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ゴブリンの街攻略戦

 今日はゴブリンの王都制圧のための前段階、ゴブリンの街攻略戦だ。朝起きてご飯を食べたり準備万端整えたぴぴ達一行は、ゴブリンの街が見える大きな木の上にいた。


「ここがゴブリンの街か、流石に大きいね」

「「うん」」


 ゴブリンの街は大きかった。周囲を10mを超える高さの外壁で囲まれている城郭都市となっており、見渡す限りの壁であった。左右に数キロメートルはあるだろうか、右も左も外壁の端が見えない。外壁には一定間隔で塔が建っており、また、塔や外壁の上には弓や魔法タイプのゴブリンの姿が確認できた。ゴブリンの村と同様に外壁の周辺の森は完全に開かれており、外壁から1キロメートル圏内は草原になっていた。


 また、城門は開いており、朝から仕事なのだろうか、ゴブリンの集団が街からでて来ているところだった。


「それにしても大きいね、何匹いるんだろう」

「うん、これはヘタしたら100万匹以上いそうだね」

「どうやって攻略しようか。幸い堀みたいなのはないから、ジャンプして簡単に乗り越えられそうだけど、走り回って切り刻む方法だと時間掛かりそうだよね」

「うん、この大きさは協力して叩きたいね。うう~ん、何かいい案はないかな~」


 カーンッカーンッ


 攻略法を考えていると、大きな木を叩くような音が鳴り響いた。


「何の音? 見つかった?」


 ピクピクッ

 ぴぴとぷうの耳がすばやく音源を特定する。


「あそこだね、木を切っているみたい」

「本当だ、建築資材にでもするのかな」

「それもあると思うけど、メイクンモンスター辞典によると、ゴブリンは木を食べるんだって」

「そうなんだ」

「ほらここ、ゴブリンは雑食で、木の実や肉、虫、などを食べるが、基本的には魔素を取り込めればいいため、主食は、土や木であることが多い。緑ゴブリンなら木をゴブリンだけが使うなぞの魔法で料理し、それを食べることが多い。木の実や肉は贅沢品扱いで、上位のゴブリンしか食べれない。だって」

「そういえば、確かに昨日のゴブリンの村とか町でも、変な木を煮詰めたような、どろどろのがあったね」

「うん」

「そうなんだ~、でも、食べたいとは思えないね」

「「うん、やめよう」」


「じゃあ、改めてゴブリンの街の攻略方法を考えようか」

「「うん」」

「まず全滅は厳しいよね。もう街から出ているゴブリンがいるし、こっそり倒すには多すぎるし」

「そうだね、ぴぴが潜入して倒しまくる方法も、ぴぴは捉えられなくても、ゴブリンの死体とかから絶対ばれるもんね」

「「うう~ん」」

「はい」

「はい、ぷう」

「ここは囮と暗殺作戦はどうでしょうか?」

「具体的に」

「まず、わたしとハピが普通に正面から攻めます。その間にぴぴは城壁を越えて街へ潜入。そして、上位のゴブリンを暗殺する。指揮官を倒せば、統率の取れた逃走が出来なくなるので、ゴブリンへより大きなダメージを与えられると思います。指揮官クラスを全部倒した後は、王都側の出入り口付近で暴れるのもいいかと思います。誰もが考える脱出経路が使えないとなると、なおさらパニックになると思うです」

「ふ~む、なかなかいい作戦です。異議のある猫は?」

「はい、我輩も戦うの?」

「そこはもう1作戦あります。最近得意になってきたゴーレムを作ろうかと思うのです。メイクンモンスター辞典には、ゴブリンはゴブリン同士でも縄張り争いをするモンスターと書いてあります。そのため、大型のゴブリンゴーレムを作り出し、それに乗って戦おうというわけです。そうすれば、敵は妖精の国だけでなく、別のゴブリンの集団からも攻撃を受けていると勘違いして、パニックになるかもなのです」

「それは、ロボットに乗るといっても過言ではないのでは」

「流石ハピ、その通りなのです」

「よし、採用です。我輩のゴーレムはかっこいいのでお願いです」

「ゴブリンゴーレムだから、見た目はあまり期待でね」


 こうして作戦が決まった3匹は、それぞれ動き出すのだった。ぷうとハピは木から下りて、ゴブリンゴーレムを作成する。数は3体だ。大きさは3mだ。3mという巨体ではあるが、ほぼ3頭身のその体のせいで、どうにもコミカルな雰囲気になってしまっていた。


「3体作るの?」

「うん、1体は何かあったときようの予備かな。基本はこれでいいとして、ハピ、武器は何がいい?」

「鉄砲とかって可能?」

「大丈夫だよ。じゃあ、アサルトライフルに無反動砲、手榴弾にナイフ。そんな感じでいいかな?」

「うん、大丈夫。出来たら迷彩柄にしてヘルメットもお願い~」

「は~い」


 こうして完成したハピ用ゴブリンゴーレムは、デフォルメされたようなかわいらしい外観の武器を装備していた。右手にM14っぽい外見のアサルトライフルを持ち、背中にM20っぽい外見の無反動砲を背負い、ベルトにナイフと手榴弾を装備。さらに迷彩服にヘルメットと、なかなかにユニークな外見になっていた。


 ぷうの作り出した残り2体のゴーレムは盾と剣を持ったゴーレムと、槍を持ったゴーレムだった。防具は鎖帷子にヘルメットだ。


「じゃあ、乗り込もう~。頭の後ろから乗り込めるよ」

「うん」


 そういうと頭の後ろがプシューっと開き、コックピットが現れた。


「おお~、なんかかっこいい。でも、この石なに?」

「それにCPを流せば、イメージどおり動くよ~」

「なるほど~」

「ハピのCPは命の属性みたいだから、本当は土で出来たこのゴーレムとは相性良くないんだけどね。わたしが普段からハピのCPで出来たご飯食べてるせいか、けっこう相性良く出来たんだ~」

「へ~、そうなんだ。おお~、ちゃんとイメージ通り動くね」

「流石ハピだね~、わたしは2足歩行のイメージが上手くいかなくて、最初なかなか動かせなかったよ」

「どうやって動かせるようになったの?」

「ゴブリンの動きを真似たの」

「なるほど」

「それじゃ、作戦開始だね」

「ぴぴさん、ぷうさん、懲らしめてやりなさい」

「それ、言わなきゃダメなの?」

「ダメなの!」

「まあ、なんにしても作戦開始だね!」

「「うん」」


 3体のゴブリンゴーレムは走り出した。森に木を切りに来ていたゴブリン達を倒し、街へ向けて一直線だ。街から1キロのところで草原に出てしまうも、お構いなしに突撃だ。ぷうとハピがあえて目立つ行動をとる中、ぴぴは隠密行動開始である。


 カンカンカンカンカーン!


 ゴブリンゴーレムが街から800メートルくらいのところまで接近すると、ゴブリンもこちらに気がついたのか、鐘の音が鳴り響く。その直後、正面の門および、門から近い位置にある左右の塔から攻撃が始まった。


 ド~ン! ド~ン! ド~ン! ド~ン! ドド~ン! ド~ン!


 大砲による遠距離攻撃だ。


 ドカ~ン! ドカカカ~ン! ドドカ~ン! ドカ~ン!


 一応炸裂弾のようである。着弾と同時に爆発した。


「大砲まであるなんて、やっぱり大きな街なんだね。防衛力も高そうだね~」

「これ、当たっても平気?」

「大丈夫だよ~。砲弾に込められてる力はたいしたことなさそうだし、この程度じゃわたしのゴブリンゴーレムは壊れないよ」

「でも、撃たれっぱなしっていうのはなんか嫌だよね。ここは無反動砲で大砲をふっ飛ばしちゃうね」

「ハピがんばって、わたしはこのまま突撃するね」


 ハピは手に持っていたアサルトライフルをその辺において、背中の無反動砲を取り出し、肩に構える。そして、門とその左右の塔、さらにもう1つとなりの塔目掛けて5発発射した。M20っぽい外見なのに連射できる理由はひとつだ。発射した物体が魔法の弾だからだ。また、本来のそれよりも、はるかに射程が長いのも、同様の理由だ。


 ぽふ~ん ぽふ~ん ぽふ~ん ぽふ~ん ぽふ~ん


 なんとも間抜けな発射音とともに、無反動砲から弾が発射された。弾はヒューンとこれまた軽い風切り音とともに飛んで行き、無事に目標へ命中した。


 ドッゴ~ン!


 間抜けな発射音とゆるい飛翔音とは違い、威力はゴブリンの大砲よりもはるかに高かったようである。M20っぽい外見だが、デフォルメされ、3mの大きさのゴブリンが構えても違和感ないようにかなり巨大な筒になっていたことも、影響したのかもしれない。門も塔もあたった場所は完全に崩壊している。


「CP消費もけっこう激しいみたいだけど、これはすごいね」

「でしょ~」


 門と塔を破壊されたゴブリン達は今度は歩兵で対抗するようだ。木を切りにいっていたゴブリン達を引き上げさせ、代わりに城壁からどんどん槍や剣で武装したゴブリン達が現れる。さらに、まだ無事な城壁の上には銃や弓や杖をもったゴブリン達が現れて、臨戦態勢といったかんじだ。


 ぷうのゴーレム2体が城壁から500mくらいまで近づいたとき、城壁の上にいたゴブリンの中でも、一際大きなゴブリンが腕を振り下ろした。それと同時に大量の魔法と矢、弾が降り注ぐ。命中精度はそこまでよくないらしく、半分くらいは地面にあたっていたが、逆に言えば半分は命中している。


 すさまじい轟音と砂煙が巻き上がる。ぷうのゴーレムたちは砂煙でもう見えない。


「ぷう大丈夫?」

「うん、ぜんぜん平気だよ~」


 どうやらぜんぜんダメージは受けなかったようである。そして、砂煙もものともせずに突進する。砂煙から無傷で飛び出してきたゴブリンゴーレムに、地上にいた剣や槍をもったゴブリン達が対峙する。


「グギャギャギャ~!」


 こちらもゴブリンの中でも大きな個体が雄たけびを上げ、先頭で走り出すと、その後に続いて大量のゴブリン達が走りだす。ぷうの乗っていないほうの槍のゴブリンゴーレムは、その身の丈を超える4mの槍をもってくるくる回りだす。どうやらぷうは槍ゴブリンゴーレムへは細かい指示を出す気はないようである。ただ、それでも効果は絶大だ。押し寄せるゴブリンをまるでティッシュペーパーでも相手にするかのごとく次々と倒していく。ぷうの乗っている剣と盾のゴブリンゴーレムも次々とゴブリンを倒していく。戦闘で向かってきた大き目のゴブリンはシールドバッシュ1発でぺしゃんこだ。剣を振ればほとんど素振りしているのと同じようにゴブリンが倒れ、なんならただ走ってぶつかるだけでも倒せてしまう。槍をもって回ったり、剣や盾を振り回している分速度は落ちたものの、ぷうのゴブリンゴーレムは、ゴブリンの街から次から次へとゴブリンをものともせずに、着実にゴブリンの街へと迫っていった。


 ハピもぷうに負けてはいられない。無反動砲を撃った後、全力で走っていたハピの銃ゴブリンゴーレムは、城壁のゴブリンの排除に動いていた。距離600mくらいの位置からアサルトライフルを連射して城壁のゴブリン遠距離攻撃部隊を狙撃していく。アサルトライフルとはいえ、打ち出される銃弾は20mmはあろうかという大口径である。ばったばったとゴブリン達が倒れていく。司令官っぽい大きいゴブリンには、10発くらいの連射をプレゼントだ。大きいゴブリンは防御用の衝立のほかに、防御用の魔法を使っていたようであるが、銃ゴブリンゴーレムの射撃は、有無をいわさず貫通した。10連射だったこともあり、ゴブリンは原型を留めないほどバラバラだ。その後も順調に大きいほうから狙い撃ちにしていった。



 そのころぴぴは、無事に街の中に侵入していた。ぴぴのなぞの探知能力により、街の中でも一際大きな要塞の最上階にボスがいると察知したぴぴは、屋根の上をぴょんぴょん飛びながらターゲットへと向かっていった。この要塞、外見はまるで第2次世界大戦の頃の高射砲塔のような建物であった。ボスが大きな要塞の頂上にいるのは当然じゃないのかって思うかもしれないが、意外とそうではないようである。例えば、日本のお城と城主の関係を見ても、天守と呼ばれる大きなお城部分に住んでいたのは信長くらいといわれているらしく、他の人は本丸という普通の住居を別に持っていることが多かったそうだ。いや、ここは要塞で、要塞の主である軍人系ゴブリンが指揮しやすい高い場所にいるのは当然といわれれば、その通りであるのであるが。


(ここの頂上にゴブリンのボスがいるっぽいね、外から直接頂上の部屋を切り裂いてもいいんだけど、ここは下から登っていこうかな、一応逃げる気があるのか、耳を澄ませておこうかな)


 ぴぴの地獄耳は、ゴブリンの要塞最上階にいるボスゴブリン達の会話を聞き取れていたようだ。


『大将軍、南から攻めてきたものたちですが、巨大なゴブリンのようです』

『ふむ』

『旗色はこちらがかなり不利ということです。城門、塔がすでに破壊され、将軍クラスの将校がすでに複数敵に討たれました』

『ふむ』

『なさけない話ですが、大将軍とその護衛の方々以外では、まともな時間稼ぎすら出来そうにありません。どうか、ご出陣を』

『ふむ』

『大将軍、なにとぞ』

『そうあわてるでない、ここは我らが王にとっても重要な食料生産拠点。すぐにわし自ら出陣し、敵を討ち取ってくれるわ。じゃが、その前に招かれざる客の相手をせねばならないようだ』

『招かれざる客、ですか?』

『わからぬか、下の階の同胞がどんどんやられておる。時期にこの部屋にくる』

『なっ』


 その時、スパーンっと扉を切り裂き、ぴぴは最上階の部屋に入っていった。そして、すぱぱっとそこにいたゴブリンのボス、その取り巻き10匹、さらにボスに進言していたゴブリンをさくっと倒すのだった。


 なぜ正面から正々堂々戦わないのか。不意打ちで倒すなんてずるい。その問いに対する答えは1つだ。正々堂々お互い全力で戦うのが男のロマンだとしても、ぴぴは女の子である。よって無効なのだ。いや、そもそも不意打ちはともかく、正面からどうどうと入ってはいってたし。


(あれ? このゴブリン達、なんか色が濃い?)


 ぴぴの倒したボスとその取り巻き10匹は、普通のゴブリンよりも緑が濃かった。普通のゴブリンが黄緑から緑くらいの色なのに対して、このボス達はダークグリーンと呼べるような色合いだ。


(ふ~む、持っていったらぷうとハピが喜ぶかな。持ってこっと)


 そういうとぴぴは空間属性のCP技でダークグリーンゴブリンをしまうのだった。この空間収納ともいえる技、手ぶらでいろいろ持ち運べるため便利ではあるものの、中に入っているものの質量と体積、魔力量によって、どんどんCPが減ってしまうという欠点があった。腕力で荷物を持っても余計に体力を使うのと同じように、体力の代わりにCPを使うということである。しかし、なにかと便利な魔法で、普通の物理的な運搬手段どうよう、氷魔法や時間魔法などと組み合わせて、内部の保存状態をよくしたりすることも可能である。もっとも、さらに多くのCPを消費することにはなるのだが。また、別の使い方として、内部空間を頑丈にすることにより、空間系の拘束魔法としてもつかえるなど、応用の幅も広い魔法であった。


(さて、次はゴブリンが逃げてる北門の制圧だけど、ぷうの作戦的に見つかるのはまずいよね。どうしようかな)


「ぴぴ~、そっちの調子はどう?」


 ちょうどぴぴが次の行動を考えていると、ぷうからテレパスが飛んできた。


「上位ゴブリンの暗殺は終わっちゃった。今、主に北門からゴブリンが逃げてるから、そこを封鎖しに行こうと思ってるんだけど、なにか見つからずにやれる方法ないかなって考えてたの」

「それなら、予備でつくった槍のゴブリンゴーレム使わない? 今南門を抜けたから、すぐに届けられると思うんだ」


 ぴぴが南門の方を見てみると、ぷうとハピはすでに街にまで進行しており、ぷうは剣で群がるゴブリンを倒し、ハピは城壁に上ってそこから、手榴弾を手当たり次第に投げて建物を破壊していた。槍ゴブリンゴーレムは相変わらずくるくる回っている。


「使う!」

「じゃあ、そっちに移動させるね」


 そういうと槍ゴブリンゴーレムは、ぴぴのいる要塞の壁を器用に登って最上階までやってきた。流石ぷうである。ぴぴの居る位置は聞かなくてもわかっているようであった。


「使い方はわかる~?」

「さっき聞こえてたから、たぶん大丈夫」

「は~い、わたしとハピはこのまま南門から街の制圧に乗り出すね」


 ぴぴは槍ゴブリンゴーレムに乗り込むと、一気に要塞から飛び降りた。50m以上ある建物からの大ジャンプをいきなりやってのけたぴぴは、度胸があるのか命知らずなのかわからないが、とにかくすごい。無事に着地したぴぴは、槍ゴブリンゴーレムを北門に向けて走らせる。流石にいきなりは上手く走れないのか、道路を右へ左へ、左右の建物にぶつかりながら走りぬける。普通に走るよりも迫力満点だ。狙ってやってるのかと思えるほどにかっこいい。


 北門に近づくにつれて道路にいるゴブリンの密度が上がっていくが、落ち葉や新雪が積もっている道路を走るかのごとく、ゴブリンを蹴散らしながら進む。そして脱出しようとゴブリンがぎゅうぎゅうになっている北門に到着した。そして槍をぶんぶん振り回して次々とゴブリン達を倒していくぴぴであった。ゴブリン達も他の門に行きたくてももう身動きとれない。街の中央では、ぴぴがボスをしとめた高射砲っぽい要塞の屋上に陣取り、ハピの銃ゴブリンゴーレムが周囲に手榴弾をばら撒いていた。そのためあっちこっちで建物が崩壊していきゴブリン達は大パニックだ。街中にもどれないために、後ろからどんどん他のゴブリンがやってくるのである。なんとか槍ゴブリンゴーレムの脇をすり抜けるしか活路はなかった。


 ぷうの剣ゴブリンゴーレムがゴブリンを追い掛け回し、ハピの銃ゴブリンゴーレムが街を手榴弾で破壊、ぴぴの槍ゴブリンゴーレムが一番脱出に使いやすい、王都側の北門を封鎖する。この作戦により、多くのゴブリンが倒されるのであった。しかし、一部西門や東門に逃げたゴブリンや、北門はあきらめ、10mもある北側の城壁から飛び降りて逃走するものなどもでたため、半分くらいのゴブリンは逃げ出すことに成功していた。そして、そのゴブリンの群れは北西にある王都に向けて、大行列をなしているのであった。


「ぴぴ、ぷう、そろそろ日が傾いてきたし、終わろうか」

「「は~い」」

「我輩のいる大きい建物わかる? ここで今日はやすも~」


 ちょっと壊れてはいるものの、ゴブリンのボスのいた高射砲塔っぽい要塞の最上階に、ミニぴぴぷちゃ号を着地させて、野営するのであった。


「そうだ、ぷう、ハピ。このゴブリン達なんだろう?」


 そういうとぴぴは例のダークグリーンゴブリンを全部取り出した。


「色が違うね」

「それだけじゃないね。ハピ、これは色だけじゃなくて、強さも大分違いそうだよ~」

「うん、ぷうの見立てどおりだと思う。これ、普通の色のゴブリンに比べて、ワンランク以上強そうだった」

「強そう? ぴぴ戦ったんじゃないの?」

「細かいことはわかんない。だって、一撃だったし。でも、普通の色のゴブリンより、きも~ち硬かった気がする」

「そっか~、じゃあ、ご飯食べたら、メイクンモンスター辞典をもう一回見てみよっか~」

「「うん」」


 もぐもぐ、がぶがぶ


「う~ん、載ってないね~。書いてある情報をまとめると、こんな感じかな~」


☆1個:普通のゴブリン。100cmくらい。弱い。武器もせいぜい棍棒くらいだ。同じくらいの背の子供と比較するとパワフルであるものの、大人の人間のほうがよっぽどパワフルだ。よって、大人ならなにか武器を持てばまず倒せる。


☆2個:ゴブリン10人隊長。130cmくらい。10匹のゴブリンを率いる隊長ゴブリン。剣などの戦闘用の武器を持っていることが多い。10匹のゴブリンをある意味押さえつけている個体なため、単体でも普通のゴブリンの10倍強いかというとそんなことはない。どう多く見積もっても普通のゴブリンの2倍くらい強い程度。もとが弱いため2倍の強さでもそんなに強くない。ただ、取り巻きに普通のゴブリンを10匹程度引き連れているため、トータルでランクは☆2。取り巻き込みで1ptで倒せたら初心者ハンターを名乗ってもいいぞ。


☆3個:ゴブリン100人隊長:160cmくらい。本体の強さは小柄なこともあり、そこまで強くもない。ただ、ゴブリン10人隊長を10匹ほど引き連れ、さらに自身の取り巻きも10匹程度いるため、100人隊長とはいっても、トータルで120匹くらいの群れになるなど、数が多い。雑魚ゴブリンですら武器を持ち始めることが多く、その分強くなるため、群れとしてのトータルの強さはなかなかのもの。簡単な集落をつくる。小さい村だと壊滅する恐れもあるためそこそこ危険。これを1ptで倒せたら君も一人前のハンターだ。


☆4個:ゴブリン1000人隊長:190cmくらい。体が大きくなり、本体も大分強くなる。しかも、装備が格段によくなり、戦士系なら鎧を、魔術師系ならローブを着る。戦闘ゴブリンの1000匹以外にも、非戦闘ゴブリンが居るケースが多く、そこでは町が出来る。そこで鍛冶等をするのか、武器もよくなる。小さな町ですら壊滅することがおおく、けっこう危険。1ptで対処できる相手じゃない。素直にギルド総出であたるか、軍にお願いしよう。もし1ptで倒せたら、君たちはベテランハンターだ。


☆5個:ゴブリン将軍:220cmくらい。1000人隊長までとは違い、明らかにごつく、でかくなる。数も多くなるが本体もかなり強い。全部で1万を超える軍隊になる上に、装備がさらによくなり、普通のゴブリンの強さもあがる。拠点として街のようなものを作る。城砦都市でもないと落とされるリスクのある強敵。


☆6個:ゴブリン大将軍:250cmくらい。本体もかなり強い。10万を超える軍勢を率いる大将軍。高度な文化レベルの拠点を持ち、装備がさらによくなる。拠点は要塞になっていることも多い。非常に大きな被害が出ることもあり、過去には小国が何カ国もやられた。大陸有数の大国であっても油断できない。


☆7個:ゴブリンキング:280cmくらい。本体も超強い。100万を超える軍勢を率いるゴブリンの王。王というだけあり、拠点は城砦都市、要塞、町、村などが複数出来、国といっても過言ではないほどの文化レベルを持つ。国家の危機というよりも、もはや種族の危機レベル。種族のプライドなど捨てて、他種族に連携を要請しないとピンチなほどの強敵。場合によっては他の大陸に応援をお願いすることもある。ただ、時折格下のゴブリンでも、集落のトップのゴブリンが王を名乗ることもあり、その場合は特に強くないことが多い、ゴブリンキング(自称)事件が起こる。


☆8個:キングオブキング:詳細不明、大昔に一度目撃情報があるだけらしい。東の大陸(妖精の国のある大陸)最大勢力を誇るゴブリン王国の王。億越えのゴブリンを率いるといわれる、まさにゴブリン王の中のゴブリン王。エルフや妖精の国などに定期的に攻撃をしかけてくるゴブリンは、ここから分離した勢力といわれている。また、他の大陸にも同程度のゴブリンがいると言われているが、目撃情報等がないので不明。


☆不明:ときどき群れを作らない、はぐれのゴブリンがいる。大体大きさどおりの強さをしていることが多い。


豆知識:ゴブリンの集落のトップの見極め方。集落のトップのゴブリンを倒すと、非戦闘員ゴブリンは逃げ出すことが多い。その際、より強い大ボスが居る場合、そのボスの集落へと逃げていく習性がある。そのため、集落のボスを倒した際に、非戦闘員ゴブリンがバラバラに逃げたらそれ以上の大ボスはいない。逆に一定方向に集団で逃げ出したら、より強い大ボスがいると考えてよい。


「うう~ん、それっぽい情報が特にないよね」

「だね~、これは妖精の国まで持っていって、わんこ達にでも聞くしかないのかな~?」

「そうだね、もし新種なら、大発見だね」

「それじゃ、もう遅いしねよ~、我輩くたくた~」

「あ、ちょっとまって~、ゴブリンゴーレム達に、CP込めてくるよ」

「なにするの?」

「自動モードで夜の間も逃げたゴブリンの追撃でもしてもらおうかと思って」

「なるほど、それじゃ私も槍のにいれてくる」

「我輩も銃のに入れる~」


 こうして、3体のゴブリンゴーレムは、自動モードで逃げたゴブリンを追い掛け回すのだった。


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