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3.かめさんと灯油

マリエの異世界冒険第二弾です。

好き勝手に書いて行きますので、宜しくお願いしますね。



本作品に登場する国・人物は架空のものであり、現実とは何の関係もありません。

似たような物を見た記憶があっても、気のせいです。念のため。


 今日は、←(こんにちは では無く、きょうは と読んで下さい。)薄曇りで散策には最適だった。

 あたしは、海岸線を一人歩いている。皆にやるべき事の指示を出し終えて手が空いたので、いい機会だから自分を取り巻く環境を知るべく散策をしているの。

 左手は海。所々にそれ程大きくない島が点在していて、まるで映像で見た瀬戸内海の様だった。潜んで襲撃をするにはもってこいの立地に見える。潮の流れが早ければ帆船は自由に動けないだろうし、大船団で来ても横に広がれないから一隻づつ叩くのに具合がいいかも。後でジョンに聞いてみよう。

 右手は鬱蒼としたジャングルが浜辺まで迫って来ている。勿論、人っ子一人居ない。波の音しかしない静かな、ほんとうに南海の孤島って感じ?のんびり休養とるには最適な所よねえ。さっさと問題を解決して、ここでまったりしたいなあ。

 のんびり歩いていると、戦いが近いなんて信じられないようだった。何で平和な時間って少ないんだろう?人間ってホント凶悪だわ。

「ん?」

 前方の木の陰から誰かが覗いているっ。誰っ?目が合うと、さっと引っ込んだ。そんなに大きくはなさそうだったんだけど、何だったんだろう?

 しばらく歩いていると、ガサガサっと後方から草の擦れる音がする。振り向くと又さっと引っ込んだ。遊ばれている?

 暫く様子を伺っていたけど反応がないので、再び歩き始めた。すると、森の中から、ガサガサと草を踏み分ける音がずっとしている。それも、斜め後方同じ位置からしている事からあたしと同じ速度で付いてきている様だった。なんなんだろう?あたしを餌として狙って居るの?

「ようし」

 あたしは思いっきり駆け出してみた。暫く走った後、姿を隠せそうな手頃な岩があったので、その裏に隠れて追跡者を待ってみた。

 いくら待っても追跡者は現れず、もう諦めてどこかに行っちゃったかなと腰を上げて岩から顔を出したら、、、いた!森の木の影から顔を出している彼と目が合った。お互いに身じろぎもせず見つめ合ったまま、時間だけが過ぎ去った。

 どの位たったのだろうか。森から出て来る彼の気配に我にかえったあたしは無意識に岩から離れ彼の前に姿をさらしていた。彼は驚くそぶりも見せず、一歩ずつ姿を現した。

 彼は、そう、良く見慣れた姿をしていた。つるっとした頭部に四つん這いになった太くて短い手足。決定的なのは、胴体が巨大な鎧の中にすっぽりと収まっている事。そう、まさしく、彼はあたしの世界で言う所の”か め”。 タートル トータス 亀っ!

 平たくない尖った甲羅からするとリクガメ?トータスっぽい?大きさは、まだ壱メートルも無いから子供なんだろう。

 で、なぜかめさんがあたしを追いかけてくるのかな?そう頭の中で考えている内にかめさん、どんどん接近して来る。こ これは、攻撃しようとしてるのか?

 どうしよう。逃げるべき?

 でも、必至で寄って来ている姿、ちょー可愛いんですけど。おめめ、くりくりしてるし。そうこうしている内に、もう手が届く距離まで来ちゃった。

 あたしは、意を決して右手を差し出してかめさんの頭を押さえてみた。力持ちになったあたしの腕力なら抑え込めるかなとおもったんだけど、いらぬ心配だった。

 だってかめさんは、あたしに頭を押さえられたままじっとしているんだもん。どうも、逆らう気は毛頭ないようなのよね。

 試しに、頭を軽く撫でてみた。するとかめさんは、目を閉じてされるがままになっている。もしかして、なついている?初対面なのに?かめって、こんなに社交的だった?

 しばらく撫でていたが、きりが無いのでじゃあねと手を振って散策を始めたんだけど、振り向くと、、、後をついて来ている。懐かれた?連れて帰ったらみんなに食べられちゃうかなぁ?

 どうしよう、歩きながら考えるか。なっ、かめくん。すでに、あたしの横を歩いているかめさんにそう声掛けると嬉しそうにしている。(たぶん)


 それから暫く歩いたけど、同じ景色が延々と続いていた。右手は森で左手は岩がごろごろした磯。この島には山は無いみたいで、ひたすら森が広がっているみたい。隠れ家には最適かも。山は無いから川は無く、島内に何か所かある泉で飲み水を確保しているらしい。この泉は絶えず地下水が湧き出していて、海辺にも関わらず塩辛くない美味しい水が飲めるとか。ただし、森の深い所で湧き出している泉は、臭くて危険なので飲んでも触っても近寄ってもいけないらしい。

 今日の所はこの辺でいいかな?島の周りはつまらないから、こんどは、森の奥を探検しよっと。

 今日の散策はこれで終わりにして、あたしは集落に戻った。そして、マックスさんの工房に向かった。昨日の今日だからまだ準備の段階だろうと思っていたんだけれど、どういう事?なんと、ボイラーの回りを囲む鉄板が六枚、ほぼ出来上がっていた。後は溶接するだけだけど、ここには強力接着剤があるので貼りつけるだけみたいなんだけど、何でこんなに早いの?

「おうっ、嬢ちゃん。どうだ、こんな感じでいいか?」

 あたしは、予想外の出来事に口あんぐり状態だった。

「どやっ、ワシの手の速さ、恐れ入ったか(笑)」

 マックスさんドヤ顔でこちらにやって来る、

「え、あ、うん。恐れ入りました、さすがプロですね、いや超一流のプロです。恐れ入りました」

 あたしは、ぺこんと頭を下げた。

「うちの親方は、思い描いた物を形に出来るスキルを持ってるんですよ。世界でただ一人のスキルなんですよ」

 手前で作業していたあんちゃんが自慢げにそう言った。マックスはよせやいと頭を搔いている。

 いや、それって最高のスキルなんでないの?完成形さえイメージ出来れば何でも作れるなんて、まさにチート能力。今のあたし達に一番欲しい能力よ。

「ね、マックスさん、絵を描くんで石炭をくべる焚口たきぐちを作って貰えます?」

「おうっ、任せなっ!ところで嬢ちゃん、その後ろに居る奴はなんでい?」」

「ああ、この子?散歩してたらついて来たの。飼おうかな  って」

「物好きな奴だなあ、そんな奴飼っても何の役にも立たんぞ?」

「いいの、あたしのお友達って立ち位置だから。癒しになればいいのよん。ほら、描けたから見て」

 あたしは、ペダルを踏むとぱかっと開く蒸気機関車の焚口をイメージした絵を書いた、かなり良く描けたと思う(当社比)。

 他にも、燃え尽きた灰が下に落ちる様に底より一段高い所に熱に強い素材で網を作って貰ったり、落ちた灰を自動でかき出して船尾から船外に投棄するベルトコンベアーの様な物の絵も描き上げた。これらは、錆止め塗料が強い耐熱性を持っていなくては出来ない物だった。又、ボイラーに外気を取り入れる通風孔も設置予定だった。

 ボイラー部門は、問題無いようなので、他の部門も覗いてみた。他の部門もボイラー程ではないが、それなりに進んでいた。これなら、大丈夫よね。問題は、やはり船体部門かあ。一番大きな物を作るので難儀している様だった。

 船体を構成する鉄板はどれも大きく重い。それに反して人員は少ない。鉄板一枚移動するのにも大勢で四苦八苦していた。そりゃあそうだ、運搬する機械なんてないんだもん。クレーンでも有ればいいんだけど、あたしゃあ良くわからんし。

 困ったわねえ、どうしましょ。平行移動は台車に乗せればいいよね。持ち上げるには、、、、そうだなあ、あ、そっか滑車を使えばいいじゃん。

「ねえねえ、こんなの作って貰えます?」

 船体部門に居たダニーさんに滑車の部品を作る様にお願いした。覗きに来ていたマックスさんには鋼線をより合わせたワイヤーの作製を依頼した。滑車を使えば動滑車を一つにつき約半分の力で持ち上げられる  はず。動滑車をいくつか組み合わせれば重い鉄板も少ない人数で持ち上げられるから作業の能率が上がるでしょう。滑車が出来上がる迄の時間で滑車を吊り下げる三脚の為に森から木を伐って貰った。


 ちょっとしたアドバイスで各部門は活気を呈して来た。あたしの仕事はお終い。お昼を食べたら、今度は森の探索しよっと。

 かめさんと一緒にオリビーの家に戻った。ドアを開けたら、既にオリビーが帰って来て食事の用意をしていた。

「あらっ、お帰りなさ・・・・・・い? きゃーっ!きゃーっ!なにそれ、なにそれっ!!」

 あらら、オリビーさん腰抜かしちゃった。

「オリビーさん、かめさん見た事なかった?」

「無いわよう、第一この島の亀は人の前には姿を現わさないのよ。なんで、あんたが連れているのか理解に苦しむわよお」

 そうだったんだ。お前、変わり者だったんだね。

「ね、この子何食べるんだろう?」

「うーん、野菜クズでもやっとけば食べるんじゃないの?あんた飼うの?」

「うん、なついてくれてるから飼おうかなって」

 あのお、可哀想な物を見る目で見ないでくださりませぬか?

「いいわよ、ちゃんと世話してよ」

「はーい」

「さっ、お昼にするわよ。手を洗ってらっしゃい」

「はーい」


 午後から、かめさん連れて森の探索に出た。森の中を歩いていると小型の猿やら、うさぎみたいな小動物を数多く見掛けた。カンガルーみたいにぴょんぴょん跳ねる犬?みたいのも居た。みんな、あたし達をみると一目散に逃げていく。でも初日に見た様な大きなのはまだ見ない。

 だいぶ歩いて来たけど、森が延々と続くだけで何の変化も無い。そろそろ帰ろうかなあ。

 あ、そうだ。ずっと気になっていいたんだ。あたしの能力が突然変わった理由。あれから考えたんだけど。あたしが両手を突き出して気合を入れるとスキルが入れ替わるのかも。

 うーん、あんたで試すと、あたし、又のろまになっちゃうからそれはいやだなぁ。ま、いいか。その内なにかで試す機会もあるでしょう。さ、帰ろうかな。

「かめさん、そろそろ帰ろうか?ん?かめさん?、いつまでもかめさんじゃしょうがないか、名前つけないとねぇ」

 かめさん、不思議な顔であたしを見て首をかしげてる。やっぱ、名前って概念がないんだろうねぇ。

 でも、名前が無いと寂しいから、あたしは名前を付けるっ!でもセンスが無い。〇メラじゃ、ひねりが無いし、商標的にまずいか。んー、何も思いつかない。もういいや。

「あんたの名前決まったよ。あんたは今日から 玄武げんぶ よ!理由?そんなのないの、浮かばなかったから適当につけたの。神様の名前なんだからいいわよね。もう、決定!」

 ますます不思議な顔をするかめ改め玄武。

「さっ、帰るわよ」

 あたしは、さっさと集落に向かって歩き始めようとしたんだけど、玄ちゃんは森の奥を見つめたまま動かない。

「どうしたの?なんかいるの?」

 戻って玄ちゃんの元へ行ってみると、あたしの服の裾を噛んで連れて行こうと凄い力で引っ張りだした。なにか、いいたいんだろうね。

「奥に行きたいのね、いいわ、行きましょ」

 そう賛同すると、袖を離して歩き始めた。言って居る意味はなんとなく理解出来ているみたいね、この子。

 五分位歩いたあたりから、何か変な臭いが漂って来た。なんだろう、この場所に相応しくない臭い?でも、なんか馴染のある臭い。

 それから更に五分程歩くと小さな泉に出た。泉?違うだろう、これは泉なんてものじゃない。その液体はメタリックな輝きをしていて透明度はゼロ、おまけに周りに漂う異臭。これは、うん、これは間違いない、あれだよ。あれ。細かい事は分からないけど、あれ。灯油とか軽油とか言われるあれ。なんか、ドキドキしてきた。

 ここは、火気厳禁だから離れた所に行って試さないと。んー、なにか入れ物ないかなあ?周りを見回してもペットボトルが落ちている訳も無く、近くに落ちていた手の平一杯の大きさのカタツムリの殻にそっとすくって泉から離れた。

 苦労して集落いや、秘密基地まで戻りマックス工房の裏手に向かい地面に貝殻を置いた。さすがに、工房の中は、至る所に火の気があるので持ち込むのは恐ろしいのよ。

 木の棒に布切れを巻き、火を点けてもらい裏手に向かったんだけど、なんだなんだとみんなが付いて来ちゃったよ。あたしは、恐る恐る火を貝殻に近づけた。すると一気に火が付いて燃え上り炎が立ち上った。遠巻きに見ていたみんなは、突然燃え上った炎に驚き、飛びのいていた。物事に動じない感じだったマックスさんも尻餅をついて口をあんぐりとしていた。

「お、おまえさんは、一体何をしてるんじゃ?」

 うん、マックスさんの疑問ももっともです。

「まだ秘密~(笑)」

 燃焼試験終了、やはり灯油か軽油?あたしには区別付かないから、燃える水でいいでしょう。これは使えるよー、みんな世界観が一気に変わるでしょう。だから、公表は慎重にしないとね。後でジョンに相談にいかなくちゃ。

「えへへ、で、さぁ、作業はどんな感じ?」

 あたしは、それとなく話を逸らした。

「おう、お前さんの提案してくれた んーなんだ、ほれっ あれだ かっしゃだったか、あれを取り敢えず一組作ってみたんじゃが、ありゃあ凄いなぁ、まるで詐欺の様じゃの」

「詐欺って、人聞きの悪い。あれを使えば楽でしょ?」

「ああ、あの重い鉄板が軽々持ち上がるぞ。あれが有れば作業が格段に進むわい。たいしたもんじゃなあ、、、かっしゃっていう奴は」

「たいしたものなのは、あれを教えたあたしじゃあなくって?」

「わっはっはっ、そんなのはどっちでもええわい。ワシの作っているボイラーもあれを使えば楽に積み込みが出来るわい」

「はいはい、じゃあ早く完成させて下さいね。お じ い ち ゃ ん(笑)」

「こりゃああぁぁっ!だれがおじいちゃんじゃあぁっ!ぶわっかもおおおんっ!」

 あたしは、笑いながらそそくさとその場を離れた。見た感じ、みんな順調そうなので、ジョンの所に燃える水の事を報告に行く事にした。港に停泊している船を見ながら歩いていると、埠頭の所で船を見上げているダニエルさんが居た。

「ダニーさん、どうしたの?」

「おう、頼まれた滑車が出来上がったから一休みだよ。しかし、あの滑車って奴は凄いもんだなあ、重い物でも軽々持ち上がってしまう。うちらみたいに人が足りない所では願ってもない機械だよ。あれが量産出来れば作業がはかどる事間違いなしだよ、ありがとうな嬢ちゃん、いや顧問殿」

「ね、ダニーさん。今作っている鉄の船が出来上がったら、この大きな船はどうなるの?」

 あたしは、今まで主力船として準備していた二隻の木造の大型船の今後を聞いてみた。

「戦いは、鉄船がメインになるだろうから、こいつらは荷物運搬用に格下げかなぁ」

「だったら、一隻貰えません?」

「こいつをか?どうするね?」

「戦いは弓矢での遠距離攻撃が主流になるのは理解して貰えましたよね?」

「ああ、理解している」

「敵の数にもよりますけど、弓矢の消費が大きくなると思うんですよ。でも、船に積める矢も数が限られているから補給が必要になるんですよ。無くなる度にここに戻っていては戦いにならないですよね。」

「矢の補給に使いたいと?」

「ええ、一緒に出撃して後方で待機していて、矢が無くなったら合流して補給出来る様にしたいなと。そうすれば、直ぐに戦場に戻れるでしょ?」

「なるほどなぁ、それはいい考えだ」

「普段は、荷物運搬に使えば無駄にならないし、常にある一定数の矢を積んでおけば、突然戦いになっても即応できるでしょ?」

「うむ、そりゃあいい考えだ、それなら二隻ともそうしよう」

「ありがとう、ダニーさん」

「いやいや、こちらこそいいアイデアをありがとう。本当に助かるよ。あの鉄船が出来上がれば国軍とも対等に戦えそうな気がしてきたよ。今までの木造船じゃどう考えても勝ち目無さそうだったからなあ」

「あきれた、じゃあ今までは負けるつもりで準備して来たの?」

「あ、いや。そんなつもりではないんだが、本当に戦いになるのか、正直不安ではあったよ。でも、君が来てくれて不安が自信に変わった。みんなの目の色も変わって来ている。これからも、遠慮なくどんどん意見具申してくれ」

「だったら、出来た滑車を補給船に搭載して欲しいな。こうやって、甲板に垂直の柱を立てて、その根元から斜めに丸太を伸ばして、その先に滑車を付けて甲板から降ろせば荷物の積み下ろしが格段に楽に早く出来る様になるわ」

 あたしは、地面に絵を描いて説明した。ついでに、人力の巻き上げ機も提案した。今は手が足りないので無理だけど、船の建造が進んで手が空いたら人員を振り向けて貰える事になった。

 設計図を描きにダニーさんが作業小屋に駆けて行ったので、あたし達はジョンの所へ向かった。


 ジョンの家に行きドアを開けると、ジョンは応接セットの椅子に横たわっていた。

「ありゃ、お休みだったのね。ごめんなさい、又出直してくるわ」

 あたしは、そのままドアを閉めて帰ろうとした。あたしが不意に振り返ったので、階段を登りかけた玄ちゃんはビックリしてずり落ちそうになって居た。

「あ、マリエちゃんか、ちょっと休憩していただけだから大丈夫だよ。お入り」

 髪の毛をぼさぼさにしたジョンが起き上がって来て、椅子に座りなおしながら、髪の毛を手櫛で直していた。

「オリビーじゃなくてごめんなさいね」

「これこれ、大人をからかうもんじゃないぞ。で、何か思いついたのかな?」

 あたしは、玄ちゃんが入室するのを待ってドアを閉めた。

「ん?新しいお友達かな?ほう、ネッタイオオリクガメじゃあないか。臆病で,滅多に人前に姿を現わさない希少種なのに、よく友達になれたなあ」

「そうなんだ、浜を散歩していたら付いて来ちゃった。そんな希少種だったんだ、おまえさん。この子 玄武って言うの、宜しくね」

「そうかそうか、子供の純真な心に魅かれたのかな?ま、大事にしておやり」

 純真ねぇ、どちらかと言ったら、どす黒いんだけどねぇ。魔王だったし。ま、いいか。

 ジョンの向かいのソファーに腰かけるや否や、あたしは報告を始めた。

「あのね、森を散歩していたら凄い物を見付けちゃったの。この世界の常識がひっくり返る様なものだよ」

「そんなに興奮して一体何を見つけたんだい?この島は隅々まで調べ尽しているから、そんな凄い物は無かったと思うのだが」

 ジョンは怪訝そうな顔をしている。まあ、この世界の人じゃあれを見つけたとしても、あの有用性は理解出来ないだろうなぁ。使いこなせれば空だって飛べるなんて想像も出来ないでしょうね。

「港から真っ直ぐ南東の方角に行った所にちょっとした丘が有るのを知ってます?崖になっている所なんだけれど」

「ああ、もしかしたら、ガスの池の事かな?崖の下に物凄く臭い毒の池があるんだが」

「うんうんうんうん、それそれそれそれ。ガスの池って言うんだ」

「ああ、ガス・オーリンの池って言って、体に悪いから近寄る事は禁止しているが。あれがそんなに凄い発見なのかい?」

 そりゃあ、立ち入り禁止にして正解だわ。うっかりあんな所でタバコなんぞ吸おうものなら火だるまになる所だよ。

「そうだよ。石炭は固形の燃料。それに対してあれは液体燃料なのよ。あそこで火を使うと辺り一面火の海になるか、辺り一面吹き飛ぶわよ」

「なっ!!!!!!」

「立ち入り禁止にして正解よ」

「なぜ、そんなものがこの島に?」

「ま、偶然でしょうね。あれは、元々は石炭と同じ物だと言われているわ。それがある種の細菌によって分解されて液体になったらしいんだけど、あたしも詳しくは分からないのよ。でも、火を点けると良く燃えるから燃料になるのよ。燃料に使用するには時間が足りないから、あたしはあれを第二の武器として使いたいの」

「武器にだって?そんな事が出来るのかね?」

「あたしが言って居るのよ。疑うの?」

「いやいや、疑って居る訳では無いのだが、想像が出来なくってなあ」

「オリビーの家でガラスのビンを見たんだけど、ここで造られているのかしら?」

「いや、流石にガラスまでは作っていないんだよ。あれは、本国から取り寄せているんだ」

「じゃあ、大至急ガラスのビンを大量に取り寄せて貰えます?大きさは、そうねえ、その窓際の花瓶位のでいいわ。数はねえ、仕入れられるだけ。もしかして、高い?」

「いや、そうでもないぞ。お手頃価格だったようだが?」

「あのね、中に入れた液体が漏れなければいいから、いびつでもいいの。汚れててもいいの。中古でもOK。売り物にならない様なのでもいいから、大量に仕入れて貰えます?大急ぎで」

「わかった、今日仕入れの船が出るから、一緒に頼んでおこう」

 言うが早くジョンは部屋から飛び出して表の従兵に言づけして、戻って来た。

「で、どの様に使うのかな?」

「ん、ビンにあの池の水を入れて口をボロ布で塞ぐの。で、使う時に布に火を点けて投げるだけ。実際にやって見る?」

「ああ、見てみたいな」

「なら、用意するから、そうね三十分後にマックスさんの工房の裏に集合でいい?」

「うむ、宜しく頼む」

 あたしは、玄ちゃんを連れて再び森に戻った。ちゃんと入れ物を持って行ったのは言うまでも無かった。


 マックスさんの工房の裏に戻って来ると、そこは人で溢れていた。をいをい、みんな自分の仕事はどうしたんだあぁ?

「おうっ、嬢ちゃん、なんか面白い物を見せてくれるんだって?」

「見世物じゃないんだけどなあ。マックスさん、仕事は終わったの?」

「嬢ちゃんが面白い事をするっていうのに、仕事なんかしてられるけえっ」

 はいはい、みなさん、野次馬根性が旺盛でいらっしゃる事。ま、無関心よりはいいんだけどね。


 あたしは、用意したガラスのビンに燃える水を八割ほど入れ、布で栓をした。準備の出来たビンを持って、工房の前の岸壁に向かった。

「はーい、みなさん下がって下さいねぇ。どなたか火種をくださーい」

 野次馬に向かって片手を上げ、火種を募集した。すると、何を勘違いしたのか大勢に取り囲まれてしまった。みんな、手に手に火種を持ってあたしを取り囲んでくるから、、、、熱い。ちょー熱い。あたしを焼き殺そうっていうんかいっ。

「熱いからみんな離れてっ!そんなに火を近づけたら爆発するよーっ!一人でいいの、誰か一人いればいいの。収拾つかないから、ジョンでいいわ。みんなは、離れてっ!ほれほれ、早く散るっ!」

 やっと、みんな離れてくれた。ジョンに火種を用意して貰い、手順を説明した。って、説明する程の事もないんだけどね。

「さあっ、いくよーっ!ジョン、火を点けてっ!」

 あたしは、火の点いたビンを海に向かって投げた。

 海上にはもう古くて使って居ない小舟が浮かんでいる。その船上にはゴロゴロと大きな石が積んであった。

 石は真っ直ぐに船に吸い込まれて行き一瞬ののち業火に包まれ、岸壁は驚きの声が湧き上がった。

 船は一気に燃え上り黒煙と共に波間に消えて行った。それに対して岸壁は次第に沈黙が支配していった。そう、あまりの衝撃的な結果に言葉を失っていたのだった。

「どう?使えそうでしょ?」

「いや、これは、、、何と言うか、凄まじいものだなぁ。こんな武器があったんだな。手軽で安価で威力が凄まじい、これなら大量に準備出来る」

「これを船に積んで、敵船に投げつければ、白兵戦で被害を出すより効果あるでしょ。あたしのモットーなの、こちらは被害を出さずに一方的に相手を叩くのって」

「いやはや、参りました。直ちに大量配備いたします、軍事顧問閣下」

 ジョンは最敬礼でそう宣言した。その背後では野次馬軍団も最敬礼していた。





『異世界転移は義務教育 ふたたび』

始まりました。

今回は、海戦物となるみたいです。

みたいと言うのは、マリエが勝手に動き回るのを、書き留めていくだけの作者なので

話しがどこへいくのかは、作者も知らないのです。

頑張ってマリエの活躍を書き留めていきますので

応援宜しくお願いします。

宜しければ、ブックマークお願いします。


P.S.

『異世界転移は義務教育 ふたたび』は、毎週金曜日か土曜日にUPする予定です。

余裕があれば、週の半ばにもUPしたいです。

勉強しながら書き進めて参ります。


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