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テスト結果良くても進展は無く

 テストが終わり結果が出る、案の定千鶴はダントツでその下に優斗、真理、桐谷と変わらずの順位で千尋も中の下ぐらいだった。


「また負けた……」

「また千鶴ちゃんに負けたの?」

「五月蝿い、お前は少し努力しろ」

「うわっちょっ椅子の足を蹴るな、コケるだろ」


 椅子を傾け順位を覗いてくる桐谷の椅子の足を蹴りまくる優斗。


「(良かった、優斗に越されることなかった)」

「おっと〜千鶴〜、また一位ですか?」

「真理は前回より順位上がったよね」

「へへん私はこれでも成長中ですから」


 真理は自慢げに順位表を見せるが千鶴は優斗の背中を見つめていた。


「……ねぇ真理」

「うん?どうした?」

「………………また勉強会しようね」

「そうだな、またやろう」


 何か言おうとした千鶴だったが何も言わずにまた勉強会しようと伝えると真理は笑顔で答えるとそのまま走って優斗と桐谷の方に行ってしまう。

 こうして桐谷にとっての地獄のテストは終わりを迎え優斗と千鶴の関係もあまり進展せずに終わった。

 次の週の日曜日、優斗は千尋と共に遊園地に居た。


「ユート次はあれ乗ろう!」

「分かったからそんなに引っ張るな」


 それは遡ることテスト結果が出たあとの話。


「ユート。日曜日遊園地に行こう!!」

「え?どうした急に……というかなんで俺の家に居るの二人共?」


 学校終わって家でテレビを見ている横にいつの間にか人の家に上がり込んでいた千鶴と千尋。


「だってユートはお姉ちゃんと映画に行ったでしょ!」

「いやそれはお前が行けなくて俺が……」

「それでも行きたいの!!」

「珍しいな千尋がそこまで駄々こねるなんて」

「いつも通りだよ、ねぇ行こう」

「そうだな……」


 優斗は千尋の横にいる千鶴をチラ見する。


「(一応付き合ってる同士不思議ではないんだけどまずその前になぜ千鶴がここに?)」

「(絶対に隠れてついて行こう、大丈夫これはストーカーじゃないセーフよセーフ)」


 立派なストーカー行為に走ろうとする千鶴は黙って千尋の横に座る。特に反応を示さないので優斗は承諾することにした。


「んー分かった。日曜日な」

「やたーー!」


 そして今日の日曜日に至る。

 絶叫マシンからゆったりとした乗り物まで隅から隅まで遊園地を堪能する優斗と千尋。そんな二人を密かに観察する千鶴はしっかりと変装して人混みに紛れていた。


「(うぅ悔しいけどお似合いだよね二人共)」


 楽しむ二人を見て謎に少し負けた気分になる千鶴だった。

 一通り堪能したあと休憩する優斗と千尋。


「はぁ……疲れた……」

「早くない?」

「千尋は部活入ってるだろ、俺は入ってないから」

「あはは、関係ないよ」

「関係ある」

「ところで今日誘ったのはやっぱ千鶴の日曜日のことか?」

「別に気にしてないって言ったでしょ普通に私が遊びたかっただけだよ」

「それならいいんだが」

「え?なにもしかして本気で怒ってると思ったの?」

「正直な、でも部活だったから」

「大丈夫だよ、仲がいいのは昔からでしょ。それに恋人同士なんだから」


 微笑む千尋にドキッとする優斗。


「(ヤバい……正反対な姉妹もあってかそれぞれの違った可愛さがあってか可愛すぎる……)」


 ドキドキする優斗に千尋は。


「(楽しいーー、このからかうような感じもいいけどやっぱユートはお姉ちゃんの方がお似合いだよーー)」


 反応を楽しんでいた悪魔のような千尋だった。そんな一部始終を見ていた千鶴は。


「(はーーーーー、ちーちゃん何その技!恋人同士だから出来る必殺技?え?強くない?)」


 隠れて飲み物を飲んでいた千鶴は絶対に自分では出来そうにない自然に出てくる屈託のない笑顔の妹を見て唖然とし飲み物を零しそうになるがなんとか零さずにすむ。それぞれがそれぞれの反応をしていた。

 そして休憩が終わり再び遊園地内を回る二人についていく千鶴。


「ねぇユートは私の事どう思ってる?」

「どう思ってるというと?」

「う〜ん、好きか嫌いかで言ったら?」

「それはもちろん好きだよ(微妙なラインだな……)」


 昔からの付き合いであるため当然好きと答える優斗だが異性として好きとなると少し悩む優斗だった。


「えへへ、嬉しいな〜(馴染みとしての好きか異性としての好きかは別として好きと言ってもらえるのは嬉しいな)」

「そんなに喜ぶことか?(普通に可愛いんだよな)」

「当たり前だよ〜、女の子みんな彼氏から好きと言われたら喜ぶに決まってるよ〜」

「そうなのか」


 素直に喜ぶ千尋を見て優斗はいつか千鶴にも言えたらなと思った。すると千尋が急に優斗に抱きついて手を繋ぐ。


「ちょっ、千尋!?」

「手を繋ぐの嫌?」

「嫌って訳じゃないけど、恥ずかしい……」

「別に恋人同士なら当たり前だから大丈夫だよ」

「ああまあそうだが……」


 恥ずかしがる優斗にその反応を楽しむ千尋に。


「(うー私も優斗と手を繋ぎたいー)」


 悔しがる千鶴だった。


「ご、ごめんトイレ行ってくる。ちょっと待ってて」

「え〜〜、早くね〜」

「本当にごめん、すぐ戻ってくる」


 さすがに恥ずかしさに耐えきれなかったのかすぐさまトイレに行くと嘘を言い逃げるように走ってトイレに行ってしまう。千鶴も無意識に優斗の後を追い千尋は近くのベンチに座ってスマフォを弄り始め待った。


「はぁ……疲れる」


 トイレに入って手洗い場で頭を悩ます優斗。


「(正直千尋に別れるなんて言ったら可哀想だよな、それに妹と別れて姉と付き合うことになったら妹側からしたら複雑だしな。めちゃくちゃ悪いが俺が少し性格曲がったことすれば諦めてくれるか?いやいやそんなことしたら千鶴の方にも影響が……難しい……)」


 千尋と別れる口実、方法を考えるがどれも千鶴に直結しかねない方法でさらに千鶴は引っ込み思案という性格もあってかほんの少しの悪い噂で引いてしまう可能性があり幼馴染ということもあってかたった一つの行動が全ての関係を終わらせてしまうこともあるため凄く難解だった。


「(やはり千尋には新しい彼氏を自ら見つけてほしいものだが、同級生でいないのか?)」


 色々と考えるが答えは出なく考えることは後回しにして千尋の所に戻ることにしてトイレから出る。千鶴も優斗がトイレから出たのを確認すると追いかけようとした瞬間、他の人とぶつかってその場に尻もちをつく。


「ーーきゃっ!」

「おっと、大丈夫?」

「あ、はい。大丈夫です……」

「(ん?聞き覚えのある声だな)」


 優斗は後方で聞こえた声にとても聞き覚えがありふと振り返るとそこには変装がとれた千鶴の姿が見えた。


「千鶴?」

「いたたた……ん?へ?……」


 少し遠くに居たため完全に千鶴とは判断出来ずに近くまで行き優斗は千鶴の名前を呼ぶと千鶴はお尻をさすったあと優斗と目が合う。


「な、なんでここに?」

「……わ、私は千鶴じゃ……ありません……よ」


 震えた声で誤魔化す千鶴、しかし優斗の目の前には疑いようのない本物の千鶴で逆に反応に困る。


「えっと〜〜……なんでいるの?」

「違います違います!私は千鶴なんて子じゃあらりゃまへんた……」

「呂律が回ってない……別に何もしないから落ち着いて千鶴」

「ひゃああ〜〜ごめんなひゃい……」

「大丈夫じゃないな、とりあえず休もう」

「あわわわわわ……」


 完全に混乱している千鶴を落ち着かせるために近くのベンチに座らせて飲み物を買ってきて渡す優斗、そして千尋には腹を壊したと嘘のメールを送って時間を作る。


「落ち着いたか?」

「取り乱してごめんね……」

「大丈夫だよ、それよりなんでここに?それに変装してまで」

「えっとねその〜……(言えない。ずっと観察していたなんて)」

「(まさか俺と千尋との関係を心配して?)」

「ちーちゃんが心配だったからついてきちゃったの」

「(ですよね。妹の心配第一。俺には気が無いのは当たり前か)」

「う〜ん、そしたらこの後一緒に回るか?」

「え!?いやそれは悪いよ、だって今二人はで……デート……でしょ」

「あっ!そうだった(やべっ、そうだよな付き合ってる以上普通に遊ぶとなればデートになるのか、曖昧だが傍から見ればそうなるのか)」

「だから邪魔しちゃいけないし(邪魔したいけどちーちゃんだけじゃなく優斗にも嫌われるから絶対にしない)」

「なんかごめんな」

「ううん、全然気にしてないよ(気にしてます)」


 しどろもどろながらも会話してる途中に向こうから千尋がやって来る姿を見つける優斗。


「やば、千尋が来た」

「えっ!じゃあ私はこれで」

「あっ、ちょっと待って」

「なに?」

「……いや、なんでもない」

「……?」

「止めて悪かった、またな」

「うん、またね」


 何か言おうとした優斗だったが何も言わず千鶴も聞き返すことなく互いに手を振って別れた、そして優斗の前に到着する千尋。


「もうユートなに座ってんの?お腹痛かったんじゃないの?」

「あ〜そういえば……あいたたたた……」

「まだ痛いの?」

「いやもう大丈夫」

「どっちよ、まあいいけど……」

「さてと行きますか」

「うん。ところで隣に誰か居た?」

「うえっ!?いいいや誰も居なかったぞ」

「そう……(誰と話していたんだけどな、遠くからは確認出来なかったけどここに来る人と言えば一人しかいないよね……)」


 挙動不審の優斗に普通はバレるが千尋からすればこの日曜日に遊園地に遊びに行くと伝えたのは親しかおらずそれでいて知っている人は限られるむしろ一人しかいなかった。だが千尋はあえて聞かずにそのまま何事も無かったようにした。

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