妖精の国の四天王
「さあ、王都バトル大会も残すところあと1種目のみとなりました。みなさんお待ちかね、☆7ランクによる、頂上決戦だ~!」
「「「「「うおお~!!」」」」」
「今回の☆7ランクの出場者はなんとたったの4チーム、初戦からいきなり準決勝というスケジュールになっている。だが、だがだがだがだが~! その4チームのレベルの高さは、過去最高といっても過言ではないぞ。いいや、間違いなく過去最高だ。むしろこの4チーム以外は、この4チームに恐れをなして逃げ出したといっても過言ではない~!」
「「「「「うおお~!!」」」」」
「ではまず、本日の対戦チームをご紹介したいと思います。ここ半年で急激に力をつけ、単純な魔力量だけならすでに妖精の国で最強、つまり、メイクンに存在するすべての知的生命体の頂点から3人が組んだ、ちょっと卑怯なチーム。その名も、チーム、グラシクロー!」
グラジオラス、シクラメン、ローズの3人が、その紹介にあわせて飛び跳ねる。☆7ランクの試合は危険性のためにコロッセオみたいな建物ではなく、王都の北の草原で行われる。そのため、基本的にはカメラ片手に運営スタッフががんばって撮った映像を中継で流すだけになってしまい、せっかく王都で行われている大会にも関わらず、いまいち実感がわかない見方しか出来ないという欠点があったのだが、今回は違っていた。
今回はぷう全面協力のもと、観戦用の猫型の大型飛行船を何隻も作り出し、それを北の草原に浮かべた。これにより、今回は中継画像でも見れるし、肉眼でも見えるようになった。まあ、遠いので望遠装置は必須だが。ということで、当然エレフとファントをはじめとした来賓メンバーも飛行船に乗っており、ぴぴ達もそこにお邪魔していた。
「ねえ、ぷうさん、ぴぴさん、ハピさん。司会の人はああ言ってるけど、メイクンに存在するすべての知的生命体の頂点から3人が組んだチームって、ぷうさん達のことじゃないの? あの3人の妖精さんはもっと強いの?」
「う~ん、どうもわたし達のことは、除外するってことになってるみたいなんだよね」
「そうなんだ~」
「俺も1つ聞きたいんだが、ぷうさん達がくっそ強いのは旧王都で嫌というほどわかったんだが、ぷうさんが最後に作ったあの頭のでかいドラゴン。☆7ランクの軍人やハンターってのは、あれに勝てるほど強いのか?」
「それは微妙かな~。妖精の国の☆の数で言うとね、あの頭のおっきいのは☆8なんだって、しかも、☆8でも最上位の☆8だって前に言ってたよ」
「そうなのか」
「でも、今のみんなの実力なら、全員でかかれば、1匹くらい仕留めれるんじゃないかな」
「は~、俺達旧王都のメンバーじゃあ、何人いても勝ち目すら見えなかった敵に、数十人で勝てるのか。そりゃあすごいな」
「あくまでも予想だけどね。ちなみに、今紹介された3人も、火力はきっとすごいよ。技もたぶん派手だと思う!」
「うんうん、なにせ我輩と一緒に果物狩りに行って強くなったメンバーだからね!」
「果物狩りして強くなったの? いいな~」
「ほんとだな。俺も果物狩りで強くなれるなら、ちょっと行ってみたい気がするぜ。でも、秘密の場所なんだろ?」
「うめが秘密にしたがってたわけは、危険な場所だからってだけだよ。秘密とはちょっとちがうんだ。だから、我輩達となら文句は言わないと思うよ。行ってみる? 一応うめに聞いてみようかな。あれ? いないね?」
「あれ? 本当だ。さっきまではいたんだけどな~」
「待て待て、秘密の場所じゃなくて危険な場所?」
「そうだよ。最後にぷうの出した大きい恐竜ゴーレムいたでしょ? あれの本物がいるところ」
「え、あの頭のでかいドラゴンの本物がいるところで、果物狩りしてたってこと?」
「うん、もっと強いのがいる場所もあったよ」
「ううう、行きたいけど、遠慮します」
「ああ、俺もだ。それになぜ秘密にしたのかの理由もわかったぜ。あれが出てくるような場所じゃあ、旧王都の連中じゃあ1人も生きて帰ってこれんな」
「まあ、気が向いたら声かけてね。一緒にいこ~」
「お、おう。気が向いたらな」
「僕は絶対に気が向くことは無いと思う~」
「続きましては、近衛師団団長ナノハナ率いる、近衛師団チーム! と言いたいところですが、今朝登録の変更がございました。ナノハナさんはもちろん出ておりますが、このメンバー、例年なら優勝確定だったでしょう。では、改めまして、さくら様、うめ様が率いる、妖精国チーム!」
「「「「「うおお~!!」」」」」
「いやいやいや、これは卑怯だろ」
「ありえねえって」
「さくらさま~!」
「うめばあ~!」
「メンバーはご存知、我らが女王さくら様、うめ様、そして、四天王のナノハナ、ゆき、シルバー、レーヴェだ~!」
中継の画面に映ったのは、うめ、さくら、ナノハナ、ぴぴ達が見たことの無い犬、狼、ライオンがいた。
「だれなんだろう、このメンバー? 知ってる人いる?」
「わかんない」
どうやらぴぴ達だけでなく、エレフもファントも知らないようだ。話を聞こうにも知り合いはほとんど出場選手なためここにはいない。と思っていたら、1人知り合いが現れた。
「ん? お前ら知らなかったのか? じゃあ、俺が教えてやるぜ」
「あ、イブキだ。イブキもここで見学なの?」
「おう、そうだぜ。こっちに戻ってからは基本待機だったからな。暇だったから要人警護の仕事がてら見学に来てたんだよ。てなわけで、あいつらのことを教えてやるよ」
「うん、ありがとう」
「まず、うめばあとさくらばあはいいよな。俺達妖精族の女王にして、国家としての妖精の国の代表だ。んで、実力もけっこうえぐいぜ。2人とも元☆7の実力者だからな。ちなみに俺とマルバが2人で組んでも、うめばあにもさくらばあにもまだ勝てねえ」
「あれ? 旧王都に行くときに、護衛の意味あったの?」
「ん? 俺達は護衛じゃねえよ。俺は御者でマルバは執事だったろ? むしろ俺達の護衛にうめばあがいたってレベルだぞ」
「そうなんだ」
「で、残りのメンバーは妖精軍の四天王なんて呼ばれてる連中だ。妖精軍の最精鋭の4人だな。近衛の団長やってるナノハナ以外は、普段各地の要所に出てて、めったに王都にいないやつらなのに、まさか全員連れてくるとはな。モンスターの領域の守りは大丈夫なのかよ」
「あ~、それなら平気かも。実はこの1週間、わたしはアオイ達と、ぴぴもギルマス達と遊んでたんだけど、主要なモンスターの領域で、ちょっと暴れてたんだよね」
「なるほどな、それで連れてこれたってわけか。でもまあ、強さで言ったら間違いなくやばい連中だ。なにせ、現役の☆7ランクの軍人だしな。うめばあとさくらばあじゃあ、もう勝てないって言ってたぜ」
「へ~、それは強そうだね」
「つーか、例年なら四天王+その部下の優秀なの数人って組み合わせですら、優勝候補って言われてるような連中だからな。あれが組むとかいいのかよって思ったぜ。んじゃ、個別に紹介するぜ。あのブランシュそっくりの白い犬っころがゆきってんだが、ブランシュ殿の娘だ。温厚なブランシュ殿と違って、すっげえ凶暴でくっそ怖い。シルバーってのは狼だな。こいつがいわゆる切れ者ってやつでな、とにかく頭がいいんだ。たぶん今回もこいつが司令塔になるんじゃないかな。最後にレーヴェってのがライオンだな。まあぶっちゃけた話が、ハンターギルドのギルマスやってるリオン殿の追っかけのようなやつだな。なんでも命の恩人だとかで、昔はハンターとしてリオン殿にべったりだったらしいんだが、あるとき急に軍に入ってきたんだよな。俺が聞いた限りじゃ、憧れのリオン殿にライオンとして追いつくための修行に来たとか言ってたっけかな。ちなみにこいつだけ若いぜ、なにせ俺の元部下だし。あ、でも勘違いするなよ。入隊した時から、あいつのほうが強かったからな」
「へ~」
「っていうか、あいつ見たらいろいろ思い出しちゃったぜ。ちょっと愚痴聞いてくれよ」
「うん、いいよ~」
「あいつとは、あいつの入隊時の実力テストで、俺が試験官として模擬戦の相手をしたときからの付き合いなんだけどさ。その模擬戦で俺、腹に穴開けられたんたよ」
「え? なんで?」
「おっちゃん、あ、レーヴェのいうおっちゃんってのはリオン殿のことな。おっちゃんならこのくらいの強さで噛み付いても、ちょっと痛いって言うくらいだったよ? って言うんだぜ? 当時現役ばりばり、妖精の国で最強と言われていたリオン殿が、ちょっとでも痛みを感じる攻撃なんて、俺達妖精族に防げるわけないじゃんって思わねえか? しかも、恐ろしく速くて、防御や回避をするどころか、気づいたら腹を噛まれてたってレベルだったんだ。いくらなんでも酷すぎるぜ」
「それは、酷いね」
「だろ? しかも当時の上司、いや今もなんだけど、ナノハナの野郎が面白がって俺の部下にするんだよ。そこからの俺の生活は地獄だったね。模擬戦は俺の部下にやらせるわけにはいかないから毎回俺の担当。しかも毎回腹に穴が空く。あるとき野営してたときなんか、普通4人くらいで寝てるところを1人で寝てたから何事かと思って、聞いたら。だれも一緒に寝てくれない、とかいうから俺が一緒に寝たら、寝返りで死に掛けたし」
「あう」
「それどころか、酒場にいって酒を飲ませれば酒場ごと破壊するわ。武器屋に連れてけば最高峰の武器と自分の爪、どっちが強いか試してそういう武器を簡単にへし折るわ。とにかく、とんでもない問題児だったんだよ。しかも、本人はたっいちょう~、とかの~んきな声だして懐いてくるし」
「ふ~ん、それはかわいいんじゃない?」
「まあな。そこまではまあそれでも良かったんだ。本人はかわいいやつだからな。でも許せない事件が起きたんだ。レーヴェが加減を覚え始めて、俺の部隊のエースとして活躍し始めた時に、ナノハナの野郎がレーヴェを移動させようとしやがったんだ!」
「え? 移動?」
「そうだ、移動だ。俺のとこでは常識的なパワーコントロールを覚えてくれればそれでよかったって言って、覚えたから移動ねって言って引っこ抜こうとしたんだよ。今でも覚えてる。だって当時ナノハナのところに殴りこみに行ったもん」
「それは酷いね」
「んで、抗議してやるって俺の部隊員全員で、当時もう近衛師団の団長だったナノハナに勝負を挑んだんだ。ただ、ちょっと失敗したのは、普通に公式行事中の、うめばあの護衛してる時に襲っちゃってな。俺の部隊対近衛師団みたいな構図になったんだよ。ナノハナ本人はもちろん、ナノハナの取り巻きにすら俺は勝てなかったが、それでも勇猛果敢に戦ったぜ。まあ、俺達は簡単に倒されたんだがな。でも、唯一レーヴェのやつは強くてな。ほぼ1人で近衛師団壊滅させちゃったんだよな。ナノハナが重傷負ったところなんて、俺が知る限り後にも先にもそれ一度きりだな。最終的にはその公式行事にギルマスとして出席していたリオン殿がレーヴェを抑えて騒動は終わったんだが、俺達は全員謹慎ってこった」
「へ~」
「んで、その後は、結局レーヴェを男として成長させるには、部隊を持たせたほうがいいだろうってことに俺もレーヴェも納得して、あっさりレーヴェは将軍になっちまったってわけだ」
「ふ~ん、でも、なんかいい話風に聞こえるんだけど」
「ふんっ、俺が腹に穴を開けられてた期間が短かったらな」
「短くないの?」
「レーヴェが手加減覚えて、俺の腹に穴が開かなくなるのに、ほぼ毎日模擬戦して、100年くらいかかってんだよ」
「それは、ちょっと辛いね・・・・・・」




