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我狼酔侠伝【白夜の追憶】  作者: 風見光太郎
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生きる意味

2人は相手の出方を観察するように、ジっとしている・・構えも無く




いや・・構えていないように見えて、いざという時には自由に動ける脱力が出来た理想的な状態だ




龍飛が先に攻撃を仕掛ける・・右掌を壇中穴目掛け放つと同時に、左掌で鼻を狙う、間髪入れずに右人差し指と中指の二指で天突(てんとつ:鎖骨の間にある中央のくぼみ)を突きにいく




老人は上下左右にブレる事なくスーーっと避け、龍飛の右斜め後ろに・・右縦拳を後頭部目掛け放つと同時に左拳、龍飛が体を向けて来ると震脚(しんきゃく:地を強く踏みつける)と同時に体当たり




脱力して威力を弱める龍飛




喰らったように見せ倒れる龍飛の近くに寄ってくる老人




老人『並の人間になら通じるのだろうが、儂には通じんぞ・・喰らった振りなどするでない』




龍飛『ふん』




老人は動きの起こりを見せずに右拳にて攻撃、龍飛はニ指で弾く・・左拳、右・・右左右・・左右交互に連続攻撃を浴びせ・・・ようとするも軽く受け流される




龍飛『このままでは勝負がつかぬ・・古の武人の如く三日三晩たたかい続ける訳にもいかん・・ならば互いの一撃に全てを掛けるのは如何かな?』




老人『よかろう』




構えを見せぬ二人が構える・・防御を捨て、一撃で決着をつける故の構え




構えていても、いざ攻撃の時には起こりを見せず行う二人である事は明白




老人が僅かに早く動いた・・刹那の瞬間、龍飛も攻撃




老人は倒れた。




龍飛『なぜ急所を狙わなかった?』




老人『さて・・な・・お主には分かるまいて・・お主にはな』




龍飛は老人を土に埋め葬った。






《並木道》




さつきが歩いていると、後ろの方から大きな声が聞こえた。




『おーーーーい』




当たりを見渡す




さつき『藤崎さん!!』




煌我『さつきちゃん・・久しぶり・・元気だった?』




さつき『はい』




煌我『今日は・・?』




さつき『オーディションに・・・』




煌我『行くの?』




さつき『あ、いえ、終わって帰るところです』




煌我『へ~~、受かるといいね』




さつき『はい』




煌我『さつきちゃん・・公園で少し話していかない?』






さつき『え・・はい』






《龍飛邸宅》




十猫虎が何かを探している




猫虎『本棚が地下室の入り口・・本棚・・・まさか本の中に??』




片っ端から本を捲ってみる




ふと並んでいる本の奥に手帳がある事に気づいた




手帳を手に取ってみると・・破られた箇所が・・辺りを探す




辞書の中に挟んであった紙が落ち、破れていた部分だと分かる




猫虎『20〇X年、弟子、まさるの・・勝、父さん??』




龍飛『何をしている?』




猫虎『!!』




龍飛『何をしていると聞いているのだ?』




猫虎『・・・』




龍飛『答えぬつもりなら、両腕の筋を断つぞ?』




猫虎『うぁーーーーーー!!!!』




死を覚悟で攻撃をする十猫虎




右掌・左掌・右肘打ち・手の甲で鞭の如く攻撃、掌で続き両掌で攻撃




龍飛は避けると同時に接近し、十猫虎の背に一撃・・昏倒した。




龍飛『・・・時が来たか』






龍飛が点穴(てんけつ:ツボをつく)すると十猫虎が目を覚ます




両腕も命も無事であった事に安堵しつつ疑問に感じていた・・なぜ殺す事を何とも思わない伝説の暗殺者たる龍飛が自分を助けたのか?




龍飛『どうだ?少しは話す気になったか?』




猫虎『・・・』




龍飛『筋を断っていいのか?』




猫虎『師父・・貴方が本当に筋を断つ気なら、とっくにそうしている・・それをしないという事は、私は筋を断たれない・・違う?』




龍飛『何が言いたい?』




猫虎『貴方、私の父、勝と・・母いぶきを殺した?』




龍飛『何を言い出すんだ十猫虎、私がお前の父ではないか』




猫虎『父親代わりでしょ?それに私は十猫虎じゃない、夢野なつき、勝といぶきの娘よ!』




龍飛『それは分かっている・・お前の両親も知っているぞ』




なつき『嘘!』




龍飛『何故この私が嘘をつかなくては成らんのだ?そして何故わたしが、弟子を殺さなくては成らない?』




なつきはキッと睨む。




龍飛は、沈黙の後、嘆息した。




龍飛『馬鹿な奴め・・・お前に全てを話す時が来たようだ・・ついて来い』






《別室》




何かを探し出す龍飛、写真を手にした龍飛に




なつき『話って何?』




龍飛『十猫虎、お前も知っての通り、お前の父、勝は私の弟子だ・・私が仙武掌の掌門の座を煩わしく思い、勝に譲り・・真武酔仙経の絶技を修得しようとしている事は知っているだろう?その私が何故、弟子を殺さなくてはいけないのだ?・・私は今まで、名誉・名声を追い求めず、世間の風評など気にせず生きてきた・・拘りが強い故か、私の事を悪人呼ばわりする輩も多いが・・私は・・悪人しか殺さぬ』




なつき『人を殺す事自体が許される事ではないって分からない?仙武掌は禅武双修・医武同修・自他共に傷付かずの三つを掲げてる・・どんな迫害にも仏法に従い、心穏やかに、慈悲の心で堪え忍ぶ柔和忍辱にゅうわにんにくが貴方には欠けてるの・・わからない?』




龍飛『故に三厭五葷(さんえんごくん:動物性の物と臭いある野菜)は断っている』




なつき『それだけでは意味が無いでしょう?貴方のせいで、私は多くの命を』




龍飛『怖いのか?・・人を殺す事が許されぬ?・・そんなものは綺麗事だ・・十猫虎、なぜ私がお前と2人だけで暮らしているか分かるか?』




なつき『変態だから』




龍飛『なに・・?』




なつき『冗談』




龍飛『おま・・』




咳払いし




龍飛『私には梅雪メイシュエという妻が居た・・江湖(こうこ:侠客の居る社会)1の女侠でな、共白髪になるまで生きていこうと、富士の山頂で朝陽に向かって誓ったのだ・・互いに技を高め合い、認め合い、これ程までに幸せな事があるのだろうか?と思う程に・・幸福な日々を送っていた』




なつき『・・・』




龍飛『2年後、私は森に現れる賊を退治しに向かった・・ところが、賊の陰すら無かったのだ・・調べてみると土の中から、何仙姑フーシエングーが遺した、真武酔仙経が出てきた・・近くに墓を築き住まいとしていた王重陽ワンチョンヤンが隠したのか、他の誰か?かは知らんが、表向きは経典、解読してみれば武林(ぶりん:武術社会)の至宝ともいえる技の数々が発見された・・私が、この喜びを一刻も早く梅雪に伝えようと帰宅すると・・』




なつき『どうしたの?』




龍飛『殺されていたのだ・・全身の骨を打ち砕かれ、見るも無残な姿でな』




なつき『・・・』




龍飛『私は怒りに震え、怒髪天を衝く思いで犯人を見付け、そいつの息の根を止めた・・梅雪の苦しみを味合わせようと、全身の骨を発勁(はっけい:筋力では無い力で内蔵をも破壊する)で砕き、両の手を切り落としてやった




なつき『そんな事、梅雪さんは望んでない、復讐が生むのは虚しさだけよ』




龍飛『お前は、愛する者を失った時、怒りに身を焼かれる事は無いのか?愛する者を失い、それでも尚、相手を許す事が出来るのか?』




なつき『・・・』




龍飛『世の中には信じられぬような悪党が数え切れぬほど居る・・加害者が罪悪感に苛まれる事なく生き、被害者は人生を無茶苦茶にされる・・ふざけるな・・お前の両親を殺したのは私ではない、私が殺すはずがない・・・殺した奴の目星は付いている』




写真を見せる龍飛・・受け取るなつき。




龍飛『いぶきがな・・立ち去る男を撮影したのだ・・死ぬ間際の事、はっきり写ってはおらんが、良く見てみろ、左腕に刺青があるだろう?この刺青を持つ者が犯人だ・・今まで、お前には内緒で探していたのだが、これからは共に探そう』




なつき『信じる』




龍飛『ん?』




なつき『信じ・・ます、昔の事、初めて話してくれたし、内容的に嘘とは思えない・・だから信じます・・疑ってごめんなさい』




龍飛『まぁ、疑われるような生き方をしてるからな・・思い当たる節がある・・行くぞ』






龍飛は外に出る・・後を追う”なつき”




なつき『待って!!・・って待つ訳ないか・・・にしても、この空は??』




『どうした?十猫虎?』




と・・背後から声を掛ける龍飛




なつき『!!?』




前に行った筈の龍飛が、いつの間にか背後に・・どのような歩法なのだろうか?




龍飛『何を驚いている?』




なつき『そりゃ、いきなり背後から声を・・・じゃなくて、この空はいったい?今は夜のはずなのに』




龍飛『白夜だ』




なつき『白夜?』




龍飛『見ての通り、太陽が沈んでも暗く成らない・・其れがビャクヤだ』






なつき『はじめて見ました・・』




龍飛『では、急ぐぞ?』




なつき『えぇ』







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