、現実とは何の関係もありません。

似たような物を見た記憶があっても、気のせいです。念のため。


 マックス工房に来てみると、工房の外で大勢がガヤガヤしている。どうしたのかと近寄ってみるとボイラーの組み立てが終わって、コロを使って工房から港へと搬出の最中だった。物がおおきいので大勢で引き出す様だ。思ったより早い完成だった。やはりマックスさんの腕がいいんだなと感心していると声を掛けられた。

「おう、嬢ちゃん帰って来たか。どうだ?一番の大物は出来上がっているぞ。これから船に積み込む所じゃ。ほかの付属品も出来上がっているから順次搬出して向こうで組み立てるつもりだ」

「マックスさん、一流の職人だなんて言ってすみませんでしたあ、訂正します、超超超一流でございますわ。世界一の鍛冶職人です!」

「わはははは、そんなに褒められると照れるわい。ま、世界一なのは認めるがの」

「船の船体ってどの位出来上がっているのかしら?」

「大体の形は出来上がっておるぞい、あの滑車のおかげで作業がはかどる捗る、お前さんも世界一の発明家じゃぞ。わはははははは」

「あらやだ、おほほほ。世界一が二人もいるのですもん、この位訳ないですわねえぇ」

「そうじゃ、そうじゃ、そのとーりじゃ。で?ここに来たのはただの様子見では無いんじゃろ?ほれ、どうじゃ。言ってみ?」

 あたしは、頭を掻きながらよっしゃ!とガッツポーズをした。向こうから食いついてきたぜ。

「話が早くて助かりますわ。新たに攻撃兵器をお願いにきましたの」

「攻撃兵器じゃと?まだ何かあるんかい?」

「こちらは戦闘艦が二隻、まだ圧倒的に不利でしょ?だから使える物は何だって使わないと勝てない訳よ」

「お前さんが言うと、本当に勝てそうな気がするわい」

「あら、マックスさんも負ける気でしたの?」

「そんなことはありゃせんぞ、負けるつもりはないが、現実を見てみい、圧倒的に叩き潰すっていうより、こそこそと邪魔をして侵攻を遅らせるのがせいぜいじゃろうが」

「あらぁ、あたしは圧倒的に叩き潰すつもりでしたんですけどねぇ」

 マックスさんも頭をボリボリ掻きだした。

「で、何を作ればいいんじゃ?」

「んーとね、本体は大型のランプ。それにガラスで作ったレンズを組み合わせるの」

「なんじゃ、ただのランプじゃないかい。それのどこが武器なんじゃ?」

「ふふふ、ま、出来上がっての お た の し み」

「なんじゃい、そりゃあ」

「後で絵を描いて持って行くので宜しくお願いしまーす。またねー」

 あたしは、その足で別の工房へと赴いた。そこは推進用水車の工房だった。

「エマさ~ん、いるう?」

 ここの責任者は、エマさんと言うお姉さんで、いつも素敵なウエーブのかかったプラチナブロンドを振り乱して男達に雑じって戦っていた。物を作っているというよりも、戦っているという感じが近い感じがする。ほぼ形は出来上がっていたのだが、推進力に物足りなさを感じているみたいで、テスト用の五分の一の模型で羽の角度を試行錯誤していた。

「あら、マリエ~、どうしたの?尻叩きに来たのかな?」

「まさかぁ、エマさんのお尻叩いたら大変な事になっちゃうわよお。応援に来たのよ。悪戦苦闘してる?」

「うーん、そうね。出来上がってはいるんだけど、まだ満足はしていないわね。だって、そうでしょ?船の速度は全てこの羽の角度に掛かっているんだもの、万全の状態で渡したいじゃない。まだ、出来るはず、まだ、良くなるはず。そう思うとまだやめられないわね」

「うん、そう言って貰えると助かるわあ。後一歩だから宜しくね」

「ああ、任せな!物凄いの作ってやるからさ」

「じゃ、またねー」

 その後、港にあるドックに向かった。確かに、遠目にも船の形が出来上がっているのが見て取れる。全体的に今までの木造船と違って高さが三倍位増していて荒波にも耐えられそう。舷側も高くなっていて荷物の搭載量も雲泥の差なのが分る。側面には、無数の開口部が並んでいてここに強弩がズラッと並ぶ事になっている。この開口部は使用しない時は横スライドドアで塞げる様になっている。そして、船体中央よりやや後方に二本の煙突が左右の舷側に近い所から立ち上がる予定だ。

 甲板の上では造船主任のダニエルさんが陣頭指揮を取って居た。邪魔になるといけないので遠目で見るだけに留めた。船の脇には、完成した組滑車が待機していた。これからボイラーの積み込みで活躍するだろう。

 ぼーっと遠目でみていたら調達リーダーのコリンさんがやって来た。

「着々と工事が進んでいるなあ。お前さんが来て、すっかり雰囲気が変わったよ。みんな、生き生きしている。カルボ島はどうだった?」

「うん、もっと近い島では石炭取れないの?あそこは、往復するには遠いよ」

「近くにあればいいんだが、この近海の島で石炭が取れるのはあそこだけ。後は、白い岩ばかりだよ」

「白い岩?」

「そう、白くてもろいから使い道がなくて放置されているよ」

 白い岩・・・・・って、もしかして、あれ?あれの事だよね?

「コリンさん、その白い岩  見たい」

「見たい?あんなもの見てどうするんだい?すぐに粉になっちゃって何の役にも立たないぞ?」

「うん、でも見てみたいの。だめ?」

「うーん、ま、直ぐそこだから小舟でも行けるからいいけど・・・わかったよ、手の空いている奴に頼んでみよう。頼んで来るから、ここで待ってなさい」

「わーい、ありがとうっ、コロンさん」

「出来れば、コリンで宜しくっ!」

「えへへ、間違っちゃった。了解であります、コリンさん」

 っしゃあっ!白くて直ぐに粉になる石、近くには石炭もあるし、絶対石灰岩だよね。きっと石灰岩よ。コンクリート作れるかなぁ、うろ覚えでしか覚えていないんだけど、石灰岩を粉にして何かするとセメントになって、それと砂や砂利と水を混ぜるとコンクリートになるんだったよね。あー、もっと勉強しておけば良かった。とにかく、物を見てからだね。後はひたすら実験するっきゃないか。

 コンクリートが作れれば、要塞とか作れるかな。ビルとか建てられたらみんなの世界観も変わるよねえ。市街地も様変わりするだろうし、楽しみだわあぁ。


 舞い上がっていて、コンクリートがあるだけじゃビルは出来ない事に思いが至らなかったマリエであった。


 妄想でもりあがっていたら、ふいに名前を呼ばれた。ハッとして振り返って陸側を見回したが誰も居なかった。

「?」

 どこだっ?すると、再び後ろから声がした。陸側を向いたのに更に後ろ?それって海ぃ?

 再び振り返ると、小型の船がこちらに向かって接近して来る所だった。その舳先には見慣れた女性が。

「ほれっ、どっち見てるんだい。こっちだよ~」

「オリビーさん?」

 そう、舳先で手を振っていたのはオリビーさんだった。その船は、十五メートル位の手漕ぎ船で四人の漕ぎ手が櫂を握っていた。やがて船は岸壁に近づき、ゆっくりと右に方向を変えつつ接舷して来た。

「手を出してっ!」

 オリビーさんが手を差し伸べてくれている。あたしは右手を伸ばしてその手を握りしめると、体がふわっと浮いて次の瞬間船上の人となっていた。

「何か又面白い事を思いついたんだって?丁度手が空いたから付き合ってあげるよ。白い岩のある島でいいんだったね?それなら隣の島にもあるからすぐ着くよ。さぁ、出発するよー!」

 オリビーさんの合図で船は再び岸を離れた。あたしが、寂しそうにこちらを見ている玄ちゃんに大人しく待って居る様にと声を掛けると、船は速度を増して沖へと進路を取った。

 オリビーさんは、舳先に片足を乗せて前方を見ている。風に長いブロンドヘアーがたなびいている。

「ここんところ忙しかったからねぇ、いい気分転換だよ」

 たなびく髪をかき上げながらこちらに向かってウインクする長身の美女はなんとも魅力的だった。

「ならいいんだけど、余計な仕事増やしちゃったかなって・・・」

「こらっ、子供はそんな所に気を使わなくていいんだよ。もっと、自由奔放でいいんだ。今を楽しみな」

「う うん」

 なんか、いいなぁ。いい雰囲気。あたし、一人っ子だからこんな頼りがいのあるお姉さんが欲しかった。じっと見つめていたらふいに振り向いた。

「ん?どうした?目的の島は、ほれ右前方に見えるだろう。あの小さな島だよ。近いだろ?直ぐに着くからね」

「ほんと、近いのねえ。あんな近くの島に白い岩があるのに、海賊島には無いの?」

「無いねえ、理由は分からないんだけど、うちらの島は付近の島とは根本的に違っているみたいなんだよねえ」

「そうなんだ」

 地殻構造体が繋がっていないんだろうか?そんな所まで設定しているとは思えないんだけど、まあ、近くで手に入るのならそれに越したことはないから、深く考えるのはやめよう。

 天気がいいから気持ちの良い風が吹いてきて全然寒くない。漕ぎ手のお兄さん達は汗だくになっていて大変申し訳ないんだけど、あたしは快適。なんか、ウトウトしてしまいそう。この船の真下に見える巨大な影さえ見えなければね」

「ね、聞いてもいい?」

 あたしは、小さな声でオリビーに声を掛けた。

「ん?どうしたの?小さな声で」

「この海域って、危険な生物って   いる?」

「この海域に?んー、どうだったかなぁ?オスカー、この海域に危険な生物っていたっけ?」

 オリビーは、先頭で漕いでいるロンゲの兄さんに声を掛けた。

「この海域っすか?ほぼ、居ないっすよ」

「ほぼ?」

「ええ、デカイのが現れたって記録があったみたいっすが、ほとんど無いって事っすね。ま、何百年に一度みたいっすから、出くわす奴はよっぽどの悪運の持ち主っすねぇ」

「ですって」

「そのデカイ奴って、三十メートル位あって、長い首と長い尻尾を持ってたりします?」

「ほう、嬢ちゃん、物知りっすねぇ、その通りっすよ。そんなの、どこで見なすったんで?」

 オスカーさん、ニコニコと聞いて来るが、あたしは一番聞きたくない答えを返すしかなかった。

「あのね、今見たの。今、この船の下に居るの。あたし達、よっぽどの悪運の持ち主  なの?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「!!!!!!!!!」

 みんな、静かに船縁からそっと顔を出して水面下を覗き見て、そのままそっと顔を引っ込め、声も無く水面下を指差している。もちろん刺激したらまずいので漕ぐのは中止している。みんな静かにオリビーさんを見つめていて、オリビーさんはあたしを見つめている。

「あの子って、気性は荒いの?」

 オリビーさんはあたしの質問に黙ってオスカーさんを見るが、オスカーさんも周りの漕ぎ手の顔を見回してから引きつった顔で一言。

「だ 誰も見た事ないっす、ほとんど伝説の生き物っすから情報は何もないっすよ。もし、無事帰れたら、あっし達の報告が唯一の情報になるっすねえ」

「それは良かった。オスカー、報告書は宜しくね」

「あ は は は は、オリビーさん面白い冗談っすね」

 しばらく沈黙が船上を支配した。誰も恐怖で身動きすら出来なく思考も固まっていた。あたしを除いて。あたしは、ずっと水面下を観察していた。

「マ マリエ?怖くないの?」

 オリビーさんの声が珍しく震えていた。

「うん、そうね。とりあえず、草食性みたいだから刺激しなければ大丈夫かなあって」

「草食性って、何で分かるのよお」

 オリビーさん、もう泣きそうになっている。

「だって、口に牙ないし・・・優しそうな目だし」

「・・・・・・牙?ど どういう事っ!?」

「えへへ、今口の中に手を入れてるの(笑)」

 言うと同時に突然海面が盛り上がって巨大な顔が姿を現わした。

「ひいいいいいいっ!!!」

 謎の彼が顔を出した瞬間、オリビーさんを除く全員が海に飛び込んでいた。時間にしてほんの一秒。オリビーさんは船底で腰を抜かしていた。

「早っ!」

 あたしの右隣りには大きな これは恐竜?首長竜?でも、想像図とは似ても似つかない大きな優しい目をした可愛らしい顔があった。みた感じ敵意は見られない・・・と思う(当社比)だから、鼻の頭をそっと撫でてみた。ヒンヤリぬめぬめしていて、それでいてすこし固い?水から上がったカバを触るとこんな感じなんだろうか?でも、嫌な感じはしないかな。向こうも嫌がっていないので、更に顎の下とか眉間とか撫でまわした。すると、目を閉じて気持ちよさそうにしている。これは、これはもしかして、お友達になれた?

「ねぇ、この子大人しいよぉ。怖くないから戻っておいでよお」

 みんな、波間で顔を見合わせている。そりゃあ、すぐには受け入れがたいよねぇ、でもいつまでもこうもして居られないからみんなを急き立てる。

「早く戻らないと置いて行くよお」

 あたしは、首長君に向かって話し掛けてみた。通じるか分からないけど。

「あたし達、あの島に行きたい。引っ張って行ってくれる?」

 船の舳先に付いて居たもやい綱を手に持って、島を指差した。すると、綱をじっと見ていた首長君、おもむろに綱を咥えてあたしにお伺いを立てているかの様にアイコンタクトをして来る。後ろをみるとみんなは船上に上がって来ていたので、首長君に頷いてみせた。

 その瞬間、首長君の頭が水中に没し、物凄い加速が襲って来た。そう、手漕ぎ船がまるでモーターボートの様にダッシュしだしたのだった。みんな、必死に船にしがみついている。あたしも、飛ばされそうになりながらも必死にしがみついた。何故か、トカゲさんに貰った怪力は発揮されていなかったので船底で転がってしまった。


 時間にしてほんの数分、突如加速が無くなった。恐る恐る顔を上げると、目の前に目的の島があった。みんな、顔を見合わせて安堵の表情をしていた。前方少し離れた所に首長君が頭を出し、ゆっくりとこちらに向かって来る。そして、あたしの前に顔を寄せて来た。どう?凄い?とでも言いたげな顔をしている。

「ありがとうねー、助かったよお。又お願いねー」

 首長君にお礼を言って顔を撫でまくった。首長君もうれしそうに喉をゴロゴロ鳴らしている。まるで大きな猫だね、こりゃ。みんなは、荷物の陰に隠れてこっちを伺っている。意外と憶病?それとも、あたしが異常なのかしら?

「じゃあ、必要な時には又呼ぶからよろしくねー」

 すると、小さく吠えると再び海の中に帰って行った。そして、暫くしてみんなが荷物の陰から姿を現わした。みんな、顔面が蒼白だ。いい大人がだらしない。

「ほらほら、島に上陸するよー。島に着けてちょうだいよ」

「嬢ちゃん、肝っ玉が太いなあ、怖くないんかい?」

「本当っすよ。大したものっすよぉ。あっしなんかちびりそうだったっすよ」

「マリエ?あんた、本当に何者なの?なんで、意思の疎通が出来るの?本当に八歳なの?訳が分からなくなってきたわよお」

 みんな、まだ興奮と恐怖が収まらない様子で船底に転がって居て使い物にならない感じだ。

「みんな、まだ動けない様ね、いいわ、首長君呼んで島まで乗せて行ってもらうわ」

「おーい、くび・・・・もごもご・・・・」

 呼ぼうとしたとたん、すっ飛んできたオリビーさんに口をふさがれた。

「分かった、分かったから静かにしていて。ほれっ!みんな、船を出すよ。さっさとおしっ!」

 オリビーさんの物凄い剣幕に、みんな跳ね起きて櫂を持って漕ぎだした。

 怪物より、姉御の方がよっぽど怖いぜ  なんて呟きが聞こえて来たが、聞こえないふりをした、

 この島は周りが砂浜で囲まれていたので、容易に上陸が出来た。島の南の外れに木の生えていない白い岩肌丸出しの低い山が見えている。島の中央部はジャングルでは無くて低木がちらほらと見られる草原になっていた。大きさは野球場四~五個分って感じ?島というより岩の塊が海面に顔を出しているみたいな感じ。上空には小型の海鳥が多数旋回していて穏やかな感じの島に見えた。

 草原に入ってから、ふと足元の草を掻き分けてみた。そこには土は無く白い岩だった。どうやら島全体が白い岩に覆われて、と言うよりも巨大な白い岩の塊の上に草が根を張って自らの枯れた物を長年かけて堆積させて土の様な物を作り出して現在の草原を形成したんだろう。だから、大きな木は生えていないんだぁ。なるほどねぇ、まるで地学の実習だわ。

 ここは小さな島だったので三十分も歩かないで岩山に到着した。こりゃあ間違いなく石灰岩だわ。なんで間違いなくなのかと言うと、あたしがそう確信したからである。文句ある?ないわよね。うん。

「オリビーさん、この白い岩を削って粉にして持って帰りたいんだけど、いいかな?」

「こんなぼろぼろの岩でいいのかい?じゃあ、袋に詰めてさっさと帰ろう。ほら、さっさと袋に詰めるんだよ!削って粉にして詰めるんだからねー、わかった?」

「「「「へーい」」」」

 本当にボロボロで触るだけで粉になるのであっという間に袋詰めが終わった。そこで、あたしたちはお茶休憩をした。あたしが島を散策している間に四人組は船に戻って近くの浜に船を回してくれるそうだ。粉の袋は結構重いので、なるべく運ぶ距離を短くしたいのだろう。二十キロ位の袋が五つもあるのだから当然でしょう。

 草原を歩いていると、あちこちに鳥の巣が見られた。巣の中を覗こうとするとオリビーさんの叫び声が!

「マリエっ!上っ!上っ!」

 ほよっ?何事かと上を見ると海鳥が一直線に急降下してくるではないか!あたしは思わず頭を抱えて横っ飛びに転がった。するとあたしが立って居た位置を掠めて急上昇する鳥の姿が目に飛び込んで来た。あぶねー、頭に穴開けられるところだった。そっか、親鳥が巣の卵を守ったのかぁ。それにしても、気の強いと言うか、気の短い鳥だなぁ。あっ!又急降下して来たぁ。あたしは、頭を抱えたままオリビーさんの所まで逃げ込んだ。

 さすがに、剣を構えたオリビーさんに特攻をかける程命知らずでは無いらしく上空を旋回しながらこちらを伺っている様だった。攻撃は落ち着いたのでホッと一息ついた。

「はあぁ、ビックリしたぁ」

「あんた、怖かったでなくビックリしたなんだね、怖い物ってないの?」

「うーん、毛虫は怖いわよ」

 うん、あれはうぞうぞしていて気持ち悪い。あ、気持ち悪いであって、怖いじゃないか。怖い物・・・なんだろう?分からない。自分が怖い?なんてね(笑)

 あたしたちは、回航して来た船に荷物を積み込んで早々に島から撤収した。


 島から持ち帰った粉はあたしがお世話になって居るオリビーさんの家の裏に運んで貰った。船の方は軌道に乗っているみたいだから、あたしはここでセメントの実験に没頭する事にした。

 見た目は、セメントなんだけどなぁ、まずは、水で溶いてみる。空き缶に粉を入れ上から水を投入。木の棒でグリグリとかき混ぜてみるが、セメントをかき混ぜた事が無いので、この感じがいいのか悪いのか分からない。なんとなく粘性が高い様な気もするがどうなんだろう?暫く放置してみるが、どろどろしたままだった。他に何か混ぜるんだった様な。何だったか覚えていないんだよなあ。木の灰だったかな?いいや、何でもやってみよう。森に行って木の枝を集めて来て焚火を始めた。灰になる迄燃やすのって意外と時間がかかる。焚火の煙を見て何人かが覗きに来た。一言二言話すとみんな帰って行く。退屈しのぎには丁度いいんだけどね。

 やがてみんな灰になったので熱が取れるのを待って新たな缶に粉と灰を入れよく混ぜて、水を少しづつ入れながらかき混ぜていく。缶の中には灰色の泥が出来て来た。さっきよりもドロドロしていて粘着性もある・・・様な気がする。缶をひっくり返して泥を出して団子を作ってみた。ぎゅっと握ると泥の玉が出来た。一応形にはなっているようだが、成功か失敗か・・・分からない。兎に角暫く乾かしてみよう。

 乾く間、ぼーっとしていたら、船で一緒だったロン毛のおにいさん、確か そうオスカーさんだった。なにやら担いで現れた。

「嬢ちゃん、こんどはおままごとっすか?」

「ちがうよ、ちょっと実験しているの。オスカーさんこそ何運んでるの?」

「これっすか?これはね、荷物を縛る時に使うダンクルと言う魚の腸っすよ」

「魚の腸で縛るの」

「そうっす。腸を取り出して、この島で採れるクラドと言うシダと一緒に煮るっす。そうすると、ほれこんな感じに伸びる様になるっすよ。手を離すと元に戻るっす。面白いっしょ?」

 これって、、、

「引っ張って切れないの?」

「切れないっすよ。この弾力も煮る時間を長くするとどんどん強くなるっす」

「それだっ!」

「おうっ!ビックリしたあ。どうしたっすか?」

「それって誰が管理しているの?」

「これは、コリンさんっすよ」

「ね、それ一本貰えません?」

「いいっすよ、どうぞ。一束あげるっすよ」

「ありがとうっ!」

「じゃあ、頑張ってくだせい」

 こりゃあいい物を見つけたっす。じゃなくって見つけたわ。これって、ゴムの代わりになるじゃない。強弩よりも役に立つかも?これで大きなパチンコを作って火炎瓶を撃ちだせば遠くまで飛ばせるから敵の船を近く迄寄せなくても攻撃出来るから、一方的に叩ける。あたしの好みにぴったりだわ。早速見本を作ってジョンの所に持って行かないと。

 あたしは、すぐに森に行き二股の枝を探してパチンコを作った。近くに落ちていたドングリ位の木の実をいくつか拾い、ジョンの司令部に向かった。


「ジョンっ!居る?」

 ドアを開けると同時に声を掛けた。

「顧問殿か、どうしたのかな?二隻の鉄甲船の名前が決まったよ」

 ジョンは、お茶をのんで休憩していたが、笑顔で迎えてくれた。

「その船に搭載する強力な武器が出来たの」

「おおっ!それは、是非とも聞かなくては」

 あたしは自作のパチンコをジョンに見せた。

「これよ。パチンコって言うの」

「うーん、おもちゃの様に見えなくもないが・・・」

 にやり、あたしは心の中でほくそ笑んだ。

「この木の実、知ってます?」

「ん?それはよく森に落ちてる木の実だね」

「これ、お尻にぶつけられたら痛い?」

「こんなものは痛くもなんともないだろう。顧問殿でなく屈強な男がぶつけて来たって大した事ないと思うが?」

「じゃあさ、あたしがぶつけてみるから、お尻を出してみて貰えます?」

「ま、いいが、それが何なんだい?」

 ジョンは、立ち上がりお尻を向けた。

「レディにお尻を向けるのは気が重いんだが・・・」

 すかさず、あたしはパチンコを構えてお尻に向けて一発発射した。

「うぎゃああああああぁぁぁぁぁっ!!」

「ジョンは、叫び声と共に飛び上がってソファーの向こう側に頭からダイブしてしまった。

「どう?おもちゃの威力は大した事なかったかしら?」

 あたしは、ニヤニヤとソファーの陰から顔を出すジョンに向かって言い放った。

「な 何をしたんだ?」

「足元をご覧になって?木の実を放っただけですわ」

「こんな木の実のどこにあんなに威力が・・・」

「最初に申し上げたはずですわよ?強力な武器が出来たと」

 やっと立ち上がったジョンはお尻を抑えながらやって来てあたしが持っているパチンコをしげしげと眺めている。

「今のは、手加減したんですよ?思いっきりやったらどうなるか」

「なんとも、見た目に反してなんて恐ろしい」

「こんど、オリビーさんに渡しておきますね」

「おいおい、勘弁してくれよう、あいつは素手でも恐ろしいんだから、こんな物持ったら殺されちまう」

「誰が殺されるんですって?」

 突然ドアが開いてオリビーさんが入って来たのでジョンは、又ソファーの裏に隠れてしまった。あたしは、腹を抱えて笑ってしまった。

「物凄い叫び声がしたけど、何をやっているの?マリエ」

「船に搭載する新兵器をジョンに見せに来たの。許可が下りたら、量産して欲しいなって」

「それ?新兵器って?」

「そうよ、オリビーさんもジョンに試してみます?」

「おいっ!!勘弁してくれぇ、もう十分に味わいましたからっ。許可する、するから大至急量産に入ってくれたまえ」

「オリビー、話を聞いて量産に入る手はずを整えてくれ」

「はいはい、さっマリエ、打ち合わせするからコリンの所へ行きましょう」


 あたし達は、コリンさんの事務所に向かった。本体は木の棒じゃ心許ないから重いけど鉄のパイプにして船縁に設置すれば手で持つよりいいかも、ダンクルの腸ももっと強度を上げれば火炎瓶を遠方に飛ばせそう。

 あたしは、すっかりパチンコに夢中になっていて、セメントの玉の事はすっかり忘れていた。




『異世界転移は義務教育 ふたたび』

始まりました。

今回は、海戦物となるみたいです。

みたいと言うのは、マリエが勝手に動き回るのを、書き留めていくだけの作者なので

話しがどこへいくのかは、作者も知らないのです。

頑張ってマリエの活躍を書き留めていきますので

応援宜しくお願いします。

宜しければ、ブックマークお願いします。


P.S.

『異世界転移は義務教育 ふたたび』は、毎週金曜日か土曜日にUPする予定です。

余裕があれば、週の半ばにもUPしたいです。

勉強しながら書き進めて参ります。


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