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チームわんがお、ぷらす1?

 ハピの野郎。開幕からブレスって、やる気満々じゃねえか。だが、ぴぴとのトレーニングで強くなった俺達チームわんがおのメンバーは、その程度じゃあ倒れねえ!


「わんこ大臣、ブランシュ殿、クロ将軍、俺が先頭で行く!」

「うむ、頼んだぞ」

「はい」

「おう!」


 俺達は特に作戦なんかは決めてたわけじゃないんだが、ここのところずっと一緒にトレーニングしてただけのことはある。もはや細かい会話など不要、阿吽の呼吸ってやつだけで動けるってもんだ。俺の考えはもちろん突進だ。俺達はわんこ大臣以外は遠距離攻撃が得意じゃない。おまけにブレスのこの範囲の広さ。よけることもほぼ無理だ。なら、多少のダメージには目を瞑って、俺が先頭の縦列隊列で突進するのが、一番被害が少ないってもんだ。


「があお~!」


 俺は気合を入れてハピの恐竜ゴーレムのブレスへと突っ込む。ちいい、拡散タイプのくせになんてパワーだ。だが、この程度でやられる俺じゃねえんだよ! うおおおおお!


「ぬああ!」


 くそ、使わずに勝てるとは思っちゃいなかったが、開幕から本気モードでいかなきゃいけないとはな。この全身から炎を上げる技。確かに強いんだが、魔力の消費もなかなかきつい。とはいえ、乗り切った。


「流石だぜ、ギルマス!」

「うむ、よくやった」

「お見事です」

「うんうん、流石おっちゃん。すごいね!」


 クロ将軍、わんこ大臣、ブランシュ殿、レーヴェも無事についてこれたみたいだな。ん? レーヴェ?


「おい、レーヴェ。おまえ何してんだ?」

「ナノハナ将軍とゆき将軍が、チームわんがおと合流したほうがいいって言って、送り出してくれたの」

「そうなのか? っていうか、よく今のブレス耐えてこっちまで来れたな」

「ふっふ~ん、今日の僕は昨日までとはぜんぜん違う、最強モードだからね。パワーアップしたおっちゃんにだって負けないよ!」

「そうなのか? まあいい、一緒に行くか?」

「うん!」


 しっかしレーヴェもいつの間にか成長したもんだな。さっきのブレス。ぴぴとのトレーニングがあったからよかったものの、以前の俺ならきつかったからな。まさかレーヴェがあのブレスを耐えてくるとは、うれしい誤算だぜ。こりゃあ、チームわんがおプラス1って感じだな。んん? よく見るとレーヴェの背中に、なんか縛り付けてある?


「レーヴェ、背中のそれなんだ?」

「隊長だよ?」

「隊長?」

「うん、隊長」


 レーヴェが隊長って呼ぶのは、あれだよな。レーヴェが隊長としか呼ばないせいで名前が思い出せねえが、レーヴェが軍に入った時に直属の上司だった妖精だよな。って、ちがうだろ。なんでその妖精を縛り付けてるんだってとこが問題なんだろうが! しかも、死んでるかのように反応がないし。


「ハピが何かする気だ!」

「あの予備動作。尻尾による攻撃じゃ!」

「あの巨体、よけきるのは難しそうですね」

「大臣は下がってろ! 残りで止めるぞ! もし俺達が吹っ飛んだら、再接近のための時間稼ぎを頼む!」

「うむ、承知した」

「ギルマス! さっきのブレスでダメージあるだろ。ここは俺が先頭で行く!」

「わかった! レーヴェも合わせろ!」

「うん!」


 クロ将軍に先頭を代わってもらって、俺達は全力で攻撃にかかる。俺は全身に炎をまとい、全力でやつの尻尾へと攻撃する準備をする。クロ将軍も身体強化魔法を全開にしているし、ブランシュ殿も全身を金属で覆っている。開幕から飛ばし過ぎな気もするが、考えることはみんな一緒だな。大陸最強格のビッグヘッドランドドラゴン相手には、こうでもしなきゃあまともに戦えねえ!


 レーヴェも俺同様に全身に炎をまとっている。いやまて、レーヴェのやつ、いつの間に完全版のこの技を習得したんだ? 以前のあいつは、トレーニング前の俺みたいな。体の一部に炎をまとうことは出来ても、全身は無理だったはずだ。いや、そんなこと考えてる場合じゃねえな。今は目の前の敵に集中だ。


「「がうがう!」」

「ぐらあああ!」

「がお~ん!」


 どっすん!


 ぐはっ、なんっつう重さだ。この威力、まじでやべえ。ブレスのダメージが残ってるとはいえ、クロ将軍が先頭でぶつかってくれたにもかかわらず、意識が飛びかけたぞ。


 おまけに案の定吹き飛ばされちまった。っと、そうだ。レーヴェは無事か? ちょっと離れたところに炎の塊があるな。技が解けてないってことは、無事だよな。背中に縛り付けられてる妖精もたぶん無事っぽい。


「っ!?」


 背中の妖精と目が合った? なんだ? 


 レーヴェの背中の妖精は、生気の全くない目でこちらを見つめながらも、何やら魔法を発動した。なんだ? 俺の魔法に干渉してきてるだと? ぐう、コンディションが悪すぎて抵抗できん。何しやがる! 


 妖精野郎の魔法によって、俺とレーヴェの体から、今までまとっていた炎が切り離される。そして、俺達の体は不自然なまでに急速に落下して、地面に叩きつけられた。


「がは!」


 炎をまとうという強化魔法を強引にはがされたうえに、なにかの魔法で強引に体を地面に叩きつけられた。ブレスと尻尾攻撃で受けたダメージがあったこともあり、けっこう効いた。レーヴェは無事なんだろうな?


「おい、てめえ! 何しやがる!」


 俺はちょっと離れた場所に落ちていた。レーヴェに駆け寄り、さらにレーヴの背中の妖精に食って掛かった。だが、次の瞬間。凄まじい魔力が俺達の上空を通過した。


「うお!」


 なんだ今の。まさか、収束タイプのブレスだってのか? 狙いはどこだ? あんなの食らったら、クロ将軍もブランシュ殿もまず助からねえぞ。


「おっちゃん。大丈夫?」

「ああ、でも今のブレスは」

「大丈夫。ほら見て。狙いは僕の抜け殻の炎だったみたい」

「あ、ああ」


 なんだ? レーヴェの炎の残滓を攻撃してるってのか? そういや、ハピのやつは戦闘向きじゃないって話だったな。俺達を吹っ飛ばしたはいいが、補足し続ける手段まではなかったってことか。それで、炎が遠くからでも目立つ俺かレーヴェを狙ってとりあえずあれを撃ったってことか。なるほどな。いや待て、今回狙われたのはレーヴェの炎だったようだが、俺の炎に撃ち込んでくる可能性だって、5割はあったってことだ。その場合、炎をはがされて地面に落とされてなかったら、あれが直撃してたってことか。


 なんなんだ? この妖精。まじでなんなんだ? この極限状況下でのあの冷静な判断力。おまけに意識が飛びかけていたとはいえ、俺の魔法に干渉する技量。まじでなんなんだよ?


 俺はただただレーヴェの背中の妖精を見つめていた。


「ふっふ~ん、隊長はすごいでしょ!」

「ああ。なんなんだ、この妖精」

「隊長はね、僕の最大の理解者なんだよ。この炎をまとうわざの全身版も、僕一人じゃ使えないんだけど。こうやって隊長を背中に括り付けて、隊長に魔法制御をお願いすれば簡単に使えるんだよ」

「そうなのか? そりゃすげえじゃねえかよ」

「でも、おっちゃんのほうがすごくない? だって、一人で全身に炎をまとえるんでしょ?」

「いや、俺の場合はぴぴとのトレーニングの成果だ。つか、全身版が出来たんなら教えろよな。水臭いじゃねえか」

「僕はおっちゃんに教えたくてしょうがなかったんだよ。でも、隊長がダメっていうの」

「なんでだ? 軍事機密か?」

「ううん。隊長の個人的な理由だよ」

「個人的な理由?」

「僕とおっちゃんの使う炎をまとう技って、命の魔力と炎の魔力を融合する魔法でしょ?」

「ああ、そうだな」


 もっとも、ぴぴとのトレーニングの前の俺は、全身の命の魔力を完全に融合させることが出来ず、部分的な炎しかまとえなかった。でもそれだと、完全版よりも出力も低いし、なにより融合できている部分の炎によって、融合できてない体が焼かれて、ダメージ負う諸刃の技だった。だから、背中の妖精の力を借りれば完全版が使えるなら、それにこしたことはない。不完全版は出力の低下もつらいが、なにより体を焼かれるダメージが結構しんどいんだよな。


「それでね、完全版は全身の命の魔力を、炎の魔力と完全に融合するから僕自身はダメージを受けないし、出力も高いから、僕としては一人で不完全版を使うよりも、隊長と完全版を使いたいんだけどね、どうもこの技、隊長にすっごい負担がかかるみたいで、隊長が嫌がるんだよね」

「なぜだ? レーヴェが完全版のこの技を使えれば、軍としてもかなりの戦力増強になるだろ?」

「ほら、融合させるのはあくまでも僕の命の魔力と炎の魔力でしょ? 他人同士の命の魔力は基本的に混ざらないわけだから。だから、隊長は僕の炎で焼かれて、結構痛いんだって」

「は? いや、言われてみればそうなのか? だが、この妖精は怪我は全然してねえよな?」

「それは、隊長自身の魔力と、僕の魔力の一部を使って、常時回復魔法を使い続けてるかららしいよ」

「ってことはなんだ。レーヴェの炎で常時全身を焼かれながらも、回復魔法で常時回復し続けてるってことか?」

「うん。しかも、意識が飛ぶと制御はもちろん出来なくなっちゃうから、意識はハッキリしたままなんだって。そんな状態で僕の炎に焼かれ続けることが、しんどすぎるんだって。でも隊長ったら、自分がつらいからこれを出来ることはおっちゃんにも絶対内緒にしろって言うんだよ? 我がままだよね」


 いやいやいや。ちょっとしか見てないが、完全版の炎をまとうレーヴェの力は、間違いなく今の俺と同格だ。☆8ランクといっても過言じゃねえ炎に、生きたまま延々焼かれ続けるのか、流石の俺も同情するぞ、これ。この生気の無い目も、自己防衛の一種と思えば納得できるしな。


 ってことはだ。この隊長妖精がレーヴェの直属の上司だった時に、レーヴェが手加減を覚えるまでの100年間、腹に穴を開けられまくった可哀そうな妖精だったって話も、本当の話なのか? 俺はレーヴェがそんなことするはずねえと、質の悪い冗談だと思っていた。だが、この惨状を見ると、あれも本当のことだった気がするな。


「なあ、レーヴェ。背中の妖精隊長の名前は?」

「隊長の名前? イブキだよ。イブキ隊長!」

「いい隊長をもったな」

「でしょでしょ!」


 イブキ隊長か。その名前、俺の心に刻み込んでおこう。そして、前言撤回だ。今の俺達はチームわんがおプラス1じゃねえ。チームわんがお、プラス2だ!



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