第07話 結局はノリとタイミング
「はいはい皆さん、スクリーンへご注目!」
と、高いテンションでほざいているのはこの学園の理事長様。
その有り余る権力を持って、一介の学生である私達をここに集めていますとさ。
「琴音ちゃあん……そして光ちゃん。
アンタ達の彼氏が今、どうなっているか気になるでしょ?」
「いや全然」
「そのまま知らない場所で野垂れ死んでくれないかしら」
埋葬の責任もないしね。
「辛辣というか……ある意味信頼されているというか。
奇妙な恋愛観よね、貴女達も。
でも世の中、そんな冷め切ったカップルばかりじゃないのよ?」
そらそうよ、だって私と凰染はカップルでもなんでもないのですから。
まぁ……そういえばもう一人、この上映会に招待されてたっけ。
「まぁ良い、だがとくと聞け」
「貴様等が相対す、我等の名を」
舞台は変わって地下牢。
凰染、絶鹵、詠斗の三人は、出口を守る番人との決戦を目前に。
「我は阿暁」
「我は吽暁」
「「二人揃って、阿吽ブラザーズッ!!」」
自己紹介&完璧息の合った決めポーズをくらっていた。
「メルシー」
「ボークー」
「自己紹介、恐縮の至り」
三人ぴったし言い終えてぇ!
「俺は凰染」
「俺は絶鹵」
「僕は詠斗」
「三人揃って……」
「チームヴァイオレント!」
「三分の一の純情な劣情!」
「ヨミット・コミット・プーギーズ!」
そして台詞もポーズも噛み合ってるのか合ってないのか、イマイチよく分からない三人だった。
「……んまぁいい、とっとと捻り潰してやろうじゃねぇの」
「凰染……お前が言うかお前が」
現状凰染くん、素手以外の交戦手段がありません。
「そうも言うが、貴様等の神遺武装は没収されているのではないか?」
当然番人さんも重々承知のご様子で。
さっきまでの豪胆さも徐々に、迫力を無くしていき。
「虚勢も貼れなきゃ生きてげねーのかお前は」
「うるせぇ……格好ぐらいつけさせろ」
しょんぼりーんしていたところを絶鹵に突っ込まれた。
強そうなムーブくらいさせろってんだてめーはッ!
「だがそれでは面白くない、ホレ」
<カランカラン>
番人の一人が懐から取り出し、凰染の目の前へ投げ出した。
「これは……輪廻無双刃!」
「それは貴様のだろう?
使え、そして本気で我々に向かってこい」
明らかに舐められている。
これは敵に塩を送っているのと大差ない行為だ。
当然、凰染はキレる。
「おいテメェ……こりゃ、どー言うつもりだぁ?」
「どうも何も、素手の貴様など相手にならぬと言っておるのだ」
「そー言うことじゃあ、ねぇ!!」
<バゴン!>
凰染は目の前に置かれた、輪廻無双刃を蹴飛ばしたッ!
それを投げつけた番人の首を、狙いつけて!
「ぬぅん、隙をつかれた……か」
間一髪、飛んで来た輪廻無双刃を避けた番人。
だがその避ける動きこそ、絶対の隙となることを知らずに。
「回り込んだぜ……ハゲ」
「まずい……」
番人の背後へ立つ凰染。
絶対の隙を逃さんとする為に、蹴りを打ち込む。
<ドガン!>
「人の物を、ゴミみてぇに投げ捨ててんじゃあねぇぜこのタコッ!」
クリーンヒット!
凰染の一撃は確かに、番人の脇腹へねじ込まれる。
「決まったな。あっちの坊主は凰染、俺はこっち。
で、詠斗……オメェはどうする?」
「どちらとも……援護に徹しますよ」
「OK、そいつぁやり易くて助かる」
絶鹵、詠斗もまた、自分のやることを明確に認識した。
凰染が阿暁を、絶鹵が吽暁を、詠斗が両者を援護とそれぞれの役割を分けて戦う為に。
「言ってなぁ、絶鹵。
こっちはもう終わったぞ、俺の蹴りが直撃したんだ。
くたばりはしなくとも、内臓はもういかれてんだろうって」
「バーカ、よく見ろ」
凰染の蹴りが直撃したはずの阿暁は、ピンピンしている。
元からダメージがなかったわけではなく、その能力によって。
「……霧、いや雲かッ!?阿暁の体から、僅かだが!
霞みてーな物が漂って来やがる!」
「属性の能力者……」
そう、ならば凰染の蹴りが効かなかった理由になる!
この兄弟の前では、あらゆる物理攻撃が無効となるのだから!
「その通り、我等兄弟」
「兄が雲、霧が弟」
「世にも珍しい、属性に適合した兄弟!」
「属性は属性持ってしか制することはできない!」
「されば柳絶鹵よ、この勝負貴様一人に御しきれるか!」
兄弟の言う通り、属性の能力者であれば、同じ属性の能力者にダメージを与えることができる。
だがそれは同時に、属性でなければ属性は攻略できないということ。
「本来ならば、そうだろうな」
「何?」
<バゴン!>
効こうが効くまいが構わない。
凰染は、属性の阿暁に間髪入れず殴り込んだ。
「馬鹿なことを、通用しないと言ったであろうが!」
「それでも属性ってなぁ、いくらでも押し切れるんだよ。
そして凰染はなぁ、意地でもそいつを押し切るんだよッ!」
「輪廻無双刃……猛烈!乱舞爆現ッッ!!」
<<ズババババババッシャアア!!!>>
微塵、微塵、微塵斬りィ!!
阿暁が粉微塵になるまで、凰染の乱舞は終わらない!!
「属性をゴリ押しで突破するだとッ!?
聞いたことないぞ、そんな無茶苦茶なッ!!」
「されたんだよ俺はッ!!
テメェ等もその能力にタカを括って、やられちまいなッ!」
煉獄牢番人、阿吽ブラザーズとの決戦……開始ィ!!!
「これやらせかったから、アイツ等牢にブチ込んだの?」
「その通りよん」
理事長様はいったいどんなお考えでこんなことしてるのか。
そしてそれをなんで私達に見せつけてくるのか。
「まぁ、これも全部貴女達のタメってことで」
しっかりと見ておきなさい。
貴女達のパートナーの全てを……
琴音ちゃん、光ちゃん、そして……或子ちゃん
次回へ続く