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勉強会だが二人の距離は愛も変わらず

 土曜日。優斗の家の前に集合する千鶴と千尋に真理、桐谷。そして優斗が家の中に招き入れる。


「母さん、俺達部屋で勉強してるから邪魔するなよ」

「んー分かった。あれ?千鶴ちゃんに千尋ちゃんじゃん。久しぶりね、あ。でもこの前会ったばかりか?」


 リビングでくつろぐ優斗の母親は千鶴と千尋を見て挨拶すると千鶴と千尋も返す。


「はい。今日はお邪魔させていただきます」

「お邪魔させてもらいまーす」

「可愛いから全然オッケーよ、そして二人は優斗の友達?」

「私はいつも千鶴ちゃんと仲良くさせてもらっている真理です」

「あ、俺は優斗をいつも世話して……ぶへっ!」

「お前はいつも俺に迷惑かけてるだろ」


 あらかさまな嘘を言おうとする桐谷を叩く。


「いいお友達ね。優斗ちゃんとしなさいよ」

「俺は普通だと思うが?」

「まぁまぁそれじゃあごゆっくり〜」


 優斗の母親は軽く手を振って見送るとテレビを見始め、優斗達は部屋に入る。優斗の部屋は綺麗に片付けてありちゃんと部屋の真ん中で勉強できる準備が整っていた。


「久々だな〜優斗の部屋。たしか本棚の裏に〜……ぶへっ!」

「勝手に漁るな、それと勝手に物色するな」


 何度か優斗の部屋に来ている桐谷にとってはもはや自分の第二の部屋となっているのかどこになにがあるのか把握しており勝手に漁ろうとして優斗は教科書で叩く。


「ふむ…………ベッドの下にエロ本はないと……」

「おい、真理は勝手にベッドの下を探るな、それとそこまで分かりやすく置いてねぇよ」


 真理は無作為にベッドの下に手を突っ込みエロ本探しを始める。


「ーーなっ!?いやしかしそう言うてことは本当にエロ本が……?ごくり……」

「ば、ばか!ねぇよ、置いてねぇよ」


 高校生ということもありもしかしたらあるかもしれないという可能性を考えるが優斗の反応から絶対にあると確信した真理は不思議と桐谷の方を見ると桐谷はキメ顔で親指を立てる、そしてその意味を察した真理も親指を立て妙な所で意気投合する二人。


「はぁ……お前ら……勉強しに来たんだろ」

「ごめんね優斗……(エロ本……やはり優斗も男の子だよね、読むよね……ごくり……)」

「全然気にしてないよ、それより勉強しようか(大丈夫。絶対にバレないバレない……まずバレないでほしい)」


 ぎこちなく笑う二人に突然何かを発見して声を上げる千尋。


「あったーーー!ユートのエロ本発見!」

「ーーなにっ!」

「ーーそんなっ!」


 先を越されたのが悔しかったのか凄く落ち込む桐谷と真理。


「おまっ!ちょっとこっちに来い!」

「わっ、なになに?」


 優斗は千尋を連れて部屋の外に出ると中には聞こえないように小声で話し始める。


「千尋。お前あまり男子の部屋を漁ることは絶対にするな」

「どうして?」

「逆に聞くが千尋の部屋が他の男に漁られたら嫌だろ」

「私はユートなら別にいいけど?」

「馬鹿そうじゃねぇよ」

「ちなみにユートはこの中だとどんな女の子が好きなの?」


 エロ本のページを何の躊躇もなく開く千尋にすぐさま取り上げる優斗。


「お前まさか……日曜日行けなかったのを根に持ってる?」

「ううん別に」


 全然気にしてない千尋は笑顔で首を横に振るがその笑顔が逆に怖く感じた優斗。


「(ヤバいな、もしかしてやっぱり千鶴と仲良かったのを根に持ってるのか?今日は千尋の面倒を見た方が良さそう?)」

「(たしかに日曜日はちょっと行きたかったけどユートが持つエロ本には興味あったからちょっとだけ意地悪しちゃったごめんねユート)」


 ほんの少しだけ気にしていた千尋だが大して気にもしてなかったが優斗は今日は千尋の面倒を見ることにした。


「とりあえず勉強な、ちゃんと見てやるから」

「でもユートはお姉ちゃんより下だよね?」

「うっ!で、でも多分千鶴は真理の方を見ると思うからさ」

「あれ?そしたら桐谷先輩は?」

「アイツは放置」

「うわ〜可哀想……」

「多分サボる」

「ちょっとそれは私も思った」

「だろ、そういうこと」

「なるほど」


 そして部屋に戻ると先に勉強を始めていた三人、机は四角で三人はバラバラに座って優斗と千尋は隣同士に座る。そして勉強会が始まった、最初は互いに教えあったり教わったりと順調に進み何事も無くテスト範囲の半分は超えた辺りで真理はバイトの時間になる。


「そろそろ時間だ」

「バイト頑張ってね」

「うん、ありがとう。じゃあまた来週よろしく」

「またね」


 千鶴に軽く手を振ったのちに颯爽とバイトに行ってしまう真理、そこで気が抜けたのか桐谷がその場に寝っ転がるとちょうど部屋の隅に片付けた優斗が所持するゲーム機を発見する。


「お、ゲームやろうぜ」

「今日は勉強会だろ、だれも……」

「桐谷先輩!私もやりまーす」

「おい千尋」

「おっ!いいね〜一緒にやろうぜ」


 千尋はすぐさま桐谷の隣に移動して二人でゲームを始める。当然すぐには止めないであろう二人を放置して優斗は千鶴の方を見ると千鶴は熱心に勉強を再開していた。


「千鶴なんか悪いな、場所変えるか?」

「えっ!?いや大丈夫だよ私は別に」

「アイツらうるさくなると思うからさリビングに変えよう、多分母さんは買い物に行ったと思うから」

「あ、ありがとう……(あれ?これってまさかの二人っきり到来?)」

「(やべっ、咄嗟に言ってしまったけどこれ二人っきりじゃん)」


 そして断れる理由は当然ないため優斗はゲームする二人を差し置いて一言リビングに居るとだけ伝えたのち部屋から出ていきリビングに行くと優斗の言う通り母親は買い物に出かけて完全に二人っきりだった。


「ここなら静かだし勉強出来るだろ」

「う、うん……」


 リビングで向かい合って勉強を再開する優斗と千鶴だが無情にもどちらも成績は上であるために教える教え合う場所なんて無くましてやテスト範囲である場所も半分は超えているため二人にとってはこの時間はもはや不必要である時間だった。

 それゆえにしんと静まるリビングに時計の針の音だけがリビングに響き渡るというなんとも気まずい空気になってしまった。


「(やべーーーーどうすんのこの空気)」

「(ヤバいヤバいどうすんのよこの空気)」


 どちらも教科書ノートと睨めっこして顔を上げることが出来ずにいた。


「(何か話題だ、話題話題話題……)」

「(ここは一気に攻めるべき?いいえここは緩く行く?)」


 沈黙の沈黙、当然どちらも思考にガン振りしてペンが止まっているがそれすらも気づけないほどに考えまくっていた。

 そして導き出した答えは。


「「あ、あの……」」


 まさかの同時に被る。


「あ、ごめん千鶴からいいよ」

「いやいや優斗からでいいよ」


 譲り合い精神がさらに沈黙を作る。だが優斗は先に出る。


「えっと……最近千鶴のお母さんどう?」


 ここで振る話題ではない話題を出す優斗だが話の切り口としてはなんとか成功する。


「げ、元気だよ……うん……」


 その一言で話題終了。再び沈黙になる。すると千尋がリビングにやって来る。


「ユート。飲み物ない?」

「の、飲み物?」

「うん。喉乾いちゃった」

「お前達騒いでるだろ」

「えへへ、ちょっとね」

「全く困った奴らだよ」


 優斗は千尋と共に冷蔵庫を確認する中で千鶴はホッとしていた。


「(ちーちゃんナイスぅ!)」


 意外な助け舟に感謝しつつも新たな話題を見つけようと考える千鶴。


「あ、そうそうお姉ちゃん。私多分このまま桐谷先輩とゲームをずっとやることになりそうだから勉強また教えてくれる?」

「ちょっとちーちゃんそれはダメだよ勉強はちゃんとしないと」

「ゲームが楽しくて」

「ちーちゃん!」


 逃げるようにして桐谷の分の飲み物を持って優斗の部屋に行ってしまう千尋に怒って追いかけようとするが優斗が止める。


「ま、まあまあそんなに怒らなくても(千尋〜あとで説教だな)」

「ダメだよちゃんと怒らないと」

「そしたら俺も千尋の分の範囲を一緒に考えながら手伝うからさ(やらないと色々と言われそうだからな)」

「でも〜……(やっぱり千尋の事は思ってるよね、当然と言えば当然だけど)」

「大丈夫だよだって一年の問題なら俺と千鶴なら楽勝だろ(桐谷お前は良い奴だったよ……)」

「そうだよね(でもこれで何とか一緒になる口実にはなったけど優斗はやっぱり千尋の事がすきなんだよね……それと桐谷くんごめんね……)」


 中々上手くいかない千鶴に一進一退を繰り返す優斗、そして謎に風評被害を受ける桐谷だが今回は自業自得でまたもやクシャミをする。


「ーーくしゅん!」

「大丈夫ですか?桐谷先輩」

「んー大丈夫。最近クシャミが多くなった気がするな」

「馬鹿は風邪を引かないって聞きますが実際はどうなんでしょうかね?」

「え?千尋ちゃんそれって俺の事を馬鹿にしてる?」

「ただの噂ですよ」

「それは遠回しにも近道的にも馬鹿にしてるよね?」

「あ、先輩ガラ空きです」

「あーー!そんなぁ負けた!!」


 一瞬の油断を狙って勝ちをもぎ取る千尋は大きくガッツポーズする。


「(お姉ちゃん。褒めて、話題を振るどころかユートとさらに近づける話題を振れたよ)」


 実は少し前から優斗と千鶴が話題を出せないことを陰から見ていた千尋だったが勉強を任せたのは話題作りにさらにくっつける口実を振ったつもりだったが千尋は知らない、この後千鶴と優斗からこっぴどく怒られることに。

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