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激戦の行方

 くっそ~、ちょこまかちょこまかと、地味に我輩ピンチだ。パワーもスピードもぷうの恐竜ゴーレムのほうが上のはずなのに、なんでかチームわんがおの面々に攻撃が全然当たんない! 


 それに対してチームわんがおの攻撃は、我輩の恐竜ゴーレムの至る所に引っかき痕やら噛み付き痕を付けてくる。別に痛くもかゆくもないんだけど、こうも一方的にやられると、いらいらする!


 こうなったら、回避不可能の広範囲攻撃をしてやる!


「食らえ、ジャンピング360度ブレス!」


 我輩は恐竜ゴーレムを思いっきりジャンプさせる。そして、周辺の地面を全部まとめてブレスで薙ぎ払う!


 ビームみたいに収束したブレスじゃないけど、こっちじゃないと攻撃範囲が確保できないからしょうがないな。それとついでにもう一発お見舞いだ。この巨体を生かした落下技。スーパードッスンアタックだ! 真下にいれば即アウト。直撃を避けれてもその衝撃波だけでも大ダメージという代物だ!


「アンド、スーパードッスンアタ~ック!」


 どっす~ん!


 おお~、流石は我輩の考えたコンボ技だ。チームわんがおの面々は吹っ飛んだみたいだな。敵の攻撃がぴたりと止んだ。


「があっおお~ん!」


 とりあえずひと吠えして、残党狩りでもしようかと思っていたら、チームわんがおの面々が再び我輩の前に姿を現す。


「勝利の雄たけびには、まだ早いんじゃねえか? はぴよ」


 ギルマスがこちらを煽ってくるが、どこをどうみてももうボロボロだ。


「もうボロボロだよ? いい加減諦めたら? 我輩のこの最強恐竜ゴーレムにそっちの攻撃が大したダメージを与えられないことはもう把握済みなのだよ!」

「だったらどうしたよ。こっちだってまともに攻撃食らっちゃいないんだぜ?」


 ギルマスが再び煽ってくる。確かにその通りなんだけど、正面からは戦いもせず、ちまちまと反撃を食らいにくい死角からばっかり攻撃しといて、偉そうにされても困るよね。正々堂々戦えっていうんだ。


「うむ、ボロボロじゃからどうしたというのじゃ? わしら犬の狩りは獲物が疲れ果てて諦めるまで続けるのが常じゃ。この程度で勝ったつもりとは、片腹痛いわ!」

「ええ、その通りですよ」

「親父の言う通りだぜ!」

「う~、がおがお!」


 わんこ組もまだまだ諦めていないようだ。さらっと、がおがお言ってわんこ組に交じってるけど、レーヴェは犬じゃなくてライオンでしょうに。


 まあいい、我輩の本気で、今度こそぐうの音も出ないように仕留めればいいだけだしね。


「残念だけど、そんなダラダラと戦うつもりはないからね。これで最終章とさせてもらうよ! 食らえ必殺、レーザーブレス!」


 我輩の恐竜ゴーレムが大きく息を吸い込み、ブレスを吐こうとした瞬間。何者かに尻尾を掴まれて、乱暴に投げられた。


「にゃに? 投げられた? この恐竜ゴーレムが?」


 ついつい声に出ちゃったけど、あり得ない。だって恐竜ゴーレムは尻尾まで込みで100mの超巨体。重量だって超ヘヴィー級だ。物理的に無理でしょ。


 我輩が投げた相手を確認すると、そこには全長50mくらいの巨大な妖精のゴーレムがいた。この造詣、シクラメンの妖精ゴーレム!?


「はぴ。チームわんがおを倒すのに、ちょっと時間がかかりすぎだよ!」

「なんで参戦してるの!? 我輩何も聞いてないよ!?」

「なんでって? それはもちろん・・・・・・? え~っと、なんでだったかな? よくわかんない!」


 くっそ~、グラシクローが参戦してるってわかってたら、真っ先に狙ったのに! 我輩は即座に起き上がると、シクラメンの妖精ゴーレム目指して突進する。シクラメンの妖精ゴーレムも接近戦の立ち回りはあんまりよくなかったはずだし、なによりあの大きさなら我輩の恐竜ゴーレムの攻撃を回避しきれまい。当たりさえすれば、パワー負けはあり得ないんだからな!


「食らえ、恐竜ゴーレムタ~ックル!」


 全力で妖精ゴーレムへと体当たりをしようとしていると、不意に氷の刃が恐竜ゴーレムの目の周辺に大量に着弾する。


「おっと、ハピ。俺様のことを忘れてもらっちゃあ困るぜ! 食らいな。これが俺様のパワーアップした、ビューティフルアイスレインだぜ!」


 って、シクラメンがいるなら、当然ローズだっているよね。ローズの凄まじい連射魔法が我輩の恐竜ゴーレムを襲う。目とかそういう重要な箇所ばっかり狙うなんて、なんていやらしい戦い方なんだ!


「むっき~! 目ばっかり狙うなんてずるいぞ!」

「はっはっは~! 勝負に卑怯なんて無いんだよ!」


 くっそ~、目の周りに氷がガビガビに張り付いて、開けてらんない。そっちがその気なら、こっちだって。


「食らえ、無差別薙ぎ払いビームブレ~っ!」


 我輩がビームのような収束ブレスを吐こうとしたら、誰かが下あごに思いっきり突っ込んできた。思わず舌を噛んじゃったぞ!


「俺達のことを忘れちゃ困るぜ!」


 誰だよ! むかつくな~! って、チームわんがおの面々か。そういえばこれから止めを刺そうというときに妨害されたんだった。


 ローズに目や鼻、耳を攻撃され。チームわんがおの面々とシクラメンの妖精ゴーレムが執拗なまでに我輩の恐竜ゴーレムを攻撃してくる。くう、もう一回ジャンプして距離を取って無差別ブレスをって思ったけど、他は振りほどけても妖精ゴーレムは重すぎて張り付かれてるとジャンプできない。でも、ダメージはそこまで深刻じゃない。今は耐えて、反撃のチャンスをうかがう時!


「この程度の攻撃、耐えきってやる~!」

「そうはさせるか~!」

「思いっきり行くよ~!」

「「「「「うおおおおお!」」」」」


 我輩は防御重視で攻撃を耐えきろうとしたが、チームわんがおとシクラメン、ローズの総攻撃によって、ついにバランスを崩し、とうとう膝をついてしまう。そしてすぐさま妖精ゴーレムが抱き着いてきた。


「いまだ!」

「グラちゃん!」

「グラ~、外すんじゃねえぞ!」

「はぴさん。もちろん私を忘れてはいませんよね。アオイさんとの合体必殺技。コンプレッショングララビームをお受けになってください」


 膝をついて動けない我輩の恐竜ゴーレムの頭部に、猛烈なビームが襲う。


 びーびーびーびー!


 コックピットに警報がけたたましく鳴る。これは、恐竜ゴーレムの頭部がどんどん壊れてく!?


「むう、恐竜ゴーレムの頭部が! くう、このっこのっ」


 頭部をぶんぶん振り回してビームから逃れようとするが、シクラメンの妖精ゴーレムによってその動きを制限される。ならばブレスをと思っても、口を開けようとした瞬間にチームわんがおのメンバーによって口を閉じさせられる。おまけにローズのせいで相変わらず目も上手く開けられない。


「むうううう! このままじゃ頭部がやられちゃう。って、あれ、熱い? そういえば我輩のいるところも頭部じゃなかった?」


 そのことに我輩が思い至った次の瞬間、グララビームが我輩のいた恐竜ゴーレムの頭部のコックピットにまで到達した。そして、恐竜ゴーレムの前頭部を貫いたグララビームは、コックピットにいた我輩ごと後頭部をも貫く。


「みぎゃああああ!」


 熱い、痛い、くるくるまわって気持ち悪い。グララビームは恐竜ゴーレムを貫いてなおその勢いを止めない。我輩は盛大に吹っ飛ばされた。


「むぎゅう・・・・・・」


 ここはどこ? 我輩はハピ。って、そんなこと言ってる場合じゃない。これはピンチだ。本当にどこ? ここ? なんか暗いし、それに、水? なんで? そうか、斜め上方からビームを食らったから、地面の中に押し込められたのか。それで、河の近くだから、地下水脈あたりから水がこの穴に流れ込んでるのかな? って、冷静に分析してる場合じゃない。これは超本格的にピンチっていうやつだ。上から大量の水が落ちてくる関係で息が出来ない!


「がぼがぼっ、ぴぴ~、ぷう~、がぼけて~!」


 すると不意に我輩の体が持ち上がる。どうやら我輩の下の土が盛り上がったようだ。そして我輩を乗せたまま、下の土は上に上がっていく。天井をぶち破り、地表までだ。


「はぴ~、迎えに来たよ~」

「ううう、助けてもらってあれだけど、超痛い」

「あはは、ごめんね」

「そうだ。これ、じゃっじゃ~ん」

「制御石? 守ってたの?」

「うん、これさえあれば恐竜ゴーレムを復活できるよね? まだ負けてないのです!」


 そう、恐竜ゴーレムの材料はその辺の土だ。制御石と我輩の魔力があれば、何度でも蘇るのだよ!


「うう~ん。あれ見てよ」


 ぷうに言われるがままに試合会場を見てみると、そこでは盛大に勝利を喜ぶ妖精の国の人たちがいた。


「だって負けてないし!」

「はぴ、ここは負けとこ?」

「ええ~!」


 こうして我輩の恐竜ゴーレムは、2戦目にして敗北してしまうのだった。



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