エレフとファントの戦い
「レディースアンドジェントルマン、大変お待たせしました。ただいまより、妖精の国、王都バトル大会を開催いたします。司会は毎度おなじみ私、ホウセンカがお送りいたします。では、まず最初に来賓のご紹介だ! まずはこのお方、我らが女王陛下、さくら様~! では、さくら様一言どうぞ」
「皆さんこんにちは、さくらです。日ごろの鍛錬の成果を存分に発揮して下さいね」
「あ~りがとうございます! その他にもうめ様やエルフの国、及びドワーフの国の商業ギルドのギルドマスター、さらには旧王都の草食動物さん達などなど、多数のご来賓が来ておられます。が、まあ皆さんの挨拶で時間を使うなんて無粋ですね!」
「「「「「その通りだ~!」」」」」
「ではさっそく、みんな大好き最初のプログラム、☆3ランクのバトルから開始するぞ~! このランクはもうご存知かと思いますが、普段戦闘を生業にしていないものによる一番お手軽なバトル大会だ! 本屋さんに料理屋さん、大工さんに農家さんなどなど、他のランクでは見られない独自の戦いが見られると、人気種目でもあるぞ。ルールは簡単、1回戦って勝ったら賞品ゲット、負けたら終わり、たったのそれだけだ! 今回の賞品は、このテーブルの上にある通りだぞ。レストランギルド発行のお食事券や、旧王都産とっても美味しい野菜セットなどなど、全10品の中から、好きなものを選べるぞ!」
「「「「「おお~!」」」」」
「今回の第1試合は、ちょっと特別なバトルになっている。そのため、☆3ランクだけど特別に選手紹介だ! 今ではこの王都ではめったに見ることの無い、旧王都の草食動物は象さんの兄弟、エレフとファントだ~! お2人は今回、旧王都からこのバトル大会の見学にやってきた10人のうちの2人だ。でも、うめ様の計らいによって急遽参加もすることになったんだそうだ。みんな、元気よく、気持ちよく迎えてあげよう!」
エレフとファントが闘技場に姿を現す。すると、会場は大盛り上がりだ。
「うお、なんだありゃ、でけえ!」
「すっげ~、なんだあの大きさ」
「ってか、あんなのが☆3ランクでいいのかよ」
その中には2人の応援に駆けつけたぴぴ達3人の姿もある。
「へ~、ペアでやるんだね」
「うん、なんでも、☆3の大会は人数も多いから、ソロの部、ペアの部、トリオの部、カルテットの部、この4つの部門があるんだって」
「なるほどね~」
「我輩達も応援しないとだね!」
「そうだね、せ~の!」
「「「エレフ、ファント、がんばれ~!」」」
「兄のエレフ選手は普段は農地や道路などに発生する雑草との戦いのスペシャリスト、すべての雑草は俺の前にただ食われるのみ、だそうです。弟のファント選手は、食べる量なら兄ちゃんにも負けないもん。だそうですよ!」
「対するお相手はこの方々、王都の大図書館勤務うん百年、大図書館内の本ならすでに全部記憶済みという大図書館1の本好き。ダリアとダヒア姉妹だ~。姉のダリア選手の得意分野は地理と歴史、妹のダヒア選手の得意分野は魔法と軍事とのことです。この勝負の注目ポイントはなんていっても両者共に初出場ということですね。お互いの手札はまったくの未知数、さあ、どちらが勝っても恨みっこなしの1発勝負だ! さあさあ、審判さん、始めちゃってください!」
「では、両者とも、準備はいいですか?」
「「「「はい」」」」
「はじめ!」
「姉さん、相手は巨体、きっとパワーはすごいわ。私達の防御力では受けきれない」
「そうね。ダヒア、ここは先手必勝ね」
「ええ、いきましょう」
「おおと~、ダリヒア姉妹、いきなりなにやら取り出したぞ。そしてそれを空に投げた~。これは、本のようですね。え~なになに、情報が入ってまいりました。大図書館では蔵書を破棄することはないが、週刊誌などの雑誌は例外で、一定期間経過すると廃棄される。今回使用するのもそういった廃棄雑誌。とのことです」
「おお~、これは美しい。雑誌のページがひとりでに動き出し、紙飛行機や鶴などの折り紙に自動的に折られていく~!」
「「これが私達姉妹の戦い方、雑誌折り紙殺法、大図書館に沸く虫をことごとく葬った必殺技。あなた達に防げるかしら?」」
「流石姉妹です。息もぴったりだ~! そして、姉妹の折り紙が、象さん兄弟に襲い掛かる~!」
「兄ちゃん、来るよ!」
「ああ、紙なら水に弱いはずだ。破れなくても水分を含めば重くて制御できなくなる可能性はたかいな。よし、放水用意だ!」
「うん!」
「対する象さん兄弟は、なんと鼻から大量の放水でこれを迎撃する~。水を浴びた折り紙は次々と迎撃されていくぞ」
「く、重いわ」
「これはやられたわね。姉さん次の作戦に移行しましょう」
「ええ」
「ファント、このまま決めるぞ!」
「うん、兄ちゃん」
「おや、象さん兄弟は、今度は先ほど出した水を鼻から吸い始めた~。姉妹の折り紙も関係無しに、一気に吸引する~。何をするつもりなんだ~? っと、今度は一気に噴出だ~」
「姉さん、ブックバリアよ」
「ええ、わかったわ」
「対する姉妹は、なんと、本を更に大量に取り出し、本の盾でこれを防いだ~! だが、水分を含んでは先ほどと同じ結果になるのではないか~? おや? 今度の本はなにやら様子が違うようですね」
「本が水に弱いなんていうのは百も承知、だから、この本たちは防水のブックカバー付よ」
「流石は本のことを知り尽くした姉妹、防水対策もばっちりだ~!」
「姉さん、あれを使うわ。次で決めましょう」
「ええ、いいわ」
「おおっと、姉妹は更に大量の本を取り出しましたね。そしてなにやら本を組み合わせているようですが、こ、これは」
「これが私達姉妹の切り札。その名もブックゴーレム。このパワー、あなた達に防げるかしら?」
「すごい、すごいぞダリヒア姉妹。なんと、本を使って全高5mはあろうかという巨大な妖精ゴーレムを作ってしまった~!」
「「いけ、ブックゴーレム。我らに勝利を」」
「兄ちゃん、来るよ」
「ああ、わかってる。だけど、水はブックカバーで効かないだろうし、どうするか」
「兄ちゃんここは僕達も力で押し切ろう!」
「ファント、大丈夫なのか?」
「もちろん、単純なパワーなら、兄ちゃんにだって負けないんだからね!」
「ふ、そうだな。行くか」
「うん!」
「おおっと、今度は両者共に走り出した! 決着はパワー勝負といったところか~!」
「「ぱお~ん!」」
「「ブックゴーレムパ~ンチ!」」
妖精ブックゴーレムと、象さん兄弟が舞台中央でぶつかり合う。そして、そこに立っていたのは。
「このパワー勝負は象さん兄弟が制した~。すばらしい威力の鼻。ぶんぶん振り回した鼻が、ブックゴーレムを容易く破壊したぞ~!」
「さて、どうする。妖精さん?」
「むふ~、むふ~!」
「姉さん、もう打つ手はないわ」
「そうね。私達の負けね」
「勝負あり! エレフ、ファントチームの勝利!」
「決まった~! 勝者は象さん兄弟だ~! どうやら図書館姉妹チームはこれ以上の手がなかったようですね。え~、では、象さんチームにご質問です。賞品はなにがいいですか?」
「「食事券!」」
「はい、かしこまりました。賞品受け取り窓口で受け取れますので、確実にもらっていってくださいね!」
「「はい」」
「では、いいバトルを見せてくれた両チームに拍手をお願いします!」
ぱちぱちぱちぱち~! わ~わ~!
「それでは、ここからはいつもの☆3バトル大会と同じように進行させていただきま~す!」
場所はかわり、賞品受け取り窓口の側で、ぴぴ達はエレフとファントを待っていた。
「エレフ~、ファント~、おめでとう~!」
「あ、ぷうさん、ぴぴさんにハピさんも、見ててくれたんですか?」
「うん」
「我輩もばっちりみてたよ」
「ありがとうございます!」
「水魔法もよかったけど、最後の2人で鼻をぶんぶん回しながらの突進、息ぴったりだね」
「そりゃあ、兄弟だからな。な、ファント」
「うん! 兄ちゃん」
「そうだ、ぷうさん達の仲間も出るんだよね」
「うん、☆7ランクに出るって言ってたから、最後のほうだけどね」
「そっか~、じゃあ、僕達も一緒に見ていいかな?」
「もちろん! 当日まではわたし達も参加者と特訓してるから、当日2人のいる来賓席にわたし達が向かうね」
「はい!」
「それじゃあ、またね~!」
「は~い!」
エレフとファントは無事に勝利できてご機嫌だ。でも、ぴぴ達にとってはここからが本番だ。☆7ランクでの優勝目指しての秘密の特訓はまだまだ続く!




