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最強火力の脳筋無双《バカサラス》  作者: 入江晃明
season1 導かれたバカ達
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第04話 嫌よイヤよも好きのウチ

 前回、お偉いさん公認で決闘が認められた、凰染と絶鹵の馬鹿二人。


「上等だ、やってやろうじゃないの。

見世物だろうがなんだろうが、一切文句言われずテメェをぶちのめせるんだったら、それ以上はねーからなぁ」


「イキがんのも大概にしとけよ。

どーせ、大衆の面前で大負けして赤っ恥かくのはテメェだ、えっと……この垂れ目野郎!」


「名前も知らんのかい……アンタ等」


 垂れ目な方が轆轤凰染(ろくろおうぜん)、吊り目の方が柳絶鹵(やなぎぜろ)です。

 そして自己紹介もしてないこの二人。

それをさっきの光の一言で思い出した絶鹵が。


「うん、光、今いいこと言った。

名前だ名前、呼びづらい……本名教えろよこんにゃろう!

後俺、言うほど吊り目かぁ?」


「安心しなさい、吊ってる垂れてる以前に。あんたの目は死んでいる」


 そんで人の名を知りたいのならば、まず自分から名乗ること。


「つーとことでぇ、俺の名前は柳絶鹵(やなぎぜろ)

ほら、俺も言ったんだからさっさと答えろや垂れ目!」


 目尻での呼び方やめい。

 っと、思っていた琴音であった。


轆轤凰染(ろくろおうぜん)だ、吊り目野郎。

いや、絶鹵(ぜろ)……楽しみにしとけよなぁ、ええ?

俺にコテンパンにされんのをよぉ」


「バーカ、勝つのは俺だぜ凰染(おうぜん)

いつ勝負すんのかは分からねぇけどよぉ。

そんときゃ無様に、負かせてやるよ」


 両者共相手を見下しながら罵り、開戦の火蓋は上がった!


「もすもーす、うん……わーかりました。

ってことでぇ、みんなー、修理終わったって体育館!」


 唐突に電話を交わした理事長。

 これまた唐突に、体育館の工事が終わったとの報告を告げる。


 ………………早!?


「そして決闘のセッティングもまずまず

かき集められるだけの生徒は、ほぼ観客席にスタンバイ、よって!

たった今より、二人の決闘を執り行いたいと思います!」


「…………」


「…………」


 …………急に言い争いを辞めた馬鹿達。

 いざ正式にタイマンが確立したら、こうも黙るものなのか。


 そして冷静そのものの声で、挨拶を最後に部屋を出ていく凰染と絶鹵。

 

「そんじゃ理事長さん、迷惑かけたな。

その詫びだ、正真正銘の全身全霊ってやつを見せてやるよ」


「っつーことだ……っま、期待はしてくれていいぜ?」


 そのまま部屋出てったんですけど、なんなのあの馬鹿達。

 何であんなに仲良さそうなわけぇ!?


「入っちゃったわね、()()()()()()()()

と言っても、貴女にはまだ分からないでしょうけど……

っまーっやってることは、至極単純よ」


 理解不能って顔をした琴音を見て。

 それを理解している、光がその答えを教えようとしていた。


「…………なによ、それ」


「アイツ等の価値観は、見ての通り。

社会的なそれとはまるで異なる、異常な存在」


 ええ、どう見たってアレは()()()()()()としか思えないわ。

 一常識人としての考えとして、何もかもが異常よ。


「でもだからこそ、その価値はアイツ等の中でしか共有されることがない……

アイツ等の間でしか、その価値が求められることがないのよ。

それが『男の世界』、アイツ等だけの()()()()()()()()!」


「は?」


 今までの説明で、まるで理解できない琴音。


「彼等は、喧嘩することでしか分かり会えない。

正当な、かつ真っ向からの……互いが認めた『決闘』でしか、その生涯の『意味』を見いだせないのよ」


 光の説明にいきなり乱入して来て補足した理事長。

 だが琴音は理解できない!


「よーするに、脳筋の極致よ。

人間本気で馬鹿にもなれば、ああなっちゃうのよ」


「聞いたことないんですけど、そんな人間進化論」


「まま、琴音(ことね)ちゃんにもそのうち分かるわ。

それを見届けることの楽しさが」


 それを言い終えたら、部屋から去っていく理事長。


 感慨深い顔をした、光と私を残して……


「まったくもってわかんないんですけどぉ!!」


 もうヤダ、助けて……お姉ちゃん。













 と、理事長室を出てから数分。

 私は光とお話ししながら、凰染の待つ控室へと向かっていた。


 ここで一つ安心したのは、まだ光はマトモだということ。

 相方である絶鹵がああなのは仕方ないと割り切り、比較的常識人でありながら。

 たびたびツッコミ(対応)をサボっているのはともかくとして……

 ここに来てようやく、初めて出来たマトモな友達ってのは……やっぱり嬉しい。


 そうこうしている間に、凰染の控室前へとついた。

 ついたのはいいんだけど……何これ?

 部屋の前に立ってるだけで、伝わってくる……この、異常な()()は。


「着いたわね……じゃ、ここで。

中に入って激励くらいしてやんなさいよ」


 そう言うと光は、スタコラと絶鹵の控室の方へと向かって行った。


 私も……入るべきなのかしら?凰染の控室へ。


「入るわよ……不本意だけど」


 意を決してドアノブを捻る。

 熱い……掴んだドアノブからもはっきりと伝わる、室内の温度の高さ。


 中がどうなっているか全く分からないから、本当は入りたくないんだけど。

 コイツが負けでもして、なんか私が恥かいた気分になるのがやだから仕方なく!

 仕方なくその様子を見てやんのよ!


「凰染!試合前にいったい何やっ……て……」


 ドアを開けた途端に、私を通り過ぎて行った熱風。

 熱苦しくって仕方なかった筈の、この熱風が。

 どうしてか私を通り過ぎた瞬間、とても心地よく感じた。


「ああ?なんだお前か、琴音。

悪いが今ウォーミングアップ中だ、何の用か知らねぇが、止まりながらは話せねぇぞ」


 この熱風の正体は……凰染から発せられた、熱気。

 さっき部屋で別れてから、たったの十分ちょっとで動き回した、凰染の身体の……暖かさ。


「ウォーミングアップって、アンタどれだけ!

どんな動き方をすれば……こんなに」


 どう見ても、どう感じても!

 今、凰染の周囲に、この部屋には!

 異常なまでの、熱気!蒸気が蔓延している。

 それをこの短時間で、馬鹿げてる!

 こんなの、体がベストになる以前にぶっ倒れて死ぬ!間違いなく……

 それだけのペース、運動量なのよ!

 それでもまだ、コイツは……いや、()()()()()

 満足、出来ないって言うのよね……


 自分が動き回った訳でもないのに、琴音はその圧倒的な勝利への執念を垣間見て。

 体中から一瞬、血の気が引いたという。


 それだけこの男達は、常識では計り知れない。

 それだけこの男は、普通じゃあない。

 ()()()()()()()()

 琴音は、今!それを本能で理解したッ!

 桁外れの高揚感。この男は、自分をここまで滾らせてくれるのか!

 強さへの敬服。

 雌としての本能が、この雄に惚れたのだッ!


 ええ光、分かったわよ。

 これが……この高揚感が、アイツ等の見る世界!















「さてさてさ〜て、さてさ〜て!!

皆さん、長らくお待たせ致しました!

本日急遽組まれた、ビッグマッチ!

先ずは〜、青コーナーの入場だぁぁぁぁぁぁ!!!」


 司会(理事長の鬼城刹那(きじょうせつな)さん、御年34歳)による、スーパーハイテンションな宣言と共に。

 特設鬼城学園闘技場、青龍の位置より来たる戦士は、柳絶鹵(やなぎぜろ)ッ!


<フシュウウウウウウウウウ>


 闘気!大気をも揺るがす、圧倒的な闘気を放つ絶鹵!

 それは絶鹵の周りに蜃気楼を作り出し、その空間をヒシヒシと歪ませ登場するッ!


「あれが人なのかよ……人の放つ威圧なのかよ!」


()()()()()()()()、アイツ滅茶苦茶強いだろ……

だって、小便漏らしそうになったんだもん俺!」


「ちょっと待って、()()

アイツを中心に、重力が反発してんじゃねぇかってぐらい

こんなにも離れた観客席でさえ、軋む!」


 観客の反応はマチマチではあるが。

 唯一、絶鹵が『強い』ということが共通の認識となった。


 だがそれだけでは、終わらない!


「続いて、白の方角の入場ぉぉぉぉぉぉ!!!」


<ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ>


 そこにはまだ、凰染(おうぜん)が居るのだから!


「な……んだ、こ……これはぁ!!」


 二人の放つ、闘気の激突!

 それは片方でさえも、常人には耐え難いというのに。

 混ざり合い、反発し、観客を圧迫!着実にその被害を拡大していった!


「威圧で、前が見えない!

座ってすらもいられない……」


「どーなってんだよ、コイツ等はぁ!!」


 意思の弱い者ならばすぐさま気絶し、並大抵の人間であれど最早二人を直視すらできない!

 それだけの威圧!それだけの戦い!最早当事者以外、誰が記憶に残ろうかッ!?


 だが、確かに二人……その戦いを目撃する者がいた!!


「ようやく、アンタも決心が付いたみたいね。

ここで意識を保っていることが、何よりの証拠よ」


「ええ、つくづく馬鹿げてるわね……アイツ等。

でもそれが面白い、なんて、普通じゃあ理解できない事柄だわ。

大概私も……馬鹿になったものね」


 洒落にならない被害をもたらしながら、柳絶鹵VS轆轤凰染……開始ぃ!


 次回へ続く!

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