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高速道路の如く妄想が加速する

 今日の朝は余裕をもって出る三人、しかし千鶴と千尋は同時に欠伸をする。


「(はぁ…結局睡眠時間が短くなってしまった)」

「ふぁ〜、眠い(色々と考えていたら睡眠時間が短くなっちゃった)」


 妙な所ではピッタリと息の合う二人。


「どうした?寝不足か?」

「うんちょっとね…お姉ちゃんは?」

「私も…」

「睡眠は大事だぞ、ちゃんと寝ろ(俺も寝不足だけどおそらく千尋より早く寝た、千鶴はそれよりも寝てなかったかけ?まぁいいか)」

「ふぁい…」

「は〜い…」


 自分で注意しながら欠伸するのは恥ずかしいと思い欠伸を我慢する優斗だった。

 そして今にも眠りそうな目を擦りながらもなんとか学校に辿り着く千尋。


「んあ…学校?」

「ちーちゃん大丈夫?」

「へーきへーき、おーい圭ちゃ〜ん」


 眠気には滅法弱い千尋はフラフラになりながらも門で待つ友達の所へ行った。


「だ、大丈夫かしら…」

「昔から朝に弱いのによく夜更かしとかしてたよね」

「あー、あの時はたしか私がアニメを観る時に初めて優斗とちーちゃんを誘った時だったよね」

「覚えてる、次の日は半日以上寝てたよね」

「寝顔可愛かったからついついイタズラもしたよね」

「あったね〜、いや〜あの時に戻れたらいいよな」

「そうだね、戻れたらいいな…」


 それはまだ中学の夏休みの話、千鶴がアニメに完全にハマっていた時期に千尋と優斗を誘い深夜アニメを観ていた、次の日の朝は案の定三人共起きるのが遅くなり怒られたが千尋だけ半日以上寝て怒られずにすみ不公平だと思った千鶴と優斗が顔に落書きした思い出だった。その時はまだ付き合う前の話。


「(戻れたらあの時の告白断れたかもしれないのに…)」

「(戻れたら告白出来たかもしれないのに…)」


 同時にため息を吐く時間が巻戻れば出来なかったことが出来る、あの時の告白を、と同時に思ったが皮肉にも時間は戻らない。今を生きて次の機会を狙うしかない二人。


「あ、ちょうどいい、昨日の映画の話どうする?」

「あうん、いき……」

「おっはよーー!!」


 またもやタイミングが悪く突撃して千鶴と優斗の間に割って入ってきたのは真理だった。


「えぇ……(コイツ、疫病神か!!)」

「……(真理…空気読んで…)」

「ん?どうしたの?元気ないよ、まさか寝不足か〜?ダメだよちゃんと寝ないと〜体によくない!それに……」


 くどくどと説明する真理に千鶴は泣き目になりながら制服の袖を掴み頬を膨らます。


「どうした千鶴?」

「むぅ〜……(真理の馬鹿ぁ〜)」


 体を揺らす千鶴に揺らされる真理は一体なぜ千鶴が頬を膨らませ怒ってるのか分からなかった。

 その後は答えを言える間もなく三人で教室に入る。


「(もうもうなんでいつもタイミングが悪いの〜)」


 ご立腹の千鶴は頬を膨らませたまま席に着くと恐る恐る真理が近づいてくる。


「まだ怒ってるの?」

「真理のせいで逃したじゃん」

「何が?」

「それは、えっと……え、映画を一緒に……」


 恥ずかしくなる千鶴は最後まで言えず声が篭もる。


「あ〜、映画ねぇ〜。意外ね千鶴と優斗なんて、優斗と千尋じゃないんだ」

「そうなの……けどまだ行くと言ってないの……」

「ありゃ〜、それは早く言わないとダメだよ」

「真理のせいだよ!せっかくあの時の言えると思ったのに」

「あはは…ごめんね〜、じゃあ私行ってくるよ」


 突然、真理が桐谷と話している優斗の方に向き歩きだそうとしたため瞬時に腕をつかみ止める。


「ちょちょちょーーー!!なに?行ってくるって?」

「え?いやだって言いそびれたんでしょ、そしたら呼んでくるか伝えてくるよ」

「ありがたいけど違う!そうじゃないの!」

「ダメなの?」

「ダメ」

「なんで?」

「ダメなものはダメ(そういえば真理はこういうに関しては鈍かったわ)」


 自分の口から言いたい千鶴は真理を止める、しかし真理は千鶴に対して優しすぎるため言いに行こうとするがそれは単に恋愛として感が鈍いため普通に千鶴と優斗の組み合わせが珍しいというだけで好きとか考えてすらなかった。


「まぁ千鶴が言うなら…」

「うん、なんかごめんね…」


 真理はきっちりとした性格な反面少し抜けてるといった地味なギャップが可愛げがあると評判だがそれよりも恋愛に鈍感というなんとも難易度が高いと言われてる、前にある一人のとある男子生徒から告白されたらしいがその時に「付き合ってください」に対して返事した言葉が「どこに?」という、ここまでは鈍い人でもありそうな事だが男子生徒は諦めず「好きです、付き合ってください」と再度言い直した所、「うん私も友達として好きだよ、どこに行くの?」と純粋無垢な笑顔で返されたらしく見事に男子生徒は玉砕したらしいが今だに諦めてないとの噂もある。


「(真理いい人なんだけどここは私がちゃんと言わないと好感度としてダメだよね)」


 恋愛ゲームも嗜んでいた千鶴にとってやはりここは自らの口で言わないと意味がないと思っていた。

 予鈴も鳴り授業が始まる。


「(…かと言っていつ言う?昼休み?いやいつも桐谷達と食べてるから話しずらいし途中で挟むのも悪いよね、帰り道?あっ!そういえば今日はちーちゃん部活だった、じゃあ帰り道か!!)」


 昨日とは同じことが起きないように授業をしっかりと聞きながからもノートの端に小さくグルグルと円を描きながら考えていた。


「え〜と、よくですね私は釣りをするんですが特にカサゴ、メバル、キスとか釣りますね」

「ーーッ!!(き、キス…)」


 先生が時々する授業と関係ない話にたまたま釣りの話でキスが出てきてノートを書いていた千鶴が反応する。周りは当然釣りの話に魚の話と全く興味なさそうに聞くが先生は止めどなく話す。しかし千鶴はそのキスと聞いただけで一人妄想を始めた。


「(キス……ちーちゃんと優斗が…いやいや幼馴染でもちょっとは進むよねうん、うん?妹が私の同級生、しかも片思いかもしれない相手とキス?あり?なし?なしだけど…妹ならオッケー…と言いたいけど……え〜、何このモヤモヤ感、いいんだよちーちゃんと優斗が付き合うのは、けどやっぱり諦めきれない気持ちが〜、でもでもキスまでしたってことは……いいのかな?でも好きな人とのキスは憧れるな〜)」


 段々と上の空で妄想が加速を始め少しニヤけてしまう、たまたま優斗が先生の話が面倒くさくなりうしろを見たらたまたま千鶴のニヤける顔が目に入る。


「(なんで千鶴ニヤけてるんだ?釣りや魚好きなのか?)」


 とんでもない誤解が生まれてしまった。

 大半が先生の趣味話で終わった授業、千鶴はまだ妄想をしていた、そんな千鶴に優斗は近づくが千鶴は妄想に夢中で気づかない。


「(うへへへ……私がもし優斗と付き合えたら……)」

「千鶴ちゃん?」

「(優斗の優しい声…あ〜、昔は可愛かったな〜)」

「おーい、千鶴ちゃん?」

「…ん?うひゃい!?ゆ、ゆゆゆ優斗、とととおわっ!!」

「ーー危ないっ!」


 ビックリした千鶴はそのまま後ろに椅子ごと倒れそうになるがギリギリ優斗が千鶴の手を握り肩に手を回して引いたことによって椅子だけ倒れ千鶴まで倒れそうになるのを回避した。


「良かった…大丈夫?千鶴?」

「あ、うん大丈夫……」

「ふぅ、良かった……(やべっ!咄嗟とはいえマズいなこの体制は)」

「(ヤバいヤバいヤバいヤバーい!優斗と抱きついちゃった!!というかここで呼び捨てとか久々過ぎて死にそう)」


 一瞬教室内は椅子が倒れたことによりビックリしたがちょうど優斗の背で千鶴が隠れ単に椅子が倒れただけだと思い視線を戻す、しかし千鶴と優斗の体制は今抱きついている体制だった。

 どちらも鼓動が早くなる、離れようとするが本能がまだ抱きついていたいと反応して中々離れられない。


「ゆ、優斗…(踏ん張れ私!ここはチャンス)」

「ん、ん?なに?(近い!近い近い、けど離れないとマズい、いつまでこの体制でいるのか怒られる)」


 絶好のチャンスを逃す訳にはいかないと思い千鶴は顔を上げるとそこには優斗の顔があり顔が赤くなる。


「あ、あ〜、あのね……うん、その〜……(あばばば、ヤバい顔が……)」


 しかし、あまりにも急な出来事と顔の近さにより呂律、思考がバグり始める千鶴。そしてさらに寝不足からか鼻血が出る。


「ち、千鶴。鼻血出てる」

「……え?」


 優斗に指摘され自分の鼻を触り手を見ると鼻血を出してることに気づいたと同時に気を失った。


「………う、ううん……ここは…」


 目が覚めると保健室のベッドの上だった。


「起きた?」

「うひゃい!?ゆ、優斗!!」

「大丈夫?鼻血が急に出てきたからビックリしたよ」

「あ、そうだった…」


 自分の鼻を確認する千鶴、ティッシュが詰め込まれて鼻血が出たことを思い出す。


「(あ゛あ゛〜〜、なんでまた〜〜)」

「(正直助かった、あのままだったらやばかった)」


 とことんチャンスを逃す千鶴になんとか回避してラッキーだと思う優斗。


「起きたみたいね、まぁ軽く寝不足と軽い興奮状態で出た鼻血ね。異常はないけど女の子なんだから寝不足は毒よ」


 保健室の先生が千鶴が起きた事を確認する。


「はい…ありがとうございます」

「とりあえず今は授業中だから休むといいわ、それと私は職員室でやる事があるからそこの男子は彼女をしっかりと見といてね」

「え?俺ですか?」

「そうよ、女の子一人寂しいでしょ、んじゃあとはよろしく」

「あ!ちょっ、先生!」

「そうだ、二人っきりだからといって変な事はしちゃダメだからね」


 先生は一方的に話を進め去り際に釘を刺して行った。


「ごめんね、優斗……(二人っきり…)」

「いやいいんだ、俺が悪かった突然声をかけて…(二人っきり…)」


 会話が止まる二人。どうやって話を切り出すのかどこから話を進めればいいのか分からなくなる。


「「あ、あの…」」


 同時に声が重なる。


「あ、ごめん。先にいいよ」

「いや千鶴ちゃん先にいいよ」


 さらに気まずい空気になるが千鶴から話し始める。


「えっと……映画の事なんだけど…」

「うん…(どっちだ?)」

「その…行ってもいいかな?(言い切った!)」

「うんうん、分かった。おけ、行こう一緒に…うん……(キターーーー!)」


 心の中でお祭り騒ぎのように優斗は喜ぶ、千鶴は言い切っただけで満足して心臓がドキドキする。


「優斗の方は何かな?」

「あーー、その事なんだけど…(昨日の嘘を嘘と伝えないと…)」


 先程までお祭り騒ぎの心の中は急に静寂になりソワソワし始める。


「き、昨日の…話なんだけど……」

「昨日の?」

「そのき、キスの話は嘘なんだ……」

「嘘……え?(う、嘘?良かった〜、良かった?良かったの?)」


 言い切った優斗は千鶴の顔を見ると千鶴は素直に喜んでいいのか分からなく苦笑いする。


「えっとその〜、本当はまだそこまでの進展はなくて〜、いやごめん千鶴ちゃんは千尋と付き合ってる男子の話なんて聞きたくないよね、あはは…(蛇足するな俺!!普通に進展が無いと言えばいいだけだろ)」

「そ、そうなんだ意外だな〜(と、とりあえず今は無難な答えを出すしかない)」

「(い、意外…やはり進展がないとダメなのか?けど進み過ぎると千尋と別れる事が…)」

「(ちーちゃんには悪いけどまだ私は行けるって事だよねっ!神様!!)」


 無難な答えが優斗の心に突き刺さる、しかし千鶴はキスの話が嘘と分かり大喜びするが逆に千尋との仲を心配をする。


「と、とりあえず千鶴ちゃんはまだ寝てないと」

「うん、ごめんね。本当に」

「全然大丈夫だよ」

「本当にごめん、少しだけ寝るね」


 なんとか寝顔を見せないように優斗とは逆の方に体を傾ける。


「(まだ行けるかもしれないけどちーちゃんと仲悪いのかな?でもやっぱ優斗と付き合いたいな〜、どうしようやっぱまだ様子を伺った方がいいよね。単にちーちゃんと上手くいってないだけで私に気があるわけじゃないんだから気をつけないといけない。でもやっぱり優斗を諦めきれない)」

「(マズいよね…進展が無いと姉としたら心配になるだろうし、かといって進展があると千尋と断る時に辛いに心に重大な傷を負うだろう、それにその状態で千鶴と告白するとなったら一大事だよ、だから進展は全くない状態で別れた方がいいよね。千尋には本当に悪いけど、いや全く好意がないわけじゃない。確かに千尋は可愛いし活発的だし元気でいい子なんだけどやはり千鶴を諦めきれない)」


 千鶴と優斗はまだ抱きついた時の手の感触を思い出しモヤモヤとしながら授業終了のチャイムを待った。


「ーーハッ!なんかビビっと来た!!」

「やっと起きたかね千尋くん」

「あ、いやすみません先生…」

「全く、まぁいい。それでここの文章はーー……」


 何かを感じ取った千尋は授業中ずっと居眠りしていたが急に起き出す。先生もため息を吐くが授業に戻る。


「(はぁ…どうしよう、なんかいい方法ないかな〜。あっ!私が言っちゃえばいいのかな?でもお姉ちゃん今の気持ちはどうなんだろう、まだ好きなのかな?ユートはまだ好きそうだけどお姉ちゃんが分からない。もうもういつもアニメとかゲームしてるお姉ちゃんの気持ちが分からなーい)」


 千尋もかなり困惑していた。優斗の気持ちは付き合ってる身として理解していたが姉である千鶴の気持ちは分からず、また変わっているかもしれないと思い聞くに聞けない状態で困っていた。

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