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最強火力の脳筋無双《バカサラス》  作者: 入江晃明
season1 導かれたバカ達
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第09話 それぞれの決断

 前回閉じ込められた煉獄牢を抜け出した凰染一向。

 そして今、自分達を閉じ込めた理事長の元へ向かったのだ。


「お〜い理事長テメェコラ。

なんの目的があって或子痛ぶってたんだアア!?

事と次第によっちゃあババァ!テメェのその首今直ぐに……」


「ちょっ!引っ張らないでって、頼むからぁ!

或子ちゃん!?或子ちゃんは無事だから……」


「俺の言うことを遮るなァァァァァァァ!!!!!!」


 あの詠斗さん一人称俺でしたっけ?

 それだけ嫁さん大事ってことなんでしょうけど……

 あの剣幕見てると、実質琴音を見捨ててた俺の怒りが馬鹿らしくなってくら。


「まったく……凰染か絶鹵の馬鹿がまた暴れてるのかと思ったけど。

アンタの相手も相当ねー」


 この声……琴音。


「詠斗ォォォォォォォォォォ!!!!!!!」


「あ……或子ォォォォォォォォォォォ!!!」


 ……と、詠斗の嫁さんか。熱いハグでの再会おめでとう。


「はぁ……助かった」


 詠斗の拘束が解けたおかげで、自由になった理事長さん。

 さてさてそれより。


「琴音ちゃ〜ん、俺達も久々の再会なんだからさ〜。

凰染さんのここ、空いてますよ?」


 俺もハグ待機!

 さ〜琴音ちゃん、お好きに飛びついておいで〜!!


「それで理事長、人は揃いましたがどんな用件で?」


 あれ……無視?


「あんあん、そうね、みんな揃ったわね」


 俺達六人を揃えるのが目的だったと。

 で、なんの用事で呼びつけられたのかな俺達。


「それじゃひとまず謝っとくわ。

いろいろ強制的に事を進めっちゃってゴメン!」


 いきなり理事長さんが頭下げて謝って来た。

 土下座じゃないやり直し。

 ……なんて言うと、話が進まなそうなので言うの無し。


「これもね〜、みんなに親睦深めてもらいたいが為の気遣いだったのよ?」


「俺等に?なんでそんな事、アンタに決められなきゃならねぇんだ」


「それはどうしても、貴方達に出会って貰わなくてはならなかったから」


 さっきまでふざけてた理事長の調子が、一気にマジになった。

 空気の張り詰め方で分かる、コイツは真面目な話だってことが。


「目的は?私達を合わせといて、何をやらせたいんですか」


 切り込むのは光。

 真面目なムードで話すにゃ、コイツが一番最適だ。


「う〜ん、それはね。貴方達の望みを叶える事」


 俺達の……望み?

 なんだそれいきなり、突拍子もなさ過ぎんだろ……


「王の継承も」


 詠斗が……反応した?


「三年前の戦争も」


 ……絶鹵、光。


「そして凰染、貴方の仇も」


 …………コイツ、全部知って……


「貴方達の敵とするもの、それは私と同じ」


「共同戦線ってこと……」


 おそらく理事長(コイツ)は、俺の知らない部分まで知っている。

 多分……アイツの居場所も。


 そのために俺はここへ来た。

 強者が優遇されるこの学園において、強者の情報ほどアドバンテージのあるもんはねぇからな。


「その通り。私はどーしてもそいつ等に勝ちたい。

その為にはまぁ、ちょっと戦力が少なくって……

だから貴方達に協力してもらいたい。

その代わりに、私はいくらでも情報を提供しよう」


「WinWinね……なるほど。

その条件なら飲まざるを得ない……わね、絶鹵」


「ああ」


 絶鹵と光は条件を飲んだ。


「僕達も……協力しよう」


 詠斗も……そして。


「貴方はどうするの?凰染」


 俺は……


 













「意外ね、アンタがあんな話受けるだなんて。

利用されるのが目に見えているのに……」


 話は終わった。

 そして各々が自室へ戻り、俺は琴音と部屋に来た。


「それでも俺はやらなきゃならねぇ。

アイツに着けば、それがやり易いだけだ」


「……何があったの?

アンタのそんな顔……見たことないんですけど」


 琴音は……知らないんだよな。俺がここにいる理由を。


「話しておくか……」


 俺の、生きる理由を。


「もう何年も前になるが……俺の妹が殺された」


 俺は実家を追い出された後、一切のやりとりをしちゃいなかったが。

 このニュースだけは、直ぐさま俺のトコに届いた。

 継承者争いで一族がいくつかの派閥に分担、互いに殺し合いをしたってな。

 それに勝ったのが俺の実兄……

 ただ一人の生存者も残さず、一族を壊滅させたって。


「正確には一族そのものが。

まぁ、俺にとっちゃ家族は妹しかいなかったようなもんだが」


 あの家で、俺を人として扱ってくれたのは……

 妹と……アンタだけだったよな。

 親父とお袋が死んでから……アンタは。


「数年間放浪しててよ、このニュースが入った時は正直泣いたぜ。

なんせ生き残ったのは、実質俺一人なんだからな」


 そう、生き残ったのは。


「アンタの仇ってのは」


「ああ」


 分かっている、アンタがここに居るってのは。

 俺を……待ち続けていたということは。

 この鬼城学園の『帝王』として君臨し続けていることを。


轆轤泰染(ろくろたいぜん)……俺の、兄貴だ」


「……そう」


 興味のなさそうな顔。

 厳しいなぁ、琴音はやっぱり。

 ねぎらいの言葉なんて……一つもかけちゃくれない。

 これでも結構傷ついてるんだぜ、俺の心は……


「止めないよ、私は。

それがアンタの選んだことなら、止めやしない。

ただ勝手に、一つだけ決めた」


 珍しく弱音を見せた俺に、琴音もまた珍しく、優しい声をかけてきた。


「私も付き合わせてもらう。

復讐だろうがなんだろうが、それがアンタの決断なら」


「……人を、殺すんだぞ」


 あえて考えようとはしなかった。

 俺の歩む道は、修羅の道。

 ただの復讐鬼の人生しか送れないのだと、割り切っていた。

 楽しみながら生きようとはしていたが、意味など残そうとは思わなかった。

 琴音の事も……普段の振る舞いほど、好きだったわけじゃない。

 ただ呑気な女好きでも演出したかったんだろうよ。


「気付いてたよ。

アンタ……口でなんだかんだ言おうと、私のことなんて眼中にないんだって」


 …………なんだよ、全部筒抜けかよ。


「それがとことん気に食わなかった。

だって本気でアンタに惚れてた私が、馬鹿馬鹿しくなるじゃない」


「……琴音」


 本気で、俺に惚れてたってのかよ……

 照れるなぁ……急にそんな告白されると。

 こっちがときめいちゃうじゃない。


「私はついて行く、復讐鬼だろうがなんだろうが構わない。

アンタを……心の底から愛した、轆轤凰染に」


「物好きだな……お前も」


 初めてだった。

 あの時から、全部失ったあの時から。

 家を追い出されて、信じてた人に裏切られて……

 初めて……怒り以外の感情を、はっきりと感じた。

 ありがとう、琴音。

 俺は自分から、琴音の小さな体を抱きしめた。

 そしたら琴音は嫌がることなく、俺を受け入れる。

 優しく……優しく包み込むんだ。

 もう二度と何も失わないと、そう誓いながら。















「母さん……うまくいったみたいだね」


「ええ、心良くOKしてくれましたわ」


 はいまたも僕羅刹くんでーす!

 今回はいい具合に母さんがあの子達を懐柔してくれたみたいなんでー

 良かった良かった。


「これで予言のメンバーは4人!

着々と集まってきてるじゃない」


「本当、恐ろしいぐらいにうまく……」


「でもまだ最後の一人は見つかってないんだよね?

それが怖いなー、母さんのネットワークに一切引っかからないとなると」


「この国の中に居るはずなんだけどね。

容姿も名前も、まるでそのかけらも見せやしない」


 予言ではこの国の、この学園に全て集うとされている。

 それが未だ、もう時間もないのに……影も掴めない。


「傷を持つ者……轆轤凰染。

 属性(ディマギア)を統べる王……柳絶鹵。

 純血の継承者……虚貴詠斗。

今揃っているのは、これともう一人」


「そして、赤き覇王」


 僕が一番気になってるのも、最後の彼なんだけどねー。


「さて……と。

それじゃあもう一人の方を、呼び戻さないとね」


「いつもの……やっとく?」


 次回へ続く。













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