王都バトル大会決勝戦その2
何はともかく先制攻撃によって妖精の国チームの最高戦力、レーヴェ将軍の排除に成功したチームわんがおであった。チームわんがおも、クロ将軍という最高戦力がレーヴェが心配で追いかけていったため、離脱してしまっているが、まあ、それはいいとしよう。クロ将軍は手加減下手ゆえに最初から戦力外なのだから。
「うおっしゃあ! 気合入れなおしていくぜ!」
「ほっほっほ、それもおうじゃのう。予定通りわしは二人もらうぞい」
「では、私も予定通り2人もらいましょうか」
「なっ! くそ、こうなったら早い者勝ちだ!」
チームわんがおのメンバーがじつにまったりと作戦会議のような会話をしている中、チーム妖精の国のメンバーはちゃくちゃくとチームわんがおを追い詰めるための一手を準備していた。
「はっ、なめられたものだねえ」
「本当です。ですが、すでに準備は終わっています! 10分咲き!」
「ギガントフレイムドラゴン!」
さくらの放った巨大なさくら吹雪の竜巻は、うめの炎の竜に取り込まれ、炎の竜巻となって3人を焼き尽くしにかかる。先日の戦いでグラジオラスとローズを倒したうめとさくらの合体魔法だ。無防備に作戦会議をしていたチームわんがおの3人は、なすすべなく炎の竜巻に閉じ込められる。
「へえ、なかなかの熱量じゃねえか。前の俺だったらちょっと辛かったかな」
「同感ですね」
「ほっほっほ、この攻撃はわしの獲物の攻撃じゃて、破らせてもらおうかのう。うおん!」
わんこ大臣がそう言って一吠えすると、わんこ大臣達の周辺に水の刃が幾重にも展開する。そして、その水の刃が高速回転しつつ巨大化すると、あっという間に炎の竜巻を切り裂いた。
「ほっほっほ、さて、まさかこれが最高打点というわけでもあるまい? かかってくるのじゃ」
「ちい、嫌味な爺じゃな。あたし等の最高打点の技と知っていながらそれを言うかい」
「倒せないかもとは思ったけど、こんなに簡単に破られちゃうなんて、ちょっと驚いちゃった」
「これ、さくら、今度は向こうの攻撃が来るよ。防ぎな!」
「はい」
「では、今度はこちらから行くとしようかのう」
わんこ大臣は先ほどの水の刃を自身の回りで回転させたまま、うめとさくら目掛けて一気に突っ込んだ。その手前には前衛のゆき将軍とシルバー将軍が立ちはだかるが、まさに鎧袖一触、その程度の障害は妨げにならんとばかりに、容易くこれを突き破り、うめとさくらに迫る。うめとさくらも防御魔法を展開するが、全力の合体攻撃すらも軽く切り裂いたその水の刃を防ぐことが出来ず、水の刃は2人を容易く切り裂いた。
「さてっと、ゆき将軍。こっちもそろそろやるとしようか」
「では、私はとりあえずシルバー将軍をいただきますよ」
「ああ、かまわねえぜ!」
2人がやる気満々で構える。相対するはゆき将軍とシルバー将軍、そしてその背後には2人に強化魔法を施すナノハナ将軍。のはずだったのだが。
「おい、お前ら、どうしたんだ?」
だが、そこにいたのは、さきほどのわんこ大臣の突撃で、すでにボロボロの3人だった。しかも、ゆき将軍はぷるぷるしながらも立っていたものの。シルバー将軍とナノハナ将軍は起き上がれてすらいない。いや、ナノハナ将軍は完全にダウンしてるっぽい。
「はあはあはあはあ」
「だめだ。ゆき将軍もすでに立ってるだけじゃねえかよ。おい、大臣!」
「おや、もう終わったのか? しかし、2人とも早すぎはしないかの? 相手に何もさせずに圧倒するなんて、らしくないのう」
「ちげえよ! てめえがひき殺してったんだろうが」
「ほ? どういうことじゃ?」
「どういうこともなにも、大臣が突っ込んでいった際に、巻き込んでいったのですよ」
「むう、そうじゃったのか。うめとさくらの2大ばば相手には手加減せねばと考えていたから、その手前のことはあまり考えとらんかったの。ほっほっほ、失敗失敗」
「ちい、まあいい、ゆき将軍はなんとか立ってるみたいだしな。おい、やるぞ」
どさり。
かろうじて立っていたゆき将軍も、ついに倒れてしまったようだ。
「え、マジでか?」
「え~っと、何が起きたのかよくわからなかったのですが、チーム妖精の国のメンバーが全員倒れていますね。ということは、チームわんがおの勝利ということでしょうか? 審判さん、どうなのでしょうか?」
「勝負有り! チームわんがおの勝利!」
「うおお~! よくわからないがチームわんがおが勝ったようだ。多分すごい勝負だったに違いない~!」
「「「「「うおおお~!!」」」」」
「よくわかんなかったがすごかったぞ~!」
「ギルマス~! 多分大活躍したんだよな! すごかったぞ~!」
「「「あおあおあお~ん!」」」
「さて、長かった王都バトル大会もこれにて閉幕と言いたい所だが、今回は☆7ランクの出場者が少なかったこともあり、ちょっと短かったということで、明日、エキシビジョンマッチが待っているぞ! エキシビジョンマッチはなぞに包まれているが、ちらっと聞いたところによると、超がつくほど強い相手との戦いということになっている。つまり、そう、参加者同士での戦いではなく、エキシビジョンマッチにふさわしい相手がいるということだ。参加者は現時点ではチームわんがおと、チームグラシクローになっている。が~、参加制限はないため、腕に自身のあるものはふるって参加してくれ! 受付は今日中、場所はいつものコロシアムだ!」
「「「「「うおおおお~!」」」」」
「ちなみにクロ将軍とギルマスが言うには、多分俺らでもそんな簡単に勝てない相手、だそうだ~!」
「って、それって俺達じゃあ参加ほぼ不可能じゃねえかよ!」
「俺は出るぜ! ギルマス達との共闘なんて、めったなことじゃ出来ないからな!」
「ああ、どうしましょう。迷いますね」
「参加するにしろ見学するにしろ、また明日、お会いしましょう~!」
「「「「「うおおおお~!」」」」」
そして、舞台は移り変わっていつもの王城の食堂だ。いつもであれば優勝者を囲んでみんなでパーティーとなるところではあるが、今日に限っては違っていた。もちろん優勝記念パーティーではあるものの、明日のエキシビジョンマッチのこともあって、みんな控えめにパーティーを楽しんでいた。
「ようお前ら、明日は楽しませてくれるんだろうな?」
ギルマスがぴぴ達に話しかけてくる。
「ギルマス、優勝おめでとう」
「みんなよくやった!」
「うん、強かったよね」
「ああ、ありがとうよ!」
「まあ、もし負けてたら、追加で本気の猛特訓をしてもらうところだったけどね」
「おいおい、ぴぴ、怖いこというなよな。っと、俺達の優勝に関してはまあいいんだ。それより明日だよ。明日。楽しませてくれるんだろうな?」
「大丈夫だよ。ね、ぷう」
「うん! でもね、ボロボロに負けても文句言わないでね?」
「はっはっは! 上等だぜ! 完膚なきまでに叩き潰してやるよ! ちなみに何だが、例のドラゴンゴーレム、お前らが乗り込んで戦うのか?」
「ううん、私とぷうは乗り込まないよ。ぷうのゴーレムに、ハピが乗って戦うの」
「え、我輩が乗るの? 今聞いたんだけど」
「旧王都のときみたいに、適当に暴れてくれればいいだけだから、簡単だよ!」
「そう? ならいいのかな? なんか、嫌な予感がするんだけど・・・・・・」
「気のせい気のせい!」
「ほほう、とすると、俺達の相手はハピってわけか。お前とやるのは初めてだよな。非戦闘員って話だが、悪いが手加減する気は無いぜ!」
「手加減なんてしたらいくらギルマスとはいえ、一瞬で負けるから気をつけてね。なにせハピはパイロットって言うだけで、基本はわたしの作った超強いゴーレムなんだから!」
「ああ、俺だけじゃなく、クロ将軍も大臣もブランシュ殿も楽しみにしてるからな。がんばってくれよな!」
「ギルマス達こそ、一瞬で負けて、観客を白けさせない様に気をつけてよね!」
「はっはっは! いってくれるじゃねえか! まあ、楽しみにしてるぜ!」
そうしてギルマスは去っていった。
「よ~っし、我輩があっさりやられて会場を白けさせるわけにもいかないもんね。ぴぴ、ぷう、今から作戦会議だよ!」
「そんな心配しなくても、わたしの恐竜ゴーレムはそう簡単に負けっこないよ~」
「そうだね。でも、ハピが作戦会議したいっていうなら、付き合うよ」
「じゃあ、作戦会議開始だね!」
こうして、明日のエキシビジョンマッチに向けて、思い思いの夜を過ごすのだった。




