超絶高難易度タイプの人達
次の週の土曜日も勉強会をする、月曜日からテストが始まることもあってか今回は桐谷がちゃんとやると言うことで千鶴と千尋の家でやることになった。だが部屋はダメという本人の意思でリビングでやることになった。
「お母さん。今日は優斗のお母さんの家に行っててくれない?」
「あら?どうして」
「みんなで勉強するから部屋は嫌だからリビングでやりたいの」
「なるほど、私も優斗ママと久々にゆっくりと話したかったからいいわ」
軽く片付けたあと玄関を開けるとそこにはすでに優斗達が居た。
「あら、こんにちは。優斗君に真理ちゃん、それに桐谷君ね」
すでに千鶴と千尋から優斗以外から話を聞いてるためすぐに真理と桐谷のことが分かった。
「今日はお邪魔してすみません」
「いいのよ、じゃあ何かあったら呼んでね」
「はい」
「あ、優斗君」
「何でしょうか?」
母親は優斗を手招きすると耳元で囁く。
「二人同時に付き合っても構わないけどちゃんと最後には必ず片方を選びなさいよ、私と夫はもう優斗君に託してる。大丈夫二人は良い子だしちゃんと覚悟も持ってるから……優斗君よろしく頼むわね」
がっちりと握手をして笑顔で優斗の家に行ってしまう千鶴と千尋の母親は一瞬何のことを言われたのかさっぱりだった優斗だがのちに気づく。
「え、えぇーー!」
「うわっ!突然大声だすなよ」
「近所迷惑だよ」
「ああいやごめんごめん、じゃなくてウッソ!?なに?怖っ……」
真理と桐谷に注意され優斗は黙り込むがまた大声を出して驚きたい気持ちでいっぱいだが堪える。
「(え?なになにあの人、俺が千鶴の事が好きなの知ってるの?いやそんなまさか……いやまだ千鶴が俺の事を好きだと言うことは言ってないということはだ、まだ完全には把握してない?うん?待て待て自分で考えて分からなくなってきたぞ)」
混乱する優斗、その頃優斗宅では。
「優斗は千鶴ちゃんを選ぶと思うね」
「え〜私は優斗君は千尋を選ぶと思うわ〜」
「しかし優斗は意気地無しね」
「別にいいじゃない。それがまた面白くしてるんだから」
「私達の口から言ってもいいけど難しいわね」
「そうね」
どちらの母親も恋愛事情を全て把握してお菓子をつまみながら談話していた。
「上がっていいよ〜、あれ?優斗どうしたの?」
「うん!?いやいやなんでもない、なんでもない」
「そう?ならいいけど……」
突然の不意打ちを食らう優斗だったが平常心を戻して家に入り勉強会が始まる。
「優斗!この問題の解き方忘れた」
「はぁ?この前教えただろ」
「忘れたもんは忘れた」
「ゲンコツ十回か教科書で袋叩き百回どっちがいい?」
「え?うそ……そんなことしたら忘れちゃう……」
「大丈夫だ、叩いて教えて叩いて教えてを繰り返す、痛みで覚えるから」
「ま、待て……それは噂に聞く痛みと共に記憶に刻むやつかなにかじゃないか?」
「ほう馬鹿でも知ってるんだな」
「悪かった俺が悪かった」
「歯を食いしばれ桐谷」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ」
スパンっと教科書を丸めて綺麗に音が鳴るほど叩かれた桐谷は優斗の優しさでその一発だけで済まされてそのあとちゃんと教えてもえらる。
「お姉ちゃん。ここは?」
「そこは……」
「あ、そこなら私覚えてる。ここをこうやると分かるんだよ」
「ちょっと真理、それは私が去年教えて普通に間違えた事を教えてる」
「え?マジ?」
「マジよ、ここはこうしてやると分かるの」
真理が千尋に間違った答えを教えるのを止め正しい答えにする千鶴。
それを見ていた桐谷は今にも泣きそうな声で呟く。
「うぅ……正反対だ。暴力反対」
「お前なぁ……もう少しでテスト範囲の分が終わるんだから我慢しろよ」
「はぁい……」
そんなこんなで先週少し多めにやっていたこともあり今日は早めにテスト範囲の分が終わりあとは見直しと確認だけでなんとかなる状態までに終わった、桐谷と千尋は解放されたかのように喜ぶ。
「ねぇねぇお姉ちゃんゲーム機貸して」
「え〜」
「勉強終わったからいいじゃん」
「私あまり人に貸したくないんだよね」
この家では千鶴しかゲーム機を持っておらず千尋がやる時は千鶴から借りていた。
「お願い!」
「俺からもお願いします千鶴ちゃん」
桐谷も混ざって懇願する姿に耐えきれなかったのか部屋から持ってくる千鶴、お礼を言うと共に颯爽とプレイし始める桐谷と千尋に今週はテスト期間もあってかバイトが休みの真理も一緒にプレイする。それを見守る千鶴と優斗。
「はは、相変わらずだなアイツら」
「ホントよ、ちゃっかり真理もやってるし」
「(さて……千鶴の母親の事をいつ聞くかだよな)」
「(何にも話すことないよ〜どうしよ〜〜)」
「あ、千鶴さぁ」
「ひゃい!?」
「ああ急にごめん、ちょっと気になったんだけど千鶴は好きな男子とかいるの?(はぁぁどんなタイミングで聞いてんの俺)」
「すすす好きな男子?(え?なにこのタイミング、ちょっと謎過ぎる)」
急に聞かれた好きな男子はいるのかという疑問に千鶴はなんて答えればいいか分からず俯き髪をいじる。
「す、好きな……男子……?(いるよ、目の前に!けどちーちゃんや真理もいる所で言えるわけない)」
「う、うん(何やってんだ、こんな場所で普通は先週聞くやつじゃなかったのか?今なら取り消せる。消せ俺)」
「それは……」
せめてもの無難な答え曖昧な答えを言おうと口を開いた。
「ーーそういや千鶴ってゲーム得意だったよな?一緒にやらない?」
めちゃくちゃ空気の読めない桐谷が突然入ってくる。
固まる千鶴に優斗は苦笑いしてなんて言えばいいのか反応に困っていると突然千鶴は立ち上がり桐谷の所に行くとゲーム機を受け取る。
「……おす……」
「え?なに?」
「ぶっ倒おす!!」
「怖っ!え?うそ、俺何かやった?」
いつもの引っ込み思案な千鶴からとは思えない言葉に驚く桐谷はそのあとゲームでフルボッコにされて果てる。
千尋と真理は桐谷を心配しつつもゲームを再開して千鶴は優斗の所に戻ってくる。
「(もうもうもう何なの〜、桐谷くんの馬鹿阿呆)」
「(さすがとしか言いようがない。勉強だけでなくゲームも得意とか……)」
頬を膨らませまだ怒ってる千鶴に優斗は優しく声をかける。
「大丈夫千鶴?」
「ごめんね優斗、突然話を遮って」
「全然気にしてないよ」
「ところで好きな男子の事だよね」
「うん(今なら止められる!止めるんだ)」
「それでね、好きな男子は……」
「ああごめんやっぱ無し、というか俺が聞くのはおかしいよな。本当にごめん」
「え……あぁ、うん……(あう〜〜そんなぁ、ここで居ないと答えればもしかしたらがあったのに〜〜)」
無事に止められたことにホッとする優斗に残念そうにため息を吐く千鶴。
「そういえばこの前勧められたアニメを観たんだけど……(やっぱこっちの話の方が千鶴にとっては安心するよな)」
「ああこの前のね、うんうん……(オタクにとっては嬉しいけど悲しいーー)」
相手を気遣う優斗だがそうじゃない気持ちの千鶴だが変に話題をねじ曲げることは出来ずにそのままアニメの話で盛り上がる。
そんな二人をじっと見つめる千尋。
「(もう桐谷先輩のせいでせっかくのチャンスが)」
ちゃっかり話を聞いていた千尋は二人が進展しないか念を送る。
「千尋ちゃん大丈夫?」
「え?あ、はい大丈夫です」
「ボーとしていたから心配したよ」
「あはは、ちなみに真理先輩は好きな人はいますか?」
「好きな人?う〜ん私は千鶴ちゃんが好きかな、でも千尋ちゃんも優斗も桐谷も好きだよ」
「(あ、ダメだこの人……恋愛超高難易度タイプだ)」
真理は好きな人と聞かれ普通に友達として聞かれたと勘違いして淡々と答える。それを聞いた千尋は瞬時に真理は恋愛相談には向いてない人だと察した。