格安物件 他7篇
【消しゴム】
勉強ばかりやっていると、すぐに消しゴムが小さくなってしまう。
気晴らしがてら外に出て、文房具店に行った所、なくならない消しゴムというのが売っていたので、興味を持って店員に訊いてみた。
「ここに、なくならない消しゴムと書いてあるが」
「お客さん、お目が高いですね、お買いになりますか?」
「うむ、買ってみよう」
「まいどあり! 早速、同期させますね!」
言うと店員は素早い動作で、私の髪の毛を1本抜いた。
「いたっ、同期だと? 一体その消しゴムはどういう原理でなくならないんだ」
「ワラ人形ですよ」
「ワラ人形?」
作業を終えた店員が消しゴムを机に擦り付けると、私の右手中指の爪の先が消えてなくなった。
「どうぞお大事になさってください、死ぬまで一緒にいる物ですから……」
【踏切り】
「こら! 踏切が降りるのに、通ったら危ないぞ!」
言いながら男は線路へ飛び出して、電車を止めようとした。
【星座占い】
朝、妹がテレビの星座占いを見ていた。
「えー、今日は私12位だ。学校に行くのやめようかなあ」
「星座なんかで人の運勢がわかるわけないだろ」
兄が言った。
「全く、これだからO型は」
【長靴をはいた猫】
猫「いやあ、昨日は長靴を食べ過ぎてしまってね」
【クレーム】
買ったニット帽に穴が開いていたので、俺は店にクレームを付けに行った。
「大変申し上げにくいのですが、お客様」
店員が言った。
「これはネックウォーマーでございます」
【トイレ】
駅のトイレが壊れていて、<水が出ないので使用禁止>との貼り紙が貼ってあった。
「水なら俺がかけてやるよ」
男は小便をした。
【誕生日】
「誕生日おめでとう!」
彼氏が彼女に向かってそう言うと、
「しっ! 大きな声で言わないでよ!」
慌てて彼女は彼氏の口を塞いだ。
「な、何で言っちゃいけないんだよ」
「パスワードがバレるでしょ!」
【格安物件】
できるだけ安い物件を探していた。
「でしたらこちらのお部屋は、家賃が0円となっております」
「おお、それは素晴らしいじゃないか。だが、何か0円なだけの理由があるんじゃないか?」
「そうなんです。実はここ、同居人の方がいらっしゃるんです」
「なるほどな、ルームシェアってやつか。安いのも道理だ。それでも、家賃は払わなくていいんだろう? 多少の我慢はするさ。よし、そこに決めた」
「ありがとうございます。ただ、一つだけ申し上げたいことが」
「なんだ?」
「家賃のお払いは必要ありませんが、同居人をお祓いする事をオススメします……」