10.敵船団みゆ
マリエの異世界冒険第二弾です。
好き勝手に書いて行きますので、宜しくお願いしますね。
本作品に登場する国・人物は架空のものであり、現実とは何の関係もありません。
似たような物を見た記憶があっても、気のせいです。念のため。
「ランドル様、水の残量が心許なくなってきました、そろそろ補給を考えませんと」
「そうだな、近くに補給出来そうな島はあるか?」
「見張りが左前方にやや大きめの島を発見しております」
「そうか、ではその島に向かおう。全船に通達、警戒を厳重にして島へ進路を変更」
「はっ!直ちに進路を変更します」
一列縦隊で大陸に沿って航行してきた侵攻軍の船団は、はるか左前方に見える島に向かうべく進路をやや左に変えていった。
近づくにつれて島の形がはっきりと見えて来た。島は周りを断崖に囲まれていて中央には高い山がそびえていた。その山の周りを何やら大きな鳥が何羽も旋回しているのが確認された。
「ヒューゴ、あの飛んでいる鳥は何だ?かなり大きな感じがするが」
「そうですねえ、見た感じ三メートル位はありますか、いやもっと大きいかもしれませんね、まだ遠くて識別が出来ませんが」
すると、舷側で上陸の準備をしていた兵士が話し掛けてきた。
「ランドル様、ありゃあロック鳥でさあ。好戦的で危険な鳥なんで近づかない方が賢明だと思いますだよ」
「ロック鳥だと?あれがか。噂には聞いていたがあんなに大きいのか。大事な上陸前に戦力を失いたくないな、残念だが別の島を探す事にしよう」
「ですなぁ、前方には他にもいくつかの島が見えてますから、そちらに行きましょう。おい、進路変更だ、進路を戻して別の島に向かうぞ」
船団は再び元のコースに戻って行った。ロック鳥が居ると言う事は水があるという事ではあるが、ここで兵力を失う事は得策ではないと言うランドルの判断は正しかったし、ジョン達にとっても幸運だった。なぜなら、この島の名前はカルボ島と言って島の南にある浜では石炭の採掘の為に輸送船ホーリーウッドが停泊していたのだった。ホーリーウッドでは、船団が進路を変えて島に向かって来たので危機的状態に陥っていた。このまま進行されれば圧倒的な戦力で蹂躙されるのは目に見えていたので、即刻退避すべく上陸班の収容にてんてこ舞いであった。幸いにも船団は進路を戻したので事なきを得たのであった。
早速全滅を免れたホーリーウッドから海賊島に向かってトリが放たれた。
ー敵船団見ゆ エルトリアに向かいつつありー
しかし、ランドル達はその事を知る由も無かった。何故知る由も無かったのかは、知る由も無かった。
その後、侵攻軍の船団は島巡りで水と食料の調達をしながらエルトリアに近づいて行った。航海は前回と違って至極順調だった。途中何回か雨雲の下を通過した為、水の補給が容易だった事も大きく寄与した。
そして、とうとう船団は目的地のユタ海岸まで一日の地点まで到達した。そこでやや小さいが七つの島が連なっているサンゴ礁を発見して、そこを最後の休養地点に定めた。兵士達を上陸させ一日休養を取らせて上陸に備えるのだった。当然、その様子も逐一報告させていて、船団の行動は丸裸と言って良かった。
海賊島の司令部では、徐々に慌ただしくなってきていた。次々に入って来るトリからの連絡で侵攻軍の上陸が間近に迫って来ていたからであった。今日の連絡ではカルボ島に居るホーリーウッドからついに敵船団の姿を捉えたとの事であった。
「ついにやって来たな。しかし、カルボ島に上陸されないで良かったなぁ」
しみじみ言うグレンに、みんなも頷いていた。
「そうですね、取り敢えずは予定通りですね。いよいよ我々も出撃する時がきましたね。アルビオンとプロメテウスの出撃準備は整っています。ラングウッドには石炭と予備の武器を満載させて一足先に出撃させました。マリエ様、艦隊の指揮はお任せします。コリン、初めての海戦だがマリエ様がついているから落ち着いてな」
やっぱりあたしに丸投げかいっ、初めてなのはあたしも一緒なんだけどねぇ。ま、いいけどね。
「はっ、マリエ様宜しくお願い致します」
「大丈夫よ。あたし達が相手にするのは帰りの船団。漕ぎ手しか居ない無防備な船だから訓練だと思って落ち着いてやれば失敗はないから。ただし、帰りは流れの強い夜間に海流に乗って帰るだろうから、夜間戦闘になる可能性も視野に入れておいてね」
「はい、頑張ります」
こうして、マリエ達反乱軍主力艦隊は満を持して出航して行った。ただし、急ぐ必要はない為、ゆっくりと訓練を実施しながら侵攻軍の帰りの船団を待ち受ける地点に向かったのだった。
マリエ艦隊にはボウガン、パチンコ、強弩以外にもいくつかの秘密兵器があった。ひとつはいわゆる火炎瓶。木造船に対してはこの上なく有効である。投光器、敵船探索に有効である。そしてエルトリアから借りて来た兵士達。一人目の名前はフランクと言う。彼はウイリー率いる特別展開部隊いわゆる荒事専門の特務機関の一員だった。なぜ借りて来たかというと、彼のチート能力が必要だったのだ。彼は夜間の視認能力が野生動物並みなのであった。漆黒の海で敵船団を探すのにはもってこいの人物だった。もう一人ウイリーから借りて来ている人物も中々のもので彼女はベティといいその聴力は布の上に落ちた針の音を聞き分けられると言う。落とした本数まで言い当てると言うのだからとんでもない能力だ。この二人の能力を合わせるとレーダーにも匹敵するのではないかと期待されている。
十分な食料と十分な訓練。そして、祖国の暴走を止めたいと願う強い願い。指揮を執って居るのが神格化されていると言ってもいいマリエ。 否が応でも気勢が上がっていくのだった。
何度かの夜間襲撃訓練の後に行った会議においてマリコは幹部達に質問を投げかけた。
「攻撃のタイミングなんだけどね、わざわざ帰りを待つ必要あるのかなって思うの」
「といいますと?」
艦長のコリンさんが小首をかしげながら聞いて来る。
「帰り道で沈めたらほぼ全員水死でしょ?どうせ沈めるのならユタ海岸に着いた所を襲えば船団を探す手間が省けるし、海岸で沈めれば船に残っていた連中も上陸出来て死ななくてすむかなあと」
「なるほど。要は船団をガリアに返さなければいいのですから問題は無いと思いますよ。私はそれでいいと思います」
「他のみんなの意見は?」
「自分も賛成です。と言う事は昼間の襲撃になる訳ですよね?我々との戦力の差を思い知らせるいい機会かと。一方的に叩いてやれば、上陸した奴らも戦意を失うのではないでしょうか?」
「さっさと降伏してくれれば無駄に殺生しなくて済みますな」
「では、我々もユタ海岸に突入すると言う事でいいわね?」
「はい、ではトリを飛ばして作戦の変更を御屋形様とエルトリア側に知らせましょう。本艦は経済速度で進路をユタ海岸に向けます。突入は敵船団の上陸と同時で良いですね」
「うん、上陸の最中に後方から襲えば敵もパニックになるんじゃないかな?」
「では、本日の会議はこれにて終了します」
コリンの締めの言葉で、みんなはそれぞれの部署に散って行った。
それから数日は穏やかな時間が過ぎて行き気力が充実したまま戦いの場へと突入していくのだった。
「もう大丈夫ですね。海岸要塞は完璧に仕上がりました。いつ敵が来ても持ち応えてみせますとも」
「こらっ、油断は禁物だってマリエ様から教わったのを忘れたのか?完璧だと思っていてもどこかにほころびがあるかも知れないと思えと言われただろう」
海岸要塞司令官に就任したレイモンド・ライル中将は国軍最高司令官のアンドリュー・エドワード将軍に注意されて思わず肩をすぼめて舌を出してしまった。
「俺からのプレゼントだ、心して受け取れよ」
「何のことです?」
「これから、ウイリー指揮下の特別展開部隊の精鋭、二千名がユタ海岸の橋頭保から要塞に攻撃をかける。見事受けきってみせよ」
結果を言おう。なんと惨敗だったのだ。攻撃側は二千名、守る守備側は三千名。通常攻撃側は三倍の戦力が必要と言われる。この場合、要塞攻略には九千名必要なはずだった。普通に考えれば敗れるはずは無かったのだが見事に司令部を取られてしまった。要塞の弱点が露わになったのだった。欠点を改善して再度模擬戦を行ったが再度惨敗してしまった。新たな弱点が見つかり、レイモンドは頭を抱えてしまった。
「だから言ったろう?慢心するなと」
勝ち誇った様な最高司令官の言葉に、言葉も無く下を向くレイモンドだった。
その後万難を排して臨んだ三度目の模擬戦も大敗したレイモンドはガックリ肩を落としてしまった。その背中をポンポンと叩きながら最高司令官は
「ま、ウイリーは特殊だから、そう落ち込むなよ。あんな奴はそうそうおらんて。あいつに対抗出来る者が居るとしたらマリエ様位なものだろうて。言いたかったのは油断をするなって事だ。よく頑張ったな。部下を労ってやれ、まだ敵さん来ないから少し休養をとらすんだ、いいな」
「了解であります」
ちなみにウイリーという男、特殊な能力を持っており、一目みるだけで相手の弱点が、どこを攻めれば崩せるのかが分ってしまうのだそうだ。相手をする側から見れば質が悪い事この上ない男だった。そんな男をこの大事な時にぶつけるこの最高司令官もどうなのかと思うのだが・・・
それでも、海岸要塞の守りは確実に固くなり兵士達の要塞に対する信頼は揺ぎ無いものとものとなっていた。
又、守りの一環として監視体制にも力を入れており、海岸沿いの崖の上には一キロ置きに物見が配置されており刻一刻と敵船団の情報が飛び込んで来ている。先程の報告によるとユタ海岸まで一日距離の所にある七つ島サンゴ礁に停泊しておりサンゴ礁内で休養を取って居るとの事だった。
事態は全てこちら側の思惑通りに進行していた。情報が駄々洩れである事を相手が知らない事が最大の利点とも言えた。海岸要塞には木の枝等で偽装が行われて沖合からは小高い丘の様に見えているはずだった。
翌日、物見から敵船団出航の情報がもたらされて要塞内に緊張が走った。直ちに全軍に身の回りの最終確認の指示がだされたが、まだ戦闘配置への命令は出なかった。敵の上陸は夕方になると思われていたので、それまでは必要以上の拘束を行う事はなく、比較的行動は自由であった。
「閣下、いよいよですね。なんか震えが止まりません」
「レイモンド、もっと自信を持て。我らはあのマリエ様から直接教えを賜った選ばれし民なのだ。こたびの戦いは我に正義はありだ。必ず勝てる。我々にはマリエ様がついていらっしゃるのだ、負けるはずがないだろう。不安になるって事はマリエ様を信じていないって事だぞ?それにな、不安なのは相手も同じ いや、敵さんの方がより不安なはずだ」
「はい。マリエ様を信じて、部下を信じて、今までやって来た事を信じて、今出来る事を精一杯やるだけ ですな」
「そうだ、結果は後からついて来る、今考えても仕方がないのだ。精一杯やろうではないか」
その頃、王都ローダミンにある王城では国王のエステルが遠い空を見上げながら大きな溜息を何度もついていた。その両手は胸の前で固く握りしめられていた。
「エステル様、大丈夫ですよ。マリエ様が全面バックアップされているのです、万が一にも後れを取る様な事などあろうはずもありません」
そっとエステルの後ろに付き添っていた宰相のボディアン伯爵がまるで実の娘にかける様に優しく声を掛けた。
「マリエ様が負けるなどとはこれっぽっちも思っておりません、只、こんな時なのに傍に居られないわが身を嘆いております。ええ、ええ、分かっているのですよ、私など居ても何のお役にも立てないって事、いえ却ってお邪魔にしかならないって事も。でも、それでも傍に居たいって思う事は我儘なのでしょうか?」
「いえいえ、エステル様のお気持ちは十分に理解できますとも。誰もが皆マリエ様の元に馳せ参じたいと思っているのです、エステル様とて例外ではありますまい。我々に今出来る事は、戦勝報告を待つ事だけです。辛いですが」
「そうね。こうして目を閉じるとお姉さまの雄姿が目に浮かびます。あの、魔王の様な雄々しいお姿が」
「この国の一番大変な時に降臨され事態の収束と共に去って行ってしまわれた。そして、再びの国難に合わせる様に再び降臨なされた。私には何やら運命の様なものを感じております」
「運命。そうね、きっとこれは運命なのかもしれませんね。なればこそ、私は運命を受け入れてじっと待たねばなりませんね。私は私に出来る事をして待ちます。宰相、今日のスケジュールはどうなっていますか?」
「はっ、この後商業ギルド幹部とこたびの戦いにおける糧食の徴発と保障についての話し合いが予定されております」
五年前、人さらいからその身を助けてくれ、更に国をも救ってくれた恩人であり憧れのひとが再びこの国を助けるために立ち上がってくれている。その恩に報いる為に私は私に出来る事を精一杯する。そう心に誓ったエステルは表情を引き締め会議室に、そう自分の戦場に向かって身をひるがえして歩き出した。
その毅然とした姿を後ろから見ながら宰相は、ふと窓の外、まさに今、遥か国境で戦いに臨もうとしている勇士達をに思いを寄せた。
「マリコ様。不思議なお方だ。初めてお会いした時も、その後の戦いの時も、そして今回も、いつの間にかみんなを一つの方向に纏めあげてしまう。特に何かする訳でもないのにみんなが自ら行動を起こしてしまう。天性のカリスマを持ち合わせているのだろう。エステル様も、見違えるように逞しくおなりだ。女神様の使徒ではなく、女神様そのものではないのだろうか」
「ボディアン伯爵、置いて行きますわよ」
エステルに促され、はっと現実に戻り頭を掻きながら慌ててその後を追う宰相閣下であった。
海賊島の司令部の様子も見てみよう
「心配ですか?御屋形様」
書類を読んでいる ふりをしているハワード伯爵家三男のジョン・ハワードは不意に声を掛けられてビクっとして書類を落としてしまった。
「い いや な 何を・・・」
「隠されても駄目ですよ。さっきからずっと同じ書類を見たままですから」
そう言うオリビアは、その様子をずっと執務机の向かいから見つめていたのだった。
「出来る事はやったんだ、心配などしていない。マリエ様もついているんだしな」
「では、どうなされたので?」
「うん、出来るなら一緒に行って戦いを見たかった かなと」
「だめですよ、御屋形様は要なんですから軽々しく動くべきではありません。広い視野で全体を見ていてもらいませんと」
「分かっている。分って居るよ。この後の敵の本隊との戦いも視野に入れて準備しなくちゃならない事くらい分かっている。けどなぁ」
もうこうなると子供と同じでオリビアには可愛く思えるのだった。
「今回の戦いで惨敗したら、侵攻を諦めてくれないかなぁ」
「無理ですね。総指揮官のデミティアヌス大将軍は猪将軍ですから。それに、皇帝陛下に撤兵の意見具申を出来るとも思えません」
「確かになぁ、こんな末端どうしでやりあってもいたずらに兵を死なせるだけなんだがなぁ」
「いっそのこと、、、、皇帝を暗殺しますか?」
ジョンは、飲みかけのお茶を吹き出してしまった。当然、正面に居たオリビアは頭から被ってしまった。
「ひっどおおおおぉい!何をするんですかあぁ」
オリビアは怒って出て行ってしまった。
「なんて言う事を言い出すんだ、あいつは。出来るならとっくにしておるわ。まったく。しかし、又へそを曲げられても面倒だから、後でお菓子でも持って謝りにいくか」
大きなため息をつきながら頭を掻きむしるジョンであった。
「報告では、先遣隊の指揮官はあの知将と名高いランドルだと言う。奴位頭が切れる男がこんな無謀な戦いをするとは考えにくい。やはり皇帝のゴリ押しなんだろうなぁ。なんとかデミティアヌスとランドルの二人をこちらに取り込めないものか。取り込めさえすれば、皇帝を倒すのも訳ないのだがなぁ。デミティアヌスはあの通り猪だから話しなんか聞く耳持たないだろう。頭痛いなぁ」
その時、ドアが開いてジョンの叔父で相談役のグレンが入って来た。
「おまえ、何やってるんだ?オリビーが泣きながら走って行ったぞ?この忙しい時に夫婦喧嘩は勘弁してくれよ」
「おっ 叔父さん、夫婦喧嘩って・・・」
「隠しても無駄よ。みんな知っておるからな」
グレンに対してはたじたじなジョンであった。
「オリビーが、皇帝を暗殺したらいいんじゃないかって言うんですよ」
「おおっ!それは名案ではないか?諸悪の根源を絶つのが最善の策であるぞ」
「そりゃあ確かにそうなんですけどね、お分かりだと思いますがあの堅固な王城に忍び込むなんて不可能です。城の見取り図すら手に入らないんですよ?どうやって忍び込むんですか?仮に忍び込めたとしても、皇帝の傍に近寄る事なんて無理です」
「だよなぁ」
「そんな事を言いに来たのですか?」
まずい所を見られた照れ隠しなのか、無意識なのかジョンの口調は強めになっていた。
「トリが届いたぞ。キレーネの港からだ」
「ついに?」
「ああ、ついに本隊がお出ましだ。あのでかい船が六十隻だそうだ」
「六十隻・・・二万五千って所ですか。にしても、よくそれだけの数を揃えられましたねぇ。おそらく国中の船大工を招集したのでしょうね」
「国力だけは十分過ぎる位あるからな。先遣隊が到着出来るかどうかも分からない内にようやるわ。おそらく皇帝のゴリ押しなんであろう、何が何でも侵攻しろと命じられておるのだろうな、気の毒に」
「で、指揮官は当然デミティアヌスですか?」
「それがな、大将軍はお城でふんぞり返っておるらしい。先だって将軍に昇格したばかりのセルトリウスが指揮しているらしい」
「セルが?なぜ?あいつは、二万もの兵を纏められる器ではありませんよ。ライバルを告げ口や罠に掛けて蹴落として成りあがって来ただけの男で、実力などありませんよ。まして海戦など出来ないですよ」
「ほう、いいではないか。そんな奴ならこちらも楽が出来るではないか」
「確かにそうなんですが、配下の兵が可哀想ですよ。奴に従っていたら犬死にですよ」
「おまえのその優しい所は人として好ましくはあるが、戦争には向かんな。指揮官なんだからもっと割り切る事も覚えないといかん」
「自分の事位分かっていますよ。非情に徹しないといけないって自覚しています」
「じゃあ、良い事を教えてやろう。今回出て来る兵な、セルの息の掛かった者ばかりだそうだ。奴の威光を笠に着て領民を苦しめてきた奴らが揃って出て来たらしいぞ。切り取った領地を貰えるとか言われて出て来たんであろう。欲にかられた腐った奴らだ、心置きなく退治出来るであろう」
「そうなんですか、それなら心が痛みませんね。領民の為にも綺麗に掃除してやりましょう」
「その意気だ、戦いはマリエ様達に任せて、お前は補給の方を全力でやれば良い」
「はい、現在ローズ・ウッドに石炭と食料を満載させております、補給は万全ですよ」
穏やかに晴れ渡った海原を二隻の黒い巨艦は決戦の地ユタ海岸に向かって航海を続けていた。巨大な水車は滑らかに回転を続けてその巨体を前に推し進めている。突入の刻が迫っている事は誰の目にも明らかであった。舷側には各々武器を携えた兵士達が待機していた。
「いよいよ突入ですね」
手の汗をお尻で拭いながら艦長のコリンが誰に言うでもなく呟いた。
「練習の通りにやればいいのよ。戦力は圧倒的にこちらが上なんだから落ち着いてね」
コリンの背中をポンポン叩きながらマリエはワクワクしている自分に気が付いた。
あたしって、こんな好戦的な性格だったのかな?この世界に来る度に性格が変わっていく様がする。
マスト上にある見張り台の上から見張り員が声を張り上げた。
「前方、陸地~っ!!一時の方角から十二時の方角に向かう敵船視認っ!!」
艦内に緊張が走った。前方一時の方角、つまり正面やや右前方から正面に向かう敵船団のマストを発見したのだ。
艦の中央にあるマストの下段にある指揮所に詰めていたコリン艦長が矢継ぎ早に指示を出す。
「速度制御室、速度最大っ!」
「舵、ちょい右っ!」
「両舷、火炎瓶投的用意っ!ボウガン隊射撃準備っ!パチンコ隊は敵の侵入に備えろっ!」
ぐぐっと加速度を感じる。水車の回転速度が上がって来て居る。艦首方向から吹いて来る風も強さを増して来た。上甲板では火炎瓶の準備が始まり下層の舷側からは、ボウガンの射撃の為に射撃窓を開く音が響いてきている。
今日は朝から晴天が続いていて洋上はかなり眩しい。もう少し近づくまでは見つからないだろう。事ここに至っては、運を天に任せて突撃あるのみだった。
「総員っ!突撃ぃ~っ!!」
『異世界転移は義務教育 ふたたび』
始まりました。
今回は、海戦物となるみたいです。
みたいと言うのは、マリエが勝手に動き回るのを、書き留めていくだけの作者なので
話しがどこへいくのかは、作者も知らないのです。
頑張ってマリエの活躍を書き留めていきますので
応援宜しくお願いします。
宜しければ、ブックマークお願いします。
P.S.
『異世界転移は義務教育 ふたたび』は、毎週金曜日か土曜日にUPする予定です。
余裕があれば、週の半ばにもUPしたいです。
勉強しながら書き進めて参ります。