2.あたしに出来る事
マリエの異世界冒険第二弾です。
好き勝手に書いて行きますので、宜しくお願いしますね。
本作品に登場する国・人物は架空のものであり、現実とは何の関係もありません。
似たような物を見た記憶があっても、気のせいです。念のため。
程なく造船の主要メンバーが集まった。ここのリーダーであるジョン。造船主任のダニエル。鍛冶グループのリーダーマックス。資材調達リーダーのコリンそれにオリビーとあたし。ダニエルとマックスは、ここに来る迄に大方の説明を受けていた様だったが、胡散臭そうにあたしの事を見ている事から、あたしの事を認めていない事が見て取れる。まあ、予想通りだからいいんだけどね。
部屋に入って来るとみんな一様にあたしの事をジロジロと見た後、隣の人とお互いに顔を見合わせて苦笑いしている。くそう、負けないぞ。
「さて、新たに我々の軍事顧問に就任したマリエ嬢を紹介する。彼女を見かけだけで判断すると痛いしっぺ返しを食らうぞ(笑)」
ありゃ、ここでも軍事顧問になっちゃった。
「御屋形様、本気ですか?とても正気の沙汰とは思えませんが」
造船主任のダニエルが異議を唱えた。彼は、肩迄伸びた髪の毛を後ろで束ねた三十代後半と思われる兄さんだった。日に焼けて真っ黒な顔と赤みがかった髪の色が印象的だった。
「君は、鉄で船を作ったらどうなると思うかね?」
ジョンは、ニヤニヤしながらダニエルに問い掛けた。
「そんなの考える迄もないでしょう、子供だって判る事ですよ。そんな船、即沈むと言うか最初から浮かないに決まっているでしょう?鉄が浮く訳が無い、当然で当たり前の常識ですよ」
「当然で当たり前の常識だそうだ、マリエ殿」
あたしに振るんかい、しょうがないなあ。
「ダニエルさんでしたっけ?ダニエルさんの当然で当たり前のお常識では土の塊は水に浮きますか?」
「ん?何ばかな事を言って居るんだね?そんなの浮くわけがないだろう」
ジョンとオリビーが笑いをこらえて肩を震わしてる。
笑っていないで援護してよお、もうっ。
「じゃあ、その土を焼いた陶器は?」
「えっ?」
「ダニエルさんは、食器を洗った事は?」
「そりゃあ、毎日洗ってるぞ」
「湯呑、洗い桶の中で浮いたりしません?」
「あ・・・」
ふと、思い至ったダニエルさんが固まってしまった。オリビーは我慢出来なくなって、とうとう後ろを向いて吹き出してしまった。それを横目で睨んでいるダニエルさん、なんか可愛いかも(笑)
「どうだ?ダニエル」
ジョンは嬉しそうにダニエルに聞いている。ダニエルさん、とってもばつの悪い顔をしていたが、こちらに向き直し頭を下げた。
「申し訳ない、失礼をした。まんまとジョンに引っ掛けられてしまった様だ。外見で判断をして見くびってしまったようだ。お詫びする。」
なかなか、こう自分の非を認められる人はいないんじゃあないかな。とっても、好ましい兄さんね。ここって、人格者が揃っているのね、大したもんだわ。
「で、お若い軍事顧問殿、我々はいかがしたらよろしいのか?」
お、いきなり低姿勢?ふふふ、悪くないわね、こういうの。
「簡単よ。船の数じゃ勝てないんだから性能で圧倒するの。新しく建造する船のポイントは、三つ。攻撃力向上、速度の向上、防御力の向上ね」
「簡単って言うけど、どれもほとんど不可能な事じゃないかっ。攻撃力を上げるのなら白兵戦要員をもっと多く乗せなきゃならないし、速度を上げるには漕ぎ手を増員しなきゃならない。それには、船をもっと大型化しなくちゃならないし、大型化すれば速度は落ちる。どれも相反する事ばかりだ」
つい興奮したのかダニエルさんの口調は攻撃的になっていた。
「あ、ごめん、つい興奮してしまった。ごめん」
「だめよ、ダニー、こんな小さなお嬢さんに詰め寄ったら」
「うむ、我ながら大人げなかった。反省している」
それまで一言も発しなかった鍛冶屋のマックスさんが髭を撫でながら口を開いた。マックスさんは毛むくじゃらのドワーフさんだった。あたしに一番身長が近かった。
「それで鉄か。鉄で覆えば防御力は格段に上がるのう。しかし、重くなるから速度は遅くなるぞ?こぎ手を増やす以外に方法はないと思うのじゃが…」
「うん、その為にもマックスさんには一番頑張って欲しいの。作って貰いたい物が沢山あるけど、無理なら無理って言ってね。無理強いはしないから。誰しも能力には限界がありますもんね」
「何を言うか!わしに作れなかった事なぞ、一度だって無いっ!何でも作ってやるわい。何でも言ってみい」
かかった。この手の職人さんは自尊心をくすぐるとすぐに乗って来るって本当なのね。それにしても、単純(笑)
「頼もしい~(笑)頼りにしてますわぁ」
あたしは、用意して貰った紙とペンを持ってみんなを応接机の周りに集めた、
「まずね、いままでの常識は全部捨ててね、これから作るのは、まったく新しい概念の船です。ハリネズミの様な武装を持って、どんな攻撃も跳ね返す防御力。そして、いつでもこちらの望む形で戦え、いつでも逃げられる快速力を持った船です」
「そんな夢みたいな船が出来るのか?想像ができんなあ」
腕を組んで眉間に皺を寄せてダニーさんは呟いた。
「想像なんてしなくていいのよ、ただ実践あるのみ。想像でなく、創造すればいいの」
「う うむ」
みんな、わかったんだか、わからなかったんだか分からない様な不思議な顔をしている。唯一分かっている事は、訳が分からないって事だろう。(笑)
「じゃ、まずは絵を描くからそれを参考に試行錯誤しましょ?」
ふっふっふっ、こうなるかと思って、ちゃんと事前にネットで調べたんだからねえ。あとは、あたしの作画能力次第?それが一番不安なんだけどね。ま、やるっきゃないっしょ。
「基本的に白兵戦はしません、戦いは遠距離からの攻撃中心で行きます。漕ぎ手も不要です」
「帆船か?確かに風が吹けば速力は出るが、風が凪いだら身動きとれんぞ?」
「そんな不確実な事はしませんことよ。動力は人でも風でもなくて蒸気を使うの」
「蒸気って、お湯を沸かした時に出る奴?そんなので船が動くの?」
オリビーは、得体の知れない物を見た様な顔をしている。いや、みんながそんな顔をしている。ま、その内にわかるわよ。
「そうよ、その蒸気。帆船だと風が止まったら動けなくなるし、人力だと長時間は漕げないし、大勢乗せないといけないでしょ?だから、いつでも安定した動力が欲しいのよ。来る途中で見たけど水車は作れるのね。船の両脇にあの水車を組み込むの。水車を蒸気で回して進むのよ。」
「・・・・・・・・・」
もはや、質問も出なくなっているみたい(笑)みんな、頭の中ショートしているんだろうな。船に水車、きっと想像が出来ないだろうなあ。
今日は、船の形、推進器の水車、蒸気を発生させるボイラー、そこまでの説明を駆け足でした。部屋から出て行くみんなの足はふらついていた。
帰る二人を見送っているあたしの後ろに立ったジョンが腕組みをしながら独り言の様に呟いた。
「覚悟はしていたが、想像以上に刺激的な内容だったなぁ、いったいどこでこんな知識を覚えたんだい?それに、まるで国家技術院の導師様のお話を聞いている様な錯覚を覚えるよ」
国家技術院って、国の最高機関の一つで、国内で最も高度な技術を持っている役所なんだって。だから、国に対しても大きな発言力を持っていて、他国への侵略も技術院からの要望らしいの。戦争が無ければ新しい発明や新しい兵器も実証出来ないから実戦で試してみたいって事なんだろうけど、迷惑な話しよねえ。
「あら、言って無かったっけ?あたし、四千年位生きているのよ?(笑)」
「あははは、今なら何でも信じられそうだ。しかし、あの船が完成したら物凄い船になりそうだな、それだけは分かる」
「ねえ、ジョン。聞きたかったんだけど、帝国の侵攻の話し、その侵攻される相手国には伝えたの?」
「えっ?」
「その国にも知らせて、一緒に迎え撃った方が確実だと思うんだけど。海岸線に要塞でも作ってもらえば、抵抗出来るでしょ?それとも、話を聞いてくれない様な国なの?」
「な なるほど。そこまで考えが至らなかったな。なんとか邪魔をする事で頭が一杯だったよ。そうだよな、国を挙げて迎撃して貰えば強力な防御が出来るはずだな。確か、あの国の女王様は若いのにとても物わかりの良いお方だと聞いているし、あの国の陸軍はかなり強力らしいから頼んでみる価値はあるか。接触を計ってみよう。本当に大したもんだよ、お前さんは。我々にとっての勝利の女神だな」
「あら、魔女かもしれなくてよ?」
「はははこんな可愛い魔女なら大歓迎だよ」
「あらっ、ハワード様は幼女愛好家でしたの?知りませんでしたわ。わたし、少し考え直さないといけないわね」
「をいをい、オリビー勘弁してくれよぉ」
オリビーの刺すような視線に焦ったハワードは、猫なで声でにじり寄って居る。
あら、この二人なんかいい雰囲気なのね、ふーん
この日はこれで解散となりあたしはオリビーと帰った。
次の日も新型船の開発会議に明け暮れた。
船の動力は蒸気機関を採用、船体中央両脇に設置する大型の水車を回して進む形を取る事にした。だって、エンジンもスクリューも作れないし、ガソリンも無いから一番簡単な蒸気機関しか思いつかなかったんだもん。浦賀に来航した黒船を想像するといいのかも知れない。勿論戦争用なので、もっといかつい形になるが。当然、蒸気機関なんて理解が出来なく説明に難儀したのは言うまでも無かった。この世界の船は、帆船か手漕ぎしか無いらしい。
船の大きさは、全長百メートル、全幅十六メートルとした。この世界で運用している船の中では、比較的大型になるらしい。ここの主力船とほぼ同じ大きさだが、こちらの方がスマートな感じになる。帝国の軍艦は、白兵戦要員と漕ぎ手を大勢乗せるので横幅が広くなるのが一般的らしい。あたしは、殴り合いは好きじゃない。やるなら、一方的に殴りたい。それには飛び道具が一番。ボウガンを強化した強弩をハリネズミの様に搭載して火矢攻撃で燃やしてしまう。これしかないでしょう。
仕組みは、まず水を満たした容器の下に設置したボイラーで石炭を燃やす。すると、容器の水が沸騰して水蒸気が発生する。体積が増えた水蒸気はパイプを通ってタービン室に送られ、そこでタービンの羽|(水車の様なもの)を回し、タービンに直結してある水車を回した後、船底にある復水器で冷やされて水に戻り、再びボイラーで水蒸気になるというサイクルで船は進む はず。たぶん。
これを二組並べて配置して左右の水車を一個ずつ回して速度を稼ごうかなと。
乗員は、釜焚き要員が予備を含めて十四人。強弩の射手が一列二十人が三段で基本的に片舷攻撃に専念すれば六十人で済むはず。矢の補充要員が十人。これに艦橋要員が十名、医療班が六人の合計百人。二隻で二百人。人員が少ないのだから、これで目一杯でしょう、人員の補充は行って居るらしいけど、秘密が露呈してしまってはいけないのでおおっぴらには募集出来ない所が辛いわよねえ。弱小企業の辛さってとこね。ま、だからあたしがテコ入れしているんだけどね。
時間がないので蒸気機関の作成が始まった。まず、マックスさんには、部下をいくつかのグループに分けて、ボイラー、配管、タービン、復水器、船の外板、水車とグループごとに作製して貰う事にした。
鉄板の接合をどうするか悩んでいたら、ダニエルさんが良い事を教えてくれた。何でも、近くの島に居る大型のトカゲの血液にこの島の近海で獲れるヒオドンと呼ばれるアジの様な魚の血液をある比率で混ぜプレグと呼ばれるブドウの様な果実と混ぜると強力な接着剤になるそうだ。鉄も接着出来るとの事なので採用ね。二枚の鉄板を並べて接合部の裏に補強の鉄板を接着すれば表面に段差が出来ないから水の抵抗は最小限に抑えられるはず。早速大量に用意して貰おう。
燃料になる石炭も、近くの島で採掘される様で暖房や煮炊きに使っているらしい。これもコリンさんに頼んで、大量にストックして貰おう。石炭用のスコップも作って貰わないと。
攻撃用の武器として、ボウガンを大型化して強化した強弩を両舷側に大量設置する予定。使うのは常に片側だけにする、人が足りないから。他に接近された時用に火炎瓶も用意する予定。だって、相手は木造船だから燃やすのが一番でそ?でも、油、そんなにあるかな?
問題は、あたしのネットでのにわか仕込みの知識でこれだけの物が作れるのかって事。正直、物凄く不安。自信ありげに言っておいて、出来ませんでしたじゃあねぇ。
ああ、そうそう、これらの機関は鉄製だからもろに錆びそうなんだけど、なんと錆避けの塗料があるそうな。これも大量に用意して貰わないとね。
とりあえず、百メートル級の主力艦を二隻。その他に、小型の簡易型を多数作りたいんだけど、なにせ、ここは人が少ないからねぇ。人員を効率よく使わないと間に合わないわね。
もう、指示出来る事は無いし、うろうろしてても邪魔になるから、森にでも散策に行こうかな?歩いてる内に何か思いつくかもしれないしねぇ。と、言う事で明日は散策しまーす。今日はお世話になっているオリビーの宿舎で用意されているご飯を食べて大人しくしてます。オリビーさん、深夜まで帰って来ないみたいだし。みんな、忙しいのね。忙しくさせたのはあたしなんだけどね。
あたしは、、、明日の為に寝まーす。 おやすみなさーい。
『異世界転移は義務教育 ふたたび』
始まりました。
今回は、海戦物となるみたいです。
みたいと言うのは、マリエが勝手に動き回るのを、書き留めていくだけの作者なので
話しがどこへいくのかは、作者も知らないのです。
頑張ってマリエの活躍を書き留めていきますので
応援宜しくお願いします。
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P.S.
『異世界転移は義務教育 ふたたび』は、毎週金曜日か土曜日にUPする予定です。
余裕があれば、週の半ばにもUPしたいです。
勉強しながら書き進めて参ります。