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13.大海原を地に染めて

マリエの異世界冒険第二弾です。

好き勝手に書いて行きますので、宜しくお願いしますね。



本作品に登場する国・人物は架空のものであり、現実とは何の関係もありません。

似たような物を見た記憶があっても、気のせいです。念のため。


 艦隊は、速力を上げて闇夜を進んで行く、が、驚いた事に遥か遠くから敵船団が視認出来る。あろうことか船上では赤々と篝火かがりびが焚かれているではないか。おそらく夕食の最中なのではないだろうか。不用心にも程があるのだが、こちらにとってはおあつらえ向きと言えよう。船上が明るければ、夜目は効かなくなるのでかなり接近する迄こちらは発見される危険性が下がるからだ。

 艦隊は速度を落として、敵船団から一キロ程離れた所まで接近したが、まだ発見された様子は見られなかった。艦隊は向かって来る海流に速度を合わせる事でその場に停止した。

「探照灯準備はどうか?」

 伝声管で担当部署に問い合わせをすると、即返事が返って来る。

「十万年前から準備OK!いつでもどうぞ」

 艦長はマリエに振り向いて作戦開始の伺いを立てる。船団の回りの海面が波打っているのが遠目にも伺える。あの灯りにホーンヘクトが引き寄せられているのだろうか。船団側も、そろそろ異常に気が付いている頃だろう。

「いい感じね。それじゃあ行ってみようか!」

 マリエの一声で戦端が開かれた。まずは水中部隊の突撃からだった。

「探照灯、照射始めっ!」

 命令一下、マストの中段に設置されている探照灯群からまばゆい光が船団に向かって伸びて行く。三隻合計九基の光の帯が船団を捕らえる。その光の到着点は船腹の喫水線だった。

 すると、突然ガリア船の舷側に水柱と共に巨大な穴が穿たれた。すると、それを合図に周りの船の舷側にも巨大な水柱が上がりだした。

 穴の正体は、探照灯で照らされた敵船に、光に誘われたホーンヘクトが突撃した結果だった。ホーンヘクトは、大きなものは五メートルにもなる魚類で、光に向かって突進する性質を持つ危険魚だ。事前に釣った魚を流して、ホーンヘクトを集めておいて、探照灯の光で誘導して突撃させたのだった。

 今や船団は大パニックになっていた。舷側に大穴を開けられた船は次々と傾き沈降が始まり、お互いを綱で繋いであるため他の船も引きずられて斜めに傾き甲板から兵士達が転がり落ちていくのが見える。西からは、魚を流し終えたカブールが探照灯を照射しながら接近して来ているのが見え、完全に包囲態勢が出来上がっていた。とは言えまだ敵船団の数は圧倒的に多く、混乱から立ち直る前に次の一手を打つ必要があった。

 次の一手を打つ為、艦隊は徐々に距離を詰めて行き、甲板上では、火炎瓶の準備が進められていた。

「敵船団は完全にパニックですな、予定通りです。このまま接近して火だるまにしてやります。指揮官のセルトリウスは、国でも鼻つまみ者で多くの国民が苦しめられているのです。心置きなくみんなの仇を討ってやりますよ」

 コリンの表情は暗くて分らないが、その強い口調から表情は想像できた。

 そうこうしている間にも探照灯に照らし出された船団はどんどん接近しており、もう手を伸ばせば届く距離に迫ってきていた。甲板上にはカツンカツンと矢が散発的に飛んで来ている。

「火炎瓶、各々の間合いで自由投擲開始~!」

 コリンの号令を皮切りに無数の火炎瓶が船団に向かって空を舞った。着弾後破裂した火炎瓶から炎が舞い上がり船上を染め上げていった。折からの風に舞い上げられた炎は次々と敵船を飲み込んでいった。

 一通り投擲を終えたアルビオンはそのまま直進して一旦船団から離れてから旋回して、すれ違ったカブールの後を追って再び敵船団に向かった。

 手前の船は炎に包まれているが、奥の船はまだ無傷なので、こんどは新たに甲板上に設置された大型の投射器で火炎瓶を射出して奥の船を狙った。

 何度も往復して四隻で集中攻撃を浴びせた結果、敵船団は火の海に包まれていった。奇襲だった事もあり、ほとんど反撃を受けず一方的な戦いだった。

 その後、一旦後方に下がりホーリー・ウッド、ラング・ウッドと合流して火炎瓶や石炭の補給を受けてから再び敵船団に向かった。到着した頃には空はうっすらと白み始めていて、黒煙を上げて燃え盛る敵船団の様子は遠方からも確認出来た。炎で綱が切れたのか、数隻ずつの塊が黒煙と炎を巻き上げながら潮の流れに乗って船団から離れて行くのが見える。ただ、潮の変わり目だったせいか、離れた塊は船団から離れた後、その海域をグルグルと回っていた。戦いそのものは既に終了しており、艦隊は個別に掃討戦に移って行った。

「ひどい、、、これが戦いなのか?これじゃ、只の虐殺じゃないか!」

 艦橋上部にあるデッキから戦いを見ていたランドルが叫んだ。その手は手摺りを血が滲む程に握りしめていた。その目は、何に対してなのか怒りに燃えていた。しかし、その時掛けられた声にたちまちその怒りは困惑に変わっていった。

「でも、これをあなた方は何百年も繰り返して来たのでしょ?するのは良くて、されるのはヒドイ なんですか?それって、子供の発想では?戦いには、必ず負ける者が居るってご存じですか?負けた方って、悲惨なものなんですよ?今まであなた達に滅ぼされた国の人々はこんな思いをしてきたのではないかしら。あたし、間違った事を言ってますでしょうか?」

 一気に畳みかけるマリエに対し、ランドルは反論どころか、言葉を発する事も出来ずうなだれるだけだった。

「ここまでやる必要は無かったかもしれません。でも、長年常態化しているあなた方の常識を根底からひっくり返すのですから、一度この惨状を見て貰わないと始まらないと思ったんです。心の底から戦争を嫌悪して貰わないと、この先の作戦は上手くいかないと思うの。この後、特務部隊が王城に忍び込みます。これは、命懸けの作戦なの。あなた方に腹を括って陽動をして貰わないと彼らは無駄死にになります。わたしにはそんな命令は出せません。浮わっついた気持ちでやられてはたまりません。腰を据えてやって貰わないと」

「ま、今回来たのが鼻つまみ者だって聞いてましたからね、思いっきりやらせて貰いましたけど」

 えへっと舌を出して首をすくめたマリエだった。

「はあぁっ、あなたと言う人は」

 これ以上無い程脱力したランドルは、がっくりと膝から崩れ落ち甲板の上に座り込んでしまった。

「あなたは、、、本当はいくつなんですか?女性に年齢を聞くのは失礼なのは十分に承知してはいますが、敢えて聞きたい。こんなに、人生に達観している子供が居るとは到底思えない」

「あら、女性は秘密が多い程いい女だっていいません?女性にとって秘密はアクセサリーだって言う人もいるんですよ。そんな事より部下の方々と話し合って意思の統一をして頂けると助かるんですが」

 大きくため息をついた後、ランドルは立ち上がったが、その目は先程とは違った決意に満ちている様だった。

「もちろん、この命を懸けてもこの反乱は成功させるつもりです。部下も纏めて見せます。もう、こんな戦いの毎日はたくさんだ。戦いに明け暮れる毎日は、お終いにします」

 そう言うと、ランドルとヒューゴは階下に降りて行った。

「あたしも言うもんだわ。ほとんど過去の歴史からの引用なんだけどねぇ」

 そう言うと手摺りにもたれかかって、海上を見下ろした。あちこちにまだ炎を上げている敵船の残骸が漂っていた。その間を縫うように進んで行き、時折生存者の居る船から弓矢が射掛けられるが、即座にその数倍もの矢が撃ち込まれ沈黙してしまう。そんな掃討戦も昼前には終了し、敵は完全に沈黙した。勿論損害は皆無で、負傷者が数名出ただけだった。

 艦橋に戻ると、みんながゆったりとお茶を飲みながら反省会をしていた。

「マリエ様、海戦において、火炎瓶の効果は実証されました。投射器による火炎瓶の投射も有効でした。これからは鉄船の時代ですね」

 副長のトニーは興奮ぎみに報告してきた。

「スクリューの有効性も確認されたぞ。操艦もし易そうだったし、音も静かじゃ」

 造船担当のマックスもまんざらでもない様だった。

「そう、まずは上手くいって良かったわ。でも、大事なのはこれからよ。補給船と合流したらガリアに向かいます」

「はい、当初の予定通りキレーネの港より手前に有るハワード家所有のサルバトル島に向かいます。ここは、周囲二百五十キロの島なので艦隊を隠す事も出来ますので、暫くここで補給と休養が出来ます」

 この島は大陸から南に六百キロ沖合にある島で、淡路島よりやや大きかった。ハワード家の所領で帝国の目が届かない絶好の隠れ場所だった。ここで、ガリア帝国軍の山越え部隊の出発を待つことになる。


 ここで、時系列を前日の夕方まで戻してみよう。

 日が暮れてきたので、セルトリウスの率いるガリア軍侵攻部隊の船舶が集結してお互いの船を綱で繋ぎとめ停泊する準備をしている所だった。

「閣下、後少しで停泊の準備が終了しますぜ。しかし、ランドルの奴、賢者って言われる癖に宿営に適した場所を後から来る者に知らせる事位出来ないんですかねぇ」

「ふっ、所詮奴はその程度の男なんだよ。まあ見てな、この遠征が終わる頃には俺が大賢者様だ。宮中の主だった奴らにも金は握らしてあるからみんな俺の意のままに動いてくれるだろうて。今回の西方の蛮族討伐でまた、資金がたんまり増えるだろうから、ランドルを蹴落としたら、次は大将軍の座を手に入れてやるさ、いつも通り頼むぞ」

 話を聞くに、この男金の力で宮中を牛耳っているらしい。かなりの野心家であるが、思慮深いとは言えない様だった。部下の男も、いかにも質の悪そうな立ち居振る舞いである。

「分かってまさぁ、いつも通り金目のものは全て徴収して、目ぼしい若い女は閣下の元にお連れしやす。それ以外の女は、見た目のいい奴は宮中のアホ共に当てがって、残りは人買いに売り飛ばしやす。また資金がわんさかと増えますねぇ、ひっひっひっ」

「俺が、後々大将軍の地位を手に入れたら、お前には大賢者を名乗らしてやる。デミティアヌスは腕っぷしは強いが、只の単純馬鹿だ。追い落とすのは簡単だ。せいぜい頑張って地獄のハイキングを楽しんでもらうさ」

「いやいや、大賢者の称号も閣下の物でやんすよ。蛮族を制圧したら、そこに一大帝国を築き本国には失敗したって報告をするだなんて、知恵の女神様だって思い付きやしませんて」

「失敗したとなれば、デミティアヌスの奴は山越えするしかなくなるからなあ、二百万の兵と共にあの地獄の山脈で野垂れ死にするしかない。あの兵力がいなくなれば、後は俺が本国に取って返して宮中を掌握してやる。あのぼんくら皇帝なんぞ、女を当てがっておけばなんでも俺の言いなりだからなぁ。この世は知恵の有る者と金持ちがいい思いをする様になってるのよ。はっはっはっ」

「違えねえ。閣下にかかれば、こんな大陸の制圧なんて簡単なもんですよ。閣下が大将軍を名乗れば、あの小うるさいハワード伯爵家も何も言えなくなる事でしょうて。いい気味ですよ」

 浅はかコンビが高笑いをしていると、従者がやって来て後部甲板に食事の用意が出来た旨を伝えに来た。

「さあ閣下、お酒を吞みながら未来のセルトリウス帝国の話しで盛り上がろうではありませんか」

「セルトリウス帝国か、悪くない響きだな。はっはっはっ」

 二人は豪華な食事が用意されている後部甲板に赴き楽しい宴が始まったのだった。もちろん、兵達は固いパンと干し肉なのは言うまでもない。

「おいっ!手元が暗いぞ。これでは料理がまずくなるわ。もっと篝火かがりびかんかっ!」

 慌てて従者が篝火を舷側に増やしていった。しかし赤々と海面を照らす炎がこの後の惨劇の幕開けになるとは思いもよらなかった。

 食事を始めて少したった頃、ふいに後ろの海面をいぶかしい表情でにらみ始めたセルトリウスだった。

「おい、何か音がせんか?誰か海面を照らしてみろ!」

 部下が手に手に松明を持ち、舷側から乗り出して海面を照らしだしたその時、何か巨大なものが水面から飛び出した。暗くて良く見えなかったが、どうも巨大な魚の様だった。

「なんだ、あれは?」

「でかいぞ?」

 その後、段々飛び跳ねる魚の数が増えていき、その巨体が跳ねる度に船体が揉みくちゃにされて、船内には先程まで食べて居た食事が散乱していた。

「なんで、こんな奴らが集まって来ているんだ!誰か何とかせんかあ!」

 何とかと言われても、どうかなるものでもないのだが、それどころではなかった。当然、周りを警戒する事などすっかり頭から抜け落ちていた。マリエの艦隊は完全にノーマークとなっていた。

 兵士達は必死に弓と槍で応戦していたが、まったく効果が上がっていなかった。

 そんな大混乱の中、一行は突然まばゆい光に包まれ、目の前が真っ白になって何が何だか分からなくなった。

「何だ、何が起こっている?誰か答えよ!」

「こうなっているのさ」

 そんな事いわれても、誰も答えられる訳もなかったので、アルビオン艦長のコリンが本能的に答えていた。本能的?意味が分らん。

 その後も次々に暗闇から強力な光の槍が船体に向かって伸びて来た。すると程なく轟音と共に立って居られない程の強烈な振動が全員を襲った。次々に巨大な魚が船体に突き刺さってきたのだったが、誰も正確に現状を把握出来て居なかった。

 激しい揺れで甲板から吹き飛ばされて海中に落ちる者が後を絶たなかった。もう、命令を出すどころの騒ぎじゃなくなっていた。全力で周りに有る物に掴まるので精一杯であった。

 そんな折、暗闇から突如巨大な真っ黒な船が現れ接近して来た。敵?味方?そんな判断も出来なかった。呆然と不明船を見上げていると何やら塊が飛んできた。そして甲板上に落下すると焼き物の割れる音と共に炎が四方に吹き出し見る間に辺り一面が火の海となっていく。更に二発、三発と着弾すると船上は炎で埋め尽くされていった。消火する術を持たない状況では海に飛び込むしか選択肢は無く、兵達は次々と海に飛び込んで行ったが、既に海面も火の海で一人、また一人と波間に消えていった。

 綱で繋がれていて密集している為、火は次々とまわりに延焼して行き、いつしか無敵と思われた船団は阿鼻叫喚の地獄絵図と変わっていった。

 不意の攻撃を仕掛けて来た艦隊は、何度も何度も反復攻撃を掛けて来て、奥に居て無傷だった船も炎の舌に絡め取られていき、空が白み始めた頃にはほぼ全ての船が焼け落ちていた。

 かろうじて生き残った者も、この近海に住むと言われている百メートルに迫ろうかと言うサメに食べられたと思われ、その後もこの海戦の生き残りが見付かる事は無かった。





『異世界転移は義務教育 ふたたび』

始まりました。

今回は、海戦物となるみたいです。

みたいと言うのは、マリエが勝手に動き回るのを、書き留めていくだけの作者なので

話しがどこへいくのかは、作者も知らないのです。

頑張ってマリエの活躍を書き留めていきますので

応援宜しくお願いします。

宜しければ、ブックマークお願いします。


P.S.

『異世界転移は義務教育 ふたたび』は、毎週金曜日か土曜日にUPする予定です。

余裕があれば、週の半ばにもUPしたいです。

勉強しながら書き進めて参ります。


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