運命を揺るがす出逢い
【登場人物】
夢野・さつき/ゆめの・さつき・・・声優を目指し養成所に通う高校2年生
藤崎・煌我/ふじさき・こうが・・・パティシエを目指す大学生
円空寺・隼人/えんくうじ・はやと・・・同い年の養成所仲間
如月・麻衣/きさらぎ・まい・・・養成所の講師を務める声優
黄・龍飛/ホアン・ロンフェイ・・・伝説の暗殺者
十猫虎/シーマオフー・・・龍飛に仕える女暗殺者
劉・甲虎/リウ・ジァフー・・・龍飛の兄弟子
ルーヴァイン・・・我流拳術の使い手
養成所でレッスンを受けている”さつき”。
さつき『ふざけないで!!
私自身が、どんなに傷付こうが、この世の人々の夢を守る為、希望を捨てたりなんかしないわ!!』
続いて相手役の女性が台詞を言っている中、周囲の声が遠のき、さつきの脳裏に見知らぬ女性が浮かんだ・・だが、その顔はハッキリとは見えない。
女性は温かな声で"さつき"の事を呼んだ。
・・だが、その顔は見えず口元の笑みだけが見えた。
麻衣『夢野さん、どうしたの?』
さつき『・・・え?』
麻衣『台詞』
さつき『あ、済みません』
麻衣『・・ひとつ前の台詞から』
と、スタートの合図を出す
脳裏に浮かんだ女性を忘れようと、頭を左右に振るさつき・・息を吸い・・・。
レッスン後の室内
隼人が声を掛けて来た
隼人『夢野、レッスン時どうした?』
さつきは少し考えた後
さつき『ん~ん、別に』
隼人『別にって』
さつき『だいじょうぶ、心配しないで!それじゃぁ、また』
隼人『おい、さつき』
と・・さつきは逃げるように、急ぎ足で出て行った。
歩くさつき
『なんだったんだろう・・』
考えながら歩いていると、帰路の曲がり角を通り過ぎ、見知らぬ道に進んでしまっていた。
戻ろうとした時、甘い香りが嗅覚を刺激した。
さつきは、その匂いの方向に歩みを進めた・・そこにはヒッソリと営業している洋菓子店が。
気を紛らわすのにケーキを買おうと店の中に入るさつき。
目の前に、かわいらし~ケーキが並んでいた。
さつきは、そのケーキを2つ買うと店を出た。
竹林
上下黒で、スポーツサングラスをしたポニーテールの女性が、恰幅がイイわりに素早い男を追い詰めていた。
男『助けてくれ、助けてくれれば、幾らでも払う』
女『・・・』
男は女目掛けて殴り掛かった、右・左・右、更には蹴り・・女は苦も無く全てを避けた
男は絶叫すると女に再び殴り掛かる・・その右拳を受け流しつつ男の背後に回ると、動きを封じた。
その様子を陰から見ていた男、藤崎煌我に気付いた女。
煌我は慌てて走り去る。
走って走って、走り抜いた先の十字路、さつきが歩いていたが、勢い余り、ブツかってしまう。
ケーキの入った手提げ袋を落としたものの、地面に着く前に掴んだ煌我
さつき『あ、ありがとう御座います、反射神経凄いですね?』
しかし煌我に返事をする様子は無く、周囲を見渡した上で肩で息をしている。
さつき『あの?大丈夫ですか?』
そこにサングラスの女が現れる・・煌我に向かい歩を進めようとした時、何故か一瞬たち止まった。
その隙に煌我は、さつきの手首を掴むと勢いよく走りだした。
さつき『ちょっと、なんなんですか?!』
振り解こうとするも出来ず、引っ張られるさつきは、身を任せる事しか出来なかった。
さつきは公園が視界に入ったところで意を決し
『痛いです』
煌我『ごめん』
スっと放す煌我にさつきは
『なんなんですか?』
煌我『・・・』
さつき『教えて下さい』
煌我は其れでも黙っている。
さつき『何があったか説明して下さい』
煌我『君には関係ない』
さつき『アナタにイキナリ手を引かれ、帰宅の邪魔されてるんですから関係ない訳ありません!』
煌我『迷惑を掛ける事になる』
さつき『・・・もう充分かけられてますけど』
煌我『だからこそ、これ以上掛けたくないし、危ないから君の手を引いて逃げたんだ』
さつき『危ない?さっきの女の人が?』
うなずく煌我・・震える煌我の様子を見て
さつき『教えて下さい、何があったか』
煌我は上を向き息を深く吸い込むと、吐き出した後に話し出した。
煌我『仕事を終えて歩いて帰る事にしたんだ・・いつもは真っ直ぐ帰るだけなんだけど、なんとなく、今日は別の道から帰ってみようと思った・・けど、それが不幸の始まりさ、竹林に差し掛かった時、命乞いする男の声が聞こえてきた・・声のした方向に目をやると、さっきの女が立っていた、女は無言のまま男の命を奪った、それで俺は走り出したんだ、そこから先は、君も知っての通りさ』
さつき『・・警察に行きましょう!』
煌我『ダメだ!!』
さつき『でも、人が殺されたんなら!!』
煌我『苦も無く命を奪うような女は普通じゃない・・警察に行ったところで、どうにかなる相手じゃない』
さつき『だからこそ警察に行くべきじゃ』
煌我『いや・・何故なら』