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16.帝国開放

マリエの異世界冒険第二弾です。

好き勝手に書いて行きますので、宜しくお願いしますね。



本作品に登場する国・人物は架空のものであり、現実とは何の関係もありません。

似たような物を見た記憶があっても、気のせいです。念のため。


 ガリア帝国の王宮を見下ろす小高い丘に到達した反乱軍は、ここでその進撃を止めた。デミティアヌスに付いて来た兵は二万とちょっと。一方王宮の守りを固める親衛隊は五千人には満たないであろうと考えられている。このまま強行しても押し切れるとは思えるが副官のメセナミンの進言を取り入れて後続の兵を待つ事にした。

 しかし、いつまでも待つわけにはいかないのは道理でデミティアヌスが示した期限は明日の夜明け迄であった。

 予定では、後続が続々とやって来るはずだったが、今の所後続は現れない。

「メセナミン、一体どうなっているのかっ!」

「これは想定外の事態であります。只今様子を確認に行かせておりますれば、暫くお待ち下さい」

「夜明けには突撃だ、増援など居なくても親衛隊ごときに遅れはとらん。いいな、夜明けと共に突入だ」

 言うだけ言うとデミティアヌスは幕舎に下がってしまった。

「さて、ここまでは予定通りだな。正規の後続が来ないところを見ると海岸に向かっているのだろう。後は俺が待って居る増援が来たら明け方と同時に王宮に突入するだけだが・・・」

 後続の事を考えている内に、いつしか時間が経ち日も落ちて来た。王宮に偵察に行かせた斥候が戻って来て報告をして行った。

 守りに就いている親衛隊の数が想像より少ない様だった。どうも、大将軍と真っ向から戦う事の愚かさをちゃんと認識出来た者は賢くも逃走してしまった様で、実質守りに就いて居るのは僅か二千名程度だと言う。これなら、後続が来なくても容易たやすく制圧出来るだろう。心配のし過ぎかもしれんな。敵に大賢者の様な知恵者が居るのならまだしも、親衛隊とは言え、満足に戦いを経験した者が居ないのだ、満足に戦いなど出来るわけも無いか。

  

 その頃、海岸での戦いは熾烈を極めていた。各々当初の五万の兵に増援の五万が加わり果敢に攻撃を繰り返していたが、艦隊からの炎の長距離攻撃に晒され兵達は次々に炎に焼かれ次第に数を減らしていき、守りに徹するので手一杯になっていた。

 その後も、間断なく増援が到着していたが、夜通し現れる少人数のゲリラに悩まされて、ついにナイセリア(兄)は最寄りにあった城壁を持つ街まで後退してそこに立て籠もって持久戦に移る決断をした。ナイセリア(弟)も後退したが、適当な拠点が見つからず、小さな農家の集落まで後退して抵抗を続けていた。エルトリア軍は軍艦からゲリラに至るまで見た事の無い武器を所有しており、一撃離脱の繰り返しで被害は甚大であった。


 そして、夜空が白み始めて来てついに運命の刻限となった。兵達は突撃の為の準備を終わらせ、デミティアヌスの号令を待っていた。

「さて、時間だ。増援などいらん、この兵力だけで攻略を行う。さあ、行くぞーっ!者共、後に続・・・・・?」

 その時、後方がにわかに騒がしくなった。

「何を騒いでいるかっ!!」

 後方に居た兵士が駆け込んで来て片膝をつき報告する。

「大将軍様っ、増援です、増援が来ました」

 兵達が二つに分かれその間から兵士の一団が現れた。

「やっと来たか。貴様らはどこの者かっ!」

 兵の先頭に居た指揮官と思われる兵士が、片膝をつき報告をする。

「我々はハワード伯爵家から大将軍閣下をお守りするために派遣されて参りました。戦列にお加えくださりますように」

「うむ、殊勝な心掛けだ。何名おる?」

「我々は先遣隊で百名居ります。本体は四千名、後から参ります」

「うむ、分った。戦列に加わりせいぜい功名を上げよ。よし、者共っ、突撃だあっ!」

 反乱軍は一団となって、王宮へと攻め上って行った。

 この時現れた百名の増援は、もちろんガリア兵に扮装したウイリー指揮の特務部隊であった。

 デミティアヌスは疑いも無く味方として引き入れたが、副官のメセナミンは険しい眼差しで彼らを見つめていたが、何も言わず黙って大将軍に続いて突撃して行った。その口元には僅かな笑いが見て取れたが、それに気づく者は居なかった。何故居なかったかは・・・・・やめておこう。


 反乱軍の一団は、王宮の裏手に回った。そこには、王族が脱出する時の為に密かに用意してあった政府のほんの一握りしか知らない秘密の通路があった。

 反乱軍は、秘密の通路から王宮内に雪崩れ込んだ。もちろん、守って居た親衛隊ですらその通路は知らされておらず、突然湧き出す様に現れた反乱軍に不意を突かれて組織だって抵抗する事も叶わず、ほぼ無抵抗で分断され一方的に各個撃破されていった。

 戦局の趨勢すうせいが決まったと判断したデミティアヌスは城の上部にある皇帝の居室を目指した。もちろん、皇帝を押さえる為であった。副官のメセナミンやウイリー達も後に続いた。ウイリー隊の内五十名は後に続いて、残りは脱出路確保の為、王宮一階で階段を守っていた。

 デミティアヌス一行は皇帝の居室に向かって階段を駆け登り、疾風のごとく通路を走っていたが、その速度は次第に速度を落とし、しまいには立ち止まってしまった。そして周りを見回しながら呟いた。

「一体どうした訳だ。この辺りは、ロイヤルルームで一般の者は近寄る事も叶わない場所のはずなのに、何故、こんなに荒らされているのだ?おまけに人っ子一人居ないではないか。皇帝は既にどこかに避難してしまったというのか?」

 さらに奥に進むと、いかにもな部屋が現れた。元は贅の限りを尽くした豪華な部屋だったであろう事は見て取れる。始めて見た者でも一目でわかる程の豪華な三十畳はありそうな部屋、皇帝の部屋なのであろう。デミティアヌスも何度か訪れた事のある領域であったが、以前見た感じとはまるで違っていた。今はさながら廃墟の様であった。

 そこに有ったはずの豪華な調度品は既に無く、持ち運べそうな調度品は跡形も無くなり誰も居ない荒れた部屋だった。いや、よく見ると奥に下着姿の男が倒れている。

 ゆっくり近寄ったデミティアヌスは息をのんだ。そう、たおれていたのは、紛れも無く皇帝その人だった。斜めに袈裟懸けに斬られた跡が生々しく、全身血まみれで既にこと切れていた。

「なんてことだ」

 後から駆けつけた副官のメセナミンも一目見て息を飲んだ。

「暴徒にやられましたな。これは非情にまずいですな。このままでは閣下がなぶり殺した事にされてしまいますぞ」

 メセナミンは、デミティアヌスに背を向け、ウイリーをちらっとみて思わせぶりに一瞬口元に笑いを浮かべた。そして、デミティアヌスに振り返った。

「閣下、まずは城内を掌握する必要があります。バルコニーに出られて、城内を完全制圧した事を宣言するのが良いでしょう。そうすれば、親衛隊も無駄な戦いは控えるのではないでしょうか」

「うむ、そうだな。そうしよう」

 そう言うと、デミティアヌスはバルコニーに向かって歩き出した。その後に続く様にメセナミンもバルコニーに向かって歩を進めたのだが、その際彼はウイリーに不自然に接近して来た。そして、小声で一言。

「今がチャンスですぞ」

 ウイリーは一瞬ぎょっとしたが考えている時間はなかった。メセナミンに続いてウイリーもバルコニーに出た。

 デミティアヌスの右後ろにメセナミン、左後にウイリーという立ち位置になった。喉が張り付く様な渇きを覚えたウイリーはメセナミンをちらっと見た。その瞬間メセナミンもウイリーに視線を送って来て   そして、小さく頷いた。どういうつもりだ?

 事ここに至って選択肢はなかった。失敗しても自分の命ひとつで済むのだ。そう決心したウイリーは、デミティアヌスが宣言をしようと両手を広げたその瞬間


 鍛え上げたその脚力をフルに使って、、、、、デミティアヌスの背中に体当たりをした。


 驚いた事に、、、、いや、予感はあったのだが、ウイリーと同時にメセナミンも体当たりをしていた。


 叫び声を上げながらデミティアヌスはバルコニーから遥か下の王宮の中庭に落ちていった。

 バルコニーの手摺りから呆然と下を覗き込むと遥か下方には大の字になって次第に血の池に沈みつつあるデミティアヌスの姿があった。

 やった、俺は任務をやり遂げたんだ。これでマリエ様に胸を張って報告が出来る。暫く頭が真っ白になったみたいで立ち尽くしていたが、ハッとして振り返ってメセナミンを見た。

 彼もこちらを真正面から見つめていた。時間が凍り付いた様な永遠とも思える時間が過ぎた感じがした、おそらくほんの数秒だったのだろう。

 喉が渇いてしかたがない。無意識に唾を飲み込んだウイリーの口から出た言葉は簡潔だった。


「な   ぜ   ?」


 メセナミンは微笑んでいた。

「お疲れ様でした。任務終了ですな」

「な・・・・・・・」

 常に平常心を自慢としていたウイリーをもってしても、この事態は動揺を禁じ得なかった。頭ではまったく理解が出来なかった。ただ、本能でメセナミンの行動を予想出来たに過ぎなかった。

 メセナミンは、バルコニーの前面に立ち、下界に向かって声を張り上げた。

「皆の者、反乱の元凶であるデミティアヌスは処断した!全員直ちに争いを止めたまえ!」

「悲しい事であるが、皇帝陛下は崩御なされた!故に一時的に、この王宮はこのメセナミンが預かる。速やかに全員が我が指揮下に入る事を命ずる!我が指示に従い、事態の沈静化に務めよ!」

 それだけ宣言すると、メセナミンは振り返ってウイリーの元にやって来た。


「今後は大賢者であるランドル様が国内を纏めていく事になります。ウイリー殿も大活躍でしたね」

「ど・・・・・・・」

「どうしてランドル様のご存命の事を知っているのか?ですよね。当然の質問です。実は私はランドル様の弟子なんですよ。ランドル様が海からの無謀な遠征に行かされた頃からデミティアヌスには反感を持っていました。以前からあの脳筋は人の上に立つ技量は無いと思っていたんですよ、なんとかせねばと。そんな折のエルトリア遠征でした。ランドル様の侵攻失敗の報を聞いた時、私は信じられませんでした。あの方が失敗するなんてと」

 そこまで一気に話すとゆっくりとバルコニーの方に歩いて行き、振り返って手摺りにもたれかかった。

「私は打ちひしがれ絶望のどん底でした。そんな時です、一人の少女から手紙を貰いました。そこにはランドル様が生存されている事が、そしてこのままでいいのか?侵略に明け暮れる毎日でいいのか?熱い思いが延々としたためられておりました」

「その手紙にはランドル様の直筆の手紙も添えられておりました。その手紙には、本当の大賢者に出会ったと書いてありました。見かけは少女ながらその先を見通す目はまさに大賢者であると。国の為を思うのならその少女に協力せよと。国の将来に関しては、誰にも言えず不安を抱えておりました。デミティアヌスうんぬんと言うより皇帝が支配していては駄目なんだと。皇帝などお飾りで、政治は側近達が自分達に都合の良い様に行っていました。彼らを排除するには全てを取り払う必要があったんです、大手術が。ですからあの手紙は渡りに船でした。一も二も無く私は飛びつきました。

「そんな事が・・・」

「その後、その大賢者の少女から指示が来ましてね、山に登って半月程歩いたら大将軍を説得して山を降り、山を降りたら王宮を襲えと。その際特殊任務部隊を差し向けるので協力してデミティアヌスを討ってくれと」

「なんと・・・メセナミン殿は全て知っておられたのか?お人が悪い」

「いやぁ、申し訳ない。あまりに事が大きいのでな、話すのを躊躇ってしまったのだよ。それに貴殿をみていてこの御仁は頭が切れるから、話さなくても察してくれるだろうと妙な確信を持ってしまったのだ。実際、貴殿は察してくれて作戦は大成功だったではないか」

「そんなに高く評価をして頂けた事は大変に光栄ではありますが、なんとも、言うべき言葉が見つからない」

「まあ、怒らないでください。ランドル様は実に有能な人を寄越してくれました。私は貴殿が来てくれて心から良かったと思ってますよ」

 そう言うと、メセナミンはウイリーの両肩をぽんぽんと叩き楽しそうにウインクをした。

「さあ、これからが忙しいですぞ。ただちに軍を編成して国賊退治に向かわねばなりません。じき、ランドル様も到着なされます。王宮をランドル様にお任せして、私は国賊退治に向かいますが、貴殿にも私の片腕として同行して頂けないだろうか?勿論、貴殿の上司であるジョンの許可は頂いておりますぞ」

 じつに嬉しそうに話すメセナミン将軍であった。

「国賊・・・ですか?デミティアヌスは既におりませんが?」

 ウイリーには、まだ状況が見えていなかった。そりゃそうだろう、デミティアヌス討伐に全神経を集中して来て、やっと任務を全うできたばかりなのだから。そんな先の事まで考えは及ばないのは無理もない。

「身の保身だけを考えてさっさと逃げ出した文官どもですよ。奴らは皇帝を虐殺して宝物を持ち逃げした、第一級の国家反逆罪である。十分に根絶やしにする理由になりましょう」

「いや、彼らがやったという証拠が・・・・」

「いいんですよ。大事なのは奴らを根絶やしにする為の口実なんですよ。奴らが犯人であっても、無くてもどうでもいい事なんです。今あいつらを根絶やしにしておかないと折角風通しが良くなった政府に又はびこってしまいます。もう二度と国民にこんな悲惨な思いはさせたくない、その為に奴らには人身御供になってもらいます。皇帝殺害の罪であれば、一族郎党皆殺しも妥当でしょう、国民も納得します」

「・・・・・・」

 政治とは、なんて恐ろしいのだろう。二度と政治には関わるまいと誓ったウイリーであった。



 王宮開放から一週間。王都は平穏をとりもどしつつあった。市民も王都に戻って来て、今まで通りの生活を送り始めていた。

 荒らされた王宮も、メセナミンを中心に整備されていった。遠征軍の二百万の兵士は、希望者を中心に再編成がなされ、新たな国軍として指揮系統の構築に余念が無かった。帰宅を望む者はそれぞれの家に帰る事が許され、百五十万の兵士が全国に散って行った。その多くは農家の働き手だった為、今年の秋は収穫が楽しみであった。残った五十万の新国軍はメセナミン将軍を指揮官としてビクター王朝の古城に集まっているマルコム大蔵卿一派殲滅の為、出陣しようとしていた。罪状は皇帝陛下殺害及び財宝略奪等であった。これは完全な冤罪であったが、政治が絡むと冤罪も立派な重罪となるいい例であった。哀れなマルコム一派であった。

 程なく、ランドルをはじめとする新政府の中核をなす面々が王宮に集まって来た。


 連日の会議により、帝国制は廃止と決まった。しかし乱れた国内を纏める必要がある為当面は国王を擁して統治するが、ゆくゆくは領地を元の持ち主に返して連邦共和制を取る事となり、初代国王にはランドルが就任する事になった。

 各領内は、元々の土地の持ち主が中心になって統べる事に決まった。

 新国王を補佐する宰相には、今回の功績により伯爵に陞爵しょうしゃくしたジョン・ハワードが就任し陸軍大臣と兼務となった。

 又、キレーネの港は新たに軍港として整備され海軍の本拠地が置かれる事となり海軍大臣にはアルビオン艦長だったコリンが就任した。

 エルトリア共和国とは友好関係を結ぶ事となり今後交易が開始される事となり、今回使用された軍艦の内エピメテウスとカブールは、その技術と共にエルトリアに譲渡される事となった。また、造船担当だったマックス一行も技術指南の為、エルトニアに渡る事になっている。


 決めなくてはならない事が山積みでみんなはバタバタと飛び回っているが、マリエはする事がなかった。一応国賓として最大級のもてなしをされてはいるが、ハッキリ言って   放置である。行動は自由であるが、もう見るべき所もなくなり、王宮の中庭で亀の玄武と日向ぼっこの毎日で、また、誰か攻めて来ないかなぁと思う程退屈であった。

 そんなマリエだったが、もれなく希望が叶えられる事になった。ちょっと想像とは違っていたが・・・


 人の気配を感じて振り返ったマリエの前に、一人の男の人が立って居た。

「栗原 麻里絵さんですね?」






『異世界転移は義務教育 ふたたび』

読んで頂きありがとうございます。

いよいよ次回最終回となります。

つたない語彙力ながら頑張って書いて来ましたが、まだまだ勉強不足と才能不足を実感しております。

一旦次回で終わりますが、まったく別物を書くか、この続きを書くか思案中であります。

最後まで気を抜かずに書いて参りますので、後少しお付き合い下さい。


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