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最強火力の脳筋無双《バカサラス》  作者: 入江晃明
season1 導かれたバカ達
8/45

第08話 どうしようもなく狭い世界で

「右手には……左回転。左手には……右回転」


 俺の両手に死を乗せて、回転を与える……


神殺嵐(キル・テンペスト)


<<ヴァキューン!!!>>


 突如として何もないところから出現した圧倒的破壊力の塊に、呑気してなくともその場にいた全員はビクッた!!


「ヌぬぬぬぬぬぬうん!!??この力は、避けきれん!」


「避けんで結構!このまま擦り潰されろや、ビチグソがぁ!!!」


 絶鹵の放った神殺嵐(キル・テンペスト)は、即座に部屋中を覆い尽くした。

 逃げ場なんてないまま、迫りくる嵐のように敵を襲う。


「おい絶鹵!俺も巻き込むつもりか!」


「うるせぇ凰染!テメェは構いやしねぇだろ!

それより詠斗、ヤベェのはテメェだ!!」


 この中でただ一人、並みの耐久力を持った詠斗。

 そんな詠斗に神殺嵐(キル・テンペスト)を真っ向から受け切ることは出来ない!


「構わないさ絶鹵……そのままやれ!」


 だがそれで敵を下せるのなら、詠斗もまた構いはしない。


「……なら、容赦はしねぇ!」


「そうはさせぬッ!!」


 それを意地になってでも止めようというのが、兄弟の本懐。

 いや、そうせざるを得ない!!


「行くぞ弟よ……」


「無論……兄者!」


 兄弟は突っ込んだ、その嵐の真っ只中へと。

 そして全身を回転させた!神殺嵐(キル・テンペスト)の回転と同方向に!!


「まさか……受け切るつもりか!?」


「同方向の回転で流し、威力を軽減しているだと!!」


 目に見えて減っていく勢い。

 兄弟は無傷のまま、着実に神殺嵐(キル・テンペスト)の威力を削ぎ落として行き。


<シュン>


 完全に消滅させた。


「一先ずは去ったぞ、我々の脅威が」


「これ程消費してしまっては、絶鹵、貴様の死もそう残ってはおるまい?」


 属性(ディマギア)の絶対量という制限。

 それは高出力の技ほど、より多く消耗して行く。


「ああ、俺はもう不死性すらマトモに保てねぇぐらい消費しちまった」


「ならば勝機は」


「我等にあり」


 唯一の属性(ディマギア)である絶鹵が燃料切れのため、勝利を確信した兄弟。

 だがしかし、属性(ディマギア)を下そうというのなら無理にでも燃料を切れさせればいい。


「だが消費した分はキチンと、テメェに預けたぜ……凰染」


「なっ」


「ぬっ」


「巻き込んだだけだろうが……」


 さっきの神殺嵐(キル・テンペスト)はただ消されただけではない。

 凰染一人だけを巻き込んで、消えた。ならばチャージは十分!!


「なぜ生きている、貴様が、あれを食らってェェェェェェ!!!!!」


 ゴキゴキ首を二回鳴らして。


「っま、こんだけありゃあ属性(ディマギア)二人も削んのは余裕か」


「後は任せたぜ、凰染」


 輪廻無双刃(オルティナ・チャクラ)を振りかぶる凰染。この一撃で……兄弟を粉砕する為に。


輪廻無双刃(オルティナ・チャクラ)爆裂!心中謳歌(ガラクレイジ)ッッ!!」


「兄者ァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

「弟よォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!」


 放たれた爆裂!心中謳歌(ガラクレイジ)の光に包み込まれて行く兄弟。

 その速度からは逃れようがなく、その威力からは助かりようがない!!

 よって兄弟はそのまま、ダウン!


「勝った!勝ったよ凰染、絶鹵!」


「だな……ま、対して苦労もしてねーが」


「ちょっと絶鹵、その台詞は俺のじゃねーのか?」


 ともかく勝利した三人は、喜んで出口へと向かって行くのであった。


「って、呆気なさすぎるでしょう幕引きがぁ!!」


「……なんだ」


 いきなり声が聞こえてきたな。

 しかもどっかで聞いたことある声……なんだっけ?

 たしかこの間絶鹵とやり合った時に聞いた……


「あれ見ろよ、出口の上にモニターが」


 絶鹵の指差す先、ああ、よくさっきので壊れなかったな。

 確かにモニターがある、そんでそこには……これまた見覚えのある顔が。


「どーもー、みんなの理事長刹那さんでーす」


 理事長のバァさんじゃねぇか。

いや……見た目は若々しいんだけど、妙に若作りしてる感じがしてなんか。


「でね、ここでもうちょい君等には戦ってって欲しいんだよね?」


「そうか、ここに俺等ぶち込んだのはテメェか。

なら後でぶっ飛ばす」


「人の言うこと聞いてちょ!

それに、貴女達が私の言うこと聞いてくれないとー?」


「きゃー、助けてー」


 !?、琴音の……声!?


「助けてー、凰染」


「このままじゃ私達ヤバイよー」


 琴音と光の助けを呼ぶ声……だけど。


「棒読み過ぎん」

「棒読みだな」


 明らかに言わされてる感満載なんだよなー。

 これ、理事長と結託して、俺等になんかさせようって魂胆じゃ。


「た゛す゛け゛て゛よ゛み゛と゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!!!!」


 ……これまたどっかで聞いた感じの叫び声。

 でもまぁ、モニターに写ってるあの子は見たことないし。


「あ……或子ォ!!」


 なるほど詠斗、お前の彼女ね。

 どうりで迫真の叫び声がそっくりだこと。


「でしょうねしょうねぇ。

虚貴詠斗クゥン、この子は正真正銘本物の絽江或子(ろのえあるこ)ちゃんよぉ。

貴方がもし、私の言うこと聞かなかったらどうなるか、分かるわよね?」


「くっ……外道が」


 いや。

 明らかに演技です。


「ならどうすればいい!

どうすれば或子を……無事解放すると約束する!!」


「それは簡単……貴方のその力を、存分に見せつければいい!!」


<<ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ>>


 この地響きは……何かが、下から来る。


<<グルルルアアアアアア!!!!>>


 鳴き声と共に、地中から現れたのは巨大な手。

 まぁどう見てもヤバイのが来たってのは分かるが。


「言っとくが俺はまじでガス欠だぞ」


「ああ絶鹵、俺もかったりぃからこれ以上動く気はねぇ」


 ツーことで。


「「頑張れぇ、詠斗」」


 全部詠斗に任すことにしました。


「上等だ……或子待ってろ、今助け出す」


「ならばそいつを退けなさい!

でなければ、この子の命はないと思えぃ!!」


「或子ぉぉぉぉぉ!!!!!」


<バコス!!>


 あ。

 素手で勝った。
















「おー勝った勝った、阿吽の兄弟を見事退けましたねー」


 場所は変わってまったく知らない何処か。

 ちょくちょく出てた理事長の息子、鬼城羅刹(きじょうらせつ)くんとその他二名。


「雑魚だったろ、そいつ等」


 その中でも一際背の大きな人物が、椅子に踏ん反り返りながらそう言った。


「うん、瞬殺」


 はい僕羅刹くん。

 ちなみに今は大事な会議中なのです。

 これでも、実は結構偉い立場だったりして……

 『羅漢三厳将(らかんさんげんしょう)』、なんてくだらない呼ばれ方もしてますけどね僕達。


「そんな奴等を刺客に使っちゃ駄目だなぁ。

でも今回は僕の推し……絶鹵の活躍が見れたからいいか」


 壁に寄り掛かりながらそうほざくのは、『無羅陰(ヴライン)

 僕と同じく羅漢三厳将のメンバーだ。


「全部凰染ちゃんに持ってがれてた気がするけど、気のせい?」


「ああ、気のせいさ。

あれは絶鹵の貢献があってこそ、そもそも絶鹵が兄弟を消耗させていたからこそ」


 笑顔で答えてきた。

 だって仕方ないか、今羅陰は絶鹵ちゃんラブなんだから。


「でもねー、この子達とタメ張れるのなんて……そうはいないよ?」


「なんなら僕が行こうかな。

むしろ僕から行ってあげないと、きっと絶鹵は待っているのさ」


「やめときなって、それは母さんに止められちゃうよ?

母さんが知りたいのは彼等の実力であって、壊し方じゃない」


「……手は抜くさ。

僕も見たいのは、絶鹵が生きている姿だしね」


 実力……かぁ。

 その目で確かめたいだろうね、情報なんかじゃなく、もっと確実なそれを。

 予言通りならば……世界を救うのは彼等なんだからね。


「そしたら羅刹、君が刺客になればいい。

力の制御だったら、君が一番うまいじゃないか」


「ふーん、でもねぇ……僕そんなに性格良くないから。

やるとしたら殺しちゃうな、みーんな」


 どうしても。

 だから母さんは僕を彼等と直接合わせようとしない。

 少しでも僕を怒らせたら、どうなるか分かっているからね。


「それより、だ……羅刹」


 緊張感のある声。

 敵わないなぁ、どれだけ僕達がふざけていても。彼の声にだけはシャキッとさせられる。


 ね、『轟襲疑羅幻(ごうしゅうぎらげん)』くん。


「他学園との集会……母君がやってくれたようだな」


「ええ、おかげでガソリンが高くなっちゃってまぁ。

いい具合に喧嘩売ってくれたんでしょうねぇ……我が母ながら」


 そう、この鬼城学園以外にも神遺武装(アーティファクト)を扱う学園はいくらでもある。

 そしてその各学園の代表が、定期的に集まって集会を開いている。

 それがまた……学園のバックが国でも有力の権力者ときた。

 学園の優劣が、そのまま国の優劣にも繋がる。

 そこまで来ちゃあもうこの集会、世界の命運を握ってると言っても過言じゃないでしょう。

 ま、今回は軽い経済制裁で済んだけど。


「あまりデカい面はしてくれるなと。

実際に働くのは、我々とそのガキ共なんだからな」


「僕でも大概人の話聞かないんですから、その親が息子の言うこと聞いてくれます?」


「無理な話だったか……すまんな」


「いえいえ」


 まったく、類は友を呼ぶだよね。

 僕の周りには、どうしてもこう自己中心的な人が多過ぎる。


「だが刺客というのは面白いかもな。

羅刹……羅陰、暇でもあれば行ってこい」


 マジか……母さんと羅幻、どっちの顔を立てるかねぇ?


 次回へ続く。

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